side:第三者視点
「―――みよ、さん」「み、よ…?」
「……」
ミヨからのメッセージを見て、急いでミヨたちの家に向かった彩葉とかぐやの眼前にあったのは、眼を閉じ、動かなくなったヤチヨの体を抱きしめてぶつぶつと何かをつぶやいているミヨの姿だった。
ミヨは部屋に入ってきたかぐやたちの方をを見ることなく、立ち上がって部屋を出て行こうとした。
ヤチヨの動かなくなった姿を見て、彩葉はへたり込んでしまって動けなくなってしまった。
かぐやは、涙を目に湛えながらもミヨを引き留めようとしていた。
「ミヨ!そんな状態でどこ行くの!?」
「…ああ、かぐや、か。」
かぐやに腕をつかまれ、ようやく彼女たちを認識したミヨさんは涙を流し続けながら
「行かなきゃ、いけないんだ」と言って何処かへ行こうとしている。
「どこに!?」
「ヤチヨと、約束したんだ。いろいろなモノを見るって。そして、この旅を終えてもう一度俺はヤチヨに―――。…だから、さよならだ、二人とも。」
「待って…まってよミヨぉ!」
「ごめんな。もう俺には、ヤチヨ以外のモノに価値を見出せない」
そう言ってミヨは、かぐやの腕を優しく解き、かぐやの声に耳を貸すことなくそのまま霧のように消える―――その直前。
side:彩葉
ここで私は何も言うことなく、ミヨさんを引き留めることなく見送ってしまおうとした。
正直に言って、
実家でお母さんに私に対する否定の言葉を叩きつけられた時、上京した後の一人ぼっちで泣きそうになった夜。辛いときにはいつも、動画で、ライブ配信で、お悩み相談チャットで、ヤチヨの話に、歌に、なによりその声に、励まされてきた。
―――でも、もう
私の世界の大事なものが消え去ってしまった―――そう感じた。
あの時、ヤチヨたちから距離を置かずにもっと言葉を重ねていればよかったのではないか。
なにか、もっとあったのではないかと後悔が今更湧いてくる。
心の裡が黒いモノで埋め尽くされていくなかで、かぐやがミヨさんに何かを言っているのを他人事のように聞いている中で、ミヨさんが立ち上がったのを見た。
「ぁ…」
喉の奥で、言葉にならない音が鳴った。
ミヨさんがどこかに行ってしまう―――私の中の大切なものが、失ったばかりなのにまた私の手の届かないところへ行ってしまう!
気づけば私は、ミヨさんに飛びついていた。
「ま、まってぇ!…まってよぉっ」
「いろ、は…?」
何処か焦点の会わない眼のまま、ミヨさんが私を見る。
「お願い、だからぁ…!わ、わだじのまえっ、からぁ、いなくならないでぇ…!」
引き止めなくちゃ…その一心で勝手に流れてくる涙と一緒に、嗚咽交じりでミヨさんに懇願する私。
「いろは…。でも、俺は…広い世界を…いや、でも彩葉たちを悲しませるわけには…どうでもいい、ヤチヨがいないのに何の価値がある…そんなわけがない…。ああ……おれ、は。どうすれば…ヤチ、ヨ…」
その姿にいっそ不自然なほどに無感情な貌をしたミヨさんは、なにか独り言をつぶやきながら動きを止め―――そして、ヤチヨを抱えたまま座り込んでしまった。
「ミヨ、さん…?」
「ミヨ…?ミヨ!ねえ、ミヨってば!」
こちらに寄ってきたかぐやがミヨさんをゆするも、ミヨさんは反応を返すことなく座り込んだままだった―――。
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「それじゃあミヨさん、行ってきますね」
「……」
ガチャリ
「…ふう、よし」
―――あの時から、5年。私は相も変わらず無言で部屋にいるミヨさんに声を掛けて、部屋を出る。
あの後、なにがあろうとその場から動かなくなってしまい、動かすこともできなくなったミヨさんは、まったく同じ姿勢で、同じ姿をしているヤチヨを抱えたまま5年が経過した。
私は、そんなミヨさんを高校から大学に進学し、今に至るまで。毎日欠かさずミヨさんたちの住む家に訪れては話しかけていた。…結局、ミヨさんは一言も言葉を返してくれることはなかったけれど。
でも、いいのだ。ミヨさんがいてくれればそれで。たとえ、今後一生私たちが死ぬまで言葉を交わすことができずとも。私が見て、触れて、ここにいると実感できれば、それで。私は、今日も何事もないように振舞える。
こんなことを考えるあたり、私もどこかが壊れてしまったのだろう。
ミヨさんの家を行き来する生活を送る中で、お母さんが一度来たことがあった。
お母さんはいつも通りの口調で
『そこの―――悪いけど凡骨をお世話する意味も、必要性も。あんたにはない。さっさと縁を切って、あんた自身のことに時間を使い』
と言ってきた、が―――
あれだけ恐れていた、あこがれていた人の言葉が、なんの価値も感じなくなっていた。
私は母に一言、「ううん、この人が、今の私の
母は、怒ったように眉をしかめて何かを言って来ようとしたけど、私の顔を見て口を閉ざし。
そのまま出て行ってしまった。
…一瞬、何か恐ろしいものを見たような表情をしたような気がしたけれど……あの母が何かを恐れるとは思えないし、気のせいだよね。
かぐやも、私のことを不安そうな目で見てくることがある。おかしいよね、私はこんなにも満ち足りているのに。
…あっ、もしかしてミヨさんに私を取られないか心配してるんだな?愛いやつめ。
後でかまってやらないと。
…えっ、お兄ちゃん?…さあ?元気なんじゃない?
どうでもいいしなんでもいいよ。
真実や芦花とも最近は会ってないなぁ…まあいいか、何でも。
私にはミヨさんと、かぐやがいれば、私は幸せなんだから。
だから…二人とも。ワタシヲオイテイカナイデ…ネ?
「ずっと…ずっと一緒ですから」
二人のことを想い、昏い…昏い笑みを浮かべながら。私は街の雑踏の中へ混ざっていった。
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5年前と何も変わらぬ部屋…その片隅で。
男は少女から女性に成長した大切だった人が部屋から昏い笑みを浮かべながら出て行ったあと。
無意識なのかそうではないのか定かではないが、こうつぶやいた。
「ごめん…彩葉」と。
―――END2:星のような少女は昏い水底へと堕ちる
―――ふむ。二つの愛との狭間で機能不全を起こした者と、誰かが自分の前からいなくなる恐怖を知り、心を壊した少女…ですか。酒寄彩葉は今後かぐやか葦原ミヨのどちらかが自分の前からいなくなろうとすれば半狂乱となり、足の腱を切って歩けなくさせてでも自分のそばに置こうとするで
しょう。そしてその先に待つのは破滅のみ…。
…無し、ですね。この終わりはハッピーエンドとは到底呼べない。駄作も駄作です。
前回よりも認められるものではない。
―――故に、今回もこの可能性を破却し、次へと期待しましょう。
それでは皆様、また次の終わりで。
個別エンドの順番決め。投票順にします
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いろは
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かぐや
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ミヨ