超かぐや姫!〜地獄の付添人を添えて〜   作:あさらこ

55 / 55
最後に、あなたに()を。


個別エンド:ヤチヨ編

side:ミヨ

コン、コン、コン

『はーい』

「…入るぞ、ヤチヨ」

部屋の前でノックをし、相手からの返事があったことを確認し、部屋の中に入る。

―――そこには、あの日と変わらずベッドで上半身を起こしているヤチヨがいた。

 

「おはよう。…調子はどう?」

「おはよーミヨ!調子は…相も変わらずって感じかなあ。」

「そうか…よかった…」

「もー、ミヨってば心配しすぎ―!意思ちゃん…ちゃん?も魂が解けきるにはまだ時間があるって言ってたじゃん。もっと楽しく!朗らかに行こうじゃありませんか☆」

ヤチヨの体調を、いつも通りを装い、その実緊張しながら聞いた俺の口から思わず安堵のため息が零れると、ヤチヨはけらけらと笑いながら明るく言う。

 

―――そう、俺は…いや。俺とヤチヨはヤチヨの提案通り、ヤチヨのことをそのまま見送ることにした。

結局のところ、ヤチヨの願いを断れなかった。その一言に尽きる。

結論を出すまでに、何度も、何度もヤチヨと話し合ったし言い合いにもなった。

でも、

『…正直に言うとね、この体をもらってから私たちの前で死んだ人たちのことを夢に見るの。

「どうしてミヨはお前だけを助けるんだ?」「ミヨは俺たちのことを助けなかったくせに、どうして幸せになろうとしているんだ?」「あの時、あなたがミヨにお願いしていれば私は助かったのに」って、夢の中で言われるの。

それを聞いて、感じて、わかったの。私は心のどこかでミヨがいれば何とかなる、助かるって思ってること。そのことに喜びを、優越感を抱いていること。

そして…この先もミヨを頼りにしていたら、私はやがて生きることに執着するだけのモノになる、って。

―――だから、そうなる前に私は私らしく終わりたい。あなたの好きな私のままで居たいの。

お願い、ミヨ―――私に、綺麗に死ぬ権利をちょうだい?』

そう言われてしまえば、俺は何も言えなかった。俺だけじゃない、いろはも、(何か言いたげだったものの)かぐやもその言葉には異を唱えられなかった。

そしてそのまま押し切られるような形でヤチヨの言葉通り、見送ることになったのだった。

 

いろはは、『二人が決めたことなら…私に、口を挟む権利はありません…っ。でも、そう決めたのになにも言えない…助けになれない自分も嫌で…ごめん、ごめんなさい…っ』と泣きながら帰り、それ以降顔を出していない。

かぐやも『こんなの…こんなの、全然ハッピーエンドじゃないよ…』と、俺たちの決断を否定しようにも打開の方法が思いつかないからか、ぽつりとそう言って、彩葉と帰っていった。かぐやも以降は顔を出してはいない。

俺も、なんと言えばいいのかわからず、チャットでの会話もできていない。

ヤチヨは『二人が来ないのは残念だけど、久々にいっぱいミヨを独り占めできる~♪』と言っていたが、夜自室で『身勝手でごめん、ごめんね…っ』と二人に謝っているのを聞いた。

でも俺が行くと、無理にでも笑顔を作って話そうとする。

そんな、いびつな日々を過ごしながら、俺たちは別れへの道筋を着々と…着々と辿っていた。

 

あの日から、一か月と数日が経った頃。

その日(・・・)は突然訪れた。

「ねえねえミヨ!今度のどようーーーぁ」

「ヤチヨ!?」

それまで元気いっぱいに話していたベッド上のヤチヨの体から、くたり、と力が抜けてしまうのを見た。

「ぁ、ぁはは…いよいよ、かなぁ…」

「そんな…待っていろ、今すぐにかぐやと彩葉を呼ぶから…!」

俺はすぐさまチャットでかぐやと彩葉へヤチヨの状態が急変したことを送る。

すぐに既読が付き、彩葉は返信はなかったが、かぐやは〈いろはと行く!〉と送ってくれた。

「すぐに二人も来るからな…!」

そう言ったが、ヤチヨからの反応は芳しくなく

「ちょ~っと、間に合わないかもなあ…。」

とつぶやいていた。

「そんな…ヤチヨ…ヤチヨぉ…!」

俺がその言葉に涙ぐみながらヤチヨにみっともなく縋りつくと、ヤチヨは苦笑しながら

「ありゃりゃ、なきむしだねえ。…ねえ、ミヨ。さいごにおねがいしても、いいかなぁ?」

そう、言ってきた。

「やちよ…?」

「わたしね、もっともっといろんなものをミヨとみたかったの。きれいなものも、きたないものも…だから、いきて、いきて、いきて。すてきなものも、いやなものもたくさんみてください。それで、いつかわたしとまたあえたら、そのときはあなたがみたものをおしえてくれるとうれしいな…」

それは、俺が後を追わないようにするための、“楔”だったのだろう。

「わかった…約束、するよ」

「ぜったい、だからね?すぐにこっちにきちゃ、ヤダよ…?」

「ああ…ああ…!」

「ながい、ほんとにながいじんせいだったけど…あなたがいてくれたから、なんとかがんばってここまでこれた」

そこで、言葉を切って、もう指を動かすのも厳しいだろうに、ヤチヨは俺の頬に手を添えて、万感の想いを声に乗せて、こう言った。

「ありがとう、ミヨ…。あなたを、こころのそこから、あいし、て…いま、す―――」

 

ぱた…

 

頬に添えられていたヤチヨの手がベッドに落ちる音が、いやに大きく聞こえた。

―――その音が、ヤチヨがもうこの体にはいない何よりの証拠になった。

「あ、ああ…。う、うああああああああああああああああ!!!」

俺は、俺が壊れる音を聞いた。

 

side:彩葉

十数分後、

「―――みよ、さん」「み、よ…?」

「……」

ミヨさんからのメッセージを見て、急いでミヨさんたちの家に向かった私とかぐやの眼前にあったのは、眼を閉じ、動かなくなったヤチヨの体を抱きしめてぶつぶつと何かをつぶやいているミヨさんの姿だった。

ミヨさんはこちらを見ることなく、立ち上がって部屋を出て行こうとした。

ヤチヨの動かなくなった姿を見て、私はへたり込んでしまって動けなくなってしまった。

かぐやは、涙を目に湛えながらもミヨさんを引き留めようとしていた。

「ミヨ!そんな状態でどこ行くの!?」

「…ああ、かぐや、か。」

かぐやに腕をつかまれ、ようやく私たちを認識したミヨさんは涙を流し続けながら

「行かなきゃ、いけないんだ」と言って何処かへ行こうとしている。

「どこに!?」

「ヤチヨと、約束したんだ。いろいろなモノを見るって。そして、この旅を終えてもう一度俺はヤチヨに―――。…だから、さよならだ、二人とも。」

「待って…まってよミヨぉ!」

「ごめんな。もう俺には、ヤチヨ以外のモノに価値を見出せない」

そう言ってミヨさんは、かぐやの腕を優しく解き、かぐやの声に耳を貸すことなくそのまま霧のように消えた。

残されたのは、なにもできなかった私と、どうにかしようとしたけれど届かなかったかぐやだった。

 

―――これ以降、私とかぐやがミヨさんに会うことはなく。

代わりに、世界中である噂が出回るようになった。

曰く、涙を流した男性が、純白の髪の女性を抱えながら歩き続けているのだと。

 

 

 

―――END1:ただ一人、愛しの君へと至る路を歩む




―――なるほど。最愛を喪い、絶望したことで最愛の残した願い(呪い)にすがりそれ以外のすべてを捨て、ただあてもなく彷徨う。
確かにそれしかすがるものがなくなったと考えるのは妥当でしょう。

…ですが、それしか本当になかったのでしょうか?
他に選択肢は?方法は?突破口は?まだまだあったのではないですか?
本当にこの終わり方でよいのでしょうか。いいえ、良くない。
この終わり方は「妥当」ではあっても「理想」ではありません。

―――故にこそ、全てを逆巻きましょう。あなた方が、「理想」に辿り着けるように。
誰一人取りこぼさず、明日を迎えられるように。
…え?何が言いたいかって?それはまあ、簡単なことですよ。

つまるところ―――やり直し、です。

個別エンドの順番決め。投票順にします

  • いろは
  • かぐや
  • ミヨ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

<本編完結>親友のお隣さん~万の羽が彩るハッピーエンド~(作者:白豆男爵)(原作:超かぐや姫!)

超人の女子高校生・酒寄彩葉の隣の部屋に住む親友の男子高校生・神崎万羽。▼万羽の存在がもたらす、皆さんの知るものとはちょっと違う「超かぐや姫!」の物語...


総合評価:688/評価:6.1/完結:59話/更新日時:2026年07月12日(日) 18:41 小説情報

超かぐや姫! 〜彩葉の幼馴染のかぐや姫物語〜(作者:ソール)(原作:超かぐや姫!)

▼この物語は、酒寄彩葉と言う主人公が、ヒロインであるかぐやと共に、アイドルとなり、ハッピーエンドを迎える物語である▼だが、もしも『酒寄彩葉に幼馴染』が居て、彩葉ではなく、その幼馴染がかぐやを拾ったら▼これは誰もが知るかぐや姫物語とは違う、ハッピーエンドを求めた別のかぐや姫物語▼


総合評価:726/評価:6/完結:40話/更新日時:2026年07月30日(木) 20:38 小説情報

お隣の様子が急におかしくなってしまった(作者:納豆伯爵)(原作:超かぐや姫!)

若干デリカシーがなくてお人よしの伊織零士が、赤ん坊を拾ってしまった酒寄彩葉とばったり出会ったために忘れられない夏がやってくる物語。▼2026/03/23 タグ編集しました▼2026/03/31 タグ編集しました


総合評価:1266/評価:7.35/完結:100話/更新日時:2026年08月07日(金) 09:10 小説情報

モノづくり大好きライバーによるハッピーエンドの作り方(作者:超かぐや姫!脳焼きの民)(原作:超かぐや姫!)

誰もが自由に創作活動を行う仮想空間ツクヨミ。▼モノづくりを行い、自由に遊び、人生そのものを楽しみ尽くす少年――遠田匠。▼彼はMr.Mk(ミスター・メイク)として、ツクヨミを全力で遊び尽くす。▼ロマンを求め、娯楽を求め、そして“最高のハッピーエンドを作る”男の物語。▼本作には、「超かぐや姫!」の本編から一部設定や話の流れの改変があります。


総合評価:4424/評価:8.64/完結:47話/更新日時:2026年04月29日(水) 07:01 小説情報

超お世話係!(作者:チクワ)(原作:超かぐや姫!)

▼ 「──じゃあ、俺にお世話させてください」▼  1人で生きて欲しくない、1人で綺麗に生きたかった男の話。


総合評価:1832/評価:8.55/完結:32話/更新日時:2026年07月02日(木) 22:12 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>