そんなこっちは19話分の修学旅行に突入します。当然、信義もすみれも出れません⋯それなら主人公は誰なのか?もうお察しかと思いますけど、あのキャラです。サブタイトルにはありますけどもね⋯
それでは、また後書きにて。
side憲司
皆さん、僕のことを覚えてるかな?泉憲司です。最近出てないし普段は脇役だから忘れがちだけど、今回は僕が主人公なんだ!まあ、その話は置いといて⋯今日は修学旅行1週間前ということでその班決めが6時間目の学活で行われることに。修学旅行では男子4人、女子4人の行動班が4つ組まれるんだけど、まずは男子は男子、女子は女子でメンバーが集まっていく。
「憲司、今回の中学の修学旅行もよろしく頼むぜ?」
「喜人、君なら来てくれると思ったよ。」
「おい、渡辺と泉⋯俺も混ぜてくれよ!ほら、甲斐⋯お前も行こうぜ?」
「ぼ、僕も!?」
喜人に続いてクラスメイトで中学に入ってからの友達である千賀楓真(せんがふうま)くんとたまたま通りかかった内気な甲斐拓央(かいたくひさ)くんも一緒の班のメンバーに加わる。甲斐くんに関しては千賀くんの無理矢理半分かもしれないけど、性格的にはこうして引っ張り込まれた方が班決めはすんなりと進むことだろう。
「みんな、よろしくね!それで女子の方は⋯」
「それならあたし達と一緒の班にならない?」
女子の方とこれから一緒の班になる人を話し合いに行こうとすると、そのタイミングでゆみちゃんが他3人を率いて僕達の元にやって来る。そのメンバーはもちろんりえちゃんもいるがその横には小林さんと明智さんもいた。
(明智さんと同じ班⋯こんな日が来るなんて思わなかった!)
「だろうと思ったよ。もちろん、歓迎するぜ?」
「泉くん、よろしくね?」
「う、うん!」
僕が明智さんと同じ班になると分かって浮かれていると、本人からよろしくねと挨拶をされる。本当に明智さんって可愛い子だよなぁ⋯最近は何気にすみれさんも気になってるけど、やっぱり明智さんの可愛さに勝てるものはないのだ。
(1週間後⋯)
「皆さん、準備は良いですか〜?これから班ごとに乗り込んでもらいます。返事は?」
『はーい!』
今回の修学旅行の実行委員長であるゆみちゃんの呼び掛けに僕も含めてみんな返事を返していく。全員の元気が伝わり、いかに修学旅行を楽しみにしてるのかがよく分かるものだ⋯僕ももちろん楽しみでこれから班単位で電車へと乗り込むことに。これから先に何が待ってるのだろうか?
「それで、渡辺⋯今回の修学旅行って具体的にどんな感じなんだ?お前、実行委員なら分かるだろ?」
電車の車内で旅行のしおりを読む僕達の男子班、その中で千賀くんが喜人に今回の旅行の概要を質問する。実行委員以外は今回の旅行の概要は前日に話されているが具体的なことは知らされていないのだ⋯
「まず初日は遊覧船巡りとお城見学があるんだ。それから泊まるホテルなんだがこれが評判高いところなんだぜ?夜ごはんは地元の食材を使った豪華バイキングで凄腕の料理長が料理を作ってるらしいぞ?」
「浜松ニューランドホテル⋯バラエティー番組で名前は忘れたけど芸能人の方がロケで泊まったことで有名だよね。」
「憲司は本当に詳しいな。それで、そのホテルのお風呂は天然温泉で入れば肌はモチモチのツルツル!美容にも良いらしい。」
「美容かぁ⋯僕達とはちょっと縁がないかもね。」
「甲斐、何言ってんだよ。男だってスベスベな肌を求めるもんだぜ?特に泉がそうだろ⋯お前が好きな明智との好感度を上げる為によ!」
「千賀くん、よしてよ⋯恥ずかしいから。」
「私がどうかしたの?」
千賀くんが僕に明智さんとのことを訊ねてくると、噂と本人が僕達の話を聞いたのか僕達の前にやって来る。どうしよう⋯千賀くんの声、凄く大きかったから知られて変に思われないか不安だ。
「あけ、明智さん⋯いや、別に何も。今回の修学旅行の概要を喜人が説明してて盛り上がってたんだよ。ねっ?」
「ああ。明智さんは今回の旅行を楽しみにしてたりする?」
「もちろんだよ、はなまる楽しみなんだ!みんなも今回は同じ班だからよろしくね♪」
「おうよっ!泉もそうだろ?」
「う、うん。」
「ふふっ⋯じゃあ、また後でね!」
そう言うと、明智さんは笑顔でまた自分の席へと戻っていく。あと数時間もすれば彼女と一緒に修学旅行を巡れるんだ⋯初日の浜松までの道のりがかなり待ち遠しい。
「本当に明智さんって可愛いよね。突然来た転入生だけど元気でフレンドリーだし⋯クラスのみんなとも打ち解けられてるから凄いよ。それだけ魅力的な女の子というのが分かるよね⋯」
「何だよ、甲斐⋯お前も明智に惚れたのか?こりゃあ、泉との取り合いだなぁ。」
「千賀くん、そういうのじゃないよ⋯泉くんからも何か言ってくれる?」
「ええっ、僕!?コメントに困るなぁ⋯でも、明智さんが素敵な女の子のは同意できるよ。」
甲斐くんが千賀くんからからかわれて僕に助けを求めてくる。これに関しては本当にコメントに困るものの明智さんが可愛くて魅力的な女の子であることは確かなことだ。
「それにしても、泉もそうだけど渡辺は本当に詳しいよな⋯流石実行委員ってところか?」
「憲司は当地のこととかに詳しいだけだし、俺よりも実行委員長のゆみの方が頑張ってたから俺だけの力じゃねえよ⋯あいつが張り切って調べてくれたんだ。お前らに配ったしおりはその一部分に過ぎない⋯俺も俺で色々まとめてきたから見てくれ。」
「凄いな、おい⋯」
「渡辺くんもここまでやってたんだね。」
喜人がまとめたしおりを見て、千賀くんと甲斐くんは目を見開いて感心する。本当に彼のやる気、ゆみちゃんと共にかもしれないけど喜人がここまでリサーチを入れるとは本当に凄いものだ⋯
「修学旅行は学生の間に3度あるかもしれないけど、それぞれは1回だけだからな?みんなが思いっきり楽しめるようにゆみと準備をやって来たんだよ。お前らも忘れられない時間にしようぜ〜?」
『おお〜っ!』
喜人の呼びかけに全員が賛同して拍手をする。これで学年の一体感は高まるばかり⋯流石、男子のムードメーカーだ。僕も一応学級委員長をしているのだが、彼のキャプテンシーには憧れを抱いてしまうものだ。所属してる野球部でも次期キャプテン最右翼なんて言われてるぐらいだからね⋯
「毎度、車内販売でございま〜す。麗しの車内販売!」
そんな時、僕達の乗る車両に車内販売の人がやって来た。今回の修学旅行で車内販売のサービスがあるというかそういう人っていなかった気もするが⋯
「喜人、車内販売のサービスなんてあったの?」
「いや、そんなものそもそも手配してないぞ⋯というか、その車内販売の姉ちゃんにしては大柄すぎやしねえか?」
「あっ、UFO!」
『ええっ!?』
すると、車内販売の女性(?)はUFOを見たのか窓の外を指差す。それにみんなが夢中になってその方向を向いた⋯僕達の班もその方向を見るもUFOはなくただ青空が広がるばかりで強いて言うなら鳥が1羽飛んでいるという感じだ。
「どこどこ?」
「UFO!?」
「あ、あれだ!」
「あれは鳥だよ⋯」
「鳥型のUFOかもしれないだろ?」
「いないね⋯泉くんは見た?」
「いや、あれはUFOじゃないでしょ。あの車内販売の人、何がしたいんだろう?」
「あれ?あたしのしおりがない⋯何で、どこ?」
外の景色に気を取られたその時、ゆみちゃんの席に置いてあった旅行のしおりがいつの間にかなくなっていた。ほんの一瞬の出来事である⋯
「誰かが盗んだかもしれねえな⋯誰だ、ゆみのしおりを盗んだやつは!」
「俺じゃねえよ⋯」
「私じゃないって!」
「喜人、もしかしてあの車内販売員の人じゃない?あの人は本来車内にいるべき人じゃなかったから間違いないはず!」
「その人なら今、出て行ったよ。みくる!」
「そうだね。ゆみ、ここは私達に任せて!」
「待って!ここは僕も行くよ⋯あの大柄の人は見たところ強そうだった。いくら探偵だとしても明智さんと小林さんに万が一のことがあったら⋯」
「憲司が行くなら俺も行くぜ?実行委員として旅行をめちゃくちゃにするやつはこの俺が叩きのめす!」
「ありがとう、泉くん、渡辺くん⋯でも、大丈夫。あの人なら私達じゃないと止められないから。」
「だから、渡辺くんと泉くんは慌てるみんなを安心させて?行こう、あんな!」
「うん!」
そうして、明智さんと小林さんはこの車両を出てからさっきの車内販売の人を追いかけた。あの見た目からして普通の販売員ではなさそうでプロレスラーというかガッシリした体格だったからね⋯喧嘩にならなければ良いけども。
(30分後⋯)
「あんな達、大丈夫かな?」
明智さん達がしおりを探す中でそれを盗まれたゆみちゃんが2人を心配する。それにしても、あの大柄の人は明智さんと小林さんじゃないと止められないとはどういう意味なのだろうか?見た目的に喧嘩とかで勝てそうでもないのだが⋯
「ゆみちゃん、大丈夫だよ。僕も不安だけど明智さんと小林さんは探偵なんだから⋯今は信じようよ。」
「憲司、そうだね⋯」
「おおっ、2人が帰ってきたそうだぞ?」
僕がゆみちゃんを励ましたその時、明智さんと小林さんが僕達の車両に帰ってきて喜人が反応する。しかも手にはゆみちゃんのしおりを持っていた⋯どんな手を使ったのかは分からないけど、取り返すことには成功したようだ。
「ただいま!ゆみ、しおりを取り返してきたよ。」
「ありがとう!あんな、みくる⋯本当に見つけてくれたんだ。」
「流石、名探偵だね!」
「えへへ⋯それほどでも♪」
明智さんがしおりをゆみちゃんに渡すと、彼女が感謝をしてりえちゃんが続けて2人を褒める。褒められた小林さんは鼻が高くなっては喜ぶのだった⋯本当にこの2人は名探偵以外に形容する言葉が見当たらない。よくあの大きな人から取り返したものだ⋯
「とりあえず、あと5分で浜松に着くからぼちぼち降りる準備をしとけ。忘れ物をしたら二度と手元に戻らねえぞ?」
そうして、実行委員の喜人の呼びかけにより全員は席に戻ってしおりを荷物の中に入れたりと降りる準備を進めることに⋯ドタバタを乗り越え無事に僕達の修学旅行は幕を開けるのだった。
「それじゃあ、昼ごはんも終わって今から遊覧船巡りの時間まで自由行動とする。お土産を買うも写真を撮るのも自由だが観光客やお店に迷惑をかけるようなことはするなよ?一旦解散!」
そうして昼ごはんを経て学年主任の先生の注意喚起が終わり、僕達は浜松城の城下町跡地にて自由行動の時間を迎えた。みんなはそれぞれの班に別れてそれぞれ移動し、僕達の班も城下町跡を巡っていく。
「ねえ、明智さん⋯」
「泉くん、どうしたの?」
「あの⋯前から思ってたけど君がいつもかけてるポーチ、可愛いよね。僕のルシアを探していた時からかけてたけど、お気に入りだったり?」
「そうなの!これ、ポチタンって言うんだ。可愛いでしょ?」
城下町跡を歩く道中、僕は明智さんに前から持ってていつも掛けているポーチについてを訊ねると、彼女は笑顔でそれを自慢する。どうやらこのポーチに『ポチタン』という名前をつけているようで⋯本当に可愛い女の子だなとますます思うばかりだ。
「そういえば、このポーチをかけてて生徒会長とかから怒られないのか?明らかに派手すぎると思うんだが⋯」
「大丈夫。ちゃんと許可は得てるから⋯ねっ、みくる?」
「うん、あの人に真剣に頼んだら許してくれたの。」
「すげぇなぁ。俺達が同じことをしてたら怒られるものなのによ⋯流石は名探偵だぜ。」
「いや、千賀くん⋯それは探偵関係ないと思うよ?」
喜人がポーチを学校に持ってきて大丈夫なのかと明智さんに問うと、どうやら会長である金田先輩からは許可を得ており大丈夫とのこと⋯前の時は生徒会長が怖いとか悩んでいたのに急に仲良くなっていて何が起きてるのかと疑問に思ってしまう。千賀くんは何かとこれに感心するも的外れで甲斐くんに指摘されるのだった⋯まあ、許可を得るかどうかに関して探偵であることが関係ないのは確かだ。
「それじゃあ、写真撮るぞ。もっと中央に集まってくれ!」
そうして、浜松城がカメラに収まるちょうど良い場所で写真撮影をすることに⋯カメラを握っているのは喜人である。中央に集まろうにも僕は男女の境目で明智さんの隣⋯くっつくにも緊張してしまうものだ。
「憲司、もっと明智さんと距離詰めてくれねえか?スペース空いてて全員入らないぞ?」
「ごめん!」
「泉くん、もっと近くに来て?」
「う、うん⋯」
そうして明智さんは僕の方を見てから笑顔で近くに来るように促す。僕から迫るのは申し訳ないと思うところもあるのだが、彼女から近づいて良いと言われたら断る方がむしろ悪くなる。ここは言うことを聞いて彼女との距離を詰めた⋯かなり緊張はするけどね。
「そんな感じ!カメラの方を向いて笑顔だからな?撮るぞ〜?はい、チーズ!」
そうして、喜人はシャッターを押して写真を撮影する。僕は明智さんの隣で自然に笑えたのだろうか?とにかく、現像されてからが楽しみである⋯それからはお土産を購入したりして自由時間を過ごし、遊覧船での浜名湖巡りへと向かうことに。
「皆さんの右手に見えるのがうなぎの養殖場です。来月には土用の丑の日がありよく食べられてる時期ですけど、皆さんはうなぎを食べる予定はありますか?」
「俺、うな重大好きなんでもちろん食べまーす!」
ガイドさんが船の上でうなぎの養殖場を案内すると、後ろの席の千賀くんが手を挙げて大きな声でうなぎが大好きなことをアピールして、船の中に笑い声が響く⋯本当に彼はこのクラスの中でもかなりの目立ちたがり屋で喜人よりもやんちゃな男子である。その中で僕の隣の席に座る例の喜人はどうしたのか⋯
「気持ち悪ぃ⋯酔い止め忘れちまったぜ。」
なんと、彼は船酔いを起こしてしまい今にも吐きそうなぐらいに苦しんでいた。顔はかなり真っ青で汗もかなりかいている⋯いつもだったら船に乗る時は酔い止めの薬を持ってきていたはずなのだが、どういう訳か家に忘れてしまったようだ。
「喜人のバカ、何してるの本当に⋯」
「泉くん、これ!私の酔い止めを使って?」
ゆみちゃんが喜人のミスに呆れてる中で明智さんは僕に錠剤を渡す。どうやら彼女は万が一の為に酔い止めを運良く持ってきたのだが、本当にこれを喜人に渡して良いのだろうか?
「でも、明智さん⋯万が一のことがあったらどうするの?」
「平気だよ。本当は大丈夫なんだけど、ジェット先輩が心配性だから持っていけって言われて⋯渡辺くんが大変なんでしょ?使って良いからね。」
「ありがとう。喜人、酔い止め⋯明智さんがあげるって。」
「明智さん、すまねえな⋯」
喜人は僕から明智さんの酔い止めの薬を受け取ってから彼女に感謝をした後に水筒のお茶で服用していく。しかし、ジェット先輩⋯ジェットくんは本当に明智さんや小林さんの保護者みたいな存在だよね。あの時からそう思ってたけど、子供なのに面倒見が良いなんて親の育て方が良かったんだろうな。まあ、それを先輩と慕う明智さんと小林さんやすみれさんは少し変ではあるけどね。
「みんな、初日は色々あったけどお疲れさん!特に明智と小林は依田のしおり探しで大変だったはずだろう。本当に助かったぞ?」
「いえ、そんな⋯」
「えっへん!私達は名探偵ですからね。どんどん褒めてくださいよ〜?」
「もう、みくるってば⋯」
「まあ、今日は料理長がお前達の為に最高の料理を振る舞ってくださったからな⋯食べれる範囲で沢山食べろよ?それじゃあ、ここからは時間内まで好きに食べてくれ!」
こうして、学年主任の話も終わって夜ごはんの時間が始まった。みんなはバイキング方式として並んだそれぞれの好みの料理を皿へと盛りつけていく⋯本当に周りはかなり楽しいムードが広がっていた。
「憲司はカレーライスと唐揚げとサラダかぁ⋯折角浜松まで来て選んだ料理が保守的だなぁ。」
「そう言う喜人は焼きそばと餃子とおでん?君こそ普通じゃないか。人のこと言えないでしょ⋯」
「俺のは富士宮やきそば、浜松餃子、静岡おでんだ!静岡のご当地の味を押さえてるんだぜ?」
「そうだよね⋯」
喜人は僕に取ってきた料理を紹介する。どうやらいずれも静岡県の名物料理でまさにならではのものを選んできたようだ⋯彼はいつも市や県を越えたお出かけの時はいつもその土地ならではのものを食べたり飲んだり遊んだりしてるからね。それだけ好奇心が旺盛ということである。
「お前ってマジでご当地グルメとか食べないよな⋯どうしてだ?」
「うーん、僕ね⋯慣れないものを食べるのって少し怖いんだ。家族旅行の時も旅行先でファミレスとかのチェーン店に行くし⋯」
「そんなんじゃあ明智さんと付き合って旅行に行った時、幻滅されるぞ〜?折角お前には土地の知識があるんだから色んなものにチャレンジすることが大事だぜ!」
「付き合うって⋯まだ気が早いよ?」
「泉くん、何と付き合うの?」
僕と喜人が明智さんのことを話していると、噂の本人である明智さんが小林さんと一緒に料理を持って僕の席の向かい側に座る。そういえば、今回の食事の時の席は明智さんが向かい側だった⋯チャンスでもあるし同時に絶体絶命のシチュでもあるのだ。少しでも付き合い方でミスをしたら嫌われる可能性があるからね⋯
「明智さん!?いや、何でもないよ⋯」
「もしかして、渡辺くんと恋バナ?泉くん、好きな人がいたりするの?」
「いや、それは⋯」
「ああ。こいつには好きな人がいるんだけどさ⋯料理がカレーライスと唐揚げとサラダとか保守すぎやしねえか?やっぱり、付き合った人と旅行に行くならその土地ならではの料理を食べるだろ?」
「うーん⋯私はそう思わないかな?旅行に行く時は確かにご当地の料理を食べなきゃって思う気持ちもあるけど、1番は美味しいと思う料理を食べないと⋯楽しくないと私は思うんだ。そんな私も泉くんと同じでカレーライスを選んだんだよ?」
「私も!あんなが料理長にこのホテルのオススメが何かを訊いてね⋯それで、料理長はカレーをオススメしてくれたの。『ウチのカレーはインドから来たカレー職人も認めた味』だって!泉くんも同じなの?私達、気が合うね♪」
「う、うん⋯」
明智さんはご当地のものは食べないのかと喜人から問われると、自分が美味しいと思うものを食べるべきだと主張する。確かに彼女の言う通りだ⋯その料理が口に合わなかったら一緒の食事を楽しむことはできない。そう言われると僕の気持ちも理解してくれてるようで安心した⋯それで、明智さんも小林さんもお揃いのカレーライスということでそこも一致して嬉しいものである。それからの食事のひと時は喜人はもちろんのこと、明智さんや小林さんに普段はあまり話さない千賀くんや甲斐くんも交えて楽しい時間を過ごすことができた。依然として気持ちは伝えられてないけどね⋯
「良い湯だったね⋯」
夜ごはんを食べた後はクラス単位での大浴場での入浴時間で、僕と喜人も今、お風呂に入り終えたところである。脱衣所を出ると卓球を楽しむ人が沢山いて小学校の時の修学旅行よりも賑やかだ⋯
「そうだな。天然温泉はやっぱり癒されるもんだ⋯っと、あそこでソファーに座ってるのは明智さんか?」
「本当だ⋯小林さんが卓球をやってるところを応援してるね。」
「なあ、憲司。折角のチャンスだから明智さんの隣に座って話しかけてこいよ!」
「ええっ!?でも、今は小林さんの応援してるのに邪魔する訳にはいかないよ⋯」
「ほら、行ってこい!」
「うわっ!?」
そうして、僕は喜人に背中を押されて明智さんの座るソファーの前に放り出される。押し出した彼は笑顔で僕のことを見送っているのだが⋯本当に無責任な人だよね。僕はこんなにも緊張してるのに!
「あっ、泉くん!どうしたの?」
「明智さん⋯あの、隣に座っても良いかな?」
「うん。私も泉くんと話したいと思ってたから⋯どうぞ♪」
「ありがとう。」
僕は明智さんの言葉に甘えて、彼女の座る隣に腰かける。その隣にいる明智さんはいつもはお団子ヘアに結んでる髪を下ろしていて目の前にいるのはロングヘアーの美少女がいた⋯いつもの元気で可愛い彼女も好きだけど、髪を下ろした大人っぽい彼女は新鮮である。
「お風呂は気持ち良かった?」
「うん。天然温泉はやっぱり違うよね⋯家のお風呂よりも最高!」
「そうだよね!私のお肌もスベスベになったかな?」
(肌、明智さんの肌⋯)
僕は明智さんからの問いを受けて彼女の肌という肌を見ていく。しかし、そんな中で明智さんの可愛い顔とパジャマ代わりの体操服に包まれた肌を想像すると心臓のドキドキは激しくなるばかりだ。
「どうしたの、泉くん?」
「ああっ、いや⋯スベスベになったんじゃないかな?僕の肌もそんな感じだし。」
「私と同じだね。そうだ⋯私、泉くんにどうしても訊きたいことがあったんだ。」
「何かな?」
「渡辺くんが言ってたけど、泉くんって好きな人がいるんだもね?それって誰なの?」
「ええっ!?」
明智さんは僕に好きな人のことを訊ねてくる。これってまさかチャンスなのか!?ここで明智さんだと伝えたらきっと彼女も⋯ただ、まだ僕達は付き合いが短い。ここで告白しても彼女が困るだけではないだろうか?
「それで、泉くんは誰が好きなの?確か⋯りえとゆみとは幼馴染なんだよね?そのどちらかとか⋯それとも、みくる?」
「ごめん、今は秘密にさせてほしいな⋯まだ気持ちを伝える時じゃないから。もっと付き合いを深めて仲良くなれた時に告白するね⋯その時まで待っててくれる?」
「それが泉くんの答えだったら私も急かさないよ?あなたの恋、応援してるからね!」
「ありがとう、明智さん。」
そうして明智さんは僕のことを笑顔で励ました。本当に好きな相手は彼女だというのに⋯本当に僕はヘタレすぎる。これだけ僕の恋と向き合ってくれてるとして、もしも相手が自分だと知ったらどんな反応をするのだろうか?
「あんな〜、今の見てた?私、スマッシュ決めたんだよ?」
「ごめんね。ちょっと泉くんと話してたから見てなかったかも⋯」
「あっ、泉くんもいたんだ。折角だから一緒に卓球しない?あんなも一緒に!」
「そうだね。じゃあ、泉くんも卓球しよう?」
「ごめん⋯僕、千賀くんに誘われてババ抜きをしなきゃいけないから。また明日ね、おやすみ!」
「あっ⋯」
僕は明智さん達と卓球をすることなく部屋へと帰るのだった。もちろん、千賀くんからババ抜き大会に誘われていたのは本当のことだが時間的に夜の8時半からだから特に急ぐ必要もなかった⋯でも、恥ずかしさと緊張で僕は本能的に避けてしまったのだ。本当に自分のヘタレさを恨みたい⋯
(ババ抜き終了後、就寝後⋯)
「眠れない⋯」
消灯時間になってしばらく目を閉じて寝ようと努めるも目が覚めてしまう。時計を見ると夜中の1時半⋯他の3人に関してはかなり爆睡している。本当に何も緊張することがないから羨ましいよ⋯
『あなたの恋、応援してるからね!』
(明智さんは他人事のように思ってるけど、僕が好きなのは君なんだよ⋯なのに、どうして言う勇気が出ないんだろう?あそこで告白していたら何かあったはずなのに。)
僕は窓の外の景色を見ながら自分の選択ミスを悔やむ。自分にもしも過去に戻れる力があったらその時に戻って告白したかった⋯まあ、そんな簡単にタイムリープとかが使えたら苦労はしないけども。
(とりあえず、今日は失敗してしまった⋯明日は名古屋で謎解きツアーを兼ねた自由行動とナゴヤドームでの野球観戦。そこでアピールして明智さんを振り向かせる!待っててね、明智さん⋯君にかっこいいところを見せるから!)
そうして、僕は窓の向こうの夜景に輝く満月に向けて自分の目標を固く誓った。本当に明日でアピールして決めてみせる!もちろん、正々堂々なのは言うまでもない。2日目の名古屋巡りこそ頑張ろう!そう気合を入れて僕はまた眠りにつくのだった。とにかく、今日の疲れは回復させないとね⋯
千賀楓真(せんがふうま)
脳内CV:木村良平
身長:169cm
体重:55kg
誕生日:1月6日
年齢:当時13歳(現在41歳)
あんな達のクラスメイト、クラスの中で1番の目立ちたがり屋。普段からおちゃらけているが悪い奴ではない。
甲斐拓央(かいたくひさ)
脳内CV:下野紘
身長:160cm
体重:45kg
誕生日:4月21日
年齢:当時14歳(現在42歳)
あんな達のクラスメイト、眼鏡をかけて髪型マッシュの大人しいガリ勉。千賀からは何気に目をつけられているものの悪くはされていないが、少し怯えている。
いかがでしたか?今回の修学旅行編は憲司が主人公で話が進んでいきます。次回は2日目&帰還の様子ですね⋯憲司とあんなちゃんの関係はどう進むのか?次回もお楽しみに!
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