…ぶぎゃあっ
side:ミヨ
:お前、かぐやちゃんといろPの邪魔すんな。消えろ
「…さて、じゃあキッシュの作り方なんだけどーーー」
調理動画とゲーム配信が主な活動の俺にしては珍しく、俺にしては珍しく雑談配信をしていたある日、こんなコメントが来ていた。まあこの手のお気持ちコメントはそのうち来るだろうなと考えていたので、スルーしながら話の続きをしようとすると
:お前かぐやちゃんたちのリアルの知り合いだからって調子に乗ってんなよ。お前のせいでかぐやちゃんたちは迷惑してるんだ、さっさと二人の前から消えろ
:さっきから何なのお前。邪魔なのはお前だよ
:うわ出たよ、お気持ち表明の奴
:ついにミヨさんにも湧くようになったかー
:は?こんな配信者を狙ってる男にやめろって言って何が悪いんだよ。それに、かぐやちゃんやいろPだって迷惑だって思ってんだよ。彼女たちは現実を知られてるから言えないだけで本当はそう思ってるんだよ
:ミヨさん、キッシュの作り方教えてー
:うわぁ…出たよ。勝手に配信者の気持ちを自分の都合のいいように解釈してお気持ち表明するやつ…
:それはおめーの感想だろ
:うるせえ!お前たちもこんな奴の配信見てるんだから同じような奴らだろうが!この出会い厨のくそ野郎どもが!
:そもそもKASSENだってわざわざ符術士
「うん、悪いけどブロックさせてもらうな。…ごめん、みんな。ちょっと止めるのが遅かったな。…なんか雰囲気が悪くなっちゃったし、急で申し訳ないけどちょっと今日はここらへんで閉めるな」
:いや、まああれは事故みたいなもんだししょうがないだろ
:蚊に刺されたもんだと思って気にしない方がいいよ
:今日はしゃあないな…
:うぅ…キッシュー
:上の奴どんだけキッシュを作って食べたかったんだ…
「…ははっ、ありがとうな、みんな。キッシュはまた今度料理動画で出そうか。」
:またなー
:キッシュー!!!
:うお、急に元気になった
:次も楽しみにしてます!
励ましてくれる視聴者のコメントに少し笑みをこぼし、礼を言いながら配信を閉じた。
「ふぅ…。うーん、今回の人はかなり強気な人だったな…」
そう、前回の炎上事件でも出たが、あれは最終的に何とかごまかすことができた。
そしてたまにお気持ちコメントを書いてくる人はいたが、今日のように配信で、さらに視聴者にも矛先を向けてくる人は初めてだったので対応が遅れてしまった。
「…まあ、アカウントもブロックしたし、さすがにまた別のアカウントで来るとかは無いよな…?」
そう楽観的に言ってその日は寝た俺だったが、まさか料理動画やゲーム配信、果ては黒鬼さんたちとのコラボ配信にも捨てアカを使って粘着してくるとは思ってもいなかった。
そして、このままだと視聴者やコラボ相手に迷惑がかかると感じた俺はしばらくの間配信を休むことに決めたのだった。
…この時、俺は矛先が俺に向いているし別に伝えることでもないか、と事前に彼女たちへ配信を休むことを伝えるのをすっかり忘れていた。この後、自身がどれだけ恐ろしいものを見るのかも知らずに…。
百:ミヨさま、配信を休止すると聞きました!…大丈夫ですか?
ミヨ:ああ、そういえば事前に伝えるのを忘れていたね、ごめん。
でも大丈夫だよ、ちょっとお休みするだけだからさ。
むしろ店が忙しくなってきてるからちょうどよかったかもしれないね!
百:そうですか、それならばよかったですが…。
ご無理はしないでくださいね…?
ミヨ:心配してくれてありがとうね。
また店に来てくれたら元気な姿も見れるかもよ?
百:ええ、必ずうかがわせていただきますね。
ミヨ:ところで、俺が休むってどうやって知ったんだい?
俺からは配信してるとは言っていなかったような気がするんだけど。
百:もちろん、彩葉ちゃんですよ?
彼女、とても心配そうな顔をして「また一人で背負い込もうとしてるのかな」とつぶやいていましたので。
ミヨ:……あ
百:ミヨさま?どうかされましたか?
ミヨ:い、いや何でもないよ。改めて、心配してくれてありがとう。また店にも来てくれ。
百:……?はい!また今度う伺わせていただきますね!
百ちゃんとのメッセージを終わらせ、自室の椅子に座る。そして、深々とため息をつき、頭を抱える。
…そうだったぁ!三人に今回のことを伝えるのすっかり忘れてた!
やばい、原因の動画の切り抜きは数十万回再生とかされてるし、三人とも事情は知ってるはず!
これはなんで相談しなかったのかと怒られるか、泣かれるかの二択!
怒られるのはいいが泣かれるのはヤバい、罪悪感で腹を切って詫びたくなる!
うーーーーん……とどう弁解するか悩んでいると、廊下から足音が聞こえてきて俺の部屋の前で止まった。
「ミヨー?ちょーっとリビングに来れるー?お話があるんだけど」
「ああ、大丈夫。今すぐ行くよ」
「うん、私たち三人とも待ってるから。ちゃんと来てねー」
さらっとかぐやといろはもウチにいることが伝えられた。
え、休止の投稿してから来るのがあまりにも早すぎじゃない?
まだ心の準備できてないんだが…?
…でももう来ちゃってるし、行くしか…ないか
「…よし、行こう。」
俺は覚悟を決めて、リビングへ向かった。
ーーー
「「あ、ミヨ(さん)…」」
案の定、リビングにはいろは、かぐや、ヤチヨの三人がおり、俺がリビングへ来るのを待っていた。
そして、かぐやといろはは俺の方を暗い顔で見つめている。どうやら俺が何が原因で活動休止を宣言したのかが分かってしまっているようだった。
そして俺を呼び出したヤチヨはーーー激怒していた。
「ミヨ…。私が言いたいこと、わかる?」
「ああ…わかってる。また、みんなに相談もせずに自分で勝手に決めたこと、だろう?」
「…わかってるのになんでやるのかなぁ、このお馬鹿さんは…!」
「すまん、どうやら
中々悪癖を直そうとしない俺に怒っているヤチヨに謝りつつ、いろはとかぐやにも今回の判断ミスを謝る。
「ううん!ミヨは悪くないの!悪いのはーーー」
「これこれ、かぐや?今回のことはキミたち三人の誰も悪くないことなんだから、謝らない謝らない。いろはも、ね?」
俺の言葉を聞いたかぐやが自分の責任だと言おうとしたのを察知したのだろう、ヤチヨが遮ってフォローしてくれる。…正直助かった。このままだとお互いが悪いと譲らなくなりそうだったから。
「あ…。うん、ありがとう、ヤチヨ」
「うんうん。…今言った通り、今回のことはキミたちの誰も悪くないことなんだよ、ミヨ。…だからね、「大変だな」って思ったときは近くの人に寄り掛かっていいんだから。もう何回も言ってるし、これ以上は言わなくてもいいよね?」
「今度こそ、肝に銘じるよ。」
「うん、言質取ったからね!今度同じ事したらどれだけミヨが私たちにとって大切な存在なのか、身をもって知ってもらうからね…?」
「はい!もう二度としません!」
恐ろしい言葉を聞いた気がして、思わず全力で返事が出た。
「いい返事だね~♪…ちょっと残念だけど」
「え、今なんて?」
「ううん、なんでも~。…さて、それじゃあこれからのことなんだけど、あの視聴者の子、他にもミヨがコラボした人たちにもアンチコメントを連投しているのも確認できてるし、やっちょ個人としても<ツクヨミ>の管理人としても永久BANが妥当だと思うよ」
「私も賛成。ああいう人は一度本当に痛い目に合わないといけないと思う」
「ていうか私たちは視聴者の言うことを聞くお人形さんじゃないし、私たちが遊ぶ人は私たちが決めるんだから、見たくないんだったら見なくていいっての!」
「…私たちはこういう意見だけど、ミヨはどう思う?」
ヤチヨに問われ、そしてかぐやといろはの顔を見て、俺もようやく決心がついた。
「俺はーーー」
ーーー
side:アンチA
俺の正義を込めた言葉が効いたのか、あのクソ野郎は活動休止を発表した。
「はは!俺のいろはちゃんとかぐやちゃんに近づくからだ!あの馬鹿め!」
そうだ、あの二人の近くにいるのは俺のようなあの子たちの言葉の裏に隠された心の内を感じ取れるような奴が相応しい!
それに、二人が活動を開始したての頃から応援している古参リスナーたる俺のような奴だとなおいい!
昔から気に食わなかったんだ、現実で知り合いだからってコラボして迷惑だと思わないのか!俺がこう思っているのだからかぐやちゃんたちも迷惑に思っているに違いない!
だから正義の鉄槌を食らわせてやったのだ!
「フフフ…こんな二人のためになることをしたんだ、そのうち二人から声がかかってお近づきに…ぐふふ、ふひ」
さあて、そろそろかぐやちゃんの配信の時間だし、<ツクヨミ>にログインしながら見てコメントで二人を守ってあげたことを教えてあげないと!
『かぐやっほー!かぐやだよ!今日は雑談をしていくよ~』
:かぐやちゃん、俺あの葦原ミヨとかいうかぐやちゃんたちをだまそうとしている奴をもうかぐやちゃんたちに近づかないようにしたから!安心してね!
:うわ、ついにここにも表れやがったこいつ
:だれかー、通報しろー
モブどもがうるさいが今は気にしてられない。だって今からかぐやちゃんからお礼の言葉が効けるのだから!
『ねえ、それ誰が頼んだの?少なくともかぐやは頼んでないよ?』
は。
『ミヨとは楽しくコラボしてたし、遊んでた。それは現実でも変わらないし、いい友達だと思ってる。だからあなたのしたことに怒りこそすれ感謝することなんてない』
え?
『ここからは私、いろPが。私たち配信者も人間で、仲のいい人に対して妨害行為をされて正直いい気分はしないし、ぶっちゃけ今すごく気分が悪いの』
あ?
『なにより、私たち配信者はキミたちリスナーのお人形さんでもなければ、八つ当たりをするサンドバッグでもない』
『…あなたは確かに昔から見てくれていた人だけど、今回のはやりすぎた。だから、あなたをBANします』
ちょ、まっ
『『さようなら、もう二度とわたし(私)たちと会わないことを願います』』
"あなたは配信からBANされました"
「…はあ!?ふざけんなよくそがぁ!誰のためにやってやったと思ってんだよ!」
思わず声を荒げる。
「せっかくお前のためを思ってやってやったのにさぁ!何が「気分が悪い」だ!こっちの方が気分が悪いわ!…ふぅー!ふぅー!…はは、あんな俺の行為を無下にした奴なんか、もういい。次はあいつを標的にーーー」
「それを<ツクヨミ>で言っちゃあおしまいだと思うけどな~☆」
ゾクッ
いつの間にか<ツクヨミ>のチュートリアルで使われる、鳥居と空の不思議な場所に来ていた。
初めて来たときはとても神秘的な場所に感じられたが、今の俺には恐怖を感じる場所でしかなかった。
なぜならーーー鳥居は崩れ、空は漆黒、足元は黒々とした底の見えない水面になっていたからだ。
「う、うわああぁ!」
悲鳴を上げて逃げようとしても安全な場所はどこにもなかった。思わずかがんで目をつぶる。
「気に入ってくれたかな?この世界はねー、何処かの誰かの心象風景をもとにしたんだけどーーーって、聞こえてないか」
ヤチヨが何かを言っているが、何も聞こえない。
「それじゃあ単刀直入に。ーーーあなたを永久BANとします。すべてのアカウントが対象となりますので、ほかのアカウントを作っても意味はありません。」
やちよがなにかいっているが、なにもきこえない。
「それでは、あなたが二度と私の世界に踏み入らぬよう祈っています」
ヤチヨガナニヲイッテイルノカナニモーーー
ーーー
side:ミヨ
あの後、あのリスナーは永久BANになったとのことで、二度と配信に現れることは無かった。
俺もその後安心して復帰することができたし、みんなには頭が上がらないな、と思いながら『Luna』の扉を開けるとーーー目の前には刃物を持った男がいて、俺に突き刺してきた。
ドンッ
「フ、フヒ、やった、やったぞ!お前のせいで俺の人生めちゃくちゃだ!死ね!死んで俺に詫びろォ!」
「…あー、なんかテンション上がってるところ申し訳ないんだが、そのくらいじゃ俺の体には刺さらないんだ」
なんか笑っている男に対してそう言うと、刺さらずに肌で止まった刃物を見て男は目を見開いて震えだしーーー
「ふひ…?ば、ばけーーー」
「ほいっと」
ズドンッ
「ぶぎゃあっ」
俺が軽く殴ると汚い悲鳴を上げて2,3メートル吹き飛んだあと、動かなくなった。
俺は刃物を持った男が襲い掛かってきたと警察に電話して引き取ってもらった。
その後、簡単な聴取を受け解放されたあと、ヤチヨたちにめちゃくちゃ心配されて一日中布団の上に拘束されたのはまた別のお話。
それにしてもあの人、聴取で自分で過去の俺の配信ログを違法で入手して店の場所を特定するとかいうすごい技術を持っていて、犯行動機が「あいつが俺の正義の邪魔なんだ」とか言ってたらしいけど、結局誰だったんだ…?
どうも、ど素人ことあさらこです。
今回はリクエストにあった「ミヨ君がバカにされて三人がブチぎれる」というのを書いてみました。いかがだったでしょうか。
配信や、アンチを前にした時には他のリスナーや管理人という立場を鑑みて努めて冷静に話していますが、実際は怒りで若干声が震えていますし、表情も硬いです。
配信が終わった後などは、ミヨの家で全員配信やBANを行っていたため、ミヨの元へ行ってミヨの近くにいて気分転換しています。ヤチヨは背中に抱き着いているかも?
次の話題
アンチの属性盛りすぎた感が否めないですが、このレベルで救われない人物だったということで一つ。
次の話題
ミヨ君が刃物(包丁を想定)を受けても無傷なのは単純に硬さゆえです。このくらいには頑丈です。破裂させずに吹き飛ばすくらいで済ませたのも成長が考えられますね!
それでは今回はここまで、、また気が向いたときにでも。
また近いうちにオリキャラ紹介と小話を追加しますので、そちらもよろしければどうぞ。
追記:オリキャラと小話追加しました。