side:ミヨ
かぐやと知り合ったあの日から数日後、俺は『Luna』を臨時休業にしてとある人物と待ち合わせをしていた。
店内でグラスを磨いていると
カランコロン…
「失礼します…と、おお、見世さん。お久しぶりですな」
「やあ、大吾郎。久しぶり。どうぞ座ってくれ、今飲み物でも出そう」
「これはどうもご丁寧にありがとうございます。見世さんの淹れるお茶は美味しいので楽しみですなぁ」
そう褒めてくれたのはとある神社で宮司を務めている
「ほれ、最近は暑いからな。冷たい緑茶でもどうぞ」
と大吾郎の隣に座りながら、彼の前にキンキンに冷やした緑茶の入ったグラスと、羊羹を乗せた皿を出した。
「ありがとうございます。…おお、やはり見世さんの淹れてくれるお茶は美味しいですな。この羊羹もなかなか…うむ、くどくなくて美味しいです」
「そうか、そこまで喜んでくれるのであればちょっといい羊羹を取り寄せた甲斐があった」
「よく私が羊羹が好きだと覚えていましたね?もう10年はお会いしていませんでしたし、
何より見世さんは他人のことを覚えるのが苦手だと認識していましたが…」
「まあ、親しい人の好みを覚える程度には俺も人間らしくなったってことなんだろうさ」
そういうと、大吾郎は優しい顔になって
「そうですか。それは大変良いことですなぁ。」と言った。
しばらく近況を話していると、
「ところで見世さん。四方山話もいいですが、そろそろ私をここへ呼んだ頼み事というものをお聞かせ願いたいのですが…」
「ああ、そのことか。それを話す前に一つ、約束してほしい。これから話すことはほかの誰にも話さないと」
「もちろんです。大恩ある見世さんの頼みですからな。誰にも漏らしませんとも」
その言葉を聞き、俺は居住まいを正して、
「ありがとう。助かるよ…それで、だな。頼み事というのはーーー
俺がいなくなった後のヤチヨと、ヤチヨの大切な人の酒寄彩葉という少女のことを頼みたい」
「…どういうことですか。あなたがいなくなる?この
…まさか、視えたのですか?あなたが存在しない
「…いいや、そんな
「なんと…ならば、あなたは自分が終わると分かっていながら!ずっとその未来を良しとして生き続けていたというのですか!?」
「まあ、そうだな。俺の八千年はそのためにあったといっても過言ではない」
「かぐ…ヤチヨ様は?あのお方は知っているのですか?」
「…言っていない」
「なぜですか!?あのお方とあなたはお互いを大変想い合っていたはず!それなのになぜ!」
「それが、ヤチヨがハッピーエンドに至るために必要なことだからだ。
それに、俺に流される地脈の力も年々少なくなっていっている。
いつか、そう遠くない時に俺は死ぬんだろう」
「そんな…原因は、わかっているのですか」
「いや、わかっているのはそう遠くない地点で未来が見えなくなっていること。
俺が地上に出る瞬間に視えたヤチヨと酒寄が二人でどこかの草原で手を繋いでいるところ。
…そしてもう一つ。泣き叫ぶヤチヨに向かって別れを告げている傷だらけの俺の姿だ」
「…どうにか未来を変えることは?」
「無理だな。俺が見た未来は確実に到来する。そこは変えられない」
俺がそう言い切ると、そこで大吾郎は喉が渇いたのか緑茶を飲み、一息ついてからこう言った。
「手詰まり、ということですか。しかしそれでも疑問が残りますね。
なぜ、あなたが死ぬことでヤチヨ様が幸せになることにつながるのですか?
あれほど貴方を想っていたヤチヨ様は大変悲しまれると思いますが…」
そう言われた俺は、思わず苦虫を嚙み潰した顔をしながら言った。
「…俺にはヤチヨに対する罪がある。俺が地上に生まれた時からな。
きっとヤチヨは今でも俺を恨んでいるだろう。
当事者の俺でさえもそう思うんだ。間違いない。
だからこそ俺がいなくなることでヤチヨは解放される、ということだ」
「そのことについて、お教えいただけませんか」
「…まあ、お前にならいいか。だが先ほども言ったがーーー」
「他言無用、でしょう?わかっております」
「ならいい。いいか、俺の罪はなーーー」
そして俺の独白を聞いた大吾郎は口をわななかせながら
「なんと…では貴方は生まれ方から罪があったと…?
もしそれが真実なら、この
「だろう?これでお前もわかってくれたか?」
「…正直納得はしていません。ですがこちらは恩ある身。
…他言無用というならば従いましょう
お二人のことも、承りました」
「すまんな、辛い役を負わせる」
そう言うと、大吾郎はくしゃくしゃに顔をゆがめた後、
「一番つらいのはあなたでしょうに…」
としばらくさめざめと咽び泣いていた。
しばらく時間がたち、落ち着いた様子の大吾郎は
「…頼みは、それだけですか?」
と聞いてきた。
「そうだな、このくらいだな。」
「そうですか…ではそろそろ遅くなってきたことですし、私はこれで失礼いたします。
…お茶と羊羹、ご馳走さまでした。」
「ああ、じゃあな。達者でやれよ」
「ええ、そちらも。…では。」
カランコロンーーー
その音を店内に響かせて、大吾郎は帰っていった。
side:ヤチヨ
「ん~~、ミヨおっそいなぁ…」
今日は人と会うと言って家を出て行ったミヨは、帰ると言った時間を過ぎても帰ってきていなかった。
「どうしたんだろ、なにかあったのかなぁ。しんぱいだなあ。まさか、わたしよりかぐやのほうにいっちゃったのかなあ」
心がきしむ音が聞こえる。いつの間に私はこんなに弱くなってしまったのか。ミヨが私を見捨てるわけがないことはわかっているが、一度考えてしまったら嫌な考えが止まらなくなってしまった。
「ううう、ミヨぉ…早く帰ってきて…」
ーーただいまーー
「っ、ミヨ!」
ガチャ…
「お、ここのタブレットにいたか。
ただいま、ヤチーー」
「ねえ、ミヨは私の前からいなくならないよね?」
「…また、いろいろ思い出しちゃったか?」
「…うん」
そう、私はたまにこうなる。最近はいろはを見ることができていたため、なくなっていたが、久しぶりに起きてしまったようだ。
一人になると思い出すのだ。いろいろな時代のいろいろな人と触れ合ったことを。
その終わりには必ずと言っていいほど死という別れがあったことを。
「…大丈夫。
「そっかぁ…よかったあ…」
「今日はこのまま寝よう。大丈夫、明日になったら嫌な気分も吹き飛んでいるさ」
こう言ってくれるミヨがいてくれて、本当に良かったと思う。
彼がいなかったら私はきっとあの地獄の日々を一人で歩んでいたと思うから。
「ミヨ…いつもありがとう。
大好きだよ。」
「はは、ありがとうな、ヤチヨ。
おやすみ、良い夢を」
「うん、おやすみ、ミヨ」
私はいつものように挨拶をして眠りにつく。
だけどスリープモードに入る直前ふとある疑問が浮かんだ
"なんで大好きだよって言った一瞬、あんなにつらい顔をしたんだろう…?"
「その言葉は、俺には重すぎるよ、ヤチヨ…」
どうも、なんか赤いバーがいつの間にかついていて段々と投稿するときに震えてきている
ど素人ことあさらこです。なんでぇ…?
今回はオリジナルキャラが出ています。その名も宮前大吾郎さん。ヤチヨモチーフの神様を祀っている神社の宮司をしています。その縁もあってミヨ、ヤチヨとは彼が生まれる前からの関係があります。昔はミヨが描いたヤチヨに惚れていたとかなんとか…
彼がこの後も出てくるかはわかりませんが、私は割とこのおじいさんを気に入っています。
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感想欄で主人公の容姿について質問されまして、そういえば描写したことがないことに気づきました。以下に感想欄と同じものをのっけておきます。
主人公の容姿は現実と<ツクヨミ>で髪形などが若干違いまして、現実は洋食店『Luna』を経営してるので短髪、<ツクヨミ>ではヤチヨに言われた「現実とは違う姿になるのも仮想空間の魅力なのです!」という言葉に影響を受けて、短髪の真逆=長髪、さらにポニーテールになってます。
あと<ツクヨミ>内では何かしらの人外やケモ耳と尻尾っぽいので、なんとなく一度主人と決めたら付き従うけどマイペースな柴犬をイメージしてます。
それ以外の顔などは「もののがたり」という漫画のキャラクターの「岐 兵馬(くなと ひょうま)」をイメージして書いてます。目はちょっと死んでる感じですが。
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今回のお話は、割とミヨ君の核心に近いところを描写しました。
簡単に言うと、ヤチヨは自分が終わる前にいろはとまた巡り合いたいということだったのに対し、
ミヨ君は最初から自分が死ぬことが視えていたので、どうやって自分が終わるか、ということが目的でした。
それに付随して、ミヨ君の目についても答えを出しています。
わかった人も多いんじゃないかと思いますが、ずばり"未来視"です
これで攻撃をよけたりほかの人の将来を視ていたんですね。
ただ、この未来視には欠点が存在します。これをもう一つの目の仕掛けで補っているのです。
まあ、「ある地点から自分の未来が視えなくなっている」という発言がヒントでしょうかね。
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ミヨ君の身体スペックなどですが、現実世界だと
そこまで出力が落ちた理由は、まあおいおい。
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あさらこはハピエン厨です。
では今回はここまで。
それじゃ、また気が向いたときにでも。
今回も湿度たけーなおい