side:ミヨ
「それじゃあ、ミヨ先生。記念すべき第一回、料理教室~!どんどんパフパフ!
よろしくお願いしま~す!」
と、開始を宣言してきたのはかぐや。
そう、今日は以前言っていたかぐやに料理を教える日なのだ。
「いろはに美味しい料理を食べてもらうぞー、おー!」
と気合十分で、大変かわいらしい。
…と、かぐやの様子を見ていて飽きないのだが、時間は有限だ。本題に入らなくては。
「よし、それじゃあこれから料理を作っていくんだが、その前に。」
「うん、なになに?」
「手を洗おう」
と言うと、ズコッとかぐやがずっこけた。
「え~、そこから始めるの~?」
「かぐや、手を洗う…つまり食材や調理器具を触る手は清潔でないといけない。
料理は美味しくてその人の心やお腹を満たすだけじゃなく、その人の体の一部になる大切なものなんだ。手を洗っていなかったせいで、菌が料理や食器についてしまっていろはがお腹を壊してしまうかもしれない。もしかしたら入院する事態になるかもしれない。そのことは、料理を作るものとして、常に心がけておきなさい。」
そう注意すると、重大さが理解できたようで、
「い、いろはが入院…!?わかった、気を付ける!」
と素直にうなずき、手を入念に洗い始めた。
…やはりかぐや、というより月の住人には死や病気の概念が無いのか、衛生についての思考がそもそもないらしい。これは今後も教えて行かねば…
というかかぐや、さっきからころころと髪色が変わっているのだが…あれか?動揺すると無意識に変わるやつなのか?それともあまり自分が普通の人間ではないことを隠さない方針なんだろうか…
まあ今は面白いし、酒寄かほかの人が指摘するか、本人が気づくまで黙っておくか…
などと考え、かぐやが手を洗い終わったところで、いよいよかぐやの言うところの料理教室が始まったのだった。
と、その前に聞かなければならないことがあった。
「なあかぐや、今日は何が作りたいか決まっているか?」
「あ、うん!今日はねー、ハンバーグを作ってみたいの!
あの切るとじゅわって肉汁が出る感じ、おいしそうだなあって思って!」
「ハンバーグか、いいな。じゃあソースはあとで色々作ってみるとして、まずはハンバーグそのものを作ってみるか」
「は~い!」
料理教室が始まった。
かぐやはやはりこれまで包丁などにも触ったことが無い様子で、振りかぶったり、指に落としかけたり、とても危なっかしかった。
だが、こちらが懇切丁寧に「もっと食材に這わせる感じで大丈夫」や「食材を抑えるほうは猫の手だ、猫の手。ほら、やってみて。にゃーんって」、「食材の切る大きさはできるだけそろえたほうがいい。加熱するときに均一に火が通ったり、食べた時の触感が良くなるからね」など教えていけば、本人が言うように天才なのだろうすぐに覚えていった。
そして、肉だねをお手玉をするようにして空気を抜いているとき、ふと気になったことを聞いた。
「かぐや、聞いてもいいか?ハンバーグを作りたいと言ったときに言っていた言葉だけじゃないと俺は思ったんだがそこのところどうなんだ?酒寄のことをとてもよく考えている君だ、酒寄がハンバーグを食べたいとか言ったことが理由だったりするんじゃないか?それとも、何か言いにくい理由でもあるのかい?」
「ん?んーとね。これ言っても大丈夫かな…。ま、いっか!えっとね、いろはが出かけてた時にハンバーグの広告にくぎ付けになってたから。そのままよだれ垂らしそうになってた!ヤチヨの動画見てるときみたいに!」
「酒寄…」
と、苦学生の懐事情や、酒寄のあまりのお宅っぷりに涙が出そうになった場面もありつつ、その後は整形して焼き、ソースもデミグラスやチーズソースーーー和風は大根おろしと刻んだ大葉、後でかけるポン酢を用意したーーーなどを作るのだった。
「よし、じゃあ出来上がったことだし、試食してみるか」
「わーい!」
「どのソースから行く?」
「じゃあねじゃあねー、デミグラスから食べよっかな!
いただきまーす!…ん~!ハンバーグの肉汁の甘みと、デミグラスソースの甘酸っぱさがよく合うね。次は~、チーズソース!はむっ…お、おお~、これは背徳の味、ってやつだね!すごくチーズソースが絡んでくる!最後は和風ソースっと……こ、これは!今までのソースはハンバーグのジューシーさを際立たせる感じだったけど、これは逆にさっぱりと次の一口が欲しくなる味だね!」
「喜んでくれたようで何よりだよ。…それじゃあ、タッパーにハンバーグやソースを入れようか」
と、出来上がったハンバーグやソースをを全部タッパーにいれ、クーラーボックスに入れて渡すと
「え!?ミヨ、これ全部もらって行っていいの!?いいよいいよ、ミヨも食べてよ!」
とかぐやが意外そうに言って断ろうとしてきたが、
「ああ、いいよ。もともと俺は他の研究していた料理が余ってるしな。それに、その量があれば冷凍でもしておけば、もし料理を作る気が起きなくても温めれば食べられるからな。料理を作るなら、作りたい料理を作るだけじゃなくて、どうやって全部食べるか、有効活用するかっていうのも考えられるようになろうな。」
「うん、わかった!ありがとうね、ミヨ!これからもいろんな料理教えてね!」
「ああ、もちろん。気をつけて帰るんだぞ」
「うん、またねー」
「おやすみ、またな」
そう言って初めての料理教室は終わったのだった
「…喜んでもらえるといいな、かぐや」
ーーーおまけ
「じゃじゃーん!今日の夕飯はミヨのところで作ってきたハンバーグでーす!
いろんなソースも作ってきたから、いっぱい食べてね!」
「おおー…!い、いただきます……っ!う、うまー!
ミヨさんが教えてくれたとはいえ、よくこんなにおいしいの作れたね、かぐや」
「…や、やったーーー!!!いろはに美味しいって言ってもらえたーー!
うっれしいな、うっれしいなーー!」
「そ、そんなに喜ばなくても…ほ、ほら!あんたも冷めるから食べちゃいなさいよ!」
「おっと、そうだった。いただきまーす!」
「それにしても、なんでハンバーグだったの?」
「だっていろは、この前ハンバーグの広告見て羨ましそうにしてたじゃん!よだれ垂らしそうになってたし!それに、ミヨにこの話したらなんか泣きそうになってたよ?」
「あ、そう言うことだったんだありがとーーーってちょっとまって?え、店長に話したの!?」
「あ、やっぱりダメ、だった…?」
「ダメに決まってるでしょうがーーー!!!」
どうも、ど素人ことあさらこです。
相っ変わらずかぐやの思考が読めん…!おかげで2話分の体力を使って書いてます。
かといって書きたくないというわけではなく、むしろ楽しいので、いつかまたリクエスト募集したら遠慮なく書いていただければと思います。
さて、今回はリクエストにあった「かぐやとの最初の料理教室」を書いてみました。
皆さんの満足のいく出来だったでしょうか?
そして割とかわいそうな役回りにしてごめんよ、彩葉…
それでは今回はここまで、また気が向いたときにでも。
うーん、本編との差で風邪ひきそう…