透き通る世界でも慎重な勇者   作:かげもじ

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パヴァーヌ編第一章、最終話を投稿しました。デカグラマトン編はエデン条約の後に書こうと思っています。


ハッピーエンドのその先に

私と聖哉は、調べ事が終わった後、ゲーム開発部の様子を見に行った。

 

モ「ふふっ、ふへへへへ、全部終わった!おしまいだぁ!!!」

「!?」

 

部屋の奥から、モモイちゃんの絶望にのまれた声がした

 

「せ、聖哉.....」

「とりあえず、入るぞ。」

 

何があったかわからなかったが、私たちは部室に入った。

 

「みんな、何があったの!?」

 

中に入ると、この世に絶望してそうな三人と困惑しているアリスちゃんがいた。

 

ア「リスタ、実は......」

 

アリスちゃんから事の顛末を聞いた。G.Bibleのパスワードを『鏡』で開くことはできたが、肝心の中身は、確実に面白いゲームを作れる必勝法を教えてくれるのではなく、『ゲームを愛しなさい』という天才プログラマーの言葉だけだった。

 

「はぁ~。」

 

聖哉は、話を聞き、深いため息をついた。

 

「やはり、ガラクタだったようだな。」

全「!?」

 

聖哉は、何もかも知っていたようだった。

 

モ「先生、まさかG.Bibleがこんなものだって知ってたの!?」

「いや、だが、予想はできる。」

ミ「なら、私たちに一言、言ってくれれば.....あんなことしなくてよかったのに......」

「だが、あのガラクタがお前らを本気にしたのも事実だ。」

 

全「!?」

 

「お前らに立ち止まっている時間はない。G.Bibleがダメだったんなら、ほかの方法を探せばいい。それこそ、今は新しい部員もいる。」

「せ、聖哉。」

 

聖哉の言葉にモモイちゃんが立ち上がった

 

モ「ほかの方法って何さ? もう面白いゲームを作ることなんてできない。もう終わりだよ。」

「終わりだと?まだスタートラインにすら立ってない奴らがよく言えたものだな。」

「ちょ、ちょっと聖哉.....」

 

聖哉の挑発したような言葉にモモイちゃんが反論した。

 

モ「先生、それどういうこと!!私たちがスタートラインにも立っていないって」

「本当にやるだけやったのか?」

ミ「?」

「本当に後悔のないところまでやったのか? お前たちは、まだ4人で本気でゲームを作っていない。だがらスタートラインにも立っていないといったのだ。」

ア「先生.......」

 

聖哉の言葉に見覚えがある。私が怨皇の呪いで死の危機に迫ったときに言ったあの言葉だ。

 

「簡単に諦めるな。最後まで抗い続けろ。お前らは、あの作戦の時、死ぬ危険性があった。だが俺の作戦に乗り、格上の相手に勝つことができた。あの時のお前らの力はどこ行ったのだ。」

 

聖哉の言葉にみんなが息をのんだ。

 

「だが、この先の運命を決めるのはお前たち次第だ。俺には関係ない。」

 

聖哉はそう言うと、部屋から出て行った。

 

「せ、聖哉、いったい.......」

 

部室を出た聖哉はそのままドアにもたれかかった。

 

「聖哉?」

 

その光景を見てると、部屋から声がした。

 

ユ「作ろう、皆。」

モ「ユズ!?」

ユ「これは別に先生に言われたからやるんじゃない。思い出したの、2人に会った時のことを.....」

 

ユズちゃんは、モモイちゃんとミドリちゃんと初めて会った時のことを話した。

 

ユ「私の夢は、作ったゲームを、皆に面白いって言ってもらうこと。でも私が作った『テイルズ・サガ・クロニクル』のプロトタイプは四桁以上の低評価コメントで終わった。」

モ「ユズ.....」

ユ「それが辛くて、ゲーム開発部に引きこもってた時.....二人が訪ねてきてくれた。そして、面白いってくれた。アリスちゃんが来た時も.....私の夢はかなったの。」

ア「.......あのゲームは面白いです。ユズが、モモイが、ミドリが、どれだけこのゲームが好きなのかを感じさせてくれるんです。」

ユ「アリスちゃん......」

ア「あのゲームで仲間と一緒に新しい世界を旅をする、あの感覚は夢を見るというのが、どういうことなのか....その感覚を、アリスに教えてくれました。」

モ「.........ミドリ、今からミレニアムプライスまでどれくらい時間がある。」

ミ「お姉ちゃん......!」

ア「6日と4時間38分です。」

モ「それだけあれば十分。ゲーム開発部一同、開発を始めるよ!!」

 

全「おー!!」

 

その光景を聞いた聖哉が少し微笑んだがすぐにいつもの表情になり、

 

「行くぞ、リスタ。あいつらなら大丈夫だ。」

「わかったわ。」

 

「フッ、ガナビー・オーケー(何とかなる)

 

聖哉と一緒にゲーム開発部を後にした。

 

シャーレに戻った聖哉は誰かに連絡をしているようだった。

 

その1時間後

 

リ「先生、ただいま到着しました。」

 

シャーレに来たのは、聖哉がはじめてであった生徒。連邦生徒会長代理の七神リンちゃんだった。

 

「リンちゃん!!どうしたの?」

リ「あのリスタさん、リンちゃんはやめてください。それより、先生は?」

「ここだ。」

 

聖哉はそう言うと、部屋から出てきた。

 

「お前を呼んだのはほかでもない。ミレニアムでの一件だ。」

 

聖哉の言葉を聞き、リンちゃんが気づいた

 

リ「あの魔王軍四天王と名乗るものについてですね。先生が対処したそうですが.....」

「あぁ、今後、このような奴が出てくる可能性もある。連邦生徒会はこのことを周知したほうがいい。」

 

聖哉にそういわれた後、リンちゃんは眼鏡をくいっとし

 

リ「わかりました。もう少し詳しく、資料にして報告してください。それと、先生。これを見てください......」

 

リンちゃんが聖哉に見せたものは領収書だった。それも、かなりの数。

 

リ「私の言いたいことをあなたならわかるはずです......なんで、こんな意味の分からないものを経費で落としてるんですか!?」

 

リンちゃんが見せた領収書は、銃火器や弾薬、爆弾、素材、はたまた薬に至るまで様々なものがたくさんあった

 

「すべて、この世界を救うために合成をする素材を買ってるだけだ。なにもおかしいところはない。」

リ「おかしいことだらけです!!なんでブラックマーケットで買ったものまで連邦生徒会に出してくるんですか!?」

「!? 聖哉、あんた何やってんの?」

 

リンちゃんの言葉に聖哉は面倒くさそうに答えた。

 

「珍しい素材があったからな、合成に使うために買った。」

 

――いや、いくら世界を救うためだからと言って、闇市で買ったものを連邦生徒会に請求する普通?

 

リ「あなたには感謝しています。先生のおかげでだいぶ問題も解消されました。ですがもっと、連邦生徒会らしく、振舞ってください。」

「なにが連邦生徒会らしくだ。俺はお前らの味方ではない。」

リ「!?」

 

聖哉は冷徹な表情になり

 

「リン、お前ら連邦生徒会は光のような立ち振る舞いをしているが、光が強いからこそ闇が目立ちにくくなる。」

リ「!? 先生、どういうことですか?」

「せ、聖哉?」

「お前も慎重に動けということだ。灯台下暗し。組織というのは、人数が多いと統制がとりにくくなる。必ず輪を乱すものが現れる。」

リ「先生.......。」

 

聖哉の言葉は一見、冷たいく感じるが、その声色はリンに何かを教えるようだった。

 

「俺は滅多に約束などしない。自分の器以上の約束をして、こぼれた先にあるのは悲しみだけだ。だが、これだけは約束しよう。」

リ「!?」

 

聖哉は、リンちゅんの前に行き、頭に手を置いた。

 

「俺は、連邦生徒会は味方ではないといったが、お前の味方ではある。」

「聖哉......」

「もし、何かあるなら俺に言え、隠し事はするな。些細なことでもいい。お前がピンチな時は必ずどこからでも助けよう。慎重に準備をしてな。」

 

聖哉の言葉に、リンちゃんが俯き

 

リ「......先生、ありがとうございます。」

 

リンちゃんと少し話した後、一緒にシャーレの業務をした。

 

「聖哉が業務をするなんて珍しいわねって、えー!?」

 

聖哉は狂戦士化をした状態で、業務をしていた。

 

「聖哉、なんで狂戦士になって、業務をしているのよ!!」

「このほうが効率がいいからだ。それに思わぬ奇襲にも対応できる。」

 

――た、確かにとんでもない速さで書類をさばいているけど、戦闘態勢で仕事する人間いる?

 

そんなこんなであれから3日が経った。

 

ゲームが完成したということで私たちは部室に呼ばれていた。

 

「出来たのか?」

モ「うん、もう投稿も終わったよ。」

ア「レディ・パーフェクトリー(準備は完全に整っています)

ユ「そうだね。みんなで頑張ったから、後悔はない。」

 

――本当にこの子たちは最初の頃より大きく成長した。今のこの子たちなら、いけるわ。

 

「.......アブソーブ・シールド(妙盾防陣)

全「!?」

 

突然、聖哉が盾の神から授かった特技を繰り出し、みんなが驚いた。

 

「せ、聖哉?何で急に......」

 

その途端、聖哉のシールドに砲撃が当たった。

 

モ「な、何!? 何が起こったの?」

ミ「この砲撃は46㎜砲.....カリン先輩の!」

「もしかしてこの前の仕返し?」

 

こんな時に来るなんて、さすがの聖哉も.....

 

「想定済みだ。」

「想定済みなんかい!?」

「タイミングはわからんが、報復に来ることは予想できる。その時までに準備するまでだ。」

 

部室の周りには、生徒会の子たちもいた。

 

だが、聖哉が召喚したとされるロボットたちに倒されていた。

 

モ「す、すごい......」

ア「流石、アリスの師匠です。」(キラキラ)

 

?「なるほどな!!」

 

全「!?」

 

声の先には、コールサインダブルオー『美甘ネル』がいた。

 

ネ「この前の借りを返してやる、先生。」

 

ネルの言葉に、聖哉は無表情だった。

 

「ネル、質問だ。」

ネ「あぁ!?」

「お前がここに来たのは、俺を倒すためじゃない。俺を倒すためなら、この準備はザルすぎる。結論から言おう、お前らの目的は、アリスのことだろう。」

 

全「!?」

 

ネ「やっぱり、気づくか.....あいつが警戒するだけのことはあるな。」

 

聖哉は、明らかに聞こえるようにため息をついた。

 

「ミレニアム会長が全く慎重じゃないからだ。俺の戦闘データから行動パターン、思考を計算し、確実に勝てる算段を立てるはずだからな。」

ネ「!? お前、まさかあいつの存在まで気づいて.....!」

 

――あいつ?ってか、聖哉はさっきから何言ってるの?

 

モ「先生、何言ってるの?」

「今回、明星ヒマリと一緒に手を引いていたのは誰かということだ。そいつはC&Cの依頼主と同じだ。」

全「!?」

「まず依頼主がだれか....明星ヒマリは確かにこのミレニアムでも、随一の生徒だが、あいつも一介の生徒.....お前に依頼できるとは思えない。」

ネ「.....。」

「やはり、候補として挙がるのはセミナーだろう。だが、お前がユウカたちに対する態度を見ると、ユウカではない。あとは、ミレニアムの会長『調月リオ』だけということだ。」

ミ「リオ会長!?」

 

聖哉の推理に私たちは驚いていると、ネルちゃんが突然、笑い出した。

 

ネ「やっぱり、最高だな、先生。だが、それを知ったところで、私に勝てると思ってんのか?」

「あぁ。」

 

聖哉が即答するなんて.....

 

ネ「じゃあ、見せてみろ、先生。」

 

ネルちゃんがとんでもない速さで突撃してきた。聖哉が戦うと思いきや、そこに出てきたのは......

 

ネ「なんだ、こいつは!?」

「あれは、メカタルテ!?」

 

そこには、無数のメカタルテがいた。

 

「前回より改造を施した、『メカタルテ・改』だ。」

「いや、多すぎでしょ。聖哉にしては、よくしゃべるなと思ったけど、これを作ってたのね。」

 

無数のメカタルテがネルちゃんを襲う。ネルちゃんは前回のようにサブマシンガンを乱射した。だが、今回のメカタルテはネルの攻撃を耐えながら、向かっている。

 

ネ「前回より強い......」

 

無数のメカタルテを相手しているネルちゃんを見ながら聖哉は説明した

 

「ネルの特殊スキル『一騎打ち』は一対一の状況でしか発動しない。だから、メカタルテでも少し耐えられる。まぁ、それでも、ミレニアムの中では最強の生徒だろう。」

 

聖哉が説明してる間、少し傷を負いながらも、ネルちゃんは、メカタルテを全滅させていた。

 

ネ「少し手間取ったが、これで最後だ。」

「ふむ、根性もあるようだ。なら......」

 

聖哉は、ネルちゃんの前に行き、二丁拳銃を抜いた。

 

「俺が直接相手をしてやろう。」

ネ「ふっ、やっとか!!」

 

ネルちゃんのサブマシンガンが発射された。

 

ミラーシールド(鏡面反射)

 

聖哉のシールドにより、銃弾は跳ね返された。跳ね返した弾丸は、ネルちゃんの腹部に命中した。

 

ネ「くっ!? 本当にこの世界の常識を逸脱してやがるぜ。」

 

っとネルちゃんに一撃をくらわした後、聖哉は拳銃をしまい、剣を抜いた

 

「せ、聖哉、何を!?」

 

「下がっていろ、『ジョブ・チェンジ(職業転換)』土の魔法剣士へ」

ネ「!?」

 

聖哉が、剣を上げた

 

アトミック・スプリットスラッシュ(原子分裂斬)

 

土属性の特技が聖哉の攻撃力と合わさって、強烈な轟音ともに、前方の辺り一帯が吹き飛んだ。

 

「せ、聖哉!? いくらなんでもそれはやばいんじゃ.....」

「安心しろ、手加減はしている。それより、戻るぞ。」

 

この一件は、絶対始末書ものになるといったが、なぜかC&Cが事態を収めてくれたらしい。

 

ネルちゃんたちも大きな怪我はなく、この一件は終わった。

 

そして、ミレニアムプライス当日  

 

ユ「ミレニアムプライス、始まったね。」

モ「もし受賞したらクラッカーを鳴らそっか。でも、もしそうじゃなかったら......」

ミ「.......すぐに、荷造りしないとね。」

「みんな......」

 

3人の空気が重くなる中、アリスは困惑の色を浮かべていた。

 

「何をしょぼくれている。お前らは言ったはずだ。『レディ・パーフェクトリー(準備は完全に整ってる)』と。』

モ「先生......」

 

コ『これより、ミレニアムプライスを始めます!司会及び進行を担当するのは私、コトリです。』

「始まったようね。」

コ『今回は、これまでのミレニアムプライスの中でも最多の応募数となりました。』

ミ「コトリちゃんたち、無事でよかった。ところで、地上最多の応募数って.....。」

モ「それはちょっと困るなぁ.....。」

 

コ「第七位は、エンジニア部、ウタハさんの『光学迷彩下着セット』です!これは身に着けてもその下の素肌が見えてしまうのですが、露出狂の患者さんが合法的に趣味生活を営めるという点で、大変高い評価を獲得しました。』

 

――いや、下着に光学迷彩つける人なんている!? 逆に評価した人が気になるわね。

 

「良かったな。お前が喜びそうな作品だぞ.....!? まさか、お前が審査員だったのか!!」

「!? 誰が露出狂だ、こらぁぁ!!!」

 

そんなやり取りがあったが、1位まで、ゲーム開発部の作品は呼ばれなかった。

 

ミ「1位の発表だね。」

 

(ドキドキッ)

 

コ「待望の1位は.......新素材開発部...」

 

(ダンダンダンッ!)

 

1位が発表された途端、モモイちゃんがディスプレイを銃で破壊してしまった。

 

ミ「きゃぁっ!本当にディスプレイを撃ってどうするの!?」

モ「どうせ全部持っていかれちゃうんだし、もう関係ない!今度こそ終わりだぁぁぁぁぁ!!」

ユ「結局、こうなっちゃうなんて.....。」

「落ち着いてモモイちゃん。でも.....」

モ「.....分かってるよ!全部が否定されたわけじゃない、へこたれる必要なんて無いって.....。ネット上の評価も悪くなかったし、くそげーランキング1位のあの時から、ちゃんと成長した。」

ミ「でもここを追い出されたら、アリスちゃんとユズちゃんは.....」

 

ミドリの言葉を聞き、ユズちゅんは何かに決心したように

 

ユ「私、寮に戻る。」

ミ「え?」

ユ「もう私のことを、くそげー開発者って呼ぶ人はいないと思う。ううん、もし仮にいたとしても、大丈夫。今の私には.....この三人と、先生とリスタさんがいるから。」

「ユズちゃん.....」

 

ユズの言葉を聞き私は.......

 

聖哉は、タブレットを見ていた。

 

ユ「でもアリスちゃんは......」

 

アリスは今にも泣きそうな顔になっていた。

 

「アリスちゃん、シャーレに来る?」

ミ「アリスちゃん.....ごめんね。」

ア「いえ、リスタのことは、信じられますから。ですが.....」

 

ア「もうみんなとは......一緒に、いられないんですね。」

ミ「!!」

 

アリスの言葉に、ミドリちゃん、モモイちゃん、ユズちゃん、そして私までもが涙をこぼした。

 

ミ「うっ、ごめんね.....ごめんね、アリスちゃん!私、毎日シャーレに行くから!本当に、絶対毎日行く!どこに行っても、ゲームを作ろう!」

モ「やっ、やっぱり嫌!リスタ!やっぱアリスを連れて行っちゃダメ!」

ミ「私たちの部屋においで、ご飯も分けるから!」

ユ「二人とも、リスタを困らせないであげて.....それに、もしそのことがバレたら、2人も....」

 

この状況でも、聖哉はタブレットを凝視していた。

 

「聖哉!! あんたなんでこの状況で、それを見てられるのよ!!!」

 

私が聖哉に明らかな怒りをぶつけようとすると、聖哉はため息をついた

 

「はぁ、ミドリ、アリスをシャーレに連れていく必要はない。」

全「!?」

ミ「せ、先生?」

モ「どういう事!!」

 

「はぁ、モモイ、お前は前に、『ゲームのアップデート情報は最後まで見ろ』と言ったな。」

モ「それが?」

「なら、最後まで落ち着いて見ろ、最後まで諦めるな。」

「聖哉!何言ってんの? ミレニアムプライスは終わったのよ。」

 

聖哉はタブレットをしまい、腕を組み始めた。

 

「そろそろだな。」

 

聖哉のそう言った途端、部屋のドアが勢いよく、開かれた。

 

そこには、息を切らしたユウカちゃんがいた。

 

ユウカ「モモイ!ミドリ!アリスちゃん!ユズ!おめでとう!!」

 

全「え?」

 

ユウカちゃんは辺りを見回すと、困惑した表情に変わった

 

ユウカ「え、何この反応?結果見てなかったの?」

ミ「私たち、7位以内に入れなくて.....。」

ユウカ「何言ってるの?今も放送中なんだから.....」

ミ「お姉ちゃんがディスプレイを吹っ飛ばしちゃって....。」

ユ「本当に何してるのよ.......ほら、見てみて。私もスマホで見てて、途中から走ってきたの。」

 

ユウカちゃんはそう言うと、自分のスマホを見せてきた。

 

審査員『今回は「特別賞」を設けます、その受賞作品は......ゲーム開発部の『テイルズ・サガ・クロニクル2』です。」

モ「えぇ、嘘っ!?

ミ「何が起きてるの.....?」

審査員『レトロ風という時代を超えたコンセプト、常識を縛られず次々と想像を超えていく展開、一見してそれらとマッチしそうにない不可思議な世界観、と、最初は困惑の連続でしたが.....。」

 

審査員『新しい世界を旅して、一つ一つ新たな絆を結びながら、魔王を倒しに行く....。そいったRPGの根本的な楽しさが、しっかり込められた作品だと思います。そう言った点で、この作品にミレニアムプライス『特別賞』を授与します。』

 

ユウカ「本当におめでとう!その、実は私もプレイしてみたの。決して手放しに面白かったとは言えないけど.....良いゲームを遊んだ後の、あの独特な感覚が味わえた。」

マ「モモ、ミド!あたしも『TSC2』やってみたよ、すっごい面白かった!今でもネット上でも大騒ぎだよ!」

 

ア「三時間前にアップした『テイルズ・サガ・クロニクル2』は、先ほどまでダウンロード7705回、合計1372回のコメントが付いていましたが......ミレニアムプライスの発表以降、約26秒間でダウンロード回数が1万を超えました。」

 

全「!?」

 

モ「えっと.....っていうことは、廃部にはならないんだよね!?」

ユ「ええ、そうよ。あ、でもあくまでも「臨時の猶予」だから。正式な受賞ではないし、生徒会としてはまた来学期まで.....ゲーム開発部の部室の没収及び廃部を、「保留」することにしたの。」

 

ユウカは、申し訳なさそうな顔になり

 

ユ「えっと、それから.....。ご、ごめんなさい。ここにあるゲーム機のこと、ガラクタって言って.....。ありがとう。それじゃあ、部室の延長申請とか部費の受取処理とかは必要だから、落ち着いたら生徒会室に来てね。じゃあ、また後で。」

 

ユウカちゃんが部屋から出ようとすると、聖哉が引き留めた。

 

「まぁ、待て。」

ユ「先生?」

 

聖哉はそう言い、私のほうに向いた

 

「リスタ、今日は焼肉にしよう。当然、こいつらも一緒にな。」

 

全「!?」

 

モ「先生、いいの!?」

ユ「私もご一緒していいんでしょうか?」

「当たり前だ。」

モ「先生、太っ腹!!」

 

皆が喜んでいると、アリスちゃんが

 

ア「えっと、つまり、アリスはこれからも、みんなと一緒にいて、良いのですか.....?」

モモミド「うんっ!!」

ユ「これからも、よろしくね......!」

 

アリスちゃんがそう聞くと、涙を浮かべ

 

ア「私も.....私も、嬉しいです。」

ミ「アリスちゃんっ!!」

モ「私たち.....っ!!」

ユ「これからも、ずっと一緒だよ!」

 

ア「......はい!」

 

ゲーム開発部のみんなが抱き合っている様子を見て、聖哉は微笑み、私にグットサインをした。

 

「言っただろう、リスタ。『ガナビー・オーケー(何とかなる)』とな。」

「!!.......うん。」

 

こうして、ミレニアムの一件が終わった。

 

皆で焼き肉パーティーをした次の日、私と聖哉は、本来のミレニアムの目的であるヒマリちゃんに会いに来た。

 

ヒマリちゃんがいるのは特異現象捜査部というところだった。

 

ヒ「あなたが、別次元から来た勇者.....いや、先生と女神ですね。」

 

そこにいたのは、白髪でエルフのような耳....そして、噂通り、車いすに乗っているヒマリちゃんがいた。

 

ヒ「申し遅れましたね。私の名前はヒマリ。このミレニアムサイエンススクールにおける、天才ハッカーです。」

 

――この子、自分で天才って言った!? 随分と自信家のようね.....

 

「そんなことより、お前に依頼を頼みたい。」

ヒ「そんなことよりですか.....」

 

ヒマリちゃんは明らかに、落ち込んだ様子を見せた。そんなヒマリちゃんに聖哉はお構いなしに、アダマンタイトを見せた。

 

ヒ「先生、これは?」

「アダマンタイト。別世界の物質だ。これがいつこの世界に来たのか、そして、どうやって来たのかを知りたい。解析を頼む。」

ヒ「.....実に興味深いですね。」

 

すると、ヒマリちゃんは、何かを思いついたように

 

ヒ「いいでしょう。この超天才病弱美少女ハッカーが、引き受けましょう。」

 

――自分で病弱って.....確かに美少女だけどね。

 

ヒ「ですが、私たちのお願いを聞いていただきたいのです。」

「ほう、等価交換という事か、言ってみろ。」

ヒ「ありがとうございます。先生は『デカグラマトン』というのをご存じでしょうか?」

「なんだそれは....」

ヒ「『神を研究し、その存在を証明出来れば....その構造を分析し、再現できるだろう。すなわちこれは、新たな神を創り出す方法である』その仮説を元に作られた、対・絶対自律型分析システム。つまるところ、「神性を探し出す人工知能」。」

 

? どういう事? つまり、神を創ったということ?

 

「つまり、それを一緒に調査しろということだな。」

ヒ「話が早くて助かります。」

「だが、エデン条約が終わるまで待ってくれ。」

 

エデン条約?

 

私はその条約が分からなかったが、ヒマリちゃんは何かに気づいたように

 

ヒ「なるほど。先生もあの条約に関係してるのですね。」

「あぁ、その件が終わったら、協力しよう。」

 

聖哉の提案にヒマリちゃんは、少し考え

 

ヒ「わかりました。では、こちらのアダマンタイトというものは預からしてもらいます。」

「頼む。」

 

聖哉はそう言い、その場を後にした。

 

「聖哉、エデン条約って?」

「ゲヘナ学園とトリニティ総合学園で結ばれる不可侵条約のことだ。実は、ティーパーティのナギサから、今回のことで話したいことがあると、連絡をしてきた。」

「いつの間に.....」

「デカグラマトンも気になるが、エデン条約に奴らが介入してこないとも限らないからな。先に片づける。」

 

聖哉はそう言い、シャーレに戻った。

 

――あれ? そういえば、モモイちゃんのゲーム機に入っていた〈key〉って、結局、何だったんだろう。

 

私は、疑問に思ったが、そこまで深くは考えず、今日は寝ることにした。

 

パヴァーヌ編第一章、完結。

 

 

 

 




次回予告
「本当にゲーム開発部が存続してよかったわね。」
「あぁ、あいつらはゲームを開発してる時が一番似合っているからな。次はトリニティだ。エデン条約、魔王軍の件もある。一層に気を引き締めるぞ。」

?「やっはろ~。 ついに私の登場って感じかな✨」
?「ミカさん。次回予告なので、もっと気品良くしてください。」
ミ「え~、なんで? リスタなんか、私より、気品がないよ。女神なのに。」
「!? 誰が気品がないじゃこらぁ!?」
ミ「ほら、そういう所とか。」
ナ「ミカさん。」(ゴゴゴゴゴッ)
ミ「!? 先生、ナギちゃんとリスタが怖い~。」

「はぁ~。次回『補習授業部』。」

ナ「私は、この条約を絶対に締結させなきゃいけません。そのためには......」
「ナギサ、俺はそれに対し、慎重に準備するまでだ。」

パヴァーヌ編第一章を最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

次回は、エデン条約編です。エデン条約は、最後まで書きます。

どうぞ、よろしくお願いします。





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