side:ミヨ
「あ、あのね、や、ヤチヨが…。ーーー歩けなく、なっちゃったの」
「ーーーは?」
かぐやの口から出た言葉を、俺はすぐに飲み込むことができなかった。
呆然と立つ俺に対して、かぐやはどうにかしてヤチヨの詳しい現状を伝えるべく、立て続けに言葉を紡いだ。
「あの、ね。ミヨに電話する前はわたしと、いろはと、ヤチヨの3人で次のライブのダンスの振り付けを練習していたの。そしたらねーーー」
がくんっ
『わっ』
『ちょっ、大丈夫ヤチヨ!?』
『なんだ~?もうバテちゃったのかな~?』
『う、うん…心配してくれてありがと、いろは。えへへ…急に力が抜けちゃって。かぐやはちょ~っと悪童すぎだぞ~★?』
『…今日のところはもうやめとこっか。別に本番はまだまだ先だしね』
『ごめんね~。ありがたくそうさせてもらうよ~』
『さんせ~い!じゃあこの後さ~…ってヤチヨ?どったの?』
『……あれ、あれれ』
『ーーーまさか』
『あれ、おかしいな。よい…しょっ!ーーーあれれ…?』
『ヤチヨ、もしかしてだけど…』
『うん…なんか、立てなく、なっちゃった』
「ってなって、色々いろはとわたしで調べたんだけど、感覚もなかったの。病院に行こうにもヤチヨの体はミヨが作った特別製だから多分わかんないだろうからってことで、急いでミヨを呼んだの…ってミヨ?大丈夫?すごい顔色悪いけど…」
「ーーー!あ、ああ…大丈夫、大丈夫…。まずは、ヤチヨの様子を見に行かないと…」
かぐやに声を掛けられ、我に返った俺はヤチヨの部屋に向かって早足で歩きだした。
ヤチヨの部屋が近づくにつれ呼吸が荒くなっていくのを感じる。いやな汗も出てきた。
ーーーどうか、質の悪い冗談であってほしい。
そう、おそらく確実に砕かれるであろう願いを胸の内で繰り返しながら。
早足で向かったからか、グルグルと頭の内で考えを巡らせていたからか、あっという間にヤチヨの部屋へ辿り着いた。
「…すー、はぁーー…」いやに暴れる心臓を落ち着けるために深呼吸を一つ。
「…よし」
覚悟を決め、ドアに握った手の甲を近づけーーー
コンコンコン
『は~い』
「…ヤチヨ。俺だ、入るぞ」
ガチャリ、と音を立てて扉を開く。その先にはーーー
「あ、おかえり、ミヨ」
「……」
不自然なほどにいつも通りな、ベッドで体を起こしているヤチヨと、沈痛な表情を浮かべているいろはだった。
「百ちゃんとのデートどうだった?猫カフェって行ったことないから、どんなだったか聞かせて聞かせて☆」
いっそ無理をしていることが明らかな様子を前に、俺は名前を呼ぶ。
「ヤチヨ」
「あ、あと百ちゃんとどんなことをしたのかも教えてほしいな★ねーミヨ、良いでしょ?」
「ヤチヨ」
「…うん?なあに?」
「ーーー足が動かないって、ほんとか」
「ーーーっ」
俺の喉の奥から絞り出した問いに、ヤチヨはぎゅっと眉根を寄せて、何回か口をパクパクと開閉させた後、俺と同じように絞り出すように応えた。
「……うん。私の足、動かなく、なっちゃった。うごかなく、なっちゃったよぉ…!」
「……っ!」
ヤチヨの体を造ったのは、俺だ。彼女の魂に合う体を俺は造った、はずだ。
彼女が幸せに過ごせるように。
もう、触れ合えないことを悲しむことが、絶望して涙を流すことが無いように。
ーーーならばなぜ、こんなことが起きている?
なにを、なにをなにをなにをなにをなにをーーーおれは、まちがえたんだ?
『まあ、しいて言うのであれば…前提、でしょうか』
「「「「っ!?」」」」
『どうも、さっきぶりです、
唐突に脳内に聞こえてきた声に驚きながらも、その言葉の意味を知るべく、俺は声を上げた。
「おい、さっきのはどういう意味だ。前提を間違えた…?」
『ええ、その通りです。あなたはそもそもを間違えたのですよ。
あなたが解決すべきは体ーーー器だけではなかった。魂もどうにかしなければいけなかったのです。その証拠にーーーほら、あなたが現世へ復活して以降開くことのなかった〈魂を観測する眼〉を開けて御覧なさい』
「…わかった。ーーー。……?………は???」
ーーー
「…ぇ、なんで?」
「そうですミヨさん、なんでそんなことに…!?」
視たモノをそのまま声に出すと、かぐやといろはから疑問を投げかけられたが、俺にもわからなかった。
……なんで、こんな状態に…?
『…はぁ。本当に平和ボケしていますねぇ、葦原ミヨ。
全てはあなたの間違いと、その甘い考えだというのに』
「…さっきも言っていたが、どういうことだ。何か知っているならさっさとーーー」
『地球の器にして、魂もそれに引っ張られて寿命で死ねるようになったとして、地球の人間へと変生した魂が八千年の時間に耐えられると本気で思っていたんですか?』
「…ぁ」
『月の情報体であれば耐えられたのでしょうが、今の月見ヤチヨは地球人です。あなたが、そうしたんですよ。』
あ、ああ、あああああああああああああっ
そうだ、そうだよ。なんでこんな簡単なことに気づかなかった…?
「…ちょっと待って。なら、私が耐えられたのはなんでなの?」
『あなたが見たのはただの情報です。動画で殺傷事件の様子を知るのと、実際にその場にいたのでは、感じるモノや削れるナニカが違うのは当たり前のことでしょう?』
俺が後悔している間にも話は進んでいく。
「ねえ、ヤチヨの魂を直すことはできないの?あなたの力を使ってさ!ミヨの時にも助けてくれたじゃん!」
『ーーーするわけないだろう、たわけ』
そう言った瞬間、地球の意思の声音が変わった。
「え…」
『アレは輪廻を破った報酬だ。それに、今回はただの自然の摂理でそうなっているだけだ。いわば生物の老化のようなもの。私の上では当たり前のことをなぜ私が直さなければならない?それは、私の上で懸命に生きるモノたちすべてに対する冒涜だ。ーーーもっと、考えて発言しろ』
「…ごめん、なさい」
『ーーーいえ、わかればよいのです。
…まあ、さっきはああ言いましたが、解決する方法があるにはあるのです』
「っ!教えてくれ!頼む!!!」
かぐやが謝ると、声色が元に戻った。続いて言った言葉に俺は飛びついた。
ーーー俺の言葉に、地球の意思は静かに答えた。
『またあなたが改変すればよいのですよ、葦原ミヨ。
…まあ、ソレを為した瞬間にあなたは死にますが』
「だめっ!!!」
その言葉を聞いた瞬間、ヤチヨが大きな声で叫んだ。
「だめ、それは、それだけは認められない」
「ヤチヨ、でもそれでは君が」
「それでわたしはミヨの死の上で幸せに暮らせって言うの?できるワケないでしょ!?
それをするくらいなら、わたしは今すぐ死ぬ。…もう、あんな思いは嫌なの。」
「そんな…でも、俺は…」
『ーーーやはり、こうなりましたか』
「やはり、って…」
『こうなることは予想できていました。…故に、選択の時です。葦原ミヨ。
彼女の想いを振り切り、自身の命を使って彼女を救うか。
はたまた、彼女の想いに従い彼女が死ぬまでの短い時間を共に過ごすか。
片方を選べば最愛は絶望し、もう一方を選べばあなたが絶望する。
さて、どちらがよりハッピーエンドなのでしょうね…?』
その言葉に、目の前が暗くなっていく。二律背反とはまさにこのことか。
「…私は、ミヨさんとヤチヨの選択を尊重する。このことは、二人で決めるべきだと思う」
「いろは…」
「待ってよ…。ねえ、もうちょっと考えようよ!まだ、なにかいい方法が…!」
「かぐや…」
『ふむ…。まあ、考えてもいいですが、残されている時間はそう多くはありませんよ?』
「ミヨ…お願い」
「………………っっっ!!!」
奥歯が砕けるほど強く噛みしめ、俺が出した結論はーーー
この度は更新が遅れてしまい誠に申し訳ございませんでした…っ!(開幕土下座)
改めまして、もう超かぐの良作SSが出まくっていておそらく忘れ去られたであろう、
ど素人ことあさらこです。
皆さんすごいよね…。何食べたらあんなものを生み出せるんですか…?
私の更新が遅れた理由は興味ないと思うのでパスするとして、
今回この区切り方にしたのは、これからアンケートを行うためです。
なんのアンケートかと言うと、そう。個別ルート(n回目のバッドエンド)の順番です。
この後、一話だけ先に出さなければいけない個別エンドを投稿します。
その個別エンドが全て(一つだけ除く)の下地になるので。
個別エンドは大体各話1500~2000文字くらいになるかと思います。
期間はとりあえず次の話を投稿するまでにします。
それではまた、次のやっちょ個別エンドで、またお会いしましょう。
…次の話がいつ出るかはわかりませんが、気軽にぽちってくれればと。
個別エンドの順番決め。投票順にします
-
いろは
-
かぐや
-
ミヨ