美食研究会による騒動の後、私と聖哉は、風紀委員会の空崎ヒナちゃんと話をしていた。
「ドリンク?初耳だな。やはり、トリニティだけに滞在していると、ほかの学園の状況が分かりにくいな.....魔法鳥を各学園に放っておくか。」
「いや、みんな、何事?って思うわよ!!!そ、それより、ヒナちゃん、ドリンクって?」
ヒ「え、えぇ、ドリンクね。」
聖哉の手段を選ばない強引さに、ヒナちゃんは少し引いているようだった。
ヒ「ゲヘナで、販売されているエナジードリンク『ダーム』。何でも、飲めば、元気が出るって言って、ゲヘナでは話題になってるの。」
「飲めば元気になる!? めっちゃ怪しいんですけど.....。」
ヒ「味も好評で、風紀委員会の間でも、飲んでいる子はたくさんいるわ。イオリも飲んでたみたいだし。」
そ、そんなおいしいの?
「仮にその話が本当だとして、要するに、その飲み物が怪しいという事だな?」
「いや、ヒナちゃんの話、疑ってるんかい!?」
聖哉の質問に、ヒナちゃんは小さく頷いた。
ヒ「それで、これがそのドリンクよ。」
そう言って、そのドリンクを手渡してきた。見た目は、ごく普通のエナジードリンクのパッケージだった。だが、気になるのは、そのドリンクの色。ザクロのような、美しい深紅の炭酸水だった。
聖哉はそのドリンクを凝視すると、ヒナちゃんに
「ヒナ、このドリンクを預かってもいいか?」
ヒ「えぇ、そのために持ってきたんだもの。あなたなら、何かわかると思って。」
「どうするの、聖哉?」
「こいつに、何か仕掛けられてないかを調べる。」
ヒ「よろしく頼むわ、先生。」
「ヒナ、いくつか質問がある。」
ヒ「?」
聖哉は、まだヒナちゃんに聞きたいことがあるそうだ。
「お前は、エデン条約についてどう思っている? 一部では、ゲヘナとトリニティの軍事同盟という認識があるらしいが....」
ヒ「軍事同盟.....私は少なくともそうは思わない。あれはれっきとした平和条約。」
「なるほど。だが、ほかの学園にとっては不都合なことが多いんじゃないか? この二つの学園が手を組んだら、対抗できる学園はいないだろう。」
ヒ「......あの条約をゲヘナ側で推進してるのは、私なの。」
「ヒナちゃんが!?」
ヒ「エデン条約が締結させれば、ゲヘナの治安も少しは良くなる。そうなると、
「.......お前にはこれを伝えておこう。エデン条約、調印当日、何者かが襲撃するだろう。」
ヒ「!?」
聖哉は、自分が持ってる情報を、ヒナちゃんに話した。
ヒ「そう、トリニティの裏切り者ね......なんで、それを私に?」
「このキヴォトスにおいて、一番信用してるやつがお前だからだ。そして、エデン条約調印当日。お前にも、手伝ってもらうからな。」
ヒ「そ、そう///......私が一番......」
聖哉の言葉に、ヒナちゃんは顔を赤くし、俯いてしまった。だが、その言葉を放った当の本人は、無表情だった。
――こ、こいつ!!本当に思ってるの?
ヒナちゃんと別れると、聖哉と私は再び、神界に行った。すると聖哉は、ヒナちゃんからもらった例のドリンクを手に取り、ある場所に向かった。
〈神界・廃病院〉
「おい、ペストリア。このドリンクの成分を解析してくれ。」
前に病気付与の特技を教えてくれた病気の神「ペストリア」様の所だった。
「おおぉ、貴公か......いいだろう。ちょうど、暇してたところだ。」
聖哉は、ペストリア様にドリンクを渡し、その場を後にした。
「聖哉、あのドリンクに何か入ってるってこと?」
「あぁ、その可能性はある。ハルナたちは美食家。当然、話題になる飲み物の味を評価するだろう。つまり、あのドリンクを飲んだことにより、様子がおかしくなったとなれば、因果関係が成立する。調べる価値はある。」
相変わらずの思慮深さね.....でも、私も正直、あの飲み物は怪しいと思った。
「ペストリアに解析させている間、俺は前回の続きを行う。それまで、お前はあいつらの監視でもしてろ。」
いつものように、私そっちのけで、部屋に籠ってしまった。
三日後、聖哉に呼ばれ、召喚の間に来た。
「聖哉、準備は終わったの?」
「いや、まだ、ある。それより、これを見ろ。」
聖哉が見せてきたのは、一枚の紙だった。
「これは?」
「ペストリアが送ってきた、例のドリンクの解析結果だ。結果は黒。液体の成分に僅かながら、魔力と術式の痕跡があった。」
「!? つまり、それがあの子たちをおかしくしたということ?」
「あぁ、術式は精神汚染の類だろう。成分中に液糖や炭酸水ではない、液体が微量ながらあった。」
液糖や炭酸水じゃない? そ、それって......
「......血だ。」
「.......は?......はあぁぁぁぁ!?な、なに、まさかそれをみんな、飲んでたの!!おえぇぇぇぇ」
美食研究会の情緒をおかしくした、ドリンクの正体。それは、誰かの魔力を施した血だったのだ。衝撃の事実に、私は吐き気がした。そんな中、聖哉は冷静な表情で
「この高度な術式が使えるという事は、キヴォトスの生徒ではない可能性がある。」
「ま、まさか、ベアトリーチェがその能力を持ってるってこと!?」
私の言葉に、聖哉は首を横に振った。
「いや、その能力を持つ敵に心当たりがある。お前も知ってるはずだ。」
「!? 私も知ってる敵?」
「魔王軍四天王、ドレイク伯爵だ。あいつのステータスに血を媒介にした特技がたくさんあったからな。」
その言葉を聞き、私は戦慄した。まさか今回も、魔王軍が関係してるの!?
「邪神の加護により、能力も進化していたら、こういう事も可能だろう。」
「そんなのどうすれば......」
聖哉は、少し思考に浸っていた。そして、口を開き
「解析した魔力は闇属性。やはり、光属性が有効だろう。」
「じゃあ、私の呪い封じの力が役に立つときね。」
以前、金の神バルドゥル様に、大金をはたいて、伝授してもらった「呪い封じの技」。やっと、役に立つときが来たのね!!
そう私が、意気込んでいると、聖哉は冷たい目線で
「お前の力など、必要ない。」
「!? 何よ、聖哉は光属性が得意じゃないでしょ!!!」
そう、聖哉は光魔法が使えないわけではない。だが、炎属性のように聖哉の「特性」ではないため、高位光魔法は使えない。それに加え、今回は「闇魔法」も「
「誰に物を言っている。今回は光魔法で対抗しない。目には目を歯には歯を.....そして、血には血をだ。」
「な、何それ....聞いたことないんですけど.....。」
で、でもここは神界。そんな闇属性の特技が使える神がいるのかな?
「いるにはいるらしい。血の神『カリマシス』。こいつはヴァルキュレと同じ系統の神らしい。それなら、技にも期待ができる。」
「ち、血の神!? しかもヴァルキュレ様と同じ系統なんて.....」
早速私たちは、カリマシス様がいる所に行った。
「カリマシスは、ペストリアがいる廃病院のさらに奥の屋敷にいるらしい。」
「屋敷!? そんなもの神界に会ったんだ。」
話していると、神界なのに、辺りが暗くなってきた。少し進んだ先に、大きな屋敷があった。その屋敷が放つオーラは不気味としか言いようがなく。西洋の屋敷を彷彿とさせるが、所々、ひびなどが入っており、本当にここに神が住んでるのか疑うレベルだった。
「ふむ、罠はないようだな。」
「あんた、こんなところでも冷静ね....」
中に入ると、異常な光景が広がっていた。
「な、何よ、これ!?」
壁一体に魔法陣が赤い液体で描かれており、まるで、アデネラ様の部屋を思い出させるような異様な空間だった。それよりも、この屋敷は、セクションなどもなく、まるで聖堂を彷彿とさせるような部屋だった。
そこに、西洋の吸血鬼のような装いをした長身の男性が立っていた。
「お前が、カリマシスか。」
「オイイイイイ!!!いきなり呼び捨て!? 少しは礼儀ってもんがあるでしょ!!」
聖哉の失礼な態度に、驚愕していると、長身の男は、口を開いた
?「なるほど。貴殿がヴァルキュレが話していた勇者か.....ふむ、良い目をしているのデス。」
ヴァルキュレ様を呼び捨て!? やっぱり、ヴァルキュレ様レベルの神なのね.....
カ「自己紹介が遅れたな、我は『カリマシス』。このヴァンパイア屋敷の主なの、デス!!!」
で、デス? なんか、語尾がおかしいわね.....
「おい、体内に侵入した魔力に対抗する技はあるか?」
な、なるほど、生徒たちの体内に血を媒介にした術式が施されてるのだから、血を使って、それを壊すのね。
カ「ほう、なるほど。あるにはあるのデス。血に魔力を施し、体内に侵入する技『
何その、恐ろしい技!? 本当に大丈夫なの?ここは一旦、考え直したほうが.....
「よし、教えてくれ。」
オイイイイ!!! 何でいつもそこは慎重じゃないの!?
カ「だが、一つ問題がある。私の技は、大量の血を使う。人間なら死が確定の量をな。」
そ、そんな、危ない技なの!? ってことは、人間の聖哉なら無理じゃない。
カリマシス様の言葉に聖哉は、冷静な表情で
「ほう。だが、無理とわかってて、俺に提案してくるわけではあるまい。何か解決策があるのだろう。」
聖哉の言葉に、カリマシス様は高らかと笑った。
カ「フハハハハハッ!!流石は慎重勇者。気づいているようだな。人間じゃ無理なら、人間をやめればいいのデス!!!。」
どこかで聞いたことのある言葉を発したカリマシス様。
「ど、どういうことですか?」
カ「血が足りないなら、血が無限にある状態になればいい。我が最高の秘術『
「吸血鬼化!? まるでゼトの『
私の言葉に、カリマシス様は、首を傾げ
カ「ほう。ゼトの狂戦士化を知ってるのか?」
「えぇ。聖哉も使えるので.....」
私の答えに、カリマシス様は笑みを浮かべ
カ「なんと!!!あれを習得できるとは、素晴らしい勇者なのデス!!!貴殿ならこの秘儀を会得できるかもしれぬ。」
「ふむ。吸血鬼になったことにより、副作用などはあるか?」
カ「ゼトの技のように、脳が破壊されることを危惧してるのだな。安心するのデス。その様な危険性はない。だが、問題はあるのデス。」
「問題?」
私の疑問に、カリマシス様は、言いにくそうに
カ「.....吸血鬼になると、血に関する闇属性の魔法が使えるのだが、一定時間で人間の血を摂取しないと、本当に吸血鬼になるのデス!!」
「血を摂取ないと、吸血鬼になる!?」
何よそれ? めっちゃ危ないじゃないの!!! こんな技習得して大丈夫なの?
「ふむ、だが、人間の血を摂取すれば、ノーリスクで使えるのか。よし、教えてくれ。」
「ま、マジで!?」
カ「フハハハハハ!! 流石は勇者だ。それと一つ言うことがあるのデス。人間の血は、出来れば異性の方が効果は長いのデス。」
い、異性の血!?
「ほう。なら丁度いい。キヴォトスの生徒は、全員、女だからな。」
「いやいや、生徒の血を飲む先生なんて、いやすぎるだろ!?
「そんなこと言ってる場合か! ドレイクの技を破らなければ、エデン条約も夢のまた夢。」
た、確かにそうだけど.....
カ「なら早速、修行を始めるのデス。あと言い忘れていましたが、この吸血鬼化を使うと、ほかの魔法や特技は使えないのデス。勿論、狂戦士化もな。」
「なるほど。だが、覚える価値はある。リスタは、引き続き、キヴォトスの監視をしろ。」
はい、いつもの奴ですね~。もう落ち込まなくなったわ.....
内心、のけ者にされて心が落ち込んでいた私は、聖哉に任されたキヴォトスの監視をそっちのけで、寝てしまった。
「リス.....リスタ!!!」
「ほえ!?」
ぐっすり寝ていた私は、アリアに起こされた
「どうしたの、アリア~。」
「どうしたじゃないわよ。キヴォトスが大変なことになってるの!!!」
「!? キヴォトスが?」
アリアの言った事の真偽を確かめるために、水晶玉でキヴォトスを覗いた。
「な、何よこれ!?」
そこに映っていたのは、地獄そのものだった。
トリモブ「ゲヘナの愚行を許すな!!!ゲヘナをぶっ倒してやるぅぅぅぅ!!!!」
トリモブ達「お―――――!!!!」
ハ「あの悪魔たちに正義の鉄槌を下してやります。」
ナ「い、一体、何が起こって.....」
トリニティの生徒たちが、今にもゲヘナに武力侵攻をしようとしている様子だった。その光景を見て、ナギサちゃんは頭を抱えていた。
「う、嘘!? ま、まさか、あのドリンクの影響!?あれって、ゲヘナの方で流行ってたんじゃなかったの? ゲヘナの方は....」
ゲへモブ「トリニティを崩壊させるぞ!!!あの平和ボケしているお嬢様に世界の厳しさを教えるのだ!!!」
ゲヘモブ達「お――――――!!!!」
イ「あの鳥人間どもをぶっ倒してやる!!!!」
ヒ「な、何で......!?」
「こっちもやべーんですけどぉぉぉぉぉぉ!!!!」
まさに地獄絵図、ヒナちゃんなどが鎮圧しようとしているが、この数にはさすがに対処は難しい。それに加え、ハスミちゃんやイオリちゃんまでも、このデモに賛同していた。
私はすぐさま、聖哉の所に行った。
屋敷に入ると、カリマシス様と聖哉が......!?
私が驚くのも無理はなかった。聖哉の姿は、白髪で、八重歯がむき出しており、悪魔のような猫目になっていた。その姿は、まるで西洋の吸血鬼!!
「も、もしかしてこれが!!!!」
カ「そうなのデス。貴殿は呑み込みが早い。すぐに覚えることが出来たのデス。」
こ、これが、吸血鬼化!!!
「ふむ、これでここには用はない。」
なんて、習得速度!! やっぱりすごいわね.....ってそんなことより!!
「せ、聖哉!!トリニティとゲヘナが大変なことになってるの!!!」
大変なことが起きているというのに、聖哉は冷静な表情だった。
「あぁ、見ていたから知ってる。トリニティでも、あのドリンクは流行っていたようだ。リスタ、門を出せ。」
「ついに行くのね。」
「あぁ、『
久しぶりに聞いた、決め台詞!! この言葉を言った聖哉に不可能はないわ!!!
私と聖哉は、この騒動を止めるべく、キヴォトスに行った。
「まずは、トリニティからだ。」
「な、なんで?ゲヘナの生徒の方が危険じゃない?」
「表向きはそう見えて、実はトリニティの方がゲヘナへの憎悪が強い。ゲヘナより陰湿な生徒が多いからな。」
「い、陰湿って.....」
聖哉の言葉に従い、トリニティへの門を開いた。
門をくぐると、さっきよりもひどい光景が広がっていた。トリニティの生徒による演説が行われていたのだ。
トリ代表「ゲヘナの愚行を許すな!!!」
全「お――――!!!」
「せ、聖哉、まずわよ!!」
「問題ない。一発で終わらせる。」
「い、一発?」
聖哉の言ってることが分からなかったが、いつの間にか、演説が止まっていた。
「!? どういうこと......!!!」
それも無理はない。なぜなら、トリニティ過激派全員の首に土蛇が齧り付いていたからだ。
「『
「じゃあ、どうやって.....」
「
吸血鬼の技と土魔法、そして、破壊術式の併用!! 凄すぎて、言葉が出ないわ。それより、私が気になったのは.....
「吸血鬼化をすれば、ほかの特技が使えないんじゃなかったの!?」
「やってみたらできた。要領は、狂戦士化と同じだ。」
ホントッ、この勇者凄すぎる!!! ま、まぁ、不可能と言われた、狂戦士化と魔法の併用もできるのだから、当たり前よね.....
聖哉の凄さに圧倒されていると、トリニティの過激派たちが次々に倒れていた。
「うむ、これで、もう奴の技は効果がないだろう。」
?「せ、先生、リスタ!!!」
「?」
そこに現れたのは、ヒフミちゃんだった。
「みんなは、大丈夫なの?」
ヒ「はい、ほかの人たちは、様子がおかしかったですが.....」
みんなは、ドレイクの魔法の影響を受けていないようだった。だが、聖哉は当たり前だと言わんばかりの表情で.....
「当たり前だ。補習授業部の奴はあのドリンクを飲んでないことは把握済み。もし飲もうとしてたら、阻止していたからな。」
ど、どんだけ、過保護なのよ、この人.....
ヒ「それでこの騒動により、第二次学力試験が中止になりました。」
「え!?」
ヒ「第二次学力試験は、前回と変わり、合格点は90点に引き上げられ、試験場もゲヘナになりました。」
「!?」
いや、横暴すぎるんですけど!!!
「十中八九、ナギサだろうな。だが、両学園で起こっている、今回の騒動により、実行できなかったという事か。恐ろしく、予想通りだな。」
「予想通りなの!?」
「あいつが邪魔してくるなど、容易に想像できる。魔法鳥と土蛇により、試験会場は特定できていた。そして、90点も今のこいつらなら取れる。」
そ、そのために合格ラインを超えても、満足せず、勉強してたのね.....相変わらずの慎重さ。
ヒ「流石ですね、先生。ですが、残るは第三次試験のみになってしまいました。」
「!? なんで? 別日に受験できないの?」
「それも、ナギサの仕業だ。本来では行われてることになっているのだろう。予想していたが実にうまいやり方だ。」
いやいや、感心してる場合じゃないでしょ!! ナギサちゃん......いくら生徒とはいえ、これはさすがに許せないわ。
「リスタ、今はあいつにかまう必要はない。ゲヘナの方も止めに行くぞ。」
「そ、そうね。」
私たちは門を開き、ゲヘナに行った。
案の定、ゲヘナの方も、地獄だった。
マ「これよりゲヘナは、トリニティに武力侵攻を行う。全員、私に続け!!!」
ま、マコトちゃんまでもおかしくなってる.....!いや、いつもと変わらないわね。
全「お――――!!!!」
「いや、変わってるわ!!!いつものマコトちゃんが言っても、皆、賛同しないはずなのに....」
自分でも、クソ失礼なことを言ってるが、事実なので罪悪感はなかった。
「『
マ「うっ!?」
またもや、聖哉の土蛇により、マコトちゃん含む、過激派が倒れた。辺りに、まだ汚染されている奴がいないか、散策していると.....
ヒ「せ、先生?」
「!?」
そこには、ヒナちゃんがいた。いつもの仕事のせいか、今回の騒動のせいか、目に隈を作っていた。
ヒ「あなたが、皆を助けてくれたのね.....ありがとう。」
「あぁ。」
聖哉はそう言うと、ヒナちゃんに近づいた。
「ヒナ、肩を出せ。」
ヒ「え....?えぇ....」
ヒナちゃんはそう言われると、きれいな白色肌の肩を見せてきた。そこに聖哉が齧り付き......えぇぇぇぇぇえぇぇ!!!
(ちゅるちゅるちゅる)
ヒ「先生!? な、何をして///」
「本当に何をやってるの、あんたは!!!....ま、まさか!?」
ヒナちゃんの肩から口を離し、手で口を拭いていた。
「そのまさかだ。カリマシスが言ったように、定期的に異性の血を摂取しないと、吸血鬼になるからな。ヒナの血を飲ませてもらった。リスタ、ヒナの肩をを治療しろ。」
「いや、それで、女の子の肩に齧り付く奴いる? ヒナちゃん、大丈夫?」
聖哉に、牙を立てられて、痛がってるかと思いきや、ヒナちゃんは赤面していた。
ヒ「だ、大丈夫よ、リスタ。そ、それより、フフ///」
痛がってるどころか、喜んでいる様子だった。
――ま、まずいわ!!ヒナちゃん、までもが、聖哉の虜に.....ホントッ、この勇者、女たらしね.....
「これで、ゲヘナは大丈夫だろう。オートマティック・フェニックスで周囲を散策していたが、術にかかってるものは、この広場に集まっていたようだ。」
「そ、そうね。一旦、トリニティに戻って、休みましょう。」
こうして大波乱な一件が、一人の勇者によって鎮圧された。
次の日、ナギサちゃんから呼ばれて、ティーパーティーの部屋に行った
ナ「おはようございます、先生。紅茶はいかがですか?」
「いらん。」
恐ろしく、早い返答!! 私でなきゃ、聞き逃しちゃうね。
ナ「そうですか.....昨日の一件、先生が対処してくれたそうですね。トリニティを代表して、礼をさせていただきます。先生が対処してくれたおかげでエデン条約も予定通り、行われることになりました。」
ナギサちゃんはお辞儀をすると、真剣な表情になり
ナ「今回の騒動。主犯の情報はもう掴んでいるんですか?」
思ってたことを、質問してきた。それも無理もないだろう。彼女は、聖哉の圧倒的な情報網を知っているからだ。
「前にも言ったが、お前に教える義理はない。それより、学力試験についてだ。」
ナ「.......。」
聖哉が放った言葉により、この場の雰囲気が凍てつく氷のように寒くなった。
「次の学力試験も、お前はまた邪魔してくるだろう。」
ナ「.......はい。邪魔しますよ。どんな手を使っても.....」
「ナギサちゃん......いくら何でも、これはやりすぎよ! こんなことはやめて!!!」
私の言葉に、ナギサちゃんは首を傾げた
ナ「なぜですか?」
「!?」
ナ「先生、貴方と私は同じです。すべての事に疑いの目を向け、合理的に行動する。」
「あ、あんた......」
私は、ナギサちゃんに怒りを覚えた。だが、同時にナギサちゃんから、不安や焦燥の念が感じられた。だが、これだけは言える。ナギサちゃんと聖哉は、同じじゃない。聖哉なら、違う方法をとるはず。
「ナギサちゃん。あなたは.....!?」
私がナギサちゃんに、自分が思ってることを言おうとしたが、聖哉に止められた。
「せ、聖哉?」
「リスタ、別にこいつがやってることは間違っていない。」
「あ、あんた、何を言って.....」
ナ「.....なら、先生、裏切り者の正体を、教えてください。」
「何を言っている?俺はお前の考えを理解しただけで、納得したわけではない。」
「!?」
ナ「......。」
聖哉は、深いため息をついて、話し始めた。
「なぜ、そんな話にする必要がある? ナギサ、お前はあいつらを全員、退学にするのだろ? そして、俺たちはそれを阻止し、合格に導く、それでいい。どっちが正しいかなんてどうでもいい。」
ナ「......。」
聖哉の表情はいつもより、冷たかった。
「話は以上だ。」
私と聖哉は、何も言わなくなったナギサちゃんを置いて、部屋に出た。
「せ、聖哉....。」
「今のあいつに、俺ができることは無い。」
その言葉を言った後、聖哉は、補習授業部の所に戻った。
「アズサ、勇者の心構えを教えよう。」
ア「!? 是非、教えてくれ。」
「へえ~。聖哉が教えるなんて、珍しいわね。何を教えるの?」
「まず、全ての人を疑え、例外なくだ。」
「!? いや、アズサちゃんに何を教えてるの!!! この疑心暗鬼勇者!!!」
ア「なるほど。戦場では一切、油断するなという事か....勉強になる。」
「いや~、アズサちゃん。そういう事じゃないと思うけど~。」
「そして、リスタのことも当然、疑え!!」
「結局、私も疑うんかい!!!」
「次回、『本当の黒幕』」
「そして、最後まで、運命に抗う事だ」
読んでくださり、ありがとうございます。