ロシア連邦、異世界にて飛躍する   作:兎の助

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第十八話:パイロット救出作戦 ☆

2032年11月23日 午後3時00分 オゼラ近海 ロシア海軍フリゲート艦「アドミラル・ゴルシコフ」

 

アレクセイ・ペトロフ中尉の救難信号を受信してから既に約5時間が経過していた。

フリゲート艦の作戦室にはロシア海軍の特殊部隊PDSS(水中破壊工作部隊)の隊長、イワン・ソロヴィヨフ少佐とその作戦チームのメンバー。

そしてキルサ海洋同盟から派遣された人魚族の特殊部隊長、セレーネ・コーラルフィンとその部下たちが集まっていた。

 

彼女は人魚族特有の青みがかった肌と、長い銀色の髪を持っていた。水中での生活に特化した種族であり、彼女たち人魚族と魚人族の特殊部隊は今回の水中工作において比類なき能力を持っていた。

 

「現在の状況を確認する」

 

ソロヴィヨフ少佐が、作戦室のモニターに地図を表示させる。

地図にはネレシア島の詳細な地形が記されており、帝国軍の配置も記入されていた。

 

「ペトロフ中尉の救難信号はここ、ネレシア島唯一の港であるリグロイ港から発信されている。しかし信号は先ほどから移動を停止している」

 

「囚われているのか、あるいは…」

 

キルサ海洋同盟の魚人族の副隊長、カイ・ディープカレントが不安そうに呟く。

 

「おそらくは捕まっているだろう。連中にとって彼は貴重な情報源だ。そう簡単に殺すような真似はしないはずだ。それに殺しているなら、信号は森の中で止まっているはずだ。態々港まで死体を連れて行くことはしないはず」

 

「なるほど…」

 

「それで、今回の救出作戦の詳細は?」

 

セレーネの問いにソロヴィヨフは、画面上に画像を表示させる。

 

「今回の救出作戦はヘリ(Mi-8)2機に救出部隊(SSO)を乗せて直接島に降下させ、対象(パッケージ)を回収する。たとえ対象が生きていようと死んでいようと、これは変わらない」

 

彼は続いて画面上に別の画像を表示させ、それ指差した。

 

「一番の問題は、リグロイ港に停泊しているコレだ。ここには帝国軍の戦列艦が3隻停泊している。我々が救出作戦を開始すれば、これらの艦が妨害してくる可能性が高い」

 

画面には帝国軍の戦列艦の3Dモデルが映し出されており、大まかな性能や武装なども一緒に表示されている。

 

【挿絵表示】

 

 

「戦列艦…帝国軍が採用している標準的な木造大型艦ですね」

 

「その通りだ。全長は約70メートルで、主武装はカノン砲を約60門搭載している。命中精度こそ低いが、それを数で補っている。これらが我々のヘリコプターや降下した救出部隊を攻撃してくる可能性が高い。幾ら前時代的な大砲とはいえ、当たればひとたまりもない」

 

「ならば、この戦列艦を無力化すれば良いのでは?」

 

カイが、提案した。

 

「今回我々が呼ばれたのは、まさにそれを実行するためだ。この作戦には君たちの力が必要になる」

 

ソロヴィヨフは、作戦の詳細を説明し始めた。

 

「この作戦は主に三段階に分かれて行われる。まず第一段階は君たちキルサ海洋同盟の特殊部隊と我がPDSSが共同で、港に停泊している戦列艦の船底に爆薬を設置する。第二段階で爆薬を起爆し、戦列艦を無力化。最後の第三段階で我が軍のヘリコプターが島に突入し、ペトロフ中尉を救出、空域から離脱する」

 

セレーネは、画面上の地図を見ながら頷いた。

 

「船底への水中工作は、我々の得意分野です。しかし港の周辺には帝国軍の警備がいるのでは?」

 

「その通りだ。だが今回の作戦は警備が手薄な夜間に実施する。夜間であれば、水中からの接近は発見されにくい。君たちなら暗く見えずらい水中でも行動は可能だろう」

 

「はい。お任せください」

 

セレーネは、自信を持って答えた。

 

「それでは、準備に取り掛かれ。作戦開始時刻は明日の午前3時。目標は、戦列艦3隻の同時破壊だ。我々の結果次第で作戦の成否が変わる。気を引き締めていくぞ!!」

 

「「「はっ!!」」」

 

 

 

 

午前2時30分 ネレシア島沖 約2キロメートル地点

 

夜の海はとても静かであった。波は穏やかに揺らぎ、月明かりが水面を淡く照らしている。

 

そんな海に浮かぶロシア海軍のフリゲート艦から、小型の潜水艇が静かに降ろされた。その中にはPDSSの隊員が6人、乗り込んでいる。

彼らは黒のダイビングスーツに水中呼吸装置を着用し、その上からチェストリグを装備。そして全員がAPS水中銃を所持していた。

 

各隊員は、それぞれの防水バッグにC4爆薬を入れて携行している。

 

「潜水艇、着水」

 

「チーム1、展開準備完了」

 

「了解、チーム2も準備完了」

 

《アドミラル・ゴルシコフより各部隊へ、作戦開始だ》

 

ソロヴィヨフ少佐が無線で報告すると、セレーネも無線で応答する。

キルサの特殊部隊12名は、既に海中で待機していた。

 

全部隊の準備が完了すると同時に、アドミラル・ゴルシコフの作戦指揮官から作戦開始の合図が出される。

 

《チーム1、展開開始。目標地点にてチーム2と合流せよ》

 

「了解」

 

PDSSを乗せた潜水艇は静かに海中を進んでいく。

やがてPDSSの部隊はセレーネの部隊と合流。港には松明を持った帝国軍の見張りが数名程巡回しているものの、彼らは誰にも気づかれることなく湾の中へと侵入を果たした。

 

セレーネがソロヴィヨフに近づく。水中でも彼女の動きは優雅で流れるようであった。

 

「第一目標に接近します」

 

「了解、我々も近づくぞ」

 

「了解」

 

三つのグループに分かれた部隊は、それぞれの目標艦に向かって泳ぎ始めた。

 

セレーネと彼女の部下である人魚族4名と魚人族2名が、目標の戦列艦の船底に到達した。

巨大な木造船の船体が、真っ暗な海上に静かに浮かんでいる。月明かりがわずかに水中に届き、船体の輪郭をぼんやりと照らしていた。

 

彼女は船底を確認する。木造船は鉄製の艦に比べて脆い。適切な場所に爆薬を設置すれば穴が開き、例え巨大な船であろうと簡単に沈没させることができる。

 

彼女が部下たちに合図を送ると、人魚族の隊員たちが防水バッグから爆薬を取り出し、船底の複数箇所に設置していった。

全部で10箇所。合計で約20キログラムのC4が、しっかりと船底に取り付けられた。

 

「設置完了」

 

「こちらも完了」

 

「第三目標も完了しました」

 

「よし。全員、安全な距離まで離脱せよ」

 

爆薬をセットし終えた部隊は、すぐさまその場を離脱。港から約500メートルほど離れた地点まで移動し、そこで待機した。

 

 

 

 

午前3時00分 ネレシア島近海上空 Mi-8ヘリコプター内部

 

同じ頃、SSO(特殊作戦部隊)隊員12名と医療班を乗せたロシア空軍のMi-8ヘリコプター2機が、ネレシア島に接近していた。

ヘリは低高度で海上を飛行しており、暗い中、低空で飛行するヘリコプターの存在に帝国軍は全く気づいていない。

 

ヘリの内部ではSSOの隊員が銃や装備品のチェックを行っていた。

 

全員マルチカム柄のプレートキャリアにLShZヘルメットを被り、覆面(バラクラバ)で顔を覆っている。

手にはEO-TECH製のホロサイトやフォアグリップ、レーザーサイトやフラッシュライト等を取り付けてカスタマイズされたAK-74MやPKP-M等で武装している。

 

「目標の島まで、あと10分!」

 

副操縦士がSSOの隊長、ニコライ・アレクサンドロヴィチ・モロゾフ大尉に報告した。

 

「了解。海軍に連絡しろ。爆破の準備はできているか」

 

「はい、待機中とのことです」

 

「よし」

 

モロゾフは振り返ると、隊員たちに今回の作戦内容の最終チェックを行う。

 

「今回の作戦は墜落した戦闘機パイロットの救出だ! 今から約2時間程前、救出対象のペトロフ中尉の救難信号は移動して、現在は港から約3キロほど離れた島の南東部で停止している。偵察衛星からの情報では、他にも複数人の人物が確認されている。恐らくは囚われていた島の住民だろう。我々の任務は彼らを救出し、この港から脱出することだ! 失敗は許されない! 邪魔をする者がいれば、全て排除しろ!! いいか!?」

 

「「「おう!!」」」

 

「海軍に連絡、起爆を要請する」

 

 

 

 

午前3時05分 リグロイ港湾外

 

《海軍に連絡、起爆を要請する》

 

モロゾフ大尉の声が、無線で届いた。

 

「了解。これより起爆する」

 

ソロヴィヨフは遠隔装置のスイッチに手をかけた。

 

「全員、見ておけ。派手に行くぞ」

 

ソロヴィヨフがスイッチを押した次の瞬間――

 

港に停泊していた三隻の戦列艦の船底で同時に爆発が複数回起こり、巨大な水柱が上がった。

水中爆発の衝撃と爆音が、海中を伝わって彼らの耳に届く。ソロヴィヨフたちは十分に離れていたため、被害はない。

 

三隻の戦列艦の船底に大きな穴が開き、そこから海水が勢いよく船内に流れ込み始める。

 

「な、何だ!?」

 

艦上の帝国兵たちは、突然の爆発音と大きな揺れに混乱した。

 

「浸水だ! 船底に穴が開いた!」

 

「なんだと!?」

 

「急いで応急修理を!」

 

しかし穴は大きい上に、複数箇所から流れ込んでおり、到底修理できる状態ではなかった。

船は急速に傾き始め、甲板上の砲弾や樽が海へと転がり落ちていく。

 

「駄目だ! 沈む!?」

 

「総員、退艦!」

 

帝国兵たちは慌てて船から飛び降りた。三隻の戦列艦はわずか数分で港に沈み、やがて着底した。

 

 

 

 

午前3時07分 ネレシア島 リグロイ港 城内

 

戦列艦が沈みゆく中、グロスマン中将は寝室のベッドでぐっすりと眠っていた。

ふごふごと鼻息を荒くしながら寝ている様は、まさしく豚のそれである。

 

だがその時、寝室のドアが勢いよく開き、一人の帝国軍兵士が部屋に飛び込んできた。

 

「ちゅ、中将閣下殿!!」

 

兵士の慌てた声にグロスマンは目を覚ました。しかしまだ寝ぼけているのか、目を閉じながらのそのそと起き上がる。

 

「…何だ…まったく…今、何時だと思って――」

 

「中将! 港に停泊していた戦列艦が、敵の攻撃を受けて沈められました!」

 

「…何だと?」

 

その報告を聞いた瞬間、グロスマンの眠気は一気に覚めた。

彼は慌ててベッドから飛び起きた。

 

「詳しく報告しろ!」

 

「はい! 港に停泊していた我が軍の戦列艦の船底で謎の爆発が起こり、そこから浸水して沈没しました! 見張りの兵からの報告では敵の姿は一切見えず、攻撃の兆候もなかったとのこと! 恐らくは水中から攻撃してきたと思われます!」

 

「水中からだと…?」

 

報告を聞いたグロスマンは顔面蒼白になり、そして気づいた。ロシア軍がペトロフ中尉を救出しに来たのだと。

だが助けに来るまでがあまりにも早すぎる上に、まさか水中から攻撃を仕掛けてくるとは、グロスマンを含め誰も想像していなかった。

 

彼は急いで寝間着を脱ぎ捨て、軍服を着用する。

 

「今すぐに全軍に警戒態勢を取らせろ! 寝ている兵士は全員叩き起こせ!! それから…牢屋に行って、あのロシア人を連れてこい! すぐにだ!」

 

「は、はい! 今すぐ――」

 

確認してきます。兵士がそう言おうとしたその時、また寝室のドアが開いた。

別の兵士が、慌てた様子で飛び込んできた。

 

「ち、中将!」

 

「今度は何だ!?」

 

「あ、あのロシア人が…見当たりません! 牢屋から脱走しました!」

 

「なんだとぉ!?」

 

着替えていたグロスマンの動きが止まった。

 

「そ、それだけではありません! 一緒に閉じ込めていたエルフ共の姿もありません!」

 

兵士の報告を聞いて、グロスマンはしばらく何も言えなかった。

だが次の瞬間――

 

「ふ…ふざけるなああああああああっ!」

 

グロスマンの絶叫が、寝室中に響いた。

 

「な、なぜだ!? 牢屋には鍵がかかっていたはずだ! 見張りの兵は何をしていたのだ!?」

 

「そ、それが…見張りの兵士は殺されており、鍵が無くなっておりました!」

 

「なっ!?」

 

彼は信じられないという表情をして固まった。しかし事実は事実。

ペトロフはエルフたちと一緒に脱走し、逃げた。

 

するとその時――

 

バラバラバラバラバラバラバラバラバラバラッ!!

 

「な、なんだこの音は!?」

 

「ちゅ、中将!! あれを!?」

 

兵士が困惑した様子で窓の向こうを指さしている。

窓の向こうを見れば、夜の闇に閉ざされた海の向こうから巨大な飛行物体(Mi-8)が低空飛行で接近。そのまま港の頭上を通り抜けていった。

 

「な、なんだ…あれは…」

 

「あ、あれが…ロシア軍…」

 

未知の飛行物体を目にして、兵士たちは恐怖の表情を浮かべている。

 

「くそっ…くそっ…! くそくそくそっ!!」

 

グロスマンは悪態を何度も呟きながら、地団太を踏んだ。

そして、すぐさま兵士に命令した。

 

「今すぐ全軍を出動させて、あの飛行物体を追え!! そして奴を見つけ次第、エルフもろとも殺せ!!」

 

「は、はい!」

 

兵士たちは、今度こそ部屋を飛び出していった。

グロスマンは一人、寝室から窓の外を見た。

 

沈みゆく戦列艦の姿と、遠くで聞こえる騒ぎの音がかすかに聞こえてくる。

今や島中が混乱していた。

 

グロスマンは、怒りで表情を歪ませながら拳を壁に勢いよく叩きつけた。

 

「くそっ…!」

 

全ての状況が、彼の悪い方向に進んでいた。

 

 

 

 

午前3時10分 ネレシア島上空 Mi-8ヘリコプター内部

 

《目標を破壊、繰り返す。目標は完全に破壊された》

 

「こちらからも爆破成功を確認。これより島に突入する」

 

モロゾフ大尉たちを乗せたヘリは、港の上空に到達していた。

眼下には沈みゆく戦列艦と、海に飛び込んだ水兵たち。そして何もできずただ混乱するしかできない帝国軍のいる港が見えた。

 

「これより目標地点に向かう」

 

ヘリは救難信号の発信源に向かって飛行。

島の南東部の森林地帯上空を捜索し始める。

 

「…あそこの開けた場所に着陸しろ」

 

「了解」

 

「降下します」

 

操縦士の合図と同時にヘリは徐々に高度を下げていき、やがて森の中の開けた場所にゆっくりと着陸した。

ローターの風が周囲の草木を激しく揺らし、砂埃がわずかに舞った。

 

「タッチダウン! グリーンライト、вперёд, вперёд, вперёд!!(ゴー ゴー ゴー)

 

「散開!」

 

SSO隊員が次々とヘリから降りて周囲に展開すると、周辺の安全を確保する。ヘルメットマウントに装着されている夜間暗視装置(ナイトビジョン)を下ろすと、彼らの視界は緑色に染まった。

 

「こちらБорис(ボリス)2-1、これよりペトロフ中尉の捜索に入る」

 

《了解、ペトロフ中尉のビーコン反応はそこから南の方向に約1キロの地点だ。彼らも徐々にそちらに接近している》

 

「了解した。半数は俺と一緒に来い。残りはここに残ってLZ(ランディングゾーン)を確保しろ。行くぞ」

 

モロゾフ大尉を筆頭に、着陸地点に医療チームと兵士を半数残して周囲を警戒しながら前進。ペトロフ中尉の捜索を開始した。

森に入って数分後、アドミラル・ゴルシコフの作戦指揮官から無線が入る。

 

Борис(ボリス)2-1、ビーコン反応は君たちの前方、約10メートル先だ。誤射に注意しろ》

 

「こちらБорис(ボリス)2-1、了解。ペトロフ中尉! 貴方を助けに来ました!! 聞こえたら反応してください!!」

 

モロゾフが大声で呼びかけると、森の奥から人影が見えた。

ペトロフ中尉とエリシア、そして11名のエルフたちが姿を現す。

 

「おーい、ここだ!」

 

「ご無事でしたか、ペトロフ中尉」

 

「えぇ、何とか」

 

「後ろの彼らは民間人で?」

 

「あぁ、彼らがいなければ自分はここまで脱出できなかっただろう」

 

その時、また作戦指揮官から無線が入った。

 

《2-1指揮官へ。君たちのいる地点に敵歩兵の集団が接近中だ。そこから撤退しろ、さもないと全滅するぞ!》

 

「了解! 分隊、移動するぞ!!」

 

「これより脱出地点に向かいます! 離れずついてきてください!!」

 

「皆さん、あともう少しの辛抱です! 頑張ってください!!」

 

ペトロフとエリシアが疲労困憊のエルフ達を勇気づけつつ、一同はLZへと急いで向かった。

着陸地点に到着するや否や、SSO隊員たちがエルフたちをヘリに誘導。

 

エルフたちは始めて見る巨大な金属の機械に対して最初は戸惑っていたものの、後ろから帝国軍の部隊が接近しつつある状況でグズグズしている暇もなく、エリシアの必死の説得も相まって恐る恐るヘリに乗り始めていった。

 

「本当に大丈夫なのか…?」

 

「大丈夫です! これに乗れば、安全な場所に行けます」

 

その時だった――

 

「敵歩兵を確認!!」

 

「ヘリに近づけさせるな! 総員、各自自由射撃!」

 

「撃ちまくれ!!」

 

SSO隊員たちの手にしているAKやPKP等の武器の発砲音が、ヘリのローター音に交じって彼らの耳に届いた。

振り返れば、森の向こうから帝国軍の松明の明かりがいくつも見えた。

 

その光景を見て先ほどまでヘリに乗ることに怯えていたエルフ達は、我先にとヘリに乗り込んでいった。

 

逆に帝国軍はロシア軍の脱出を阻止しようと接近するものの、着陸地点周辺は開けており、遮蔽物の無い場所に身を曝せば即座に撃ち殺された。

 

「奴らを逃がsグギャ!?」

 

「チクショウ! アイツらなんでこんな暗闇の中でこっちの場所が分かるんだ!?」

 

「松明の明かりを消せ!」

 

「消しても撃ってくるんだよ!!」

 

「何やってるんだ! 速くその銃であいつらを撃ち殺せよ!!」

 

「こんなに暗くちゃどこにいるのか分かんねぇよ!!」

 

暗闇の中から行われる攻撃によって、もはや帝国軍は混乱してまともな指揮すら行える状況ではなかった。

 

最後のエルフの搭乗を確認すると、次はSSO隊員が互いに援護しつつ一人、また一人と順番に搭乗を開始。

やがて最後の隊員を収容すると、モロゾフは操縦士に伝えた。

 

「全員乗り込み完了!」

 

「了解! これより離陸する!」

 

ヘリのローターが回転速度を上げ、そしてゆっくりと機体を浮き上がらせる。

やがてヘリは帝国軍の攻撃が届かないほど高度を上げると、島から離脱していった。

 

見れば、東の空が白み始めていた。

 

全員がホッと胸をなでおろした。だがその時、副操縦士が叫んだ。

 

「前方に敵! あれはワイバーンです!」

 

前方から約10騎のワイバーンが接近しているのを確認した。帝国軍の騎士たちが、ヘリを追撃しようと急遽離陸してきたのだ。

 

「まずいぞ…攻撃される!」

 

「急いで離れろ! 各員攻撃――」

 

しかし、その瞬間――突如として敵ワイバーンの群れが爆散。

夜明けの空にいくつもの爆炎が浮かび上がった。

 

ワイバーンたちは次々と撃墜され、暗い森の中へと落ちていった。

 

「これは一体…!」

 

「見てください! 味方の戦闘機です!」

 

操縦士が指を差した方向を見ると、ロシア空軍のSu-35戦闘機が2機、飛行しているのが見えた。

彼らは、ヘリの護衛として上空待機していたのだった。

 

「助かった...」

 

モロゾフ大尉は、安堵の息をついた。

ヘリはそのままSu-35に護衛されながら無事に島から離脱し、オゼラ方面へと向かって飛びさっていった。

 

 

 

 

午前4時30分 オゼラ シサフィール港

 

ヘリはオゼラの港町、シサフィール港に着陸。

そこでは既にロシア軍の医療チームと、オゼラ政府の関係者が待機していた。

 

ヘリの後部扉が開き、エルフたちがSSO隊員たちに支えられながら降りてきた。

 

「皆さん! ご無事でしたか!」

 

「怪我人はこちらに集まってください! これより診断を始めます! 怪我のレベルによって治療の優先順位を決めます!」

 

政府関係者と医療チームが、彼らに駆け寄ってきた。

エルフたちは涙を流しながら、故郷の大地をしっかりと踏みしめた。

 

「帰ってきた…本当に帰ってきたんだ…」

 

「もう生きて帰れるなんて思っていなかったのに…」

 

「ありがとう…ありがとう…」

 

医療チームが重傷者や衰弱したエルフたちを担架に乗せて、臨時の医療テントに搬送していった。

 

これにより、パイロットの救出作戦は成功で幕を閉じた。

 

 

 

 

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