透き通る世界でも慎重な勇者   作:かげもじ

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23話、投稿しました。今回は、オリジナルの特技が出ます。


謎のドリンク

 

美食研究会による騒動の後、私と聖哉は、風紀委員会の空崎ヒナちゃんと話をしていた。

 

「ドリンク?初耳だな。やはり、トリニティだけに滞在していると、ほかの学園の状況が分かりにくいな.....魔法鳥を各学園に放っておくか。」

「いや、みんな、何事?って思うわよ!!!そ、それより、ヒナちゃん、ドリンクって?」

ヒ「え、えぇ、ドリンクね。」

 

聖哉の手段を選ばない強引さに、ヒナちゃんは少し引いているようだった。

 

ヒ「ゲヘナで、販売されているエナジードリンク『ダーム』。何でも、飲めば、元気が出るって言って、ゲヘナでは話題になってるの。」

「飲めば元気になる!? めっちゃ怪しいんですけど.....。」

ヒ「味も好評で、風紀委員会の間でも、飲んでいる子はたくさんいるわ。イオリも飲んでたみたいだし。」

 

そ、そんなおいしいの? 

 

「仮にその話が本当だとして、要するに、その飲み物が怪しいという事だな?」

「いや、ヒナちゃんの話、疑ってるんかい!?」

 

聖哉の質問に、ヒナちゃんは小さく頷いた。

 

ヒ「それで、これがそのドリンクよ。」

 

そう言って、そのドリンクを手渡してきた。見た目は、ごく普通のエナジードリンクのパッケージだった。だが、気になるのは、そのドリンクの色。ザクロのような、美しい深紅の炭酸水だった。

 

聖哉はそのドリンクを凝視すると、ヒナちゃんに

 

「ヒナ、このドリンクを預かってもいいか?」

ヒ「えぇ、そのために持ってきたんだもの。あなたなら、何かわかると思って。」

「どうするの、聖哉?」

「こいつに、何か仕掛けられてないかを調べる。」

ヒ「よろしく頼むわ、先生。」

「ヒナ、いくつか質問がある。」

ヒ「?」

 

聖哉は、まだヒナちゃんに聞きたいことがあるそうだ。

 

「お前は、エデン条約についてどう思っている? 一部では、ゲヘナとトリニティの軍事同盟という認識があるらしいが....」

ヒ「軍事同盟.....私は少なくともそうは思わない。あれはれっきとした平和条約。」

「なるほど。だが、ほかの学園にとっては不都合なことが多いんじゃないか? この二つの学園が手を組んだら、対抗できる学園はいないだろう。」

ヒ「......あの条約をゲヘナ側で推進してるのは、私なの。」

「ヒナちゃんが!?」

ヒ「エデン条約が締結させれば、ゲヘナの治安も少しは良くなる。そうなると、私たち(ゲヘナ風紀委員会)は必要なくなる。マコトはそれが狙いなんでしょ。」

「.......お前にはこれを伝えておこう。エデン条約、調印当日、何者かが襲撃するだろう。」

ヒ「!?」

 

聖哉は、自分が持ってる情報を、ヒナちゃんに話した。

 

ヒ「そう、トリニティの裏切り者ね......なんで、それを私に?」

「このキヴォトスにおいて、一番信用してるやつがお前だからだ。そして、エデン条約調印当日。お前にも、手伝ってもらうからな。」

ヒ「そ、そう///......私が一番......」

 

聖哉の言葉に、ヒナちゃんは顔を赤くし、俯いてしまった。だが、その言葉を放った当の本人は、無表情だった。

 

――こ、こいつ!!本当に思ってるの?

 

ヒナちゃんと別れると、聖哉と私は再び、神界に行った。すると聖哉は、ヒナちゃんからもらった例のドリンクを手に取り、ある場所に向かった。

 

〈神界・廃病院〉

 

「おい、ペストリア。このドリンクの成分を解析してくれ。」

 

前に病気付与の特技を教えてくれた病気の神「ペストリア」様の所だった。

 

「おおぉ、貴公か......いいだろう。ちょうど、暇してたところだ。」

 

聖哉は、ペストリア様にドリンクを渡し、その場を後にした。

 

「聖哉、あのドリンクに何か入ってるってこと?」

「あぁ、その可能性はある。ハルナたちは美食家。当然、話題になる飲み物の味を評価するだろう。つまり、あのドリンクを飲んだことにより、様子がおかしくなったとなれば、因果関係が成立する。調べる価値はある。」

 

相変わらずの思慮深さね.....でも、私も正直、あの飲み物は怪しいと思った。

 

「ペストリアに解析させている間、俺は前回の続きを行う。それまで、お前はあいつらの監視でもしてろ。」

 

いつものように、私そっちのけで、部屋に籠ってしまった。

 

三日後、聖哉に呼ばれ、召喚の間に来た。

 

「聖哉、準備は終わったの?」

「いや、まだ、ある。それより、これを見ろ。」

 

聖哉が見せてきたのは、一枚の紙だった。

 

「これは?」

「ペストリアが送ってきた、例のドリンクの解析結果だ。結果は黒。液体の成分に僅かながら、魔力と術式の痕跡があった。」

「!? つまり、それがあの子たちをおかしくしたということ?」

「あぁ、術式は精神汚染の類だろう。成分中に液糖や炭酸水ではない、液体が微量ながらあった。」

 

液糖や炭酸水じゃない? そ、それって......

 

「......血だ。」

「.......は?......はあぁぁぁぁ!?な、なに、まさかそれをみんな、飲んでたの!!おえぇぇぇぇ」

 

美食研究会の情緒をおかしくした、ドリンクの正体。それは、誰かの魔力を施した血だったのだ。衝撃の事実に、私は吐き気がした。そんな中、聖哉は冷静な表情で

 

「この高度な術式が使えるという事は、キヴォトスの生徒ではない可能性がある。」

「ま、まさか、ベアトリーチェがその能力を持ってるってこと!?」

 

私の言葉に、聖哉は首を横に振った。

 

「いや、その能力を持つ敵に心当たりがある。お前も知ってるはずだ。」

「!? 私も知ってる敵?」

「魔王軍四天王、ドレイク伯爵だ。あいつのステータスに血を媒介にした特技がたくさんあったからな。」

 

その言葉を聞き、私は戦慄した。まさか今回も、魔王軍が関係してるの!?

 

「邪神の加護により、能力も進化していたら、こういう事も可能だろう。」

「そんなのどうすれば......」

 

聖哉は、少し思考に浸っていた。そして、口を開き

 

「解析した魔力は闇属性。やはり、光属性が有効だろう。」

「じゃあ、私の呪い封じの力が役に立つときね。」

 

以前、金の神バルドゥル様に、大金をはたいて、伝授してもらった「呪い封じの技」。やっと、役に立つときが来たのね!!

 

そう私が、意気込んでいると、聖哉は冷たい目線で

 

「お前の力など、必要ない。」

「!? 何よ、聖哉は光属性が得意じゃないでしょ!!!」

 

そう、聖哉は光魔法が使えないわけではない。だが、炎属性のように聖哉の「特性」ではないため、高位光魔法は使えない。それに加え、今回は「闇魔法」も「タイプ・オポジット(形態転換)」も使えない。

 

「誰に物を言っている。今回は光魔法で対抗しない。目には目を歯には歯を.....そして、血には血をだ。」

「な、何それ....聞いたことないんですけど.....。」

 

で、でもここは神界。そんな闇属性の特技が使える神がいるのかな?

 

「いるにはいるらしい。血の神『カリマシス』。こいつはヴァルキュレと同じ系統の神らしい。それなら、技にも期待ができる。」

「ち、血の神!? しかもヴァルキュレ様と同じ系統なんて.....」

 

早速私たちは、カリマシス様がいる所に行った。

 

「カリマシスは、ペストリアがいる廃病院のさらに奥の屋敷にいるらしい。」

「屋敷!? そんなもの神界に会ったんだ。」

 

話していると、神界なのに、辺りが暗くなってきた。少し進んだ先に、大きな屋敷があった。その屋敷が放つオーラは不気味としか言いようがなく。西洋の屋敷を彷彿とさせるが、所々、ひびなどが入っており、本当にここに神が住んでるのか疑うレベルだった。

 

「ふむ、罠はないようだな。」

「あんた、こんなところでも冷静ね....」

 

中に入ると、異常な光景が広がっていた。

 

「な、何よ、これ!?」

 

壁一体に魔法陣が赤い液体で描かれており、まるで、アデネラ様の部屋を思い出させるような異様な空間だった。それよりも、この屋敷は、セクションなどもなく、まるで聖堂を彷彿とさせるような部屋だった。

 

そこに、西洋の吸血鬼のような装いをした長身の男性が立っていた。

 

「お前が、カリマシスか。」

「オイイイイイ!!!いきなり呼び捨て!? 少しは礼儀ってもんがあるでしょ!!」

 

聖哉の失礼な態度に、驚愕していると、長身の男は、口を開いた

 

?「なるほど。貴殿がヴァルキュレが話していた勇者か.....ふむ、良い目をしているのデス。」

 

ヴァルキュレ様を呼び捨て!? やっぱり、ヴァルキュレ様レベルの神なのね.....

 

カ「自己紹介が遅れたな、我は『カリマシス』。このヴァンパイア屋敷の主なの、デス!!!」

 

で、デス? なんか、語尾がおかしいわね.....

 

「おい、体内に侵入した魔力に対抗する技はあるか?」

 

な、なるほど、生徒たちの体内に血を媒介にした術式が施されてるのだから、血を使って、それを壊すのね。

 

カ「ほう、なるほど。あるにはあるのデス。血に魔力を施し、体内に侵入する技『ブラッド・ドミニオン(血液侵律)』を使えば可能なのデス。」

 

何その、恐ろしい技!? 本当に大丈夫なの?ここは一旦、考え直したほうが.....

 

「よし、教えてくれ。」

 

オイイイイ!!! 何でいつもそこは慎重じゃないの!?

 

カ「だが、一つ問題がある。私の技は、大量の血を使う。人間なら死が確定の量をな。」

 

そ、そんな、危ない技なの!? ってことは、人間の聖哉なら無理じゃない。

 

カリマシス様の言葉に聖哉は、冷静な表情で

 

「ほう。だが、無理とわかってて、俺に提案してくるわけではあるまい。何か解決策があるのだろう。」

 

聖哉の言葉に、カリマシス様は高らかと笑った。

 

カ「フハハハハハッ!!流石は慎重勇者。気づいているようだな。人間じゃ無理なら、人間をやめればいいのデス!!!。」

 

どこかで聞いたことのある言葉を発したカリマシス様。

 

「ど、どういうことですか?」

カ「血が足りないなら、血が無限にある状態になればいい。我が最高の秘術『フォームド・ヴァンパイア(吸血鬼化)』を!!!」

「吸血鬼化!? まるでゼトの『ステイト・バーサーク(状態狂戦士)』みたいじゃないですか!!」

 

私の言葉に、カリマシス様は、首を傾げ

 

カ「ほう。ゼトの狂戦士化を知ってるのか?」

「えぇ。聖哉も使えるので.....」

 

私の答えに、カリマシス様は笑みを浮かべ

 

カ「なんと!!!あれを習得できるとは、素晴らしい勇者なのデス!!!貴殿ならこの秘儀を会得できるかもしれぬ。」

「ふむ。吸血鬼になったことにより、副作用などはあるか?」

カ「ゼトの技のように、脳が破壊されることを危惧してるのだな。安心するのデス。その様な危険性はない。だが、問題はあるのデス。」

「問題?」

 

私の疑問に、カリマシス様は、言いにくそうに

 

カ「.....吸血鬼になると、血に関する闇属性の魔法が使えるのだが、一定時間で人間の血を摂取しないと、本当に吸血鬼になるのデス!!」

「血を摂取ないと、吸血鬼になる!?」

 

何よそれ? めっちゃ危ないじゃないの!!! こんな技習得して大丈夫なの?

 

「ふむ、だが、人間の血を摂取すれば、ノーリスクで使えるのか。よし、教えてくれ。」

「ま、マジで!?」

カ「フハハハハハ!! 流石は勇者だ。それと一つ言うことがあるのデス。人間の血は、出来れば異性の方が効果は長いのデス。」

 

い、異性の血!?

 

「ほう。なら丁度いい。キヴォトスの生徒は、全員、女だからな。」

「いやいや、生徒の血を飲む先生なんて、いやすぎるだろ!?

「そんなこと言ってる場合か! ドレイクの技を破らなければ、エデン条約も夢のまた夢。」

 

た、確かにそうだけど.....

 

カ「なら早速、修行を始めるのデス。あと言い忘れていましたが、この吸血鬼化を使うと、ほかの魔法や特技は使えないのデス。勿論、狂戦士化もな。」

「なるほど。だが、覚える価値はある。リスタは、引き続き、キヴォトスの監視をしろ。」

 

はい、いつもの奴ですね~。もう落ち込まなくなったわ.....

 

内心、のけ者にされて心が落ち込んでいた私は、聖哉に任されたキヴォトスの監視をそっちのけで、寝てしまった。

 

「リス.....リスタ!!!」

「ほえ!?」

 

ぐっすり寝ていた私は、アリアに起こされた

 

「どうしたの、アリア~。」

「どうしたじゃないわよ。キヴォトスが大変なことになってるの!!!」

「!? キヴォトスが?」

 

アリアの言った事の真偽を確かめるために、水晶玉でキヴォトスを覗いた。

 

「な、何よこれ!?」

 

そこに映っていたのは、地獄そのものだった。

 

トリモブ「ゲヘナの愚行を許すな!!!ゲヘナをぶっ倒してやるぅぅぅぅ!!!!」

 

トリモブ達「お―――――!!!!」

 

ハ「あの悪魔たちに正義の鉄槌を下してやります。」

 

ナ「い、一体、何が起こって.....」

 

トリニティの生徒たちが、今にもゲヘナに武力侵攻をしようとしている様子だった。その光景を見て、ナギサちゃんは頭を抱えていた。

 

「う、嘘!? ま、まさか、あのドリンクの影響!?あれって、ゲヘナの方で流行ってたんじゃなかったの? ゲヘナの方は....」

 

ゲへモブ「トリニティを崩壊させるぞ!!!あの平和ボケしているお嬢様に世界の厳しさを教えるのだ!!!」

 

ゲヘモブ達「お――――――!!!!」

 

イ「あの鳥人間どもをぶっ倒してやる!!!!」

 

ヒ「な、何で......!?」

 

「こっちもやべーんですけどぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

まさに地獄絵図、ヒナちゃんなどが鎮圧しようとしているが、この数にはさすがに対処は難しい。それに加え、ハスミちゃんやイオリちゃんまでも、このデモに賛同していた。

 

私はすぐさま、聖哉の所に行った。

 

屋敷に入ると、カリマシス様と聖哉が......!?

 

私が驚くのも無理はなかった。聖哉の姿は、白髪で、八重歯がむき出しており、悪魔のような猫目になっていた。その姿は、まるで西洋の吸血鬼!!

 

「も、もしかしてこれが!!!!」

カ「そうなのデス。貴殿は呑み込みが早い。すぐに覚えることが出来たのデス。」

 

こ、これが、吸血鬼化!!! 

 

「ふむ、これでここには用はない。」

 

なんて、習得速度!! やっぱりすごいわね.....ってそんなことより!!

 

「せ、聖哉!!トリニティとゲヘナが大変なことになってるの!!!」

 

大変なことが起きているというのに、聖哉は冷静な表情だった。

 

「あぁ、見ていたから知ってる。トリニティでも、あのドリンクは流行っていたようだ。リスタ、門を出せ。」

「ついに行くのね。」

 

「あぁ、『レディ・パーフェクトリー(準備は完全に整った)』」

 

久しぶりに聞いた、決め台詞!! この言葉を言った聖哉に不可能はないわ!!!

 

私と聖哉は、この騒動を止めるべく、キヴォトスに行った。

 

「まずは、トリニティからだ。」

「な、なんで?ゲヘナの生徒の方が危険じゃない?」

「表向きはそう見えて、実はトリニティの方がゲヘナへの憎悪が強い。ゲヘナより陰湿な生徒が多いからな。」

「い、陰湿って.....」

 

聖哉の言葉に従い、トリニティへの門を開いた。

 

門をくぐると、さっきよりもひどい光景が広がっていた。トリニティの生徒による演説が行われていたのだ。

 

トリ代表「ゲヘナの愚行を許すな!!!」

全「お――――!!!」

 

「せ、聖哉、まずわよ!!」

「問題ない。一発で終わらせる。」

「い、一発?」

 

聖哉の言ってることが分からなかったが、いつの間にか、演説が止まっていた。

 

「!? どういうこと......!!!」

 

それも無理はない。なぜなら、トリニティ過激派全員の首に土蛇が齧り付いていたからだ。

 

「『ブラッド・ドミニオン(血液侵律)』。血を媒介にして、体内に侵入し、対象を倒す。土蛇の牙にその血を塗っておいた。だが、この技だけじゃ、血液中の魔力を破壊することが出来ない。」

「じゃあ、どうやって.....」

破壊術式・其の七(セブンス・ヴァルキュリエ)ブレイク・パーミッション(破力転移)』自然の有形物にのみ、破壊エネルギーを付与する術式だ。これにより、破壊エネルギーを持った血が完成する。」

 

 吸血鬼の技と土魔法、そして、破壊術式の併用!! 凄すぎて、言葉が出ないわ。それより、私が気になったのは.....

 

「吸血鬼化をすれば、ほかの特技が使えないんじゃなかったの!?」

「やってみたらできた。要領は、狂戦士化と同じだ。」

 

ホントッ、この勇者凄すぎる!!! ま、まぁ、不可能と言われた、狂戦士化と魔法の併用もできるのだから、当たり前よね.....

 

聖哉の凄さに圧倒されていると、トリニティの過激派たちが次々に倒れていた。

 

「うむ、これで、もう奴の技は効果がないだろう。」

?「せ、先生、リスタ!!!」

「?」

 

そこに現れたのは、ヒフミちゃんだった。

 

「みんなは、大丈夫なの?」

ヒ「はい、ほかの人たちは、様子がおかしかったですが.....」

 

みんなは、ドレイクの魔法の影響を受けていないようだった。だが、聖哉は当たり前だと言わんばかりの表情で.....

 

「当たり前だ。補習授業部の奴はあのドリンクを飲んでないことは把握済み。もし飲もうとしてたら、阻止していたからな。」

 

ど、どんだけ、過保護なのよ、この人.....

 

ヒ「それでこの騒動により、第二次学力試験が中止になりました。」

「え!?」

ヒ「第二次学力試験は、前回と変わり、合格点は90点に引き上げられ、試験場もゲヘナになりました。」

「!?」

 

いや、横暴すぎるんですけど!!!

 

「十中八九、ナギサだろうな。だが、両学園で起こっている、今回の騒動により、実行できなかったという事か。恐ろしく、予想通りだな。」

「予想通りなの!?」

「あいつが邪魔してくるなど、容易に想像できる。魔法鳥と土蛇により、試験会場は特定できていた。そして、90点も今のこいつらなら取れる。」

 

そ、そのために合格ラインを超えても、満足せず、勉強してたのね.....相変わらずの慎重さ。

 

ヒ「流石ですね、先生。ですが、残るは第三次試験のみになってしまいました。」

「!? なんで? 別日に受験できないの?」

「それも、ナギサの仕業だ。本来では行われてることになっているのだろう。予想していたが実にうまいやり方だ。」

 

いやいや、感心してる場合じゃないでしょ!! ナギサちゃん......いくら生徒とはいえ、これはさすがに許せないわ。

 

「リスタ、今はあいつにかまう必要はない。ゲヘナの方も止めに行くぞ。」

「そ、そうね。」

 

私たちは門を開き、ゲヘナに行った。

 

案の定、ゲヘナの方も、地獄だった。

 

マ「これよりゲヘナは、トリニティに武力侵攻を行う。全員、私に続け!!!」

 

ま、マコトちゃんまでもおかしくなってる.....!いや、いつもと変わらないわね。

 

全「お――――!!!!」

 

「いや、変わってるわ!!!いつものマコトちゃんが言っても、皆、賛同しないはずなのに....」

 

自分でも、クソ失礼なことを言ってるが、事実なので罪悪感はなかった。

 

「『ブラッド・ドミニオン(血液侵律)』。」

 

マ「うっ!?」

 

またもや、聖哉の土蛇により、マコトちゃん含む、過激派が倒れた。辺りに、まだ汚染されている奴がいないか、散策していると.....

 

ヒ「せ、先生?」

「!?」

 

そこには、ヒナちゃんがいた。いつもの仕事のせいか、今回の騒動のせいか、目に隈を作っていた。

 

ヒ「あなたが、皆を助けてくれたのね.....ありがとう。」

「あぁ。」

 

聖哉はそう言うと、ヒナちゃんに近づいた。

 

「ヒナ、肩を出せ。」

ヒ「え....?えぇ....」

 

ヒナちゃんはそう言われると、きれいな白色肌の肩を見せてきた。そこに聖哉が齧り付き......えぇぇぇぇぇえぇぇ!!!

 

(ちゅるちゅるちゅる)

 

ヒ「先生!? な、何をして///」

「本当に何をやってるの、あんたは!!!....ま、まさか!?」

 

ヒナちゃんの肩から口を離し、手で口を拭いていた。

 

「そのまさかだ。カリマシスが言ったように、定期的に異性の血を摂取しないと、吸血鬼になるからな。ヒナの血を飲ませてもらった。リスタ、ヒナの肩をを治療しろ。」

「いや、それで、女の子の肩に齧り付く奴いる? ヒナちゃん、大丈夫?」

 

聖哉に、牙を立てられて、痛がってるかと思いきや、ヒナちゃんは赤面していた。

 

ヒ「だ、大丈夫よ、リスタ。そ、それより、フフ///」

 

痛がってるどころか、喜んでいる様子だった。

――ま、まずいわ!!ヒナちゃん、までもが、聖哉の虜に.....ホントッ、この勇者、女たらしね.....

 

「これで、ゲヘナは大丈夫だろう。オートマティック・フェニックスで周囲を散策していたが、術にかかってるものは、この広場に集まっていたようだ。」

「そ、そうね。一旦、トリニティに戻って、休みましょう。」

 

こうして大波乱な一件が、一人の勇者によって鎮圧された。

 

次の日、ナギサちゃんから呼ばれて、ティーパーティーの部屋に行った

 

ナ「おはようございます、先生。紅茶はいかがですか?」

「いらん。」

 

恐ろしく、早い返答!! 私でなきゃ、聞き逃しちゃうね。

 

ナ「そうですか.....昨日の一件、先生が対処してくれたそうですね。トリニティを代表して、礼をさせていただきます。先生が対処してくれたおかげでエデン条約も予定通り、行われることになりました。」

 

ナギサちゃんはお辞儀をすると、真剣な表情になり

 

ナ「今回の騒動。主犯の情報はもう掴んでいるんですか?」

 

思ってたことを、質問してきた。それも無理もないだろう。彼女は、聖哉の圧倒的な情報網を知っているからだ。

 

「前にも言ったが、お前に教える義理はない。それより、学力試験についてだ。」

ナ「.......。」

 

聖哉が放った言葉により、この場の雰囲気が凍てつく氷のように寒くなった。

 

「次の学力試験も、お前はまた邪魔してくるだろう。」

ナ「.......はい。邪魔しますよ。どんな手を使っても.....」

「ナギサちゃん......いくら何でも、これはやりすぎよ! こんなことはやめて!!!」

 

私の言葉に、ナギサちゃんは首を傾げた

 

ナ「なぜですか?」

「!?」

ナ「先生、貴方と私は同じです。すべての事に疑いの目を向け、合理的に行動する。」

「あ、あんた......」

 

私は、ナギサちゃんに怒りを覚えた。だが、同時にナギサちゃんから、不安や焦燥の念が感じられた。だが、これだけは言える。ナギサちゃんと聖哉は、同じじゃない。聖哉なら、違う方法をとるはず。

 

「ナギサちゃん。あなたは.....!?」

 

私がナギサちゃんに、自分が思ってることを言おうとしたが、聖哉に止められた。

 

「せ、聖哉?」

「リスタ、別にこいつがやってることは間違っていない。」

「あ、あんた、何を言って.....」

ナ「.....なら、先生、裏切り者の正体を、教えてください。」

「何を言っている?俺はお前の考えを理解しただけで、納得したわけではない。」

「!?」

ナ「......。」

 

聖哉は、深いため息をついて、話し始めた。

 

「なぜ、そんな話にする必要がある? ナギサ、お前はあいつらを全員、退学にするのだろ? そして、俺たちはそれを阻止し、合格に導く、それでいい。どっちが正しいかなんてどうでもいい。」

ナ「......。」

 

聖哉の表情はいつもより、冷たかった。

 

「話は以上だ。」

 

私と聖哉は、何も言わなくなったナギサちゃんを置いて、部屋に出た。

 

「せ、聖哉....。」

「今のあいつに、俺ができることは無い。」

 

その言葉を言った後、聖哉は、補習授業部の所に戻った。

 

 




「アズサ、勇者の心構えを教えよう。」
ア「!? 是非、教えてくれ。」
「へえ~。聖哉が教えるなんて、珍しいわね。何を教えるの?」
「まず、全ての人を疑え、例外なくだ。」
「!? いや、アズサちゃんに何を教えてるの!!! この疑心暗鬼勇者!!!」
ア「なるほど。戦場では一切、油断するなという事か....勉強になる。」
「いや~、アズサちゃん。そういう事じゃないと思うけど~。」
「そして、リスタのことも当然、疑え!!」
「結局、私も疑うんかい!!!」

「次回、『本当の黒幕』」

「そして、最後まで、運命に抗う事だ」

読んでくださり、ありがとうございます。
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