side:彩葉
「いぎゃー!ナニコレ、バッドエンドじゃん!」
今日もかぐやが(無駄に)元気に配信している声が聞こえる。
あの日、かぐやの卒業ライブのあった日。私たちは月人に負け、かぐやが月に帰ろうと船のようなものに乗った後、
でも、あのまま連れ去られることがなくてよかったと思う。
わ、私もまだまだ一緒にいたいという気持ちはあったし…本人には絶対に言わないけど。
あの場にいたヤチヨも、なんと月人であり、その正体は未来から八千年前にタイムスリップしてしまったかぐやなのだと私たちだけに教えてくれた。
なんでも、思念体のまま『元光る竹』と呼ばれるモノに八千年も閉じ込められていたが、この度その機能が直ったらしく、実体ができたんだとか。八千年ぶりに人に触れられることに大喜びで、私たちーーー特に私に引っ付いていたっけ。ぐへへ…ごちそうさまでした。
ただ、ヤチヨはなぜか
「八千年の間にバグっちゃったかな?」と明るく言っていたが、あの目はまるで、親を探す迷子のような眼をしていた。
さて、記憶を掘り起こすのもここら辺にしておいて、バイトに行かなければ。かぐやの配信によるお金で生活できるといっても、やっぱりおんぶにだっこは避けたいのだ。
「それじゃ、いってきまーす…」
と、小声で家を出てバイト先へ向かった。
私のバイト先は、『BAMBOO Cafe』という、隠れ家的でおしゃれなカフェだった。
だが、最近の私は少しおかしいところがあってーーー
「っと、またー?なんで無意識にここに来るんだろう…
しかも涙まで」
そう、なぜかウチにほど近いけど、バイト先とは全然方向が違うところに来てしまうのだ。
しかも来たときはなぜか感情が溢れて涙まで出てしまう。
え…もしかして私、呪われてる?
すこしゾワッとした私は、なぜか後ろ髪を引かれながら、空き家を後にしようとしたーーー
その時、目の前を歩いていたおじいさんが転んでしまったところを見た。
私は、とっさに「大丈夫ですか?」と声をかけ手を貸しながら起こす。
「おお、ありがとうございます。年を取るとどうもいけませんなあ」
「いえいえ。それじゃ、私はこれで」
「大変ありがとうございました。」
と言っておじいさんと別れた私は、走ってバイト先に行くのだった。
……懐に入った、とある石に気づかずに…
ーーー
「…ふむ。申し訳ありませんな、ミヨさん。私はどうも、あなたとの約束が守れない、いたずら好きの悪ガキのままだったようです。…どうか、ミヨさんを頼みます。酒寄彩葉さん」
side:かぐや
「よーっし、今日もいろはのために美味しいご飯作るぞーっ!」
おー!と気合を入れる。
まあ?天才かぐやちゃんならちょちょいのちょいだけどネ!
……でも、少しだけおかしいところがある。明らかに私ではない誰かが考えたレシピがちらほらあるのだ。ネットから拾ってきたのかと思って検索してみても、そんなレシピはなかった。
それ以外にも何個かおかしな点がいくつかある。
まず、月に帰ろうとしたとき。いろはは私が、月人が地球での様子をみんなで確認しに来ただけで、特に連れ帰りに来たとかそういうことではなかったらしい。と言ったと言っていたが、私にそんな記憶はない。何回も思い出してみたけど、そんな会話も、いろはに言った記憶も。
でも、そういうことになっている。これはおかしい。でもおかしくないようにされている。
まるで、誰かに世界ごと記憶をいじられているようなーーー
「っ、痛っ」
そこまで考えて急に頭痛が襲ってきて、しばらくして収まると…アレ?
「わたし、何考えてたんだっけ?」
何かすごく大事なことを考えていたような…まあいっか!
そろそろいろはが帰ってくる時間だし、早くご飯作っちゃわないと!
それ、なのに。
「どうして、こんなに悲しい気持ちになるんだろう…」
と涙を流しながら考えていると、
『ワンッ』
と犬DOGEが鳴いていた。
様子を見に行くと、何やら謎のファイルを持っていた。
解凍して、閲覧しようとするが、めちゃくちゃ大きいファイルのようで時間がかかるようだった。
「まあそのうち解凍できるっしょ」と考えて、私は料理に戻るのだった…
ーーー
『ワン、ワンッ!』
『はは、犬DOGEはかわいいな~。…かぐやのこと、よろしくな』
side:ヤチヨ
「それじゃ~みんな、さらば~い☆」
そう言って配信を切る。
…肉体を得てから、私の周りは色が付いたように輝き始めた。
ご飯もおいしいし、いろはにも触れる。感触もある。泣きたいほどに幸せだと断言できる。
でも、なんでだろう。わたしの心に、すごく大きな欠落がある。それはいろはと同じ、ううん、もしかしたらそれ以上に大きなモノだった。その大きな穴にいた人のことを考えると、知らず知らずのうちに涙があふれてくる。おかしいよね。いろはより大きな存在のものなんて、私にはないはずなのに。
私が謎の感情を探っていた時、そこでいつも一緒にいてくれたFUSHIが目に留まった。
FUSHIは、目が点滅していて、苦しそうにしていた。
調べてみると、どうやらエラーを吐いていたようで、原因が、存在しないはずの謎のメモリーが大体八千年分一気に流れ込んでいたことが分かった。でも、見られるようにするにはかなりの時間を要するらしく、私はその日は諦めて寝ることにしたのだった。
その記録が、私にとってかけがえのない大切な人のものだったと、その時は気が付かないまま…
どうも、素人ことあさらこです。
今回は現実改変後の世界を書いてみました。
いかがだったでしょうか。
…え?前書きに出たのは誰なのかって?…まあ、それはおいおい。
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ついに再登場してくれました!宮前大吾郎さん!
…あれ?でもなんでミヨ君のこと覚えてるんだ…?
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う~ん、みんな泣かせちゃってごめんね?でも必要なことだったんだ…
ミヨ君は3人の悲しみによる涙が何よりも許せないからさ…
それじゃ今回はこのへんで、また気が向いたときにでも。
『ふむ、介入するならあのあたりで正解でしたね。ふふふ…』