side:ミヨ
…なぜ、なぜ彼女が、
あの娘はただ好きな人と再会したかっただけなのに。
それ以外何も望んでいなかったのに。
そんな些細な願いのために八千年頑張ってきた結果が
人への変生による魂の摩耗。耐久性の限界。
よりにもよってヤチヨ自身の乗り越えた時間、時代、経験そのものがヤチヨを今蝕んでいると?
―――ふざけるな
ヤチヨがどんな想いで出会った人々を見送ってきたと思ってる。
どんな苦しみを感じて、死にゆく人々を看取ってきたと…っ。
その苦しみの代価がこんな終わり方だと?…認めない。認めることなんてできない。
なによりその原因を作ったのが俺自身だということに、俺が耐えられない。
ヤチヨはもっと幸せになるべきだ。
ヤチヨはもっともっと大切な人達に囲まれて、笑顔でいっぱいのハッピーエンドに辿り着くべきだ。
…何とかしなくては。
その結果、俺が皆に…なによりヤチヨ自身にどれだけ非難されようと、罵られようと、泣かせたとしても。
俺は、俺の持てる手段すべてを使って―――ヤチヨを救うのだ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
side:芦花
最近、彩葉の様子がおかしい。
普段の彼女とは違い、ぼーっとすることが多く、動きもどこか危なっかしい。
現に今もお弁当を手に持ったまま、その目を虚空に向けて動きを止めてしまっていた。
「ねえ、彩葉。…彩葉ってば!」
「……あ、ごめん。何か言ってた?」
一足先にお弁当を食べ終え、購買で買ったメロンパン(現在2個目)を食べていた真実に何度も名前を呼ばれて、やっとこちらに目を向けた。
「彩葉~、大丈夫?最近そうやってぼーっとしてること増えてるけど」
「そうそう、今日の国語の授業なんか当てられても反応なくて先生に心配されてたよね」
「…うん、私は大丈夫だよ。ちょっと最近…寝不足で」
たはは、と苦笑気味に笑って誤魔化そうとしている彩葉から、立ち入ってほしくないという意思を感じた私は、真実に目配せをして言った。
「…そっか、ならいいんだけど。あ、でも夜更かしはほどほどにね?美容の天敵なんだから」
「そうだそうだ~。ご飯もおいしく食べられなくなっちゃうぞ~?」
「あはは…はい、気を付けます。」
そう言った彩葉だったけれど、なにか悩むような表情をした後に、意を決したように
「ねえ、二人とも。…もし、もしさ。どうしても諦めなくちゃいけないことができちゃったときって、二人ならどうする?」
と質問してきた。
「諦めなくちゃいけないこと?」
「そう」
私と真実は揃って腕を組んで頭を捻ってう~~ん、と唸りながら
「それは、どうしようもないこと?」
と彩葉に質問すると
「それは…多分、そう」
と答えてくれた。
私がう~んと唸ったままでいると、不意に真実が答えた。
「多分っていうくらいなら、まだ可能性があるんじゃない?そこで諦めるのは、もったいないんじゃないかなあ」
「もったいない?」
「うん、だってまだ全部の可能性を試してないんでしょ?なら、全部やり切って、試してみてから諦めるっていうのでも遅くないんじゃない?ほら、料理にも失敗したと思ったら美味しい料理になった、みたいな話はいっぱいあるし」
「…うん、そうだね。全部試してみて、それでもだめだったらその時考える、でもいいと思うよ?…もちろん、そのために私たちだったり、かぐやちゃんだって手伝うし…ね?それになにより」
「「簡単に諦めるなんて、彩葉らしくないよ」」
真実と一緒に彩葉に考えを伝えると、段々と彩葉の眼に星のような輝きが宿っていくように感じた。
…ああ、その目、好きだなあ。
「…そっか、そうだよね。全部試すまでは諦められない、よね。」
そう独りごちると、彩葉は凛としたいつもの姿に戻っていた。
「ありがとう、二人とも」
「へへ、いいってことよ~」
「これからも相談してくれていいからね~」
「はは~、頼りにしてます!」
そう言って、今日初めていつものやりとりができたことに安心しながら、昼休みは過ぎて行った。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
side:彩葉
そうだ、なんで諦めてたんだろう、私。
あまりにも非現実的な世界の話で流されてしまったのか、それともあまりにもショックな話で現実逃避していたのか。
とにかく、最近の私が腑抜けていたことに変わりはない。
まだ何にも試してもいないのに、「ヤチヨは助からない」なんて。
本当に私らしくもない。
私はみんなでハッピーエンドに行きたい。私たちのお話なんて始まったばかりで、エンディングなんてまだまだ先なんだ。
だからこそ、みんなに。かぐやや、ミヨさん。それになにより―――ヤチヨに。
まだまだ諦めるときじゃないって伝えなきゃ!
…でも、実際どうやってヤチヨを助けよう?
一番頼りたくなるミヨさんの「現実改変」はミヨさん自身が消えちゃうから却下。
うーん…魂が壊れそうならそれを補強するとか?いや、魂の補強とかどうするんじゃい。
ああでもないこうでもないと頭を捻るけど、なかなかいい案は浮かばない。
―――ふと、頭の片隅に何かが引っ掛かった。
あれ、そう言えば地球の意思ってどうやって
その、なにか決定的な、答えに近いモノの核心に私の思考が触れそうになった瞬間―――
「いろは」
と前から名前を呼ばれ、はっとして顔を上げると
「前を見て歩かないと危ないぞ?」
そこには買い物袋を持ちながら苦笑する、ミヨさんがいた。
「わっ、ミヨさん。今買い物の帰りですか?」
「ああ、そういういろはは今帰りか?」
「はい、ちょっと考え事してて」
「…そっか。じゃあ途中まで送っていこう。もう暗いし、心配だからな」
そう言って先に歩き始めたミヨさんの後を追いながら、改めて帰路に就く。
お互い無言のまましばらく二人で歩いていると、不意にミヨさんが口を開いた。
「…さっき言っていた考え事って、もしかしてヤチヨのことか?」
「えっ。…そうです。ヤチヨがいなくなるなんて、私にとっては世界の半分がなくなるくらいの衝撃なんですから」
「そうか。…やっぱり、そうだよなあ」
暗い雰囲気にしたくなくて、おどけながら答えると、ミヨさんはボソッと何事か呟いた。
「でも、ミヨさん。私、今日芦花と真実に言われたんです。「全部やってからでも遅くない」って。だからヤチヨのこと―――「彩葉」はい?」
私がそれに気づかずに、ヤチヨのことを諦めたくないことを伝えようとした時、ミヨさんは私の名前を呼びながら数歩先に歩いた後急に立ち止まり、こちらを向いて言った。
「やっぱり、ヤチヨを俺と同じ位大事に思ってくれてるいろはにしか、任せられないな。」
「……?何の話ですか?」
いきなり言われたことに対して、若干の照れと、それ以上の困惑が頭の中を駆け巡る。
そんな私を見ながら、ミヨさんは
「ああ、いきなりでごめんな。つまりだ―――俺がいなくなった後のヤチヨのことを彩葉、キミに任せたいってことなんだ」
そう、言ったのだ。
「は…?な、なに言ってるんですか!冗談もほどほどに―――」
「すまない、冗談ではないんだ。やっぱり、俺の「現実改変」しかもう手はないんだ」
「さっき言ってたこと聞いてましたか!?全部やり尽くしてないのに諦めないでって言ったんですよ!」
「ああ、聞いたよ。―――でも、その前にヤチヨが限界を迎えてしまったら?
俺なら救えたはずなのに、それなのにヤチヨが冷たくなっていくのをほかの方法を探すからと言って黙って見ていろと?……無理だ、俺には耐えられない。
ましてや原因は俺だ。―――俺が、助けなくちゃ」
そういうミヨさんの眼には光などなく。ただただ昏いモノになっていた。
「ダメ…ダメです、ミヨさん!そんなことをヤチヨは望んでなんて―――」
「ああ、だからこれは、正真正銘俺のわがままだよ。…俺がいなくなって悲しむ人、泣いてくれる人がいるのは十分わかってる。
―――でも。俺はそれ以上に、ヤチヨがいなくなったこの世界で生きていくのが嫌なんだ。
だから、キミたちに悲しみを、傷をつけることになっても。
俺はヤチヨを救って先にいなくなる…ヤチヨやかぐや風に言えばエンディングを迎えることにしたんだ」
正直、この人のヤチヨへの想いはだいぶ重いものだと思っていた。
でも、どうやらそれでもなお過小評価だったらしい。
私はこの瞬間、もうこの人は自分の先を決定してしまったんだ、と悟ってしまった。
涙が勝手に目から溢れる。
「…でも。でもっ!」
「ごめん、彩葉。でもこれは、もう決めたことだか―――」
『その結論に至るのには、まだちょお~~っと早いんじゃないかにゃあ?』
「「っ!?」」
突如、どこからか第三者の声が聞こえてくる。
発生源は―――私のスマホ?
ポケットからスマホを取り出してみると、画面には渦中の人物である、ヤチヨが映し出されていた。
『二人で帰り道デートなんて羨まし~!と思って発言しないでいたけど、話題がこのヤッチョになったからには口出しさせてもらうよ☆…さて、ミヨ?』
「ああ」
ヤチヨはおどけた態度から一変、激情を抑えるかのように静かにミヨさんの名前を呼んだ。
『私、言ったよね?ミヨの犠牲の上でなんて生きたくない、って。忘れちゃった?』
「いや、忘れてないよ。」
『なら、どうして?』
「簡単だ。…俺も、ヤチヨがいない世界でなんて生きたくないんだ」
『そっか…そっかぁ。―――うん、わかった』
「えっ」
ヤチヨが、ミヨさんの言い分を認めた…?
もしやこのままミヨさんの意思を尊重するのか、と思い思わずスマホの画面を見ると―――そこには、不敵な笑みを浮かべるヤチヨの姿があった。
『じゃあ、喧嘩しよっか』
「…喧嘩?」
『そう、喧嘩』
思わず聞き返すミヨさんに胸を張って答えるヤチヨ。
『だってお互いに譲れなくて、妥協点もないんでしょ?なら、あとはどちらの意見を相手に従わせるか―――つまり喧嘩しかないでしょ?』
いや、そんな「名案でしょ、褒めて褒めて!」みたいな顔されても…。
まずミヨさんが受けなきゃ始まらないと思うんだけど「わかった、受けよう」受けるんだ!?
「それでヤチヨが納得してくれるのであれば」
『もちろん、どっちが勝っても恨みっこなしだからね!』
「……ああ、わかってるよ」
そう言ってお互いを睨むようにして笑う二人に挟まれて、私の頭は急展開に困惑しきりなのだった。
「…ところで、喧嘩の内容は?」
『ふふーん、私の肩書をお忘れかな?…喧嘩内容は、〈ツクヨミ〉でのKASSEN!もちろん
ミヨも本気出していいよ!』
「…え、いいのか?俺の本気ってつまり、地球上での全力ってことだぞ?」
『その点についてはだいじょーぶ!こっちも助っ人を呼ばせてもらうからね!』
「助っ人…?」
『そう!まず一人目は、ここにおはします私の一番星!酒寄彩葉さんでーす!』
「わ、私!?」
『お願い、彩葉!私が勝ったら、私が助かる方法をみんなで考えるっていうのを方針にするから!』
いきなり矢面に上がって驚く私に、ヤチヨは上目遣いでそう言ってきた。
「…わかった、それなら私、ヤチヨの側につくね」
『わーい!ありがとう彩葉!絶対勝とうね!』
「うん!…ところで、後の助っ人は?」
『あははー…。一緒に説得行ってくれる?』
「はあ…りょーかい」
『神様仏様彩葉様~!ありがたや~、ありがたや~』
「…話がまとまったのなら、俺はいったん帰るな?」
ヤチヨとじゃれ合うように掛け合いをしていると、その様子を微笑ましいものを見るような目で見ていたミヨさんがそう言ってきた。
『オッケー!覚悟しておいてよ、ミヨ!』
「負ける気なんてさらさらないですからね」
「…ああ、楽しみにしてる」
そう言って、ミヨさんは家に帰っていった。
さーて、こっちもみんなに声かけないとね!
「…あれ?そういえばヤチヨ、さっき喧嘩の日まで会わないような感じだったけど、ミヨさんとは後で家で会うよね?」
『…あっ』
―――その日の夜、葦原家では微妙な空気が流れていたという…。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
そうして訪れた運命の日。
私たちとミヨさんは向かい合っていた。
「オラァ、ミヨぉ!覚悟しろー!」
隣で凄むかぐや、他にも私たちの説得に快く応じてくれた芦花とBlack onyXの姿を見て、いつもなら苦笑するだろうミヨさんは、今日に限っては何も感情を見せない文字通りの「無表情」で言葉を返すでもなくただこちらをじっと見据えていた。
「はーい!じゃあ今回の喧嘩の説明をするよ☆今回は簡単に言うなら残機一つの私たち7人対ミヨのガチバトル!配信もないからみんな映えとか気にせず
何か質問のある人はー?…いなさそうだね?さーてそれじゃあ早速みんな位置について!最初で最後の大喧嘩、はっじめっるよー!」
スタート位置に着く。しばらくして全員位置に着いたのか、カウントダウンが始まる。
10秒前。
呼吸を落ち着かせ、コントローラーを握りなおす。
5秒前。
この試合に勝って、皆でハッピーエンドに行く。
3…2…1…
そのために、あの人を超える。
0。
運命を決める戦いが、始まった―――。
瞬間、ミヨさんと最も近い位置にいた雷さんのHPが半分消し飛んだ。
「…え?」
side:ミヨ
思い描いた通りの結果にならず、思わず眉を上げる。
「…へえ、手加減したつもりはなかったんだけどな」
「こちらのHPを半分削っておいて、なにを言う…!」
苦々しげにそうこちらに言う雷さんの言葉に内心で思わず苦笑する。
正直、生身の人間だったら反応すらできずに消し飛ぶ速度と威力だったんだが…さすがプロゲーマー。反応速度とそれによってミートをズラすことでダメージを抑えたらしい。
「まあでも、次で終わりかな…っと!?」
ヒュンッ!
雷さんに向けて拳を振り上げた瞬間、右から矢が飛んできた。
完全に意識外からの攻撃に驚きつつも、何とか避ける。
その間に下がった雷さんのそばには帝さん、少し離れたところに芦花さん、そしてヤチヨに少し遠くには彩葉と全員揃いつつあった。
「こうなる前に一人は倒しておきたかったんだけどなぁ…」
「だろうと思って全力で駆けてきました来ましたわよ~?」
そう言って全員で連携を取りながら攻めてくる。
しかも俺が一人を狙おうとすると全員がカバーしてくるので滅茶苦茶やりづらい。
…やはり今回の作戦を考えているのはヤチヨか。
しかも八千年も一緒にいたんだから手の内もしっかりバレてる、と。
さて、どうするか。
「ーーー」
ん?
「ーーーー!」
なんだ?この音…いや、声?どこから…ってまさか
「今気づいてもおそいよー☆」
「くそっ、ええいっ!」
ゴウっ!
回し蹴りで全方位を風圧で吹き飛ばした後、上を見る。
するとそこには―――
「ミ~~~~ヨ~~~~~~!!!!!!!」
ハンマーを振りかざして落ちてくるかぐやがいた。
「喰らえぇぇ~~い!!!」
それを迎え撃とうと俺は拳を振り上げ、そして―――
side:彩葉
ドゴオォォォォォォン!!!!
ミヨさんに吹き飛ばされた後、さらに強い衝撃と砂埃のエフェクトが走った。
「けほけほっ…。ど、どうなったの!?」
「流石にやられてくれないと困るんだけどなー」
そう軽口を叩くお兄ちゃんは言葉とは裏腹に、その表情はとても険しかった。
ざっざっざ…
砂埃の中から足音が聞こえ、全員に緊張が走る。
そして、出てきたのは―――ダメージは負っているものの、まだまだ戦えそうな様子のミヨさんだった。ミヨさんは肩に抱えたかぐやをこちらに投げてきた。
「かぐや!」
投げられたかぐやを受け止めると、かぐやはもうHPが0になっていた。
「ごめん、彩葉っ…」
そう言ってかぐやは悔しそうな顔をしながら花弁となって消えた。
「さて、まず一人。…さあ、次は誰だ?」
その後は熾烈な戦いになった。
みんな地道にミヨさんに攻撃を当てていくものの、それ以上にみんなミヨさんの攻撃によって斃れていった。
芦花。
「大切な人を悲しませて…それで本当に間違いのない選択と言えるんですか!?」
「ごめん、その問答はもう意味は無いんだ。」
雷さん。
「…いいのか」
「…ああ、いいんだ」
乃依くん。
「…ちぇっ。今のアンタ、ちょーつまんないよ」
「だろうな、わかってる」
そして、お兄ちゃん。
「…あんたの言うことも理解できるつもりだ。けどなぁ!彩葉を!泣かせるようなことするんじゃねえよ!!!」
「ごめん、約束を破ってしまって。…でも、決めたんだ」
「…あークソっ、すまん彩葉―――」
そして、今。
残るは私と、ヤチヨの二人だけ。
私たちも、おそらくミヨさんも。残りHPはごくわずか。
次の衝突で勝負が決まる。
「…ねえ、彩葉」
お互いに警戒している中、ヤチヨが私に囁いてくる。
「なに、ヤチヨ?」
「多分、ミヨは私を狙ってくると思うから、そこを仕留めて」
「なんでか、聞いてもいい?」
「うん、多分だけどね―――」
そうして作戦会議が終わり、私たちは動き出す。
同時にミヨさんも動き、狙うは―――ヤチヨ!
「ああああああっ!」
ミヨさんは今回の戦いで初めて咆哮を上げ、ヤチヨに飛び掛かる。
『多分、ミヨは最大級の脅威を先に潰そうとするから』
そう言ったヤチヨの、読み通りに。
ヤチヨはミヨさんの猛攻を手に持った傘で弾き、いなし、何とか防いでいる。
「ねえ、ミヨ!みんなからの言葉を聞いて、なにもっ、思わなかったっ?」
すさまじい攻防の最中、ヤチヨはミヨさんに問いかける。
「いいや、思ったさ。俺は、また一人で突っ走って間違えたんだろうって。
でもさ。そんなことは、最初から分かっていたんだよ。分かっていてなお選んだんだ。
早々考えが変わるわけないだろう?
…だから、そんな俺を変えたいなら。俺を生かしたいのなら。
俺に勝ってみせろ、月見ヤチヨォ!」
「上っ等!」
そう言って、さらに速度を上げる二人。
その応酬は、ずっと続くと思われていた。だけど―――
「くうっ!?」
ヤチヨの防御が一瞬緩み、大きく距離を開けられる。
それを好機と見たミヨさんがヤチヨの元に拳を振りかぶりながら飛び込んでいき、トドメを刺そうとした―――その瞬間。
ヤチヨはあらかじめ口に含んでいたビー玉のようなものを傘で膨らませた。
「っ!?…まずっ―――」
パアアァァァァン!!!
轟音。衝撃。
ヤチヨの作戦とは、私がいることによる自爆特攻。
それは決まったかのように思えた―――が
「…っ!」
どうやったかは分からないが回避したミヨさん。
今、ミヨさんはヤチヨのULTをなんとか回避した。
衝撃と轟音で目と耳は使えない。
そしてそこには、どれだけ警戒していても必ず隙が生じる―――
つまるところ、私はもうミヨさんの背後に迫るところだった。
「ミヨさんっ!」
「っ」
反応が遅れる、ソレは致命的なタイムロス。
すさまじい集中、瞳孔が開き、動きが遅く感じる。
そして、ミヨさんに手の中の刃を突き立てようとしたその瞬間。
ふ、と。
柔らかく笑うミヨさんがいた。
「……あ、ああああああああああああ!!!!」
その表情に何かを感じたが、私はそれらを振り切ってミヨさんに刃を突き立てた―――。
『しゅ~~~~りょ~~~~!!!!』
かぐやの大きな声が終了を告げる。
『今回の喧嘩は~~?私たちのぉ、勝ちぃ~~~~!!!』
その宣言を聞いて、私はやっと終わったことを実感したのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
さて、終了後。
独りたたずむミヨさんを見つけた私たちは、彼に駆け寄っていった。
「はは…まさか負けるとは思わなかったな」
「へへーん、どんなもんよぉ!」
勝ち誇るかぐやに対して苦笑しているミヨさんに、私とヤチヨは歩いて行った。
「さて、これで諦めてくれたよね?」
「そうです!あれだけ強かったミヨさんに勝ったんだから、これからは一人で決めるんじゃなくて私たちにもちゃんと相談してくださいね!」
そういう私たちに対して、ミヨさんは笑みを浮かべながら
「ああ―――その話、無しで」
「「え…?」」
瞬間、ミヨさんを中心に光の柱が立つ。
「これは…楔!?待ってミヨ、なんで!?」
「勝負に勝ったんだから、納得してくれたんじゃ…!?」
私たちの叫びに、ミヨさんは変わらぬ笑みを浮かべながら答えた。
「いや、むしろ逆だ。」
「逆…?」
「ああ、俺に勝てたキミたちなら何があっても乗り越えられると判断したんだ」
「な…なにをいって」
「この喧嘩の前から決めていたんだ。絶対に、どんな手段を使おうと。それによってキミたちからどれだけ恨まれようと―――俺は必ず、ヤチヨを救うって。
だから、ごめんな。二人とも。約束は勝手ながら破棄だ」
「そん、な。……そつき。ミヨの、嘘つきぃ…」
そう言いながら笑みを浮かべるミヨさんに、ヤチヨは涙を浮かべながら責めた。
「そうだ、俺はどうしようもない嘘つきだ。―――だから、こんな俺よりももっといい子と幸せになるんだ。…彩葉、ヤチヨのこと、頼んだよ」
「勝手なことぬかしてんじゃないですよ!あなたがいないと私は…私たちは…!」
泣き叫ぶ私に対しても、ミヨさんは変わらなかった。
「大丈夫、改変されれば俺の記憶なんて今度こそきれいさっぱり無くなるさ。
…さて、そろそろかな。じゃあね、みんな。俺の記憶がなくなるまで、存分に俺を罵って、恨んで、そして―――許さないでくれ」
「やだ…やだよ、行かないでよ!ミヨ!!!!」
「やめてください…行かないで、ミヨさん!!!」
訴え虚しく、光は最高潮に達し―――そして私たちの意識が光に溶ける瞬間、ある声を聞いた気がした。
『…愚か者め』
END?:■■■■■■■■■■■■
どうも、ど素人ことあさらこです。
そろそろ書かなくてはと思い、筆を執らせていただきました。
まあ皆さんこんな場末の作品は忘れ去っていると思うので、読む人なんていないかな?
個人的に個別エンドはバッドエンドにすると決めていたので、望むところではあるんですが…段々お仕事が忙しくなってきたのと、某星を巡るターン性バトルSFゲームと同社が出してるポストアポカリプスな世界観のゲームにハマって抜け出せなくなってしまい、めちゃめちゃに遅くなってしまいました。
さて、残るはかぐやの個別エンドと最終話の残り2話になりましたが、もし読んでくださっている方がいらっしゃれば気長~~~に待っていただければと。
それではまた、気が向いた時にでも。
…なんかミヨ君の個別エンドだけ長くない?
個別エンドの順番決め。投票順にします
-
いろは
-
かぐや
-
ミヨ