そもそも、のお話
side:ミヨ
「そういえばさー、私たちの輪廻ってどうやって始まったんだろうね?」
きっかけは、かぐやが放った一言だった。
「なによ、藪から棒に」
「それは確かにやっちょも気になるね~☆」
今日は俺が現世に帰ってきた後にしばらくして恒例となった、月一で『Luna』にヤチヨたち三人が来る日だった。もちろん三人とも有名人のため、貸し切りにしてある。
と、俺が考えているうちに話が進んでいたらしく、
「や、だってさいろは。ヤチヨは私なわけじゃん?でもさ、輪廻の始まる前に来た最初の私の時はヤチヨはいないわけじゃない?だから<ツクヨミ>もヤチヨもいない、前提のない私たちはどうやって輪廻を始めることになったのかなって」
そう言われたいろはは考える仕草をしながら、
「そう言われると確かに…。ヤチヨは、さっきの口ぶりだと知らないか。ミヨさんは何か知りませんか?」
とヤチヨと俺に聞いてきた。
「ご明察~。私は私の輪廻しか分からないね~」
「俺も特に知らないな。ん~、あいつなら知ってるかもしれないけど…」
『呼びました?』
「「「「っ!?」」」」
どこからか唐突に声が響いて、俺たちは驚いて飛び上がった。
すると、その様子が面白かったのか笑い声が聞こえると
『ふふふふふふふ……その驚きよう、とても愉快ですねえ…。』
「お前、本当に趣味悪いよな…」
『おや、あなたと同一の魂を持っているのですから、あなたも同じなのでは?』
「もとは同じでも成長過程が違うだろうが。…で、何しに来たんだ、俺」
そう、声の主は俺の大本、地球の意思だった。
『おや、何しに来たとはご挨拶ですね。あなた方が知りたがっていたことを教えようとわざわざ来たというのに』
「え!知ってんの!?教えて教えて!」
『ええ、かまいませんよ』
いやに素直に答える地球の意思に、ヤチヨは疑いを持ったようで
「なんか怪しいくらいに親切だねぇ…。何か悪いことでも考えてるのかなあ?」
と聞いていた。それを受けた地球の意思は
『いいえ、あなた方には知る権利があると思っただけですよ。それで、どうします?聞きますか?』
と返した。俺たちが口々に
「もちろん聞きたい!」「私も興味あるかな」「やっちょも知りた~い☆」「お前が俺にも話さなかったことだ、さすがに気になるな」
と答えると、地球の意思は一呼吸おいて話し始めた。
『ならば語りましょう。…これは、全ての始まりのお話。あまりにも遅く生まれてしまったモノと、月からやってきた姫、そして孤独に奮闘していた少女の最後には分かたれてしまうお話です』
ーーー今は昔、ではなく。現在よりもほんのちょっと過去の、輪廻が始まる前のお話。
ある時、地球は考えました。最近の自分の上を歩く人間という生き物は、世界の法則を生まれ、育ち、死に、また生まれるという「循環」のサイクルから、科学という秩序を用いて「消費」の一本道に変えてしまった。これは自分が良い終わりへ向かうモノなのか、と。
だから、地球は考えました。自分と同じ魂を持ったものを地上に向かわせ、今の世界を見て判断しよう、と。
そうして、後に葦原見世と呼ばれるモノが初めて日本と呼ばれる地で生まれました。
生まれた、というより発生した後、彼は今の世界の様子を見定めるために歩き始めました。
それは、生まれるにはあまりにも遅すぎたのですが。
酒寄彩葉、という女の子がいました。彼女はあらゆる輪廻と同じく、親元を離れ、友人はいても真に心を許せる者は誰一人としていない、趣味も、推しもいない孤独に奮闘する頑張り屋さんでした。
そんな彩葉に、ある転機が訪れます。なんと帰宅している最中に光るゲーミング電柱が現れたではありませんか!
…そう、お察しの通りこれはかぐやです。赤ん坊のかぐやを拾った彩葉は、まあ大体今の輪廻と同じことになりますが、二つ、重大な差異がありました。そう、ヤチヨという推しの不在と<ツクヨミ>という世界がなかったことです。この二つがないことで、彩葉に憩いの時間はなく、ひたすらに頑張り続けるという心の余裕ゼロの地獄が形成されていました。
そんな中に入り込んでしまったかぐやは、どうにかして彩葉に笑顔になってほしくて彩葉が学校やバイトに行っている間に面白いものを探してビルとビルの間をぶらぶらと歩いていました。そんな中でふとある公園に差し掛かったその時でした。なにやら子供の遊ぶブランコに座っている男の子がいるではありませんか。かぐやはその男の子に「何をしているのか」と問いかけました。
すると男の子は「世界を見ている」と言いました。「今の世界を見る必要がある」とも。その日はそれで別れましたが、その子のことがどうしてか気になって仕方のないかぐやは、時折その公園に行ってその子と話をしました。中には地球の模造品であるという妄言も聞きましたが、さらっとスルーしました。
ある時、かぐやが家はどこにあるのか尋ねると、ここだと公園を指さしました。かぐやは、もう何回も交流している男の子のことがかわいそうになり、自分が住んでいる家に連れて行きました。
いきなり新しく住人が増えようとしていることに、はじめ彩葉はそんな余裕はないと突っぱねました。ですが、どの輪廻でもかぐやからの押しには弱い彩葉です。うるんだ眼をしたかぐやを前に、すでに押されていました。さらに、男の子が公園に住んでいることも押される要因になり、期間限定ですが住まわせることにしました。
そして、男の子の名前を聞きましたが、その子には名前がありませんでした。
かぐやは男の子が言っていた「日本で発生した」ことと「世界を見る必要がある」という言葉にヒントを得て、神話の時代の日本の名前から性は葦原、「世を見る」という意味で名を見世と名付けました。
そうして期間限定の奇妙な共同生活が始まり、三人は徐々に家族のような間柄になっていきました。
時間が絆を育てる、というやつですね。
そんな中で、かぐやはあるものを作り始めました。そう、仮想空間です。
彩葉以外にも、ネットを見るだけで様々な理由で社会に疲れた人間は山ほどいました。
かぐやは、そんな人たちが少しでも安らげる場所を作ろうと、電子の海にあるもう一つの世界を作ろうとしたのです。
世界に入るための機器の作成や仮想空間自体の作成、それらは一筋縄ではいきませんでしたが、かぐやは二人の家族のことを思って頑張りました。
その結果、ついにかぐやは成し遂げました。仮想空間とそこに入る機器を作ることができたのです。
様々なテストを終え、ついに初めて仮想空間に入る日がやってきました。彩葉と見世もかぐやの頑張りを今までそばで見ていたので、成功しますようにと願っていました。
「それじゃ、いってきます!」
そう言って、かぐやは仮想世界に旅立ちました。
さてかぐやは、無事に仮想世界に入ることができました。ですが、入った瞬間、そこにはいないはずの月人が待ち構えていました。実は、かぐやがいなくなり、どこにいるのかと探していた月人は、仮想空間ができた時に月の気配を感じ取り、出来上がった瞬間に大挙して押しかけたのでした。
「イヤ、待って!わたしまだ何もできてない!まだ誰も笑顔にできてないの!お願い、連れて行かないでーーー」
フッ。と月人に連れられて一瞬にしてかぐやは仮想の世界、そして現実世界から消えてしまいました。服と、そして身に着けていた腕輪を残して。
さて、混乱したのは現実世界で帰りを待っていた彩葉と見世の二人でした。いきなりかぐやが叫んだかと思うと、その姿が一瞬にして消えてしまったのです。彩葉は何日も何日も探し続けましたが、地球の魂の模造品である見世はかぐやが月に戻されたことを知っていました。
そして、かぐやがいないことを悟った彩葉が家の中へ引きこもり、段々とご飯も食べなくなっていき、弱っていく様を見ていた見世は、かぐやを救う決断をしました。
見世は彩葉にかぐやが身に着けていた腕輪を持って歌を歌うようにお願いしました。
弱っていた彩葉はただ一人残っていた家族である見世の頼みを素直に聞き、歌い始めました。
見世は腕輪が地球と月を繋いでいることに気づき、その歌を聞いてかぐやが月からまた地球へ来るように仕向けたのです。
そうしてかぐやはまた月から地球へ飛び立ちました。しかし、かぐやも見世も予想していなかった事態が起きました。かぐやの乗った「もと光る竹」が隕石にぶつかってしまったのです。見世は地球外のことを把握する能力が弱かったため、気づいたのはかぐやの乗った「もと光る竹」が隕石にぶつかって過去に向かい始めた後でした。
見世は現実改変を使おうとしましたが、かぐやはもう今この時間軸におらず、隕石にぶつかったことももう確定してしまったため改変できない状況でした。あと残った方法は、楔をかぐやが降り立った時代に打ち込み、見世自身がその時代に降り立ち、かぐやを助けるしかありません。
しかし、それはかぐやがいなくなった彩葉を本当に一人ぼっちにしてしまうということでした。
見世は、必ずかぐやと一緒に帰ってくると心の中で誓って、歌い疲れて眠った彩葉の顔を一目見て、その時代から消え去りました。
見世はかぐやが落ちた時代を特定すると、自身の存在の大部分を使って、その時代と空間を繋ぎとめる楔を作り出そうとしました。ですが、ここでも誤算が生まれました。楔を作るために消費した自身の存在が予想以上に大きかったのです。
もう見世には世界を改変するための力は残っていませんでした。
つまり、見世は無駄なことをしてしまったのです。そのことを自覚した見世は、かぐやを救うこともできず、彩葉に誓ったことも守れなかったと絶望しながら、かぐやが落ちた時代へと落ちて行きました。
…楔にしたものの中には、見世の記憶も含まれていました。そうして落ちた先で、見世は何も覚えていないただの男の子になりました。
そうして見世はウミウシとなったかぐやが初めて出会う人間となり、そして人の身になったことで、病気か、はたまた飢餓か、とにかく何かが原因でかぐやの目の前で初めて動かなくなる様を見せつける存在になったのでした。
そしてそれは、どの輪廻でも必ず起こることになり。始まりの葦原見世は、輪廻が続く限り、八千年前に降り立ったかぐやが初めて遭遇する人間になったのでした。
ちなみに、初めて八千年前に降り立ったかぐやは、その人間が見世であることに気が付いていましたが、何も対処できずに死んでいく見世に対して涙ながらに謝ることしかできませんでした。
そしてその後に地球が始まりの見世の情報をもとにして作り出した葦原ミヨと出会い、八千年の時を共に過ごしますが、自身がヤチヨとなり<ツクヨミ>を作り出してしまったことでこの世界は自分がいた世界ではないと絶望し、自分ではないかぐやがまた八千年前に行くことを悟って、かぐやが月人に連れ去られたところを見た後、電子の海で永久に眠ってしまいました。
一人残された始まりの酒寄彩葉のその後は、まあ悲惨なモノでしたね。見世もいなくなったことで発狂。最終的には「二人が呼んでる」と言って海に消えて行ったとか。
その後は葦原ミヨが輪廻を壊すまでのあなたたちの輪廻と同じ流れをたどることになります。
葦原ミヨが輪廻を壊さなかった場合はそのままかぐやは八千年前に行き、葦原ミヨと八千年間の地獄を旅することになり、ヤチヨとなったかぐやは彩葉と再会し、生体ロボットに意識を移し、生身の体を得ることになったでしょう。現代の葦原ミヨは月の魂の模造品と戦い相打ちになっていましたね。
『ーーーとまあ、こんな感じでしょうか。どうでしたか?自分ではない自分の末路を知って』
「うっぐ、えっぐ、そんなのってないよぉ…!みんなバッドエンドになっちゃったじゃん!」
「……うん、始まりの私の、家族みたいな二人がいなくなった時の絶望は、私もわかるな…」
「でも、わたしたちはそうはならなかった。そのことに感謝して、始まりのやっちょたちのことも忘れずに生きて行かなきゃね」
「ああ、そうだな…ていうか俺のもとになったのがまさか俺自身だったとは、意外だったな」
「この話を聞くと私たちって本当にハッピーエンドなんだね…」
「うん…この幸せを噛みしめないとだね」
「どれもこれもミヨのおかげだよぉ!ありがとうね!ミヨ!」
とかぐやに抱き着かれていると、つまらなさそうにあいつは言った。
『なあんだ、皆さん立ち直るのが早かったですねえ…少しつまらないですが、まあいいでしょう。それでは私はここらへんで帰りますね。さらば~い☆』
そう言ってきたときと同じく、唐突に消えたのだった。
「あっ、あいつ帰ったな…。まあ、そろそろいい時間だし、みんなも話を聞いて思うところもあるだろうし、今回の集まりはこれでお開きにするか」
俺がそう言うと、三人は不安そうな顔でこう言ってきた。
「うう…ねえ、ミヨ。今日はミヨの家に泊まってもいい?あの話を聞いてみんながいなくならないか不安になっちゃって…」
「あ、それなら私も…」
「やっちょもお願いしたいな…」
「…そうだな、そうするか」
こうしてこの日は、俺の家にみんなが泊まることになったのだった…。(部屋は男女別)
…その日の夜、俺は夢を見た。俺が幼くなったような少年とかぐや、そしていろはが身を寄せ合って幸せそうにしている、そんな夢を。
どうも、ど素人ことあさらこです。
今回は輪廻の始まりのかぐや達がどんな感じだったのか、そんな話に対する自分なりの答えを書いてみました。どうだったでしょうか。
この話が一番書きたかったと言っても過言ではないので、書ききれてよかったです。
この物語の始まりは確かにバッドエンドだったけど、それでもみんなが諦めずに頑張ったからハッピーエンドに辿り着けたんだよ、ということを伝えたかったのです。
最後の三人の描写は、輪廻から解放された始まりの見世君をいろはとかぐやの2人が迎えに来たというイメージで書きました。
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最近超かぐや姫!の作品が増えてきていてとてもうれしいです。このままオリ主ものもどんどん増えて行ってほしいなあ。
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ミヨ君の名前の由来は、始まりの輪廻から来ていたんですね~。
まあ、月から来たかぐやを監視するんだったら「見月(みつき)」とかでもいいわけですしね。
それでは今回はここまで、また気が向いたときにでも。
いやあ、初めて五千字いったなあ…
追記:ちょっと加筆しました。