透き通る世界でも慎重な勇者   作:かげもじ

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22話を投稿しました。
ここから、オリジナルの展開を組み込んでいきます。


キヴォトスの異変

2回目の模擬試験が終わり、私たちは、キヴォトスに戻っていた。

 

各々の用事を終わらせ、合宿所に戻り、ベットに入った。そういえば、聖哉が寝室にいないけど、どこに行ったんだろう?

 

そう考えてるうちに、私は、夢の世界に足を踏み入れた。

 

?「りす......りすた......リスタルテ。」

「うぇ!?.....こ、ここどこ!?」

 

私は、寝室で寝ていたはずだ。でも身を覚えがある。ここは確か、ティーパーティーの......

 

私が辺りを見回すと、そこには、白い服に長い裾、均整の取れた金色の髪、狐のような大きな耳を持った子がいた。その姿は統一神界の女神に引けを取らない神々しさを醸し出していた。

 

?「驚かせてしまったようだね、女神リスタルテ。」

「あ、あなたは?」

?「あぁ、紹介が遅れたね。百合園セイアだ。前まではティーパーティーのホストを務めていたよ。」

 

百合園セイア!? その子って、今入院しているんじゃ.....

 

セ「君の疑問はもっともだ。この世界で入院している私が、こうして、君と会話を交わしてられるのか、と言ったところかな?」

 

す、すべて、見透かされている!?

 

セ「これは私の能力によるものだよ。意識を持った状態で、場所や未来、現在、過去を問わず観測できるのさ。そして、未来を予見する力もある。」

 

それって、予知能力!? この子、イシスター様に準ずる能力を持ってるってこと?

 

セ「だが、そんな便利なものでもないんだ。私はこの能力を完全にコントロールできない。突発的に断片的な未来を見ることもある。話がそれたね。私が君と精神世界で接触したのには訳があるのさ。」

「わ、訳?」

 

セイアちゃんは、そう言うと真剣な表情になった。

 

セ「私の予知能力は、無作為に発動することがあるが、外れたことは無い。だが、この世界は変化している。規範的世界像の内部では原理的に顕在化し得ないはずの事態が起こっているのさ。」

「? どういうこと?」

セ「あぁ、分かりにくかったね。つまり、本来の時空では、起こり得ないことが起きているのさ。」

「そ、それって、邪神や魔王軍とも関係しているの?」

 

私の質問に、セイアちゃんは頷いた。

 

セ「私は、君とあの勇者がこの世界に来たことを疑問に思っていた。だが、今回の件で確信したよ。君たちは、この世界に来るべくして来たのだということを。」

「聖哉と私が......」

 

セイアちゃんの言葉で、私は理解してしまった。この世界は本来、私たちではなく、違う大人が来る予定だったのではないか?

 

私が、思考に浸っていると、セイアちゃんが焦るように話した。

 

セ「時間は刻一刻と迫っている。君とあの勇者が、どういう解を見せてくれるのか、楽しみにしているよ。」

 

視界が、段々とくすんでいく。セイアちゃんの姿がぼやける。

 

「ま、待って!!」

セ「人間は誰しも、すべての人の前で、すべての人のために、あらゆることについて罪がある」

 

セイアちゃんが、最後に何かを言っていた。

 

気が付いたとき、私はいつもの寝床にいた。

――百合園セイア。そして、本来、起こり得ないことって?

私に予知能力はない。だが、この妙な胸騒ぎは、ゲアブランデの魔王戦前のと似ていた。

 

――ううん。私には、この世界には、聖哉が居る。あの勇者なら持ち前の慎重さで、何とかしてくれる。

 

大丈夫よね?

 

次の日、突然、ティーパーティーの聖園ミカちゃんが、話がしたいと私たちを呼んだ。

 

〈合宿所・プール〉

 

な、何で、プールに呼び出したのかしら.....

 

ミ「わぁっ、水が入ってるー!あはっ、ここに水が入ってるのなんて久しぶりに見たなー。もしかしてこれから泳ぐの?それともみんなでプールパーティー?」

 

相変わらず、陽気なミカちゃんに、私は唖然としていた。

 

「そんなことはどうでもいい。用件を言え。」

「わーお、そいえば先生は、こういう前置きが嫌いだったね。用件は、先生がうまくやってるかだよ。」

「......え、それだけ?」

「.......。」

 

大事な要件があると思ったので、私は、驚愕した。一方、聖哉はというと、ミカちゃんを白眼視していた。

 

ミ「.....あはっ。そこまで警戒されちゃうのは心外だなー。私こう見えても繊細で、傷つきやすいんだよ?」

「.......。」

ミ「じゃ、じゃあ、本題に入るとしよっか?あっ。ちなみに私がここにいることについて、ナギちゃんは知らないよ?見ての通り、付き添いも無しの私の単独行動!」

「あぁ、土蛇で半径100m以内に人影がいないのは把握済みだ。だが、油断はできない。お前が透明化などを用いて、伏兵を潜ませている可能性もあるからな。」

「ちょ、ちょっと聖哉......」

 

聖哉の言葉に、ミカちゃんは少しだけ眉をひそめた。

 

ミ「ま、まぁ、信用できないのも無理ないよね~。その様子だと、ナギちゃんから『トリニティの裏切り者』を探してほしいって、言われたみたいだね。」

「あぁ。」

 

聖哉の問いに、ミカちゃんは、困ったようにため息をついた。

 

ミ「やっぱり。もうナギちゃんたら、予想通りなんだから。でも、ナギちゃんから、理由とか目的とか教えてくれた?」

「理由、目的.....エデン条約締結の邪魔する可能性があるからじゃないの?」

ミ「うん、概ね、正解だよ。あの中の全員が、裏切り者の可能性がある疑惑をかけられた。」

「おい、そんなことを聞きに来たわけじゃない。それだけなら、俺たちは帰るぞ。」

 

知っている情報を教えてくるミカちゃんにしびれを切らしたのか、聖哉は早くこの場を去りたい様子だった。

 

ミ「!? ま、待ってよ、先生!!私は先生に取引を提案しに来たの。」

「取引?」

 

せ、聖哉に取引!? 嫌な予感しかしないのだけれど.....

 

ミ「補習授業部の中にいる『裏切り者』が誰なのか、教えてあげる。「帰る。」

ミ「!?ま、待ってよ、先生!!知りたくないの?」

「そんなことはとうに知っている。お前が俺に提示する内容がしょぼすぎる。出直してこい。」

ミ「し、知ってるの!? アズサちゃんが繋がってるのがアリウスだってことも!?」

「あぁ。」

 

まぁ、こうなるよね......聖哉の情報網はこの世界においては最強だから。

 

ミ「じゃ、じゃあ、これは? エデン条約は表向きは、平和条約っていう、良い話だけど、裏はゲヘナとトリニティの軍事同盟だってことも!」

「あぁ。だが、よくある話だ。全くおかしい話ではない。それに言っただろう。俺はエデン条約には興味ない。」

ミ「え、え、じゃ、じゃあ、ナギちゃんがその力を使って何かをしようとしてることも!!」

「確かに、ほかの学園から見たら、脅威としか言えないだろう。それが発端として、戦争が起こるかもしれない。だが所詮、ガキのごっこ遊び。わざわざ警戒する必要はない。」

「いや、戦争が起こったら、大変だろーが!! 生徒のみんなの平凡な生活が脅かされるんだから!!」

 

私の言葉を聞き、聖哉は、何かに気づいたように

 

「ふむ、確かに、戦争による不景気で物資が買えなくなるのは痛いな。魔王軍四天王との戦闘も残っている。物資の補給は最重要だからな。」

「結局、自分のこと!? どんな先生だよ!!!」

 

聖哉の自分勝手な発言に、ミカちゃんは困惑の色を浮かべていた。

 

ミ「あ、あれー? やっぱり、噂通りなのかも.......じゃあ、ほかに聞くこととかない?」

 

その言葉を聞き、今まで退屈そうにしていた聖哉が真剣な表情になった。

 

「.....百合園セイアは、本当に入院しているのか?」

ミ「!?」

 

聖哉の質問に、ミカちゃんは今までの陽気な雰囲気が変わった。

 

ミ「......先生は、本当に知りたい?この話をしたら、もう私は戻れない。もしこの先の事実を知った先生が、私のことを裏切ったら......私はきっともう終わり。」

 

な、何? 何で急にミカちゃんはそんなことを.....

 

ミ「......セイアちゃんは入院なんかじゃない.....ヘイローを、破壊されたの。」

「!?」

 

へ、ヘイローを破壊!? そ、それって、亡くなったという事!?じゃ、じゃあ、昨日のセイアちゃんはいったい.....

 

私は、衝撃の事実に驚愕していた。だが、聖哉は変わらず無表情だった。

 

ミ「去年、セイアちゃんは何者かの手によって唐突に襲撃された。」

「ふむ、何となく、予想はしてたが.....実行犯の目星は?」

ミ「.....うん、分かってない。捜査中っていうか、何も分かってないっていうか.....もともとセイアちゃんは、秘密の多い子だったこともあってね。」

「なるほど、貴重な情報だ。で、お前の要件はなんだ?」

 

聖哉の質問に、ミカちゃんは

 

ミ「『白洲アズサ』.....あの子をこの学園に転向させたのは、私なの。」

「み、ミカちゃんが!?」

ミ「うん、ナギちゃんには内緒でね。生徒名簿とかそういう書類を全部捏造して、あの子を入学させた。」

 

「ど、どうして?」

 

ミカちゃんの行動に理解ができない私は、咄嗟に口からこぼれてしまった。

 

ミ「.....私は、アリウス分校と和解がしたかった。でもその憎しみは、簡単には拭えないほど大きくて....これまでの間に積みあがった誤解と疑念もあまりにも多い。私の手には、負えないくらい。でも、私は政治については得意じゃなくて.....でも、また今から仲良くするのってそんなに難しいのかな?前みたいにお茶会でもしながら、お互いの誤解を解くことはできないのかな?」

 

大昔にアリウスを迫害したトリニティ総合学園。いくら時間が経っているとはいえ、その憎悪は消えない。そんな学園同士が、仲良くするのは夢物語だと思った。だが、その話をするミカちゃんが嘘をついているようには思えなかった。

――この時、私は気づかなかった。いつもの聖哉なら、ミカちゃんが皮をかぶっていると思うだろう。だが、そんな聖哉がミカちゃんの話を真剣に聞いているということに.....

 

ミ「私はあの子....『白洲アズサ』という存在に、和解の象徴になってほしかったの。もし、エデン条約が締結されたら.....その時はもう今度こそ本当に、アリウスとの和解は不可能になっちゃう。だがら、その前にどうにか実現させたかった。」

「.......。」

ミ「だから、守ってほしいの。あの子は私のせいで複雑な政治的な争いのど真ん中に立つことになっちゃってる。だから、ナギちゃんにとっての『裏切り者』は私でもある。私は、ナギちゃんが進めているエデン条約に賛成の立場じゃないから。」

 

ミカちゃんの言葉を聞き、聖哉は少しだけ、眉をひそめた。

 

ミ「でも、最終的には先生が決めて。」

「......いいだろう。」

「せ、聖哉!?」

ミ「ありがとう、先生。」

 

私と聖哉は、ミカちゃんとの話を終えた後、教室に行くべく、神界を経由して、行くことにした。その途中、私は聖哉に聞きたいことを聞いた。

 

「ねぇ、聖哉。セイアちゃんは本当に......。」

 

直接、会ったことは無い。でも、昨日の事が夢だとも思わなかった。何より、あんな小さい子の人生が奪われたことが許せなかった。

 

「........あいつは、セイアが死んだと言っていたが、本当は死んでいない。」

「!?」

 

ど、どういう事? ミカちゃんが嘘をついてるってこと?

 

「ミカは嘘をついていない。そう言われているのだろう、表向きは。だが、あいつは死んでいない。まぁ、意識は戻らず、いわば、昏睡状態だったがな。」

「昏睡状態......でも、どうやって知ったの? ミカちゃんですら知らなかったのに。」

「俺は、ここに来てから、土蛇で校内を散策させている。2回目にナギサと話してた時点で、セイアを発見している。」

「そ、そんな前から!?」

 

私は、聖哉の慎重さに驚いたが、それ以上に、セイアちゃんが生きていることに心がいっぱいになった。

 

「聖哉、昨日、セイアちゃんと会ったわ。」

「!?」

 

私の言葉に珍しく、驚いている様子だった聖哉に昨日の事を話した。

 

「なるほど。俺があいつの病床に行ってるときにな.....」

「し、信じるの?」

「あぁ、前回の捻曲世界の経験から、お前が思念を読み取る能力があることは覚えている。それにしても、本来、起こり得ない事象とな....。」

「何かわかる?」

「いや、わからない。」

 

そうよね.....聖哉は予知能力ではなく、予想で事柄を組み立てる人だから.....

 

「いや、そういう事ではない。なぜセイアはそんな当たり前のことを言っているのかという事だ。」

「!? いやいや、セイアちゃんは予知能力があるからこその異常事態を忠告してくれたんじゃないの?」

 

私の言葉に、聖哉は不可解と言った顔で

 

「いくら予知能力があるからと言って、そうなるとは限らない。予期せぬ出来事など、日常茶飯事。だからこそ、慎重に準備するのだ。」

 

私は、聖哉のその『慎重』という言葉を聞き、今までの不安が一気に吹き飛んだ。

 

――そ、そうよ!!私たちの世界なんて、予期せぬ出来事なんて、当たり前だった。だが、この勇者はその予期せぬ出来事までも、想定し、幾度となく窮地を乗り越えたのだ。

 

そう話している間に、聖哉は、神界への門をくぐり、教室に行った。

そこには、いつものメンバーともう一人、生徒さんがいた。修道服に身を包み、オレンジ色の髪の可愛らしい生徒さんだった。

 

ヒ「あ、先生、リスタさん!どこ行ってたんですか?」

「ちょっと、野暮用でね。」

 

すると、シスターのような子が、聖哉のことをじっと見つめていた。

 

「あなたは?」

マ「はっ、失礼しました。私はシスターフッドの伊落マリーです。」

 

シスターの子は、マリーちゃんというらしい。何やら、いじめを受けていたクラスメイトをアズサちゃんが助けたことで、お礼がしたいという内容だった。

 

「ほう、いじめか。俺も、見かけたら、再起不能にしていたが.......」

「いや、再起不能にしたら、やばいでしょ......。」

 

すこし、マリーちゃんと雑談をした後、ハナコちゃんが玄関まで送り届けた。

 

その夜、ハナコちゃんが部屋を訪ねてきた。だが、ハナコちゃんの服はなぜか水着だった。

 

「え!? 何で、水着!!」

ハ「ああ、これについてはお気になさらず。パジャマなので。」

 

いや、一番気になるんですけど!?それで寝てるの?

 

「そんなことより、なんだ?」

 

聖哉の言葉に、ハナコちゃんははっとし、話を戻した。

 

ハ「実は、先生とリスタさんに相談したいことが......。」

 

ハナコちゃんが言いかけた途端、突然、部屋の扉が開いた。そこから出てきたのはヒフミちゃんだった。

 

ヒ「は、ハナコちゃん、何で水着なんですか!?まぁ、リスタさんがいるんですから、そういう事ではないでしょうけど......」

ハ「ひ、ヒフミちゃん。何を想像してたんですか?」

ヒ「い、いえ、何も.....」

「はぁ、ヒフミも話に入れよう。ハナコ、アズサのことについてだろう。」

ヒ「アズサちゃん!?」

 

聖哉の言葉を聞き、ハナコちゃんは微笑んだ。

 

ハ「流石、先生ですね。実はアズサちゃん.....毎晩のように、どこかへ出かけては夜明けまで戻ってこないことが続いていて。」

 

やっぱり、アリウスの所に行ってるんだわ.....

 

「.......お前らには、本当のことを言おう。」

ヒ・ハ「!?」

「前回、ナギサがこの補習授業部に裏切り者がいるって言ったな。」

ヒ「はい......ま、まさか!?」

ハ「やはり.......」

 

「白洲アズサが現状、『トリニティの裏切り者』だ。」

 

全「!?」

 

聖哉の衝撃の真実を聞き、ヒフミちゃんは、驚きを隠せないでいた。対して、ハナコちゃんは、アズサちゃんの出自に目星をつけてたのだろう。そこまで、驚いてはいない様子だった。

 

ヒ「な、なんで、アズサちゃんが、しょ、証拠はあるんですか!?」

 

仲が良かったヒフミちゃんは、この真実を受け止めきれないのだろう。

 

「証拠ならある。ハナコの言った通り、夜にアリウスの生徒と接触している。」

ヒ「そ、そんな......。」

ハ「先生....今、それをここで言うということは、何か、考えがあるんですか?」

「あぁ。だが、お前らにしてもらうことは無い。今は、試験に集中しろ。」

 

聖哉の考え.......私は、まだ、アズサちゃんが裏切り者という真実を受け止めきれないらしい。

 

ヒ「私は信じません。」

「!?」

ヒ「私は、アズサちゃんの口から、真実を言ってくれるまで、信じませんから!!」

 

ヒフミちゃんは、事実に耐えれなくなり、その場で泣いてしまった。

 

ハ「ヒフミちゃん......。」

「せ、聖哉、今ここで、それを言うのは、まずいんじゃない。」

 

私の訴えに、聖哉は真剣な表情で

 

「ヒフミ、お前の言う通りだ。事実はそうでも、それが真実とは限らない。悩め。自分で確かめろ。」

ヒ「先生......。」

「慎重に考え抜き、真実を見極めろ。それが俺が言えることだ。今日は、もう寝ろ。明日は教室で勉強する。」

「!? 神界じゃなくて?」

「あぁ、神界だと、世界の情勢が分かりにくいからな。異常事態がトリニティだけとは限らない。」

ハ「......先生なら.......きっと.....」

 

最後にハナコちゃんが、何かを言おうとしたが、聞き取れなかった。

 

「リスタ、神界に行くぞ、エデン条約に向けて、準備することがある。」

「!? エデン条約のことなんかどうでもいいんじゃないの?」

「気が変わった。俺たちはもう、蚊帳の中に足を踏み入れている。」

 

私と聖哉は、神界に行った。神界に到着した途端、やることがあると言って、召喚の間に籠ってしまった。私は、聖哉の準備が終わるまで、暇だったのでキヴォトスの様子を見ることにした。

――あの子たち、ちゃんと、寝れてるかな? アズサちゃんのことも、気になるし.......

 

そう思い、水晶玉の座標をみんなの寝室に調整した。水晶玉を覗いた瞬間、私は驚愕した。それは無理もない。なぜなら、アズサちゃんどころか、補習授業部全員の姿がなかったからだ。

 

「!? な、なんで? あの子たちはどこに.......。」

 

透かさず私は、あの子たちを探すために聖哉から預かっている、シッテムの箱の電源を付けた。

 

「アロナちゃん!!連邦生徒会のセントラルネットワークに接続して、補習授業部のメンバーを探して。」

ア「わかりました........見つけました!!.....場所はトリニティの商店街です。」

「ありがとね。」

 

アロナちゃんの検索速度に驚いたが、今はあの子たちの身の安全を確認することが最優先だ。

 

ヒ「あはは.....先生たちに内緒で来ちゃいましたね。」

ハ「どうですか?もうすでに楽しくないですか?禁じられた行為をしているというこの背徳感、そして同時にみんなで一緒にしているからこその安心感、この二つが合わさって.....!」

ア「なるほど、深夜の街はこんな感じなのか.....思ったより活気がある。」

コ「うぅ....結局乗っちゃったけど、こんなところ万が一ハスミ先輩に見られたりしたら、すっごい怒られそう....。」

 

――よ、よっかった~.......危ないことに巻き込まれたと思ったけど、大丈夫そうね。

あの子たちが無事で、安心したのか、私はどっと疲れが来た。だが、夜の商店街。危ないことに巻き込まれるかもしれない。私はしばらく、様子を見ることにした。

 

補習授業部のみんなは、最近の近況を、話していると、スイーツ屋に入った。どうやら、ここの限定パフェを食べるために入ったようだ。

 

店「5名様でしょうか?ご注文をどうぞ。」

「えっと、あ、限定パフェってまだありますか?」

店「ああ、申し訳ございません.....限定パフェはちょうど先ほど、別のお客様が三つ購入されたのが最後でして......」

 

ぱ、パフェを三つも!? どんだけ、その客、大食いなのよ.....

 

?「あら......?コハル......」

コ「ハスミ先輩!?」

 

なぜか、正義実現委員会のハスミちゃんが、スイーツショップにいた。その姿を見て、皆が目をそろえて、驚愕した。そう、なぜなら、パフェを三つ、注文した生徒がハスミちゃんだったからだ。

 

ハ「ハスミさん、奇遇ですね❤あら、真夜中にパフェを三個も.....たしか、ダイエット中だと伺いましたが?」

ハスミ「そ、それはですね......」

 

ハスミちゃんが、パフェをやけ食いしてた理由は、ゲヘナとの会合中に、マコトちゃんの態度にイライラしたかららしい。

 

コハルちゃんの補習授業部での生活などを話していると、突然、ハスミちゃんの携帯が鳴った。

 

ハスミ「はい......イチカ?どうかしましたか?」

イ『ハスミ先輩、ちょっと問題が発生しちゃいまして。今どちらに?』

ハスミ『問題......?詳しく聞かせていただけますか?』

イ『どうやら学園の近郊にゲヘナと推測される生徒たちが無断で侵入、さらに無差別に銃撃を行いつつトリニティの施設を襲撃している、との情報が。』

 

ゲヘナの生徒が、トリニティを襲撃!? あの子たちだったら......やりかねないわね。

私は、風紀委員会での修行で、ゲヘナの生徒の素行の悪さを知っているためか、あまり驚かなかった。

 

イ「風紀委員会ではなく、兵力も全然少なくて、確認されてるのは4名だけっすね。ですが、様子がおかしくて.....」

ハスミ『様子が?」

イ『はい。情報によると、『美食研究会』らしくて、首謀者が、ゲヘナでも要注意人物とされてる『黒舘ハルナ』。」

 

ハルナちゃん!? 風紀委員会での修業の時に、聖哉にボコボコにされた、あの.....

 

ハスミ「なるほど。それで、様子がおかしいというのは.....」

イチカ『それが、情報によると『美食研究会』が襲ったのは、トリニティでも随一の有名レストランで.....』

 

トリニティ随一の有名店......あれ? ハルナちゃんたちって、おいしい店を襲ったりしたっけ?

 

私は急いで、水晶玉の座標をハルナちゃんがいるところに移動させた。そこに映ったのは......

 

ハ「トリニティでも最高峰のレストラン。味もサービスも超一流でした。」

 

あれ? いつのも、ハルナちゃんじゃない.....

 

ハ「ですが、所詮、トリニティ。ほかの店は、最低レベルです。ただ有名な店というだけで、足を運ぶ低俗。そんな輩には、消えてもらわなければなりません。」

 

!? な、なんか様子がおかしくない?

 

ハ「大量虐殺の始まりですぅぅぅぅぅ!!!!」

 

!? やっぱり、おかしいじゃない!!! いつもの、あの子たちなら、トリニティにそこまで恨みはないはず。一体どうなってるの!?

 

レストランだけでなく、ほかの店まで破壊する美食研究会。その光景を見て、私はセイアちゃんが言ったことを思い出した。

 

――本来、起こり得なかったこと......まさか、これが......

 

私は、それまで、ハルナちゃんたちに、気を取られて気づかなかった。このトリニティに夜の帳が落ちてる中、赤く輝く、無数の鳥がいることに。

 

あ、あれは、炎の魔法鳥、「オートマティック・フェニックス(鳳凰自動追撃)」だわ!! で、でも聖哉は、神界にいるはず......

 

急に現れた、魔法鳥に驚いている間に、ハルナちゃんたちを殲滅した。その様子はまるで、地獄の光景だった。

 

私はすぐに、聖哉の所に行った。

 

「聖哉!! あの魔法鳥はあんたが......!?」

 

私が、勢いよく、部屋に入ると、空間ディスプレイを使って、何かをしている聖哉の姿があった。

 

「なんだ、リスタ。終わったら、呼ぶといっただろう。」

「大変なの!!美食研究会がトリニティで暴れてて、そしたら、あんたの魔法鳥が現れて.....」

 

私の言葉に、聖哉は作業をしながら....

 

「ハルナのような輩のために、オートマティック・フェニックスなどの魔法生物をキヴォトスにはなっている。自動で対象を迎撃することもできるし、俺が遠隔でコントロールすることもできる。」

「い、いや、神界にいるのに、キヴォトスで魔法が使えるの!?」

「やってみたら、出来た。」

「マジで!?」

 

相変わらずの天才っぷりに、驚愕していると、聖哉が......

 

「俺も一部始終を見ていた。今日のノルマはクリアした。一旦、キヴォトスに戻るぞ。」

「もう終わったの?」

「まだだ。だが、今日は十分だろう。それより、ゲヘナ風紀委員会も来ているようだな。」

「え、えぇ、確かに、いたけど.....」

「ヒナと話がしたい。」

 

私たちは、話が終わると、キヴォトスに戻った。そこには、頭がアフロになった。美食研究会のメンバーと、補習授業部の子たちがいた。

 

ヒ「せ、先生、居たんですか!?」

ハスミ「やはり、あの鳥は、先生だったのですね。おかげで助かりました。」

ハ「ところで、あの方々はこの後どうなるのですか?」

ハスミ「本来ならば私たちの方でこの後の処遇を決めるのですが....今回は時期が時期ですので、ゲヘナの風紀委員会に託そうかと。」

「なるほど。なら、俺が直接引き渡そう。」

 

聖哉は、ヒナちゃんたちに会うために、仲介役を名乗り出た。

 

ハスミ「そうしてもらえると、ありがたいです。『シャーレ』が介入していただけると、政治的な憂慮がだいぶ減るので。ではよろしくお願いいたします。」

 

そうして、ゲヘナの救急医療部を待っていると、サイレンを鳴らし、荒々しい運転で救急車が到着した。中からは、きれいな白髪で、ナース服を着た生徒が出てきた。

 

セ「....お待たせしました、死体はどこですか?」

 

......は? 死体? そんなものないけど......

 

セ「....失礼。死体ではなく負傷者でしたね。たまに混同してしまって。」

 

ユニークな子ね.....

 

私が、セナちゃんに驚いていると、誰かが近づいてきた。

 

ヒ「死体なんて、見たことないでしょ、セナ。」

「ヒナちゃん!!」

 

近づいてきた、人影の正体は風紀委員会の委員長「空崎ヒナ」ちゃんだった。

 

ヒ「久しぶりね。先生、リスタ。」

セ「なるほど。あなたが噂の勇者と女神ですね。委員長、私は先に戻ります。」

ヒ「えぇ。」

 

セナちゃんはそう言うと、ハルナちゃんたちを連れて、その場を去った。

 

ヒ「さて、先生。私に聞きたいことがあるのでしょ?」

「あぁ。お前の視点でいい。ハルナは、特段とトリニティを嫌ってるのか?」

 

聖哉の言葉を聞き、ヒナちゃんは首を横に振った。

 

ヒ「確かに、ハルナたちは、手を焼く子たちだわ。けど、そんな理由で騒動を起こしたりはしないわ。」

「なるほど。つまり、何らかの影響で、トリニティへの憎悪が増大したという事か.....」

 

何らかの影響で......一体、あの子たちに何が.....

 

私が、思考を巡らせていると、ヒナちゃんが

 

ヒ「先生、知ってる? 最近、ゲヘナで流行っているドリンクのことを....」

 

ど、ドリンク?

 

 

 

 

 




「ヒナ。ゲヘナでは、ああいう事は、日常茶飯事なのか?」
ヒ「えぇ、おかげで今日も残業よ。」
「ほう、ならば、俺が手伝おう。新技の実験にぴったりだ。」
「いや、生徒を実験台にしてどうすんのよ!!!」
ヒ「先生は相変わらずね.....ん? 先生、その手に持っている剣は?」
「あぁ、これはヒナからつく「はいダメー!!本人に言っちゃダメー。」
ヒ「り、リスタ。急にどうしたの?」
「大丈夫。世の中には知らなくていいこともあるのよ.....」

「次回、『謎のドリンク』」

「そう、知らなくていいことが.....」

読んでくださり、ありがとうございます。

ここからオリジナルの展開を加えていきます。どうぞよろしくお願いします。

ストーリーの進み方は、原作通りです。



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