そんな今回はオリジナル回でこの前後編はすみれが主役の回になります。彼女がこの中で大きな決断をすることになりますが、どういう決断をするのか?それを注目していてください。
それでは、また後書きにて⋯
sideすみれ
「あっ、すみれさん⋯こんばんは!」
「ポチポチ♪」
ある日の夕方⋯私が捜査本部の刑事(女性)の分の牛丼の買い出しから帰る途中、おつかいをしているであろうあんなさんとポチタンから声をかけられる。
「あんなさんとポチタン⋯こんばんは。みくるさんは一緒じゃないんですか?」
「みくるは洗濯物とか掃除を事務所でしてるのでおつかいは私1人です。それにしても、沢山牛丼を持ってますけど⋯もしかして1人でこれだけの牛丼を食べるつもりなんですか?」
「いえ、これは今回の事件の捜査に参加している女性の刑事の皆さんの分の牛丼です。私、下っ端なので買い出しに行かされるんですよね⋯」
「そうですか⋯でも、ちょっと顔色が悪いですよ?大丈夫ですか?」
「すみません。もう2日連続で徹夜していて⋯でも、大丈夫です。今日は恐らく徹夜をする必要はないので⋯ご心配ありがとうございます。」
「それなら良かった。あっ、そうだ!これ、ジェット先輩から預かってて⋯受け取ってください。」
そうして、あんなさんはポケットからキーホルダーサイズのプリキット一式を私に手渡す。ジェット先輩⋯恐らくあの白衣を着た科学者の男の子のことだろう。
「これは?」
「すみれさんの分のプリキット一式です。私達はいつでも待ってますからね⋯あなたが名探偵プリキュアの仲間として一緒に戦ってくれるその時まで。」
「あんなさん⋯ありがとうございます。ただ、まだ気持ちの整理ができてない部分があるのでもう少し待って頂けませんか?私はあなた達を信じたいので。」
「はい⋯いつでも大丈夫ですから。それじゃあ、私はおつかいがあるのでこれで失礼しますね?お返事、いつか聞かせてください。」
「ポチ〜♪」
そうしてあんなさんはポチタンを連れてまたおつかいへと戻って行く。そんな背中を見送ってから私はプリキット一式をスーツの懐に入れ、県警本部への帰り道を歩こうとした。その時⋯
(あれ、意識が、遠のいていく⋯)
すると、私の身に突然目眩が起きたかのようなノイズが走り、意識が遠のいて視界がカットオフされて記憶はここで途絶えた。恐らくは過労であるかもしれないが、これほどまでに私は自分の身体のケアを忘れてしまうとは⋯こんな大事な時に倒れてしまった自分を情けなく感じるのだった。
~~~~~~~~
「薫風さん、大丈夫ですか?」
私が目を覚ますとそこはビジネスホテルの部屋と思われる一室のベッドの上だった。そして、横にはノブおじいちゃんの姿が⋯どうやら彼が私のことを助けてくれたみたいだ。
「ノ⋯織田さん、ありがとうございます。あなたが私を助けたんですか?」
「そうですね。たまたま通りかかったらあなたが倒れていて⋯牛丼を沢山買ってたんですけど、あれって先輩刑事に頼まれての買い出しとかですか?」
「はい⋯よく分かりましたね?やっぱり探偵には敵いませんよ。」
「それほどでもないです。牛丼に関してはぐちゃぐちゃになってましたけど、注文した通りのものを僕が立て替えて届けたので⋯心配しなくて大丈夫ですからね。」
「ありがとうございます⋯申し訳ありません、私の不手際をここまでフォローして頂いて。あれ?上着は⋯」
「すみません⋯シワができるとまずいと思って脱がせちゃいました。その上着の懐にプリキット一式があったんですけど、これは一体⋯」
「それはあんなさんからジェット先輩を通して渡されたものです。『仲間になるのを待ってます』って言われたんですよ⋯その気持ちに応えて良いかと悩んでたんですけど、そんな中で過労で倒れてしまって。実は2日前から事件の捜査の為に徹夜していたんですよね⋯でも、時代も時代だから休めなくて。」
私は自分の気持ちとどうして倒れてしまったのかをノブおじいちゃんに話す。この人は今はファントムの人間で敵かもしれないけど、やはり私が小さい頃から優しくしてくれた人だからか何故か信頼できる存在である。ただ、私の目の前にいるのは私が知るノブおじいちゃんではなく若い頃のノブおじいちゃんではあるが⋯
「時代⋯やはり、あなたはそうでしたか。」
「やはり?」
「あなた、この時代の人じゃないですよね?しかも『薫風』というのも偽名でしょう⋯僕はあなたがどういう人かは知ってます。だから、素直に話してください⋯」
「⋯」
ノブおじいちゃんは私が未来人であることを見抜き、見抜かれた私はもう潮時かと悟った。こうなったらもう私がおじいちゃんの孫であることも話さないとかもしれない⋯ボス、秘密の約束を破ってごめんなさい。
「そうです、本当の私は県警の刑事ではありません。私はタイムパトロール日本支部の織田すみれ、実はあなたの孫なんですよ⋯ノブおじいちゃん。」
「やっぱり、ジャックの言ってたことは本当でしたか。」
「ジャックから聞いてたんですね⋯実はあなたの名前を聞いて、ノブおじいちゃんも未来から来ていたことは知っていました。今まで黙っててごめんなさい。」
「いや、謝ることは別に⋯それで、あなたがどうしてジャックを追いかけて県警に派遣されたのか。その経緯を詳しく僕に話してください⋯一応簡単なことはジャックからは聞いています。より詳しく自分の口で⋯お願いします。」
「分かりました⋯」
そうして、私はノブおじいちゃんにジャックとの因縁からタイムパトロールに入り1999年に派遣されるまでの経緯を全て話すことに⋯その過去は自分でも思うに壮絶だった。
~~~~~~~~
~9年前~
「織田先輩、お疲れ様です!いやぁ⋯やっぱり男役は織田先輩しか似合わないですよ。」
「ありがとう。私は宝塚歌劇団に入るのを夢見てるからね⋯中学を卒業したら宝塚音楽学校に入るんだ。あなたも1年生だけどやるじゃない⋯今回の作品、一緒に頑張ろうね♪」
「はい!それでは、お先に失礼します。お疲れ様でした!」
「お疲れ。」
それは私が中学3年生の時のこと⋯あの時は演劇部の部長をしていたのだが、当時から私は髪型はショートカットにしていた。その理由としてはもちろん言うまでもなく私が宝塚歌劇団の男役スターを目指していたからで、小学5年生の時ぐらいにこれまで伸ばしてきたロングヘアーをお母さんに頼んでバッサリ切ってもらいそして身長を伸ばそうと努力をしつつ男らしく見えるように筋トレもしてきた。そんな私は練習の片付けを済ませてから帰路につくことに⋯
「ただいま。」
「お姉ちゃん、おかえり!」
夜近くになって家に帰ると、出迎えに来たのは私の妹の織田梨々花(おだりりか)。この時は小学5年生で歌って踊るのが大好きな女の子だ⋯私とは違ってロングヘアーを2つ結びしていて私が髪を切って半分女を捨てた以上はこの子には私の分まで女の子らしくいてほしかったものだ。
「梨々花、いつも出迎えに来てくれてありがとう。」
「すみれ、帰って来てたのね?もうお風呂はできてるわよ。もう夜ごはんもできてるから着替えたら食卓に来てね。お父さんもおじいちゃんも待ってるから⋯」
「ありがとう、お母さん⋯お風呂入ってくるね。」
そうして、私は母親である織田裕子(おだゆうこ)から言われて制服を脱いで部屋着への着替えを経てお風呂に入ることに⋯お母さんは私の育児に入るまではタイムパトロールで働いていてこの時は専業主婦である。本当に私の将来に寄り添ってくれた大事な存在というか私の家族はみんなかけがえのない人だった。
「パパ、ママ⋯私、今日の国語のテストで100点取ったんだよ!」
「偉いなぁ⋯流石梨々花は俺の娘だ!」
「あなたはほとんど勉強とか教えてないでしょ?どちらかと言えば、私とすみれが梨々花に教えたんだから⋯」
お風呂から上がり、私達は夜ごはんを食卓で食べる。これが家族みんなが生きていた時のいつもの日常だった⋯でも、私が物心ついた時には既におばあちゃんは亡くなっていたのだが。お父さんである織田信一(おだのぶかず)は鼻高々に梨々花のテストの快挙を誇る。お父さんに関してはこの時もタイムパトロールで働いていてお母さんとは所謂同業婚だ⋯そんなお父さんは仕事が忙しくて基本的に非番の時しか私達の面倒を見れていない。
「まあ、それもそうか。すみれの方はどうだ?演劇の方は順調か?」
「うん、今度のコンクールに向けて順調だよ。とりあえず、もっと稽古すればきっと金賞を取って全国大会へ行けると私は信じてる⋯もちろん、みんな頑張らないといけないけどね。」
「お前は高みを目指せて偉いな⋯宝塚はとにかく俺も和歌山に住んでて小さい頃は親に連れられて見せられたが、本当に日本最高峰の演劇集団だった。世界観が丸っきり変わったもんだよ⋯」
私がお父さんからの演劇の仕上がりについてを質問されてそれを答えると、ノブおじいちゃんが宝塚歌劇団を観て世界観が変わった話をする。この話は何度も聞いたことかもしれないけど、関西に住んでたノブおじいちゃんならではの感性と言える。
「もう、お義父さんったら⋯またその話ですか?」
「親父もいい加減しつこいんだよ⋯まあ、それだけ宝塚歌劇団は最高だってことだからな。欲を言えばお前にもタイムパトロールになって欲しかったんだが⋯一度決めた夢に向けて突き進むことをやめるなよ?」
「うん、ありがとう。」
お父さんから励ましの言葉をもらい、私は一言『ありがとう』と感謝する。ちなみに、お父さんの方がノブおじいちゃんの息子でお母さんの方はノブおじいちゃんのことを『お義父さん』と呼んでいた。
「それはそうと⋯明日は信一は非番なんだろ?折角だからすみれも部活が休みだしどこかお出かけに連れて行ったらどうだ?もちろん、俺も行くけど⋯」
「親父、そう簡単に無茶ぶりすんなって。俺だって疲れてるんだからゆっくりさせてくれよ⋯それに、明日は休日だからどこに出かけるにしても混むだろ。本当に親父は発想が思いつきなんだよな⋯」
「うるさい、お前⋯警視総監にまで上り詰めた俺に口答えするのか!?」
「まあまあ、あなたもお義父さんも落ち着いて⋯折角だし、この前隣の市にできた新しい遊園地に行きましょう?朝早くなら混んではないと思うし。」
「遊園地か⋯行くのは久しぶりだな、俺の息抜きにもなることだし行きますか!」
「やった〜!お姉ちゃんも明日は部活お休みだし一緒に楽しもうね?」
「うん!」
「俺も楽しみだ⋯信一、裕子ちゃん。俺ら大人も楽しむぞ!」
「もう、お義父さんったら⋯子供のようにはしゃぐのはほどほどにしてくださいね?」
「そうだぞ、親父⋯あんたはもう定年退職したジジイなんだから無茶をするとまた腰とか痛めるぞ?」
「俺をジジイ扱いするんじゃない!すみれ、梨々花⋯明日はじいちゃんと一緒に遊園地を楽しもうな?」
「「うん♪」」
「やれやれ⋯」
ノブおじいちゃんはお父さんやお母さんよりも張り切った様子で次の日の遊園地を楽しみにする。これには実の息子であるお父さんは呆れた様子だが、この時まではまだ楽しい時間だったと言える⋯しかし、その楽しい時間は脆くもすぐに崩れてしまったのだ。
(翌日⋯)
「遊園地に着いたわね。」
「ああ⋯」
「わーい!お姉ちゃん、早く早く〜♪」
「梨々花、そんなに急がないの!」
それから一夜明けて土曜日⋯私達は隣の市にあるサガミパークへと到着した。梨々花ははしゃいで先へ先へ進む中で私が何とか追いかける⋯本当に梨々花は小学5年生になっても相変わらず元気な子だった。
「それにしても、親父は大丈夫なのか?」
「一応、軽い風邪みたい。食欲に関してはそれなりにあったけど体温が38度近くあったの⋯お義父さん、昨日はかなり楽しみにしてたから興奮して眠れなくて風邪を引いたんじゃないのかしら?」
「本当に孫ができてからバカになった親父だよ⋯すみれが産まれる前は堅物なジジイだったのに。まあ、とりあえずじいちゃんはいないけど俺達で楽しもうな?」
「うん。(ノブおじいちゃんと一緒が良かったなぁ⋯でも、風邪だったら仕方ないもんね。)」
「きゃあああ!?」
お父さんとお母さんがノブおじいちゃんの体調のことを話していると、梨々花の悲鳴が聞こえてその方向を向く。そこにはナイフを持ったフードを被った男が梨々花を人質として彼女の首元にナイフを突きつけていた。周りの観衆もこの様子を見て固まっている⋯
「「「梨々花!」」」
「久しぶりだな、タイムパトロールの織田信一⋯しかも奥さんに娘がもう1人。調べた通りだぜ!」
「その声はまさか、ジャック!?」
「ああ、そうだ⋯追いかけてきた犯人の声と顔を忘れてないとはあんたは最高だぜ?」
男がフードを外すと、そこには今よりも若い赤髪のジャックがいた。この当時でも彼はマコトジュエルを手にする為の強盗殺人をしていて指名手配犯にされていたのだが⋯その犯人が目の前に現れた。
「ジャックってまさか⋯あの指名手配犯の?」
「ああ。俺らが追いかけてきた相手だ⋯お前、俺の娘を人質にして何が目的なのか!?」
「マコトジュエルだよ⋯お前らの結婚指輪からマコトジュエルの気配を感じる。俺にそれを渡せ!さもないと、あんたらの娘の命はねえぞ?」
「あなた、私の妹に手を出さないで!」
「よせ、すみれ!ここは俺と母さんが何とかする。お前はタイムパトロールの仲間を呼んでくれ⋯」
「お父さん、お母さん!ダメよ、相手はナイフを持ってるのに交渉するつもり!?」
「すみれは通報したら安全な場所で待ってなさい。ここは私達が⋯」
ちょうどその時、時が止まったかのような感覚がして身体が固まった。一体、何が起きたというのか⋯それから身体が動いたその時、私の目の前でお父さんとお母さんは胸のところから大量に出血し、やがては口から血を吐き倒れた。梨々花を人質に取っていながらも片手であっという間に刺したのだろう。
「「がはっ⋯」」
「お父さん、お母さん!?」
「ハハハ⋯最近身につけた時を止める力最高だな!これなら簡単に人を殺せるじゃねえかよ。こりゃあ愉快だ♪」
(とりあえず、タイムパトロールに通報しないと⋯)
「てめえ、何してんだ!」
「ああっ!?」
私が自分のスマホでタイムパトロールに通報しようとすると、その動きを見抜かれたジャックに頬を殴られる。ただ、さっきまである程度の距離があったのにあっという間だった⋯
「お姉ちゃん!?」
「ほほう、タイムパトロールに通報しようとしてたのか。ちょこまかちょこまかと⋯タイムパトロールも姑息だが、そのガキも姑息だな!」
(スマホが壊された⋯どうしよう?)
そのままジャックは私が落としたスマホを踏み潰す。これで通報の術はなくなった⋯このまま自分も殺されてしまうのだろう、私はそれも覚悟した。
「お姉ちゃんを手を出さないで!」
「があっ!?」
すると、梨々花は無鉄砲にもジャックの顎に頭突きを入れる。この拍子に彼は梨々花を離してしまい、梨々花は何とか着地をして私の方へと向かった。
「お姉ちゃん!」
「りり⋯か!?」
しかし、その刹那のことだった⋯逃げ出したはずの梨々花は背後から手を回される形でジャックからナイフで心臓を突かれていた。これも時を止める力を使ったのだろうが、ほんの一瞬の出来事である⋯
「姑息な手を使うバチが当たったんだよ、ざまぁねえな!」
「梨々花、梨々花!」
「お姉ちゃん。ごめんね、私⋯お姉ちゃんと一緒の舞台に立つ夢、叶えられないみたい。もう苦しいよ⋯」
「喋っちゃダメ、傷が広がるから⋯梨々花、絶対に生きるのを諦めないで!一緒に帰りましょう?」
「ありが⋯とう、お姉⋯ちゃん。」
そうして梨々花はそのまま目を閉じて息絶えてしまった。即死である⋯私はこの現実を受けて言葉が何も出ず、私は声を押し殺して泣くこと以外できなかった。
「梨々花、梨々花⋯」
「茶番は済んだか?それじゃあ、お前の両親の遺体からマコトジュエルを⋯」
「やめてえええええ!」
私が叫ぶ中でジャックがお父さんとお母さんからマコトジュエルの宿る結婚指輪を奪おうとしたその時、威嚇のような感じで彼の前に斬撃が襲いかかる。ジャックはこれを受けて咄嗟に避けていく⋯その攻撃の先には走りながらこっちに向かってくる銀髪の短髪で警棒を持った屈強な大男がいた。
「ちっ、キュアマスターか!」
「くそっ、遅くなった⋯!」
「ここは撤退だ。まさかここまで来るとはな⋯あばよ!」
大男を見たジャックはこの場から撤退する。そして、そんな彼も現場に到着する。策士服のような格好をして屈強でいてそれでいて凛々しいその姿⋯ジャックが言うには『キュアマスター』、つまりこの彼は先代のそのものであるボスだ。
「君、大丈夫か?」
「私は大丈夫ですけど、父と母が⋯あと、妹も。ぐすっ、うわああああっ⋯!」
我慢できなくなった私は思わずキュアマスターの姿のボスに抱きついては泣き崩れてしまう。この時の私は自分の無力感と家族を失ってしまった辛さで押し潰されそうになっていた⋯この涙を抑えられるわけなどあるわけないのだ。
「すまなかった⋯俺がもう少し早くジャックの動きを検知していればこんなことには。申し訳ない⋯」
ボスは何も言わずに私の背中に手を回してから背中を撫でて励ましては謝罪した。それから彼は何も言うことは特になかったが、これがこの時の私にとっては最大の優しさだったのかもしれない。
「お父さん、お母さん、梨々花⋯」
それから数日後、亡くなったお父さんとお母さんと梨々花の葬式がお通夜を経て行われ、その中で出棺前に3人の顔を見ていたのだが⋯本当に安らかな顔をしていた。それを見てると別れの悲しみと安心感がクロスしてかなり複雑である⋯
「すみれ、ごめんな。俺があの時に一緒にいれば信一と裕子ちゃんと梨々花は⋯」
「ううん、ノブおじいちゃんは悪くない⋯私が悪いの。私も若い時のおじいちゃんのような凄い刑事だったらこうならなかった。私が無力だからこんなことに⋯」
「すみれ⋯」
「君は⋯ノブの娘さんで間違いないよな?」
私とノブおじいちゃんが話をしていると、私達と同じく喪服を着た大柄にして筋肉質で強面な黒髪短髪の男が声をかける。そう⋯ボスであり、人間だった時のドギー・ケントそのものだ。
「はい⋯織田すみれと申します。父の知り合いでしょうか?」
「俺の名はドギー・ケント。君のお父さんであるノブ⋯織田信一が働いていたタイムパトロール日本支部の支部長をやっている。あの時助けた戦士がいたと思うが、あれは俺だ。あの時は本当に助けられず申し訳ない⋯」
「いえ、頭を上げてください。」
「久しぶりだな、ドギー。」
「あなたは⋯織田元警視総監!ご無沙汰しております。」
「おじいちゃん、ドギーさんと知り合いなの?」
「知り合いも何も警視庁とタイムパトロール日本支部は強い提携を結んでいたから彼が支部長をする前から知ってたよ⋯まさかお前が支部長にまで上り詰めるとは。率いているプリキュア部隊も名を上げたな⋯」
「ありがとうございます。それと、この度はあなたのご子息と奥さんとお孫さんを助けられず申し訳ありません⋯」
「お前は何も謝らなくて良い。精一杯手を尽くした結果がこれならどうにもならなかったんだろう⋯でも、すみれとマコトジュエルを守ってくれてむしろ俺の方が感謝したい。ありがとうな⋯」
「いえ、私にはあなたに感謝される資格はありません。そろそろ出棺ですよね⋯織田さんは喪主だからこれから大変でしょうけど、生きているお孫さんのことを大事になさってください。私はこれで失礼します⋯」
「ああ、もちろんだ⋯」
「あの、ドギーさん!」
ノブおじいちゃんとボスが話している中で私は間に入ってはボスのことを呼ぶ。この時に私は決意を固めていたのだ⋯タイムパトロールに入ることを。
「俺に何か?」
「私をタイムパトロールに入れてください!この手でジャックを捕まえて家族の仇を討ちたいんです、お願いします!」
「⋯」
「すみれ、良いのか?宝塚に入る夢は⋯」
「ノブおじいちゃん、ごめんなさい。私、夢が変わったの⋯タイムパトロールに入って私はジャックを逮捕して仇を討ちたい!ドギーさん、お願いします!」
「分かった。しかし、君はまだ中学3年生だろう?まずは高校を出てからタイムパトロールの養成学校の試験を受けるんだ⋯すみれさんがウチに配属されるのを楽しみにしてるからな。お父さんのように期待してるぞ?」
「はい!」
そう言ってボスは私達の前を去って行く。それから私は宝塚の夢を諦め、タイムパトロールになる為に急遽高校に進学してから勉強を積み重ねて養成学校に入り首席で卒業し日本支部に配属されボスのもとで働くことに⋯それからもプリキュア部隊の訓練に耐えた末にキュアバイオレットの資格を得てからジャックの活動拠点である1999年に配属され現在に至る。これが私の過去⋯今も県警本部の刑事としての仕事をしつつもジャックを捕まえる為の捜査も進めているのだ。
side out
~~~~~~~~
side信義
「これが私の全てです。」
そうして薫風さんは俺に全ての過去を話し終えた。本当に家族をジャックから殺されていたんだな⋯しかも、家族構成も明らかになって俺は未来を知ってしまったのだ。そうか⋯俺も誰かと結婚して、息子が産まれてそこから薫風さんとその妹が出てくるんだな。俺のこの未来を兄貴に話したいものである⋯
「そうなんですね。辛かったのに話してくれてありがとうございました⋯」
「いいえ。私も今のノブおじいちゃんに未来を話しすぎてしまいました⋯驚かれるはずだったのに受け入れてくださり感謝しています。」
「まあ、色々と不思議なことがあってて感覚がおかしくなってるんじゃないかと⋯それよりも、気になることが2つあるんですけど。」
「何ですか?」
「まず、僕ってどんなおじいちゃんになるんですか?それと、僕の結婚相手⋯あなたのおばあちゃんになる人は誰なんですか?教えてください!」
俺はこのままの流れで薫風さんに未来の俺についてを質問した。未来の自分がどうなるのかをいくら孫とて聞き出すのはタブーかもしれないが、彼女も自分の過去を話してくれたんだ⋯きっと話すことだろう。
「そうですね⋯私が知ってるノブおじいちゃんはさっきも話したように警視総監にまで上り詰めた素晴らしい警察官でした。私や梨々花が産まれた時には既に定年退職していてとても優しいおじいちゃんでしたよ?しかも、流行の物がとても大好きですぐ使いこなしていたんですよね⋯それで新しいことにも理解を示してた人で私達は助かりました。それと、おばあちゃんに関してもさっき話した中でも出たように私が小さい時にはもう既にいなかったです⋯でも、お父さんがよく話してくれた内容によるとおばあちゃんはノブおじいちゃんよりも16歳も年上でアイスが好きだったと聞いてますよ。」
「そうなのか⋯(俺って最終的に年上と結婚するのか。でも、アイス好きというのはるるかと一致するな⋯マジで誰と結婚するんだ?)」
「でも、私はこの時代で若い頃とはいえノブおじいちゃん会えたことは凄く嬉しかったです!こうして守れて良かった⋯」
「僕もあなたが孫だと知った時は複雑でしたけど、話の限りだと未来の僕も幸せだったんですね⋯でも、これからどうしますか?ジャックを捕まえないとマコトジュエルも人の命も危ないですよ。今、あちらこちらで殺人事件も増えてるでしょう?」
「はい⋯なので、ジャックが関わってるのかはたまたそれとは別の殺人事件なのかを県警単位で捜査していてそこら辺はタイムパトロールとの仕事と一致してるので助かってますけど⋯それで、ノブおじいちゃん⋯その。」
「どうしました?」
「こうして関係も分かったことですし、敬語もやめに⋯しない?こうして距離を感じてると私も寂しいし、ねっ?」
「ああ、俺もこの歳で自分の孫と会うのは複雑だけどな⋯これからもよろしく頼むよ、すみれ。」
「うん、ありがとう⋯ノブおじいちゃん、大好き!」
そうして俺はすみれとちゃんとした祖父と孫の間柄になることができた。まだまだ若いのに孫がいるって感じはどこか複雑ではあるが、未来がそう語ってるもんな⋯
「とりあえず、今日はここでゆっくり休みなさい⋯ホテルの予約に関しても俺がダブルを取っておいたから心配しなくて良いからな?ひとまずお風呂に入ってこい、俺は夜ご飯を近くのコンビニで買ってその後に入るから。」
「うん、分かった⋯先に入るね?行ってらっしゃい。」
そうして、俺は先にお風呂に入るすみれを見送ってから夜ごはんを近くのコンビニで買うことに。それからは夜ごはんを食べたり寝る前に話をしたりしてすみれとの時間を過ごした⋯彼女が孫だと分かってからは何でも遠慮なく話せるようになり、すみれの方も安心したような表情で俺も幸せである。彼女もやっと本当のことを話せてスッキリしたんだろうな⋯ただ、これをるるかに知られた時はちょっと怖いかもしれない。まあ、孫との時間を過ごすことは浮気じゃないからな⋯
side out
~~~~~~~~
sideすみれ
(目が覚めちゃった⋯どうしよう?)
日付が変わって時刻は午前1時、私は突如目が覚めてしまう。部屋の中は消灯されていて真っ暗⋯アラームが鳴ったわけじゃないのに何故目が覚めたのだろうか?
「すう、すう⋯」
(横でノブおじいちゃんは安らかに寝てる。私はこんなにも目が冴えてしまってるのに⋯)
「あんな、みくる⋯」
(ノブおじいちゃん、あんなさんとみくるさんのことが気になるんだ⋯やっぱり敵に回っても善の心は残ってるのね。)
私は身体を起こしてからノブおじいちゃんのベッドの布団に入ってから彼と向き合う。ノブおじいちゃんとは小さい時に一緒に寝たことが何回かあったけど、若い頃の彼の匂いはおじいちゃんになってからのものとは違った⋯おじいちゃんになってからの線香の香りじゃなくて石鹸の香りが鼻に広がる。それに、何よりもノブおじいちゃんの若い頃から何よりもイケメンでドキッとした。
(どうしよう⋯ノブおじいちゃんに恋したらだめなのに。あまりにもイケメンだからドキドキが止まらない⋯でも、こうして安心させないとね。)
私は緊張しながらもノブおじいちゃんに抱きついて背中を撫でる。こうしてくっついてはみたけど、ノブおじいちゃんはどう思ってるんだろうか?寝てるから分からないにしても、私は胸が身長のわりには小さいからくっつかれても楽しい身体ではないかもしれない⋯でも、ノブおじいちゃんには安心してほしい気持ちがとにかく強かった。
「ノブおじいちゃん、大丈夫だよ⋯あなたは1人じゃないから。私がそばにいるからね?大好き⋯」
そして、私はノブおじいちゃんの頬にキスをしてから眠りにつくことに。唇へのキスに関しては彼女である森亜さんとしてるだろうし、何よりも実の祖父だから自重した⋯でも、ノブおじいちゃんの肌と心の温かさを感じると自然と眠れてしまうものである。朝起きた時のノブおじいちゃんの反応が楽しみだ⋯
織田梨々花(おだりりか)
脳内CV:伊藤美来
身長:145cm
体重:38kg
誕生日:10月12日
年齢:享年10歳
すみれの妹。姉と同じ宝塚の舞台に立つことを夢見ていた歌とダンスが好きな子だったが、遊園地にてジャックから人質にされ一旦は逃げたもののナイフで刺されて死亡。
織田信一(おだのぶかず)
(脳内)CV:関俊彦
身長:177cm
体重:55kg
誕生日:6月11日
年齢:享年42歳
すみれと梨々花の父親で信義の息子。普段はおちゃらけたりしているが仕事は真面目で一家の大黒柱。タイムパトロール日本支部の捜査係の主任を務めていたが、ジャックから時を止められた隙にナイフで刺されて死亡。
織田裕子(おだゆうこ)
(脳内)CV:皆口裕子
身長:168cm
体重:51kg
誕生日:6月26日
年齢:享年46歳
すみれと梨々花の母親で信一の夫。娘達の夢を後押ししてくれる母親、実は元タイムパトロールで信一とは同期という間柄(信一が高卒、裕子は大卒)から同業婚。そんな中で家族と平和な日々を過ごしていたのだが、遊園地にてジャックから刺されて死亡。
いかがでしたか?今回は信義に対してすみれが自分の孫であることと過去を明かしました。その前には過労で倒れる場面もありましたし、あんなちゃんから仲間に誘われてプリキット一式も渡されるという⋯彼女もついに決断の時が迫りました。
しかし、すみれの家族はいずれもジャックに時を止められた隙にナイフで刺されて殺されるという⋯信義が体調を崩したのは大きな痛手ですね。老体の中で張り切りすぎたんでしょう⋯しかし、マコトジュエルとすみれを守ったのは先代キュアマスターのドギーであるという。人間態ですがガタイの良い大男ですね⋯そんな彼の正義に触れたすみれはタイムパトロールのプリキュア部隊へと入ったわけです。その前には夢である宝塚歌劇団を捨ててしまいましたが⋯家族の仇を討つために1999年に派遣され、刑事として潜入。その中で27歳の信義と出会ったというわけなんです⋯これで紐解けたことでしょう。
そのすみれは実は若い頃の信義と会って話す中で恋に落ちてた模様⋯ブレないイケメン女子も彼の前では乙女な一面も見せました。まあ、タメ口解禁して距離も詰まった中ですし⋯今後どういう関係になるかも注目してください。
次回は後編です!ついにすみれの決断の時⋯果たして、彼女は名探偵プリキュアの仲間になるのか?次回もお楽しみに!
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