side:ミヨ
「次はわたしの番だよ!ミヨ!」
先週と同じく、かぐやといろはの部屋に朝から来ていた俺にそう言ったのは、この家に俺を呼んだ相手ーーーかぐやだった。
「ああ、昨日『Luna』でそう言っていたからな。もちろん覚えているよ。」
俺がそう返すとかぐやは呆れたように
「ミヨ〜…そこは嘘でも『な、なんだって〜!?』って驚くとこだよ?まったく、女心が分かってないな〜」
「それは女心なのか…?」
「
ふふん!と胸を張っていったかぐやだったが、元々の話を忘れてしまったようで、首をかしげながらウネウネと体を揺らし、思い出そうとしているようだった。
俺が「確か二人で一日過ごすことの話じゃなかったか?」と助け船を出すと、かぐやは「それだ!ミヨナイス!」と指をパチン!と鳴らしてこちらを見て
「今日は!わたしと一緒に一日<ツクヨミ>でデートをしてもらいます!お腹すいたらご飯はお買いものに行って、一緒につくろ!」
「<ツクヨミ>で、か…。正直活発なイメージがあるかぐやにしては珍しいチョイスだな?山登りとか行きそう、とか思っていたんだが」俺が率直なイメージを伝えると
「だってヤチヨとは海に行ったんでしょ~?これでわたしも外に行ったって特別感が薄れるじゃん!…それに、お部屋デートっていうのもあこがれてたし、ね?」と照れた様子で言ってきた。
「そういうモノなのか…。俺にはもとから特に否は無いからいいけど…。って、部屋?リビングならともかく、部屋は…ちょっとやめといたほうがいいんじゃないか?」
流石にうら若き女性の部屋に二人きりでいるのはまずいんじゃないか…?という考えのもと、そう言うと、かぐやは途端に涙で目を潤ませて
「えっ…。ミヨはわたしの部屋に来るの、いや…?わたし、ミヨとお部屋デート、したいな…。ダメ…?」
俺はいろはもこれには弱いが、俺も大概だな…と自嘲しながら
「わかったよ…。かぐやがいいなら、それで過ごそうか」かぐやは勝ち誇ったような表情を浮かべながら、
「よっしゃー!うへへ…やっぱりミヨもこれには弱いねえ。やっぱりひ、一目惚れだったから?」と若干顔を赤くしながら聞いてきた。
「イヤーーーっ!俺の記憶を思い起こすのはやめてくれえ!くそう…隠してた感情とかが全部ばらされてるから否定も隠すこともできない…!サンドバッグか何かか俺は!」
「ち、ちがうよお!そりゃ、たまにからかい目的で言うこともあるけど「ほらあ!」…だけど今回は違うって!普通に気になったから聞いてみただけなの!」
「そ、そうなのか…?」
「うん、そうなの!…だから、ちょっと教えてくれたらうれしいなぁって。…ど、どう?」
そう言われ、俺は若干の羞恥に苛まれながらも
「うぐう…い、いやあの思い出を恥ずかしがるのはおかしいな、うん。…ふう!よし。…で、弱い理由か……。そう、だな。一目惚れしたのももちろんある、でもそれ以上にキミの頼み事にはできるだけ応えたいと思っているんだ。せっかく地球に留まれているんだから、いろんなことをしてほしい、体験してほしい、とそう思っているよ。…まあ、これも惚れた弱み、というやつかな?」俺も顔に熱が集まっていることを自覚しつつ答えると、かぐやはうつむきながら体をプルプルと震わせるとこちらに飛び込んできてーーーってあぶなっ!?
「うおっ!?っと…。かぐや、どうしたんだ?」
「~~~~~!!!もう!もう!ミヨはずるいんだから!そんなの言われたら、もう…!」
そう言いながらギュッと抱き着いてくるかぐやを不思議がりながら、俺は
「それよりかぐや、<ツクヨミ>に行くんじゃなかったか?このまま話をしているのも、俺としては別にいいんだが…」
「…んもう!ミヨはムードってものが分かってないなー。…まあ確かにミヨの言うとおりだね。まだこの後もチャンスはあるし…よし!それじゃあ、わたしの部屋に行って<ツクヨミ>に入ろっか!」なぜかかぐやはムッとした後にあきらめたような表情をして、そしてまた笑顔になって、と表情をコロコロ変えながら俺の手をつかんでかぐやの部屋に向かった。
ーーー
それからしばらくのち、俺たちは<ツクヨミ>の町に降り立っていた。
「よし、じゃあかぐや、何から行く?」
「んっとね、特に決めてはいないんだ~。ミヨと一緒のモノを見ながらぶらぶら歩いたり、何か気になったものがあれば一緒に体験したり…って感じで行きたいんだけど、どう?」
「ああ、それいいな。たまには目的を決めずにぶらぶらと…。うん、楽しそうだ」
俺がそう言うと、かぐやは突然顔を赤くして、なにか覚悟を決めたような表情でこう言ってきた。
「あっ、あのね!ミヨにお願いがあるんだけど…。ぶらぶらしている時は、その…て、手を繋ぎながらでも、いい…?」
その姿に、俺はかわいらしさを感じて微笑みながら
「もちろんいいぞ。たしかデートをする男女は手を繋ぐんだったよな?ヤチヨが買ってた本で見たことがある」というと、かぐやは急に怒った様子で
「ミヨ…?女の子とのデート中にほかの女の子の話はしちゃいけないってその本にはかいてなかったのかなぁ~?」と言いながら俺の頬を両手でつねってきた。
「
必死に謝ると、かぐやはフンっ!と言った後、頬を離してくれた。
「次デート中にほかの女の子の話をしたらグーで行くからね!わかった?」
「はい…。すみませんでした…」
若干やってしまった…と気落ちしていると、かぐやは「んっ」と手をこちらに差し出してきて
「ほら、そろそろ行こっ?手を繋いで、ね?」と笑顔で言ってきた。
俺はその笑顔に見とれながら
「…ああ、じゃあ行こうか」と、その手を取ったのだった。
ーーー
デート中にはいろいろなことがあった。
たとえば人が多いところに出てしまってかぐやのファンが押し寄せてきたり
「あのかぐやちゃんと恋人繋ぎしていた葦原ミヨを許すなーーーっ!であえであえーーー!」
「「「「「うおおおおおおおおお!!!!!」」」」」
「出るところ間違えたーー!ごめんミヨーー!」
「いや、いい!それよりしっかりつかまっててくれ!逃げるぞっ!」
「わっ!こ、これお姫様抱っこ…!?」
「「「「「かぐやちゃんにお姫様抱っこだと!?…ツブス!!!」」」」」
「こ、怖い…」
「えへへ~。ミヨにお姫様抱っこされちゃった~!」
帝さんと乃依さんが一緒に歩いているところに出くわしたり
「おっ、かぐやちゃんとミヨさんじゃん!こんにちは、二人でお出かけかい?」
「こんにちは。そっちも二人でお出かけですか?」
「そうだよ~♡帝ちゃんが新しいファンメイドのスキンを買ってくれるってことで、お出かけ中~♡そっちはデート中かな?」
「ニヤニヤしながら言ってくるのはなぜ…?俺たちはーーー「まぎれもなくデート中!だよ!この恋人つなぎが目に入らぬか~♪」…まあ、そういう感じです」
「へえ…だからあっちの方で殺気立ったかぐやちゃんのファンたちが何かを探してたのか…。まあこっちも人に見られるとちょっと困ったことになるかもしれないし、お互い内緒にしときますか」
「よろしくお願いします…」
「オーケー。「ねー帝ちゃん。話が終わったなら早く行こうよ」…はいはい。じゃあ俺たちはこれで。また今度コラボしような、二人とも」
「はい、また今度」「じゃ~ね~!」
現実で一緒に料理を作ったりした。
「ん~~!やっぱりミヨのオムライスは世界一!だね!」
「ははっ。そう言ってもらえると作ったかいがあるよ。デザートにはジェラートも作ったからそれもよかったら食べてくれ」
「絶対食べる!…うぐぐ、ジェラート早く食べたい。でもミヨのオムライスを急いで食べるのはもったいないし…悩む~!」
「まあまあ、ジェラートは逃げないから、落ち着いて食べよう?な?」
「…ん!そうする!」
「よしよし、かぐやは素直に聞けていい子だな~」
「えへへ~♪…ってなんか子ども扱いしてない?」
「シテナイ、シテナイヨ」
「ほんとかな~?」
ーーー
「いやー、楽しかったね~!」
「そうだな~。遊び倒した、って感じがするな」
夜も更けてきて、<ツクヨミ>内の時間も夜になってきて、俺たちは<ツクヨミ>内のかぐやの部屋に来ていた。二人でソファに座ってゆっくりしていると、かぐやが不意にこちらに聞いてきた。
「…ねえ、ミヨ。もしかして、何だけどさ…。ヤチヨとのデート中、何かあった?」
「…どうして、そう思ったんだ?」
「ヤチヨが教えてくれたから」
「って知ってるじゃんか!まあ、そう、だな…頬にキスをされた、かな」
「ふ~~ん…。ね、どっちにされたの?「え?」だから、どっちにされたの?って」
「左だけど…」
「なるほどなるほど…。ね、ミヨ」
「なんーーー」
ちゅっ、と。右の頬に柔らかい感触が<ツクヨミ>と現実の両方から伝わった。
「ーーー!?な、なんでーーー?」
「む~~。やっぱりわたしの気持ち、わかってなかったんだ?」と怒ったように言ってきた。
「い、いや、だってキミにはいろはがいるだろう?それにそこまでキミに好かれる覚えはーーー「あるよ」へ?」
「わたしを命がけで、自分が存在ごと消えても構わないっていう思いで助けてくれて、いろはたちと一緒にいられるようにしてくれた時。それに、ミヨの視点で八千年前にわたしと初めて会った時のあの感情。それに、八千年間もわたしを想っていてくれたことをあんなに実際に見て、好きにならない方が無理じゃない?そりゃあいろはだって大好きだよ?でも、ミヨもおんなじくらい好きになっちゃったんだもん。もう、しょうがないよね?」
「そう、か…そんなに好かれてる自覚は無かったな…」
俺がヤチヨの時と同じく呆然としながら答えると、かぐやは笑いながら
「ミヨは鈍いもん。今日だけでもそれが分かっちゃうくらいには、ね。多分キスされて初めて自覚したんじゃない?わたしの、そしてヤチヨの想いも。」
「…ああ、申し訳ないがその通りだ」
「やっぱり。あ、返事はまだまだ全然いいよ。だってミヨはまだその気持ちがちゃんと理解できてないから。だから、ちゃんと私たちの想いをいっっっぱい考えて、答えが欲しいな。一人を選ぶのでも、みんなを選ぶのでも。…それじゃあミヨ。私がミヨにこんなに恋してるってわかるように、もう一度言うね?」
そう、かぐやは言って一呼吸置いた。そしてあのいつもの太陽のようなまぶしい笑顔でこう言ったのだ。
「ミヨ、大好きだよ!」と…
どうも、ど素人ことあさらこです。
今回は個別デート編第2弾のかぐやとのデートでした。
普段のかぐやの明るさ、そしていつもとは違うしっとりとした感じを表現したかったのですが、どうでしょうか?
今回はそれと同時に、「ミヨ君は本当に恋愛的な感情に疎い」といったところも伝わるといいな、と思います。
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デートシーンが難しい+かぐやのエミュも難しいのダブルコンボでいつもより悩んで作ったので、その分文章量もマシマシです。
あと、なぜかぐやがミヨのことを好きになっているのかというところも書いてなかったので、そこもさらっと入れました。
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多分月をまたぎますが、2/23は駒沢乃依くんの誕生日だったということで、遅ればせながら誕生日記念の何かを一本書こうと思います。
それでは今回はここまで、また気が向いたときにでも。
お兄ちゃんブチギレ事件まで、あと一話。