超かぐや姫!〜地獄の付添人を添えて〜   作:あさらこ

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ミヨさま、あなたの未来に幸多からんことを…


一つの恋の終わり

side:ミヨ

「月の魂のコピー…!?」

 

「うん、そう」

 

葦原見世(始まりの俺)が告げた言葉に驚愕する。なぜならこいつはーーー

 

「こいつはまさか、いろはに記録が流し込まれた時のーーーいや待て、それはおかしい。俺はあの時、月人が地球に来れないように現実改変をしたはずだ。なのになぜこいつは地球に来れているんだ…?」

 

「それは、どういつせいのもんだいだね」

 

「同一性…?」

 

目の前の月の魂のコピーを警戒しつつも怪訝な顔をする俺に、見世はなぜこいつが地球に来られたのかを説明し始めた。

 

「なんぜん、なんまんかいのりんねのなかで、これのそんざいはぼくらのおおもとにふかくきざまれてしまったんだ。そしてちきゅうはどのりんねでもおなじかてい、おなじけっかをなぞろうとするせいしつがある。せかいがずれすぎないようにね。だからはっぴーえんどにたどりついたこのせかいでもこれがはいりこめるすきま…ゆうよがうまれてしまった」

 

「コレとは随分な挨拶だな、葦原見世!だがそのとおりだ!我はお前の言う隙間を潜り抜け、かの姫を迎えに来たーーーだというのに!」

 

途中まで悠々と話していたが、突然見世を睨んで叫び交じりの声で怒鳴り始めた。

 

「いざ地球に入り込めたと思えば!こやつと貴様らの大本(地球の意思)が我を待ち構え、我を捕まえたかと思えば我を引き千切って魂ごと虚無へと放り込む始末!ギリギリ魂の一部を切り離し逃げられたのはいいが、おかげで我はこのような下等生物に取り付かなければ明日をも知れぬ身になってしまった!…故に我は貴様らに復讐をしようと考えたのよ。貴様らが最も嫌がるであろう、親しい者に裏切られ、そして親しい者が死ぬという甘い貴様らには到底耐えられぬやり方でなあ!」

 

「ほんとうにあくしゅみ…。やっぱりこいつ、もっとねんいりにちぎっとくんだった。

…それになにより」

 

「ああ、一刻も早く百ちゃんを開放しないと…!」

 

「おっと、そこから動けば()()()でこの女の体を殺すぞ?」

 

俺と見世が動こうとした瞬間、ヤツは自分の(尼子百)体に包丁を押し当て、こちらを脅してきた。

 

「ちっ、下手に動けん…!」

 

「…!」

 

「はっは、そんなに怖い顔をするな。なあに貴様らを殺したのち、すぐに返してやるさ。まあ、そのころには死んでいる貴様らを見て発狂しているかもしれんがなあ!」

 

「外道が…!」

 

「くず、ごみかす」

 

人質を取られ、焦りばかりが募っていく。

…そんな時、見世から念話が届いた。

 

『ねえ、ミヨ(ぼく)。すこしだけでいいんだ。ヤツの動きを止められないかな』

 

『…ヤツと目が合えば、暗示を使えるが。…だけど本当に10秒くらいで解けるぞ?』

 

『それでいい、10びょうあればなんとかできる』

 

『わかった。…任せたからな、オリジナル』

 

「そっちこそ。しっぱいしないでね、はてのぼく」

 

俺と見世は目を合わさず、それぞれ行動を始めた。見世はいつでも飛び出せるように。

 

ーーーそうして、一か八かの賭けに出た。

 

「おい、俺の周りをグルグル回ってるだけの羽虫」

 

「ほう…貴様、どうやらこの娘がどうなってもよいと見えるーーーな、ぁ…?」

 

「うーん、ふつうこんなじょうたいでちょうはつされたらわなだとおもうんだけど」

 

「き、さま、らぁ…!?」

 

「じゃあね、もうこないでほしいな」

 

トンッ

 

そんな軽い音とともに見世の指が百ちゃんの額に触れると、ヤツの魂が抜けて百ちゃんの体が高台の策の方へ倒れこみ、そのまま落ちようとしていた。

 

「まずい…!グッ、傷が…見世!」

 

「おーけー、っと…。はい、これでよし」

 

俺は慌てて百ちゃんの元へ走ろうとするが、刺し傷から血が噴き出し痛みで立ち止まってしまった。代わりに近くにいた見世に体を押さえてもらったが、危なかった…。百ちゃんは不老であっても不死ではない。もしあのまま落ちていたら大けがを負った状態で生きなければならなかっただろう。

 

そう、この時完全に俺と見世の視界からヤツは消えていた。

 

「ははは、馬鹿め!小娘一人のために俺を視界から外すとは!ここで俺が逃げれば同じような事がまた起こるぞ!例えばーーーあの八千年生きた姫とかなあ!」

 

「っ!」「しまっーーー」

 

この瞬間、俺も見世もヤツを捕まえられなかった。

このままではヤチヨたちに危険がーーーそんなことを考えるが、体が動かない。

 

「ふはは!貴様には我特製の魂を麻痺させる(コード)を打ち込んでやったからな!そこで我が逃げるのを指をくわえてみているがいいさ!」

 

「くっそ、がーーー!」

 

逃がすしかないのかーーーそう考えた時。

 

『私がそれを許すとお思いで?』

 

「なっ、ふざけるな!貴様が現世に干渉するなど許されるはずーーーあああああああああああ!」

 

ヤツの魂が突然虚空から現れた黒い球体に吸い込まれ、消えていく。

今度こそ跡形もなく、綺麗に。

 

『…ふう。逃がしかけた時は肝を冷やしましたが。これで一件落着ですね』

 

「ああ、助かった。ありがとう」

 

『いえ、責任がありますから。…それより、人魚の娘が目を覚ましますよ』

 

「っ!百ちゃん!」

 

地球の意思の言葉に百ちゃんの方を見る。百ちゃんは瞼を震わせ、目を開けた。

 

「あれ…わたし、一体…?」

 

「百ちゃん、大丈夫か?どこかおかしいところはないか?」

 

「ミヨ、さま…。っ!ミヨさま!お怪我は大丈夫ですか!?あの得体のしれないものに刺されたところは!」

 

『大丈夫です、人魚の娘。私が直しましたから』

 

「ああ、傷一つ無いよ。だから、百ちゃんが気に病むことは何もない」

 

その言葉と、実際に傷のあった箇所を見せるとほっとした顔で

 

「よかった…私のせいで死んでしまうんじゃないかって…。本当に、良かった…」

 

百ちゃんが俺の無事を確認して泣き出してしまった。

…しばらく時間が経ち、百ちゃんが落ち着いてきたところで俺は話を切り出した。

 

「それで、その。断った件についてなんだが…。…?電話?かぐやから?

…ちょっとごめん。もしもし、かぐーーー『ミヨ、早く帰ってきて!ヤチヨが、ヤチヨがぁ!』わかった、すぐに帰る。ーーーももちゃ」

 

「ヤチヨ様に何かあったのでしょう?早く行ってくださいませ。大丈夫です、ここには可愛い護衛もいらっしゃることですし。ですからーーーね?…それに、あなたさまが居ては泣くことも出来ませんしね?」

 

「…ありがとう、百ちゃん」

 

健気に俺の背中を押してくれた百ちゃんに礼を言ってこの場から走り出す。今は一路、ヤチヨの下を目指して。

 

 

ーーー

side:百

「…行かれましたね」

 

「うん、いったよ」

 

「あら、貴方は行かなくても良いのですか?」

 

「だって、おねえさんがいったんじゃない。…こんかいだけ、ぼくはおねえさんのきしだから。だから、がまんしないでないていいよ」

 

その外見に似合わぬ優しい声に、涙腺が緩む。

 

 

「…ふ、うぅ、あ、ああ。うあぁ…。…好きでした。千年以上もお慕いしていたんです…!なのに、なのにぃ…!どうしてぇ…!?」

 

「……」

 

自分勝手な想いが言葉になって溢れ出す。

それでも、この小さな騎士さまは私が想いを吐き出し終わるまで、黙って傍に立っていてくれるのでした。

 

「ありがとうございます。…みっともないところを見せてしまって、申し訳ありませんでした。」

 

「ううん、あなたのそのおもいはせいとうなものだとおもうから、みぐるしくなんてなかったよ」

 

「ふふ、本当にお優しいのですね。…さて!思いっきり泣いてお腹が空きました。そこでよろしければおやつをご一緒にいかがですか、私の小さな騎士さま?」

 

私のその言葉に、彼はきょとんとした後、柔らかく笑って

 

「うん、いっしょにおいしいものたべよう」

 

と言って私に手を差し出してくれました。

 

その手を取って、私はこの小さな騎士さまとのお菓子屋さん巡りに繰り出すのでした。

 

…たとえ今のこの行動が、ミヨさまに似ているこの子を使った失恋に対する気持ちの誤魔化し、逃避なのだとしても。

いつか、この子の厚意に甘えずに本当に乗り越えられると信じて。

「ああ、あの恋は美しいものだった」といつか振り返られるように。

私は、街へと繰り出すのでした。

 

ーーー

side:ミヨ

ガチャン!

「あっ、ミヨ!」

 

「かぐや!ヤチヨになにがあったんだ!?」

 

「あ、あのね、や、ヤチヨが…。ーーー歩けなく、なっちゃったの」

 

「ーーーは?」

 

 

 

『ーーーさて、これは今までの貴方の選択の結果です、芦原ミヨ。これより先、貴方がどのような選択をするのか、見定めさせてもらいますよ』




どうも、ど素人ことあさらこです。

だいぶ間隔が開いてしまい申し訳ありませんでした。
最近リアルの方が忙しいため、また間隔が開くかもしれません。

ちょっとももちゃんのところは強引かもしれませんが、いつまでも悲しんでいるももちゃんが見たくなかったということでひとつ。

それでは今回はここまで。また気が向いたときにでも。
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