超かぐや姫!〜地獄の付添人を添えて〜   作:あさらこ

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この話は、ハッピーエンドで終わるだろう。だけど、終わりが良いからってそれまでが地獄でいいのか?


第20話

side:ミヨ

あの惨劇からまた時は過ぎ、気づけば幕府というものができて、いつの間にか代わったり力がなくなったりして、いつの間にか戦国時代と後に語られる時代になっていた。

 

それまでにもやはり多くの出会いと別れを繰り返した。

この間に特に記憶に焼き付いて離れないのは二つ。

 

一つはかぐや(体はウミウシ)に恋をした一人の歌人だった。

そもそものきっかけは風のうわさで聞いた「なよ竹のかぐや姫」という大層美しい姫が都にいるという話にかぐやがものすごい勢いで食いついたことだった。

 

なんでも月には「姫」というかぐやとあの竹のような何か(もと光る竹というらしい)を協力して作った人らしい。もしかしたらなにかいろはと言う人のもとへ帰る手掛かりがあるかもしれないと、藁をもつかむような思いでかぐやと俺(俺はかぐやが一刻でも早く救われてほしいという思いから)は都に向かった。しかし、「なよ竹のかぐや姫」はどうやらすでに月から迎えが来た後らしく、もういなかった。

この時のかぐやの憔悴っぷりは見ていられなかった。魂が本当にこのまま無くなってしまうのではないかというほどの落ち込み様で、俺は都の珍しいものや景色で元気づけようとしたが、かぐやはあまり元気にならなかった。

…そんな時だった。一人の高貴な格好をした男が、牛車から出てきてこちらを見てきたのは。

そしてその男はかぐやに言ったのだ。「日輪のようにいと尊き魂をした君よ、どうか私の妻になってくれないか」と。

その男の名前は俺もかぐやも忘れてしまったが、その初手から求婚してきたのは後にも先にもあいつだけだったから、記憶に残っている。

かぐやは懐かしさを覚えたようで、「あー、なんか前にもあったナ~。あの時はいろはとミヨに勝てたら結婚とか言ってたっけなー」とつぶやいていた。

 

かぐやは「わたしには心に決めた人がいるので無理です!」と断った。

するとそいつは「ひと時の逢瀬でよいのだ。私はどうせ祟りで短命の身。妻に娶るという言葉は撤回するから、どうか、どうか」と言ってきた。

かぐやも俺も、厄介なのに目をつけられたと思って、あいつの前から逃げた。

それから数年間、あいつと俺たちの追いかけっこが始まった。

俺たち、というかかぐやが少しでも「なよ竹のかぐや姫」の情報が欲しかったため、都にいて情報収集をする必要があった。そしてあいつは毎日配下に俺たちを探させて、追いかけさせた。

そのうち、かぐやが「姫」の情報を集め終わり、いろはという人の元へ帰る手段は現状無いことが分かったため、都を出ようということになった。

そしてあと数日のうちに都を出ようというある夜、あいつの配下がやってきて言ったのだ。「あのお方がもうすぐ祟りで亡くなられてしまう。その前にどうか、どうかひと時過ごしていただけませぬか」と。

かぐやは「わかった」と言って俺と一緒なら向かうと言った。

 

そうしてあいつの屋敷に着き、面通りをしたとき、目に映ったのはーーー

もうすぐ死ぬ人間とは思えないほどに凛としたあいつの姿だった。

 

あいつは「よく来てくれた。もはや死ぬ前までに逢うことはできないと思っていたからな。どうか二人とも座ってくれ」と言ってきた。俺たちが座ると、あいつはどうしてかぐやに執着したのかを話し始めた。どうやらあいつは俺と似た魂を見る目を持っているらしく、あの日に見たかぐやの魂の輝きに恋をした、というのだ。正直俺も同じクチだったので避け続けたのは間違いだったかな、と思い始めた。

そして、たくさんの話を聞いたり話したりして、夜が明けそうな時間になってきたとき、あいつは「最後に、どうか私の生涯最高の歌を聞いてはもらえないだろうか」とかぐやに言った。

その真剣なまなざしを受けたかぐやは「わかりました。拝聴します」とこちらも真剣に応えた。

そうして、ある一つの歌をかぐやに贈り、「この歌をあなたに贈ることができてよかった」と柔らかに笑った後、俺たちはあいつの屋敷を出た。

その数日後に、あいつが死んだという話を配下から聞いた。

 

かぐやが「わたしと一晩語るために命を燃やしていたんだね…あの人は。もっと早く話を聞いていればよかったかなあ」と、涙交じりの声で話しているのが印象的だった。

俺は「ただ一人の恋焦がれた人に会うために死にかけの体を押して、最後まで死への恐怖をこちらにおくびも見せなかった姿」を格好いいと、そう思った。俺が死ぬときもそうありたいと思った。

 

 

次は、自分の家族に殉じた一人の女性の話だ。

あいつとの別れからまた数百年が経ち、俺もかぐやも互いの存在がいることが当たり前だと感じていたころ、野盗に襲われたある大名の家族を助けたことがあった。どうやら旦那が自分の兄と揉め、戦になり負けてしまい、もともとの家に救出されたとのことで、今こうして旅をしていたのは新しい旦那の元に娘三人と行くためなのだと、寂しそうに言っていた。

かぐやは「そんなのってないよ」と号泣していたが、母親は「それでもあの人に繋いでもらった命です。粗末にするわけにはいかない」と言っていた。

俺たちはその家族を新しい旦那の元まで送っていくことにした。

道中は娘三人と遊んだり、母親と話をするなどして楽しく過ごした。

そうして数か月をかけて旦那の元まで送り届けた。そこでお役目御免と思いきや、行く当てもなく旅をしていた俺たちに「娘の面倒を見てほしい」と夫婦ともども頼まれ、そこでまた数か月娘の世話係として働いた。どうやら若い見た目の男である俺が珍しかったらしく、「兄上」などと呼ばれて大層懐かれた。なぜかかぐやは俺と娘たちがじゃれ合っているところを見ると機嫌が悪くなっていたが。

 

だが、そんな幸せは長くは続かなかった。新しい旦那が戦で負け、敵に追われながらこの城に帰ってきたのだ。俺たちは逃げようと言ったが、夫婦はこの城と運命を共にすると言った。しかし、娘たちはどうか逃がしてやってくれ、とも。俺たちはどうにか夫婦も一緒に逃げようと説得しようとしたが、逆に「早くしなければお前たちや娘まで死んでしまう。娘たちには罪はない。どうか、どうか、安全なところまで逃がしてやってくれ。…それに、お前にも会いたいものがいるのだろう?ならばこのようなところで歩みを止めてよいのか?」とかぐやに言うと、それまで涙ながらに説得しようとしていたかぐやは、一度ぎゅっと目をつぶり、次に開けた時には目に決意を浮かべ「…わかった。娘ちゃんたちは絶対に安全なところまで送るから!…バイバイ、私の大切な友達」と言って娘たちとともに焼け落ちる城から何とか抜け出すことができた。

その後、娘たちを古くから見ていたという乳母が現れるまで、諸国をめぐることになるのだが、それはまた別の話。

そうして今、まさにあの娘の一人が母親と同じ死に方をしたところを見送ったところだった。

 

「あの子も、その母親だったあの子も、命を懸けて何かを守ろう、為そうって人たちはすごいね。それに比べて私は、昔から誰も救うことなんてできちゃいない。私が今ここにいる意味って、何なのかな?」

そう言ったかぐやに、俺は何も返すことができなかった。

 

この物語は、かぐやが最後にハッピーエンドに至って終わる。それはもう視えている。でも、その幸せな終わりに至る道が誰かとの別れや死で彩られていることは、本当に幸せな終わりだと言えるのだろうか?だが、もう後戻りはできない。だから、だからどうか、と。かぐやに最後には幸せな終わりが訪れることを願ってやまないのだった。




どうも、ど素人ことあさらこです。
地獄付き添い編パート2をお送りしました。

じわじわと親しくなった人たちとの死や別れによって絶望に浸っていく二人を表現できていたらいいなあ、と思います。

地獄付き添い編はあと1~2話で終わります。
そして、本編自体もあと数話で終わります。
どうかこのお話を最後まで見届けてくださいね。(ヤチヨ風)

ちなみに、最初に出てきた歌人は原作で詠っていた歌から藤原敦忠、後半の家族は原作は関係なく、お市の方と娘の三姉妹をモデルにしています。いろいろとにわかなので、この世界ではこうだった、ということにさせてください。

それでは今回はここまで、また気が向いたときにでも。

ちょっとだけかぐやが嫉妬しているシーン、気が付きました?
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