名探偵プリキュア! -銀の正義と黒の秘密-   作:寿垣遥生

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遥生です。たんプリの二次創作を書いて2ヶ月ぐらいが経ちましたけど、色々と最近書いてた作品を上回っててもう驚きですね⋯それだけ原作が人気ということもありますし、何よりも僕の作品を気に入って読んでくださる方々のおかげでもあります。本当に心から感謝ですね!いつもありがとうございます。これからも皆さんが楽しめる作品を書いていきたいと思うので、どうぞよろしくお願いいたします!特にるるかちゃん推しの方は萌えてくださいませ。

そんな今回からは6話分となります。すれ違いから起きたあんなちゃんとみくるちゃんの喧嘩からの仲違い⋯マコトジュエルを取り返してポチタンを元気にするためにどうするのか?その中で過去の話で言及された信義の挫折も明かされます。どんな話になるのか⋯どうぞお楽しみに!

それでは、また後書きにて。


#13 近くて遠い距離

side信義

 

 その日の夜、夜ごはんとかも済ませて俺が風呂から上がるとパジャマ姿のあんながソファーに座ってはポチタンにミルクを飲ませていた。みくるとはあれっきり気まずい状態が続いていて彼女も自分の部屋に早く戻ったのだろうな⋯

 

「どうだ、ジェット先輩⋯ポチタンの状態は?」

 

「ミルクはとりあえず飲めていて体力も戻ってはきている。しかし、あんなとみくるがな⋯」

 

『話は聞いていたが、お互いのすれ違いから喧嘩してしまったようだな⋯ボタンのかけ違いにしては厄介だ。』

 

「とりあえず、あんなと話してみる。俺もあんなとは話さなきゃと思ってたからな⋯」

 

 俺は部屋の前にいたジェット先輩とドギーからそれぞれポチタンやあんなとみくるの状態を聞いてから、当事者の1人であるあんなの隣に座ってから彼女と話をすることに⋯こういう時に頼りになるのは従兄の俺しかいない。もちろんみくるとも個別で話すと思うが、まずはあんな側の意見から聞くようにしよう。

 

「あんな⋯」

 

「ノブお兄ちゃん、ごめんなさい。私のせいでポチタンが⋯本当だったらみくるにもプリキットを渡すべきだったけど、勇気が出なくて。酷いよね、私⋯」

 

「お前は自分を責めすぎなんだよ。これに関しては俺もお前に強く言えなかったからこっちにも非がある⋯とりあえず、まずはみくると仲直りすることからだ。本当の気持ちを話せばきっとあいつも分かってくれるよ⋯」

 

「うん。私、みくると仲直りできるかな?」

 

「大丈夫、お前ならきっとみくると仲直りできるさ。みくるだってあんなのことを大事だと思っている⋯だからこそボイスメモで呼んだんだよ。その信頼は簡単に消えないと俺は思うな⋯」

 

「ノブお兄ちゃん、どうしてそう思うの?」

 

「いいか?探偵とか刑事ってのは色んな人との信頼も大事になってくる。一方的に肩入れするのは良くないが、相手を信じるってことも大事なんだ⋯みくるはお前を信じて連絡をしたってわけだよ。嘘だと思うならいくらでも調べれば良い⋯でも、探偵とか刑事は嘘をついてはいけないんだ。だから誠実な同業者、今回ならみくるを信じるべきじゃないのか?」

 

「そうだね⋯私、みくるのことを信じるよ。ありがとう!」

 

「良い子だ⋯」

 

 俺はアドバイスを素直に聞き入れたあんなを褒めてから頭を撫でる。これで彼女が前を少しでも向いてくれれば良いのだが、あとはみくる次第だ。

 

「ところで、ノブお兄ちゃん⋯帰ってきた時、ずぶ濡れでズボンも汚れてたけど何があったの?確か、警察の方に行方不明だったるるかちゃんって子の捜索願を出しに行ってたよね?」

 

「ああ。実は帰りの公園で会ったんだ⋯連れ去られたところから逃げ出したみたいで無事だったよ。とりあえず、あとは警察も無事であることを確認できれば解決ってところだ。」

 

「良かったね。私もるるかさんとゆっくり話がしてみたいな⋯」

 

「今度紹介しようか?」

 

「やったぁ!楽しみ⋯じゃあ、今日はもう寝るね?みくるとは明日、話をしてみるから⋯おやすみなさい!」

 

「ああ、おやすみ。」

 

 そして、あんなはポチタンを抱いてから部屋を後にして寝室へと向かった。それを見届けてから俺はズボンに入れていた例のプリキットを取り出しては見つめる。

 

(やはり、みくるの分が揃わないと使えないのか⋯それにしても、どうしてポチタンが力を使った時にこのルーペは光ったんだ?ポチタンと何か関係が⋯)

 

「とりあえず、思うことは色々とあるがお前も寝た方が良い。このプリキットのことは明日でも考えれば良いさ⋯」

 

『目に見えて疲れてそうだからな。信義が頑張ってるのはよく分かる⋯今日ぐらいは沢山寝た方が良いと俺も思うぞ。』

 

「ジェット先輩、ドギー⋯分かった。俺ももう寝るわ⋯おやすみ。」

 

 それに続いて俺もジェット先輩やドギーの進言を受けて早めに寝ることにした。ここ最近徹夜で色々考えたり作業ばかりしてたからな⋯しかし、こうして日付が変わる前に寝たのはいつぶりだろうか?恐らく高校時代以来かもしれない⋯今日はしっかり寝て明日に向けて記憶以外はリセットだ!

 

side out

 

 

 

 

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「ニジーは何故戻らない?」

 

 ファントムのアジトに依然として帰らないニジー⋯その様子に首領のウソノワールは苛立ちを見せている。ニジーはマコトジュエルを回収したはずなのだが⋯

 

「マコトジュエルを2つも手に入れたのに⋯」

 

「超ありえないんだけど?」

 

「⋯」

 

「とりあえず、誰がニジーを連れ戻しましょうか?何なら私が⋯」

 

「ブラキッドはここで待て⋯キュアアルカナ・シャドウ、ニジーを連れ戻せ!」

 

「やれやれ⋯あんた、出番だぜ。俺の分までせいぜい頑張れよ?またプリキュアを助けることがあったら⋯分かってるよな?」

 

「あんたに言われなくても分かってるわよ!」

 

「ライライサー!」

 

「「ライライサー!」」

 

 こうして、ニジーを連れ戻す任務はるるかとマシュタンに託されることに。ブラキッドは彼女達に釘を刺すように忠告するも言わなくても分かるという感じでマシュタンも強気で言葉を返した。

 

(とりあえず、ニジーを連れ戻す前か後に織田さんに一目会いたいな⋯)

 

 るるかは心の中で信義とまた会えることを楽しみにしつつ任務に向かっていく。本当に彼女は彼に恋してから何もかもが変わったと言える。果たして、るるかはどう動くのか?

 

 

 

 

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sideみくる

 

「みくる⋯どこへ行くんだ?」

 

 次の日の朝、私が探偵事務所を出ようとすると師匠がどこへ行くのかを訊ねてくる。その横にはポチタンを抱いているあんなもいて、彼女も心配そうにしていた。

 

「マコトジュエルを取り返しに行ってきます。」

 

「待って、私も行く!」

 

「俺も!お前1人でファントムに挑むのか?そんな無茶なことは師匠として俺は認めないぞ!」

 

「止めないでください、今回のことは私の責任なんです⋯師匠はあんなと一緒にポチタンのそばにいてあげてください。」

 

「お、おい!」

 

 私は師匠の指示に逆らって事務所を飛び出して学校へと向かった。もちろん、この日はお休みではあるが目的はマコトジュエルを取り返すためである。

 

『よく言いませんか?ツバメが低く飛ぶと雨が降るって⋯』

 

『さっきの君の言ってたことのおかげでどう運べば良いのか良い考えを思いついたよ。』

 

『ツバメのように飛んでいけば簡単に運ぶことができる!』

 

 私は頭の中で昨日の自分の不用意な発言を思い出してそれを悔やむ。ニジーが変装していたことも知らないで余計なことを言ってしまったのが悪いんだ⋯それに、あんなにも酷く当たってしまったし師匠にも沢山の迷惑をかけてしまった。こんな私が誰かに頼る資格なんて⋯全部、私のせいなんだ!

 

side out

 

 

 

 

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 その頃、ニジーはある林の中に身を潜めていた。あれから彼はアジトに帰ることをせずに様子を見ている⋯もちろん、名探偵プリキュアのことだ。

 

「あたしの占いに出ていた通り♪」

 

「ん?」

 

 マシュタンの声がして背後を振り返ると、そこには話しかけたマシュタンと木の上に登って5個重ねのアイスを食べているるるかの姿があった。

 

「誰かと思ったら君達か。僕はブラキッドがいるのかと思ったよ⋯皮肉というか嫌味を言いにここに来たんだろうなって。」

 

「あんなやつと一緒にしないでちょうだい。それよりも、どうして戻ってこないわけ?」

 

「⋯」

 

「迷子になった?」

 

「んなわけないだろ!!」

 

 るるかがニジーに迷子になったから帰れないのかを問うと、ニジーは彼女に激怒する。仮にもファントムの幹部にもなった大人の彼が迷子だなんて言われたら名誉毀損も良いところだ。

 

「じゃあ、どうして?」

 

「うっ⋯」

 

 代わってマシュタンが理由を問うと、ニジーは言葉を詰まらせて答えるのを躊躇してしまう。彼の中にも迷うというか思う部分が強いのだろう⋯マコトジュエルのことにしても、プリキュアにしても、それを助けたポチタンにしても。

 

「ふっ⋯より美しい結末を求める自分がいるのさ。本当に僕は欲深い怪盗だよ。」

 

「何する気?」

 

「プリキュアを倒す⋯!」

 

 ニジーの答えを受けてるるかが何をするのかを訊ねると、静かにプリキュアを倒すと宣言する。もう彼はふざけられる立場ではない⋯表情からは余裕も笑顔も消えていた。

 

「ウソノワール様にそう言った手前でね。僕には後がない⋯君の初恋相手がいるにしても華麗に決めてみせる!」

 

「ニジーったら⋯本気のようね。るるかは覚悟できてるかしら?」

 

「あの人がプリキュアになれない程度なら問題ないわ⋯」

 

「随分無茶なことを言うね、君は⋯まあご期待に添えれるかは保証できないけど。」

 

 ニジーはるるかの無茶振りに反応して一言呟くとツバメのハンニンダーを連れて気持ちにおいても作戦においても準備を進めていく。るるかもこれに関して思う部分は信義絡みだけに色々あるだろう⋯果たして、ニジーはどう立ち回るのか?

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

 

sideみくる

 

 走ることしばらく、私は学校の中のツバメの像があった場所へとたどり着く。そこはやはりニジーからマコトジュエルごと奪われているのか何もなかった。でも、きっと何かあるはず!

 

「フフフ⋯証拠を探しに戻ってくる、思った通り待っていたよ?探偵さん♪」

 

 そのツバメの像があった場所に着くと、そこにはマコトジュエルごと奪った張本人であるニジーが待ち伏せていた。彼がやったことは今回に関しては自分に落ち度があったとはいえ、許すことはできない⋯そんな相手が目の前にいた。

 

「ニジー!」

 

「おっと⋯落ち着いてよ、ベイビー?僕はただ⋯とびきり素敵なショーに招待したいだけさ!」

 

「⋯」

 

「マコトジュエル、つまりは2羽のツバメをご覧にいれるよ。」

 

「えっ?」

 

「会場はこの街が誇る美しい浜辺、虹ヶ浜!ロマンティックだろ?」

 

「くっ⋯!」

 

 ニジーは私をショーとして何かをしようと虹ヶ浜へと招く。本当に何をするのだろうか?それを迷ってる隙にニジーは跳び上がってからツバメに乗って飛び、虹ヶ浜へと向かいそこで待ち構えようとする。

 

「待ちなさい!」

 

「お待ちしているよ、ベイビー♪」

 

 そう言い残してニジーは去っていく。彼の待ち場所は虹ヶ浜、あんながもしも私を許してくれるなら⋯そう思いつつ私はニジーを追いかけて虹ヶ浜へと向かうのだった。

 

side out

 

 

 

 

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side信義

 

「⋯」

 

 みくるが行ってからそれなりの時間が経つ頃、ジェット先輩とドギーがルーペについてを調べている中であんなは落ち込んでいた⋯折角少しは希望を持てたのにみくるは彼女と話をすることなくマコトジュエルを奪い返しに行ったのだから無理もない。

 

「あいつなら大丈夫だよ。探偵を昔から志していただけあって人間はしっかりしてるし、もし何かあったら報告してくれるはずだ⋯何も気負うなよ?」

 

「でも⋯みくるは私のことを信頼してないから1人で飛び出したんじゃないかな?私がわがままだから、それで嫌いになって⋯」

 

「あんな⋯」

 

「いくら調べても何も分からない。」

 

「ジェット先輩、ドギー⋯すまないな、俺が手を離せない間に調査してくれて。何も分からなかったのか?」

 

『ああ。ポチタンの力とルーペが光ったことの因果関係がどうも分からない⋯ただ、このルーペには何か不思議な力が宿っているのは確かだ。ジェットが言うプリキュアを救う何かがあるはず⋯』

 

「そうか⋯」

 

「ところで、みくるはどこへ行ったんだ?」

 

「マコトジュエルを探しに行った⋯」

 

 ジェット先輩が調査をしていた間にいなくなったみくるの行方を問うとあんながそれに答える。彼女は去り際の言葉からして責任を強く感じていたのは言うまでもない⋯だけど、無茶をして良いとは俺は思わない。ただ、みくるは止まることを知らずに行ってしまった。

 

「⋯ったく、あんなと信義とポチタンを残して。」

 

「私が⋯私が悪いの。みくるに声をかけられなかったから⋯」

 

「あんな?」

 

「笑ってたんだ。友達と見たことない、知らないみくるで⋯だから、知らないみくるの世界があるんだって。出会ったばかりだから知らなくて当然だよね?邪魔しちゃいけないと思って、みくるに頼らず捜査をしたら、言い合いになって⋯」

 

 あんなは泣きながらジェット先輩にも自分の気持ちを打ち明かす。そんな彼女の頭を俺は黙って撫でるが、本当に辛かったろうな⋯この時代に来て巡り会った親友を奪われたのだから。まあ、これは俺が昔から彼女のそばにいてやれないことにも落ち度がある問題だ。昔からそうだ、俺とあんなはあくまでも従兄妹だから俺が大学の関係で一緒に住むまでは離れ離れだったし進学しても警察になっても一緒に遊べるのは休日のみ⋯それに、何の脈もないこの時代に飛ばされて母親やら現代の親友とも離れ離れになったものだから寂しいのは仕方ないだろう。それなのに、ずっと一緒にいれない俺が申し訳なく感じた⋯

 

「あべこべだなぁ⋯」

 

「あべこべ?何と何がだ?」

 

「あんなとみくるがだよ。まるで逆になったみたいだ⋯みくるのこと、色々考えたから動けなくなったんだろ?みくるみたいじゃないか。」

 

『言われてみればそうだな。』

 

「みくるは1人で飛び出して行っちゃうし⋯それじゃあまるであんなだ!」

 

「2人はそれぞれ影響してるんだな⋯ジェット先輩もそう思ったのか?」

 

「まあな。出会ったばかりなのにも関わらず、びっくりするぐらい影響されてるよ⋯僕は見たものしか信じないから間違いない!あんなとみくるは奇跡の2人、だろうな。」

 

「ジェット先輩⋯」

 

「それだったら俺も昔話を一つさせてもらう。これはお前も関わってるかもしれないけど、昔⋯今のあんなと似たようなことで悩んでたんだよ。」

 

「ノブお兄ちゃんが?でも、私が関わってるって⋯覚えてないかも。」

 

「まあ、お前がめちゃくちゃ小さい時だもんな。じゃあ、教えてやろうか⋯」

 

 そして、俺はあんなやみんなの前で自分の昔話を語ることに。本当にあの出来事があった時は今のあんなと同じような心境だった⋯本当に俺の人生で最大の挫折だったんだよな。

 

~12年前~

 

 その出来事があったのは12年前、俺が高校に入学した時のことだった。当時の俺は実家のある和歌山を出て大阪の剣道の名門である刀院(とういん)高校に進学⋯この時は和歌山では3年間負けなし、全国でも最高ベスト4という成績を残して特待生として合格して満を持して入学。そんな俺はもちろん寮生活をしていたのだが⋯ある1人の男と寮のルームメイトとして出会った。

 

「ルームメイトは誰かと思ったら隣の席の織田やないか!まさかお前とルームメイトになるとはな⋯3年間よろしゅう頼むで?」

 

 彼の名前は片岡敦也(かたおかあつや)、京都の野球のシニアチーム出身で4番として全国制覇を経験した野球少年だった。そんな彼は身長が俺よりも高くてポジションはサードで守備も上手く打っては中学通算65本のホームランを打ち、走っては68盗塁の俊足も兼ね備えた5ツールプレイヤーだ。そんな彼はもちろん甲子園の常連にして出れば優勝候補と言われてたこの刀院高校に進学してクラスメイトになりそして寮のルームメイトにもなった。

 

「俺も片岡とルームメイトになれて嬉しいよ。こちらこそよろしゅう頼むな?」

 

「ああ!」

 

 俺と片岡は握手を交わしてから友達になる。それからは部活は違えども一緒にいる時は楽しく話をしたり、部活がお互いに休みで都合が合った日は門限ギリギリまでゲーセンとかカラオケとかファミレスとかでバカ騒ぎしていたな⋯それで、いつの日か俺らは『ノブ(俺)』、『あっちゃん(片岡)』と呼び合う仲になっていた。しかし、そんな日々は長く続かず⋯その仲は静かに崩壊していくことに。

 

「(近いうちにゴールデンウィークの連休やし、俺もあっちゃんも休みの日も1日や2日はあるから空いてる日を聞き出して遊びに誘おう!)おーい、あっちゃ⋯ん?」

 

「敦也、今日部活休みやしゲーセンで遊ぼうで〜?」

 

「ああ、2人でな!」

 

 俺が片岡を見かけて声をかけようとしたその時、彼の幼馴染にして親友で同じ野球部の男と話をしていて、彼は俺以上の笑顔を見せていた。自分の知らない片岡の表情を見て、この時の俺は劣等感を覚えてしまう⋯

 

「それにしても、ええんか?ルームメイトの剣道部のやつは誘わんで⋯」

 

「織田か?あいつは正直言って面倒というか嫌いなんよなぁ⋯俺、実は最初から嫌いだったんよ。和歌山という田舎から来たんやろ?俺、和歌山の野蛮なやつらが嫌いやねんて⋯ちょっと話をしたらバカのようにはしゃいどったからそれで遊んでやっただけやで?」

 

「ハッキリ言うやないか。織田本人が聞いてたらどう思うんやろうなぁ⋯」

 

「聞いてへん聞いてへん、あいつはバカの単細胞なんやから⋯ハハハ!」

 

 片岡は親友の前で俺に対する本音をハッキリ言った。俺ってそんな風に思われていたのかとこの時はショックで立ち直れなかったのは言うまでもない⋯

 

(とりあえず、寮の部屋まで戻ってきたんやけどあっちゃんに何を話せばええんや⋯)

 

「ノブか。」

 

「あっちゃん⋯」

 

 俺が部屋のドアを開けようとすると、それよりも先に荷物を持った片岡が出てきた。やはりこの様子だと俺のことを嫌って寮の部屋の変更申請も済ませたのだろう⋯

 

「実はお前に言いたいことがあんねん。俺、今日でこの部屋を出て新しいルームメイトと過ごすことにするわ。すまんな⋯いきなりで。」

 

「俺が田舎者やから嫌いなんやろ?だから出ていくんか⋯」

 

「何言うてんねん、どこでそんな話を聞いたんか?」

 

「お前の親友に吐いてたやろ。俺が和歌山の田舎者やから面倒とか⋯とぼけんなや!」

 

「聞いてたんか?でも、これはちゃうねんて⋯俺はちょっとしたジョークを言っただけなんよ!何を真に受けてんねん?」

 

「ふざけんな!和歌山のことはいくら田舎と言われても事実やから受け止めるけど、俺というか和歌山県民をそれに絡めてバカにするのは許さへん!お前、冗談にしても言って悪いことの境目が分からんのか!?」

 

「悪かった。でも、俺の話を⋯」

 

「お前の話なんか聞かへん、この嘘つき野郎!」

 

 そして、俺は片岡の胸ぐらを掴んでからは怒りのあまりに殴りかかり気がついたら彼をボコボコにしていた。そんな様子を周りの生徒や先生に見られて止められてたにも関わらず⋯結局、俺は1ヶ月の停学処分を命じられて父さんと共に片岡の保護者とかにも謝罪する羽目になり片岡本人は京都の高校に転校したのは言うまでもない。

 

「帰ってきたか。」

 

「ただいま、父さん⋯」

 

 ゴールデンウィークの初日、高校に入学してから初めて和歌山の実家に帰ると父親である織田信弘(おだのぶひろ)が玄関前で出迎えに来ていた。この時の彼は現役で和歌山県警本部の本部長をしていて、謝罪のためにわざわざ大阪にある学校まで頭を下げさせてしまったのに特に何も言うことなく優しく迎えてくれたのだ。

 

「父さん、ごめん。俺のせいで⋯」

 

「気にするな、今回のことに関してお前には確かに悪いところもある。ただ、100悪いわけやないし反省してるんやろ?だったら何も言わんでええ。家に入りなさい。」

 

「父さん⋯ありがとう。」

 

 そう言われて俺は父さんと一緒に玄関のドアを開けてから自宅の中へと入っていく。帰ってくると食卓にはバラエティー豊かな昼ごはんがずらりと揃っていた。

 

「おかえり、信義。叔母さんとあんなちゃんも来てるさかい挨拶しなはり?」

 

「こんにちは、信義くん。」

 

 リビングに入ると母親である織田仁美(おだひとみ)と叔母さんに加えてその娘で当時2歳の従妹のあんなもいた。母さんはこの時は衆議院議員になったばかりの新米政治家で、叔母さんとあんなは例のごとくまことみらいの方からゴールデンウィークに年末年始以来に泊まりに来ていた。

 

「こんにちは、叔母さん⋯年末年始以来ですね。両親から話を聞いたと思いますけど、ご心配をおかけして申し訳ありません⋯」

 

「大丈夫よ。失敗は誰だってあるんだから⋯お昼ごはんはお母さんと一緒に作ったから後で食べてね?」

 

「ありがとうございます。」

 

「ノブ、アンパ〇マン観よ?」

 

 叔母さんと俺が話をしていると、2歳だったあんなが歩み寄ってきてはアンパ〇マンを観たいと言ってくる。この時の彼女はまだ年齢的にそんなに上手く喋れないが、かなり懐いていた⋯ちなみに、今では『ノブお兄ちゃん』呼びだが昔の俺は呼び捨てで『ノブ』と呼ばれていた。その理由が彼女が1歳になる前か後かに一族集まった時にテレビを観ていて同じ芸名の芸人が名前を呼ばれてるところから『ノブ』を初めての言葉として覚え、その時に俺のことも『ノブ』と呼んだのがきっかけである⋯兄貴に関しては『信幸』で『ノブ』要素はあるが、こっちはめざましテレビでユキという名の犬が出てきてそれを覚えたことで兄貴を指差して『ユキ』と呼んでいたことがきっかけだ。(現在は『ユキお兄ちゃん』と呼んでいる。)

 

「分かったよ、あんな⋯今からお兄ちゃんとアンパ〇マン観ような?」

 

「何や、信義⋯もう帰ってたんか?部活はどうしたん?」

 

 これからあんなとアンパ〇マンを観ようとしたその時、上の部屋から降りてきた兄貴がやって来る。部活のことを質問するとか本当に悪意しかない。

 

「兄貴、俺は停学処分になったんやて⋯分かってて言うとるやろ?」

 

「悪ぃ。父さん、母さん⋯叔母さんも来てるさかいそろそろ墓参り行った方がええんちゃう?あんなは信義に任せて。」

 

「せやな。信義、父さん達は今から墓参りに行ってくるさかいあんなのこと頼んだで?」

 

「分かった。」

 

「ママ⋯」

 

「大丈夫よ、あんな。ママはすぐ帰ってくるからね?信義くん、娘のことをお願いできる?」

 

「分かりました。」

 

「お前、いくらあんなが可愛いからって2人きりの状態から変なことすんなよ?」

 

「うっさいて、俺はそんなことせえへん!ロリコンちゃうねんぞ?」

 

「ロリ⋯コン?」

 

「あんなは覚えんでええ、ごめんな⋯つい。」

 

「⋯?」

 

「はいはい、ほな⋯行ってくるわ。」

 

 そんなこんなで兄貴も父さん達を追って父さんの父親⋯つまり、俺の曾祖父のお墓参りへと向かっていく。これで俺とあんなの2人きりになった⋯

 

「ノブ、アンパ〇マン!」

 

「分かってるて、ちょっと待ってな⋯あった!あんな、ここに3枚のDVDがあるんやけど、どれを観たいん?」

 

「あんな、これ観たい!」

 

 俺がアンパ〇マンのDVDが入ってるパッケージを3つ見せると、あんなは真ん中のを指差す。その真ん中に描かれていたのは作品でも人気のあるメロン〇ンナだ⋯なかなか人気だよな。

 

「分かった、メロン〇ンナちゃんのね。それじゃあ、再生っと⋯」

 

 そうして、俺はレコーダーにアンパ〇マンのDVDを入れてそれを再生する。本当に2歳ぐらいの子供ってアンパ〇マン好きだよなぁって思う⋯自分も人のことを言えないけど。

 

『やめるんだ、バイキ〇マン!』

 

『出たな、おじゃま虫!』

 

(しかし、こうしてある程度大きくなってアンパ〇マンを観てみると中身はワンパターンやな⋯こんなの息抜きにも何にもならへん。)

 

「ノブ、しょぼんしてる。力出ないの?」

 

「えっ⋯いや、別に?」

 

「じゃあ、あんな⋯ノブに新しい顔作る!」

 

 そう言うと、あんなは『新しい顔を作る』と言ってはキッチンへと向かおうとする。本当にこの時の彼女はアンパ〇マンの影響で新しい顔に交換すれば元気になるということを真に受けていたのだ。

 

「いや、ええて!そんなんせんでも元気は出るから⋯それに、アンパ〇マン観てるんやろ?観ないならチャンネル変えるで?」

 

「嫌だ、アンパ〇マン観る!あっ、ノブ⋯リモコン。」

 

「えっ、ああ⋯」

 

 あんながリモコンを欲しがっていると、俺は困惑しながらも彼女にリモコンを渡した。すると、慣れた手つきでホームメニューに戻ってはボーナストラックに飛んでノンクレジットの『アンパ〇マンたいそう』を再生していく⋯ここら辺は母親である叔母さんのリモコン操作を真似しての行動だろう。当時から思ってたけどあんなって結構賢い子だよな⋯

 

「『アンパ〇マーン!』」

 

 そして、あんなは俺の前でアンパ〇マンたいそうを歌って踊ってみせた。2歳なのにちゃんと歌えて踊れてるのは凄いけど、俺の気持ちを読み取ってこういう行動が取れたのだろう⋯歌詞の中には『落ち込んだ時でも楽しかったことを思い出して前を向こう』というそんな優しいメッセージが込もっていて、それが嬉しくて俺は嬉しさのあまり思わず泣きそうになった。

 

「ノブ、元気100倍なった?」

 

「ああ。お前のおかげで元気100倍や⋯ありがとうな、あんな。俺、頑張るわ⋯」

 

「えへへ♪」

 

 俺は歌って踊り終えたあんなのことを抱きしめてから頭を撫でていく。本当に俺はこの何気ない彼女の行動に救われた⋯何気ないどころかあんなは分かってて俺を元気付けようとしていたことだろう。この時から俺とあんなの絆はさらに強くなり今に至るってわけだ⋯

 

~現在に戻る~

 

「⋯ってことがあったんだよ。」

 

「そうなんだ。私、ノブお兄ちゃんに元気を与えようとアンパ〇マンたいそうを歌って踊ったのは覚えてたけど、辛い思いをしてたんだね。でも、元気になってまた頑張ることができて良かった⋯」

 

 俺が自分の人生の挫折についてを全て話すと、あんなは何故あの時俺が落ち込んでたのかを納得しては安心した表情を浮かべる。あんなも俺を救えたことが嬉しいということだろか⋯本当にの出来事がなかったら俺は二度と立ち直れず警察官にすらなれなかったと思う。だからこそ、俺はあんなに頭が上がらなぐらい感謝しているのだ⋯

 

「本当にお前のおかげで助かったんだ。あんなも今は辛いと思うけど、みくるはあんなを守ろうと1人で戦いに行くぐらいだからな⋯決して俺のように嫌ってるわけじゃないと俺は思うぞ?」

 

「ノブお兄ちゃん⋯」

 

「ポチ⋯」

 

 俺があんなを励ますと、ポチタンがそれに反応してから彼女を見つめて何かを呼びかける。その表情は笑顔で、『元気を出して!』と呼びかけてるようにも思えた。

 

「ポチタン⋯」

 

「ポチタンは僕とドギーに任せろ!行けよ、みくるのところに。」

 

『お前達3人で名探偵プリキュアだからな。みくるも待っているはずだ⋯』

 

「ジェット先輩、ドギー⋯私、行ってくる!」

 

「その意気だ。よし、お前は着替えてこい⋯俺はもう準備万端だからな?待ってるぞ。」

 

「うん!」

 

 そうして、あんなはポチタンを俺達に託してから着替えに行った。俺はあの時にあんなから勇気をもらい、12年後(1999年にタイムスリップしてるけど⋯)の今に今度は俺があんなに勇気を与えることができた。あの時の恩返しができて本当に良かったと心の底から思うばかりである。




登場人物紹介

片岡敦也(かたおかあつや)

(脳内)CV:天崎滉平

身長:184cm(当時)

体重:74kg(当時)

誕生日:6月6日

年齢:満28歳

信義の元クラスメイトにして元(寮の)ルームメイト。京都の名門シニア出身で刀院高校に野球留学してきて、中学時代は65本塁打、68盗塁で守備も良く走攻守を兼ね備えた野球エリートでポジションはサード。信義とは同じクラスで席も隣でルームメイトにり仲良くなったはずだったが、実は信義のことを『和歌山の野蛮な田舎者』として嫌っていてそれを知った信義の怒りを買い、殴られた中で言動の非を問われて逃げるように地元の京都の高校に転校。現在は大学を経てプロ野球選手になっている模様。


織田信弘(おだのぶひろ)

(脳内)CV:山路和弘

身長:192cm(当時)

体重:79kg(当時)

誕生日:6月4日

年齢:満62歳

信義と信幸の父親。かつては和歌山県警の本部長を務めたりとした名警察官で、見た目と育て方は厳しいもののその中にある優しさと人情深さで信幸と信義の兄弟を育てた。2年前に定年退職してからは和歌山の自宅で悠々自適な生活を過ごしつつ週1で和歌山の夕方のニュース番組にてコメンテーターとして出演している。


織田仁美(おだひとみ)

(脳内)CV:久川綾

身長:166cm(当時)

体重:48kg(当時)

誕生日:11月12日

年齢:満60歳

信義と信幸の母親で旧姓は小林。信弘と結婚する前後辺りまでは和歌山で大学病院で医者(外科医)をやっていて、彼が入院した時の担当医だった縁もあり結婚。その中で現代医療に対する不満から医者を辞めてから政治家を志し、与党である正義党の推薦を受け和歌山1区から出馬しそこから5期連続当選で現在は厚生労働大臣を2期連続で務めている。12年前当時はまだ新米議員。性格はとても穏やかで優しく信幸や信義といった息子達や信幸の子供である孫に加えて姪のあんなに甘いところもあり、たまに信弘から注意されることも。大臣を務めたりもしているが、謙虚で誠実な政治家でもある。


いかがでしょうか?今回で信義の過去や両親が明らかになりました。信義に関しては過去にあんなちゃんと似た経験をしていて、そこをあんなちゃんから救われていたのです。だからこそ信義はあんなちゃんとみくるちゃんが喧嘩をしていても仲直りの可能性があると希望を持っていました。あんなちゃんに救われ、12年越しにあんなちゃんを救うという⋯良きお兄ちゃんですよね。

その中でみくるちゃんは自分が迷惑をかけたと思い自らニジーのもとへ⋯しかし、そのニジーはアジトに戻らずプリキュアを倒すことを選択。るるかちゃんが連れ戻しに行こうにも戻りそうになく決戦は虹ヶ浜⋯そこへとみくるちゃんは向かうことになります。

あんなちゃんも信義だけでなくジェット先輩やドギーの後押しでみくるちゃんの現場へと向かうことに⋯仲直りはできるのか、そしてマコトジュエルは取り返せるのか?次回の後編もどうぞお楽しみに。

しかし、作中でも触れましたけども⋯原作だったらまずやれないですけど、そこでアンパンマンのネタを使ったんですよね。他局の朝アニメの競合相手ではありますけど、二次創作だし2歳の子はアンパンマンを観ますしね。あと、しれっと千鳥のノブさんの存在も言及してます。2027年から12年前となると2015年ですけど⋯その年って千鳥は人気だったかなと疑問に思ってますが、どうなんでしょうか?(笑)

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