透き通る世界でも慎重な勇者   作:かげもじ

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25話目、投稿しました。少し短いですが、これにて、第一章が終了します。次回から第二章が始まります。


そんな世界でも

ミ「一体、どこから間違えたんだろう.....。」

 

何もない天井を見上げながら、ミカちゃんはそう呟いた。

 

ミ「何を見誤ったのかな....。ハナコちゃんのことを、見くびったから?」

ハ「......。」

ミ「ううん、『浦和ハナコ』がとんでもない存在だってことは知ってた。でも、いつの間に無害な存在になってた。変数として計算する必要がないくらいに。アズサちゃんが、裏切ったから?」

ア「.....。」

ミ「ううん、アズサちゃんはただの操り人形。裏切ろうと裏切らなかろうと、私の望む結果には何も関係なかった.....ヒフミちゃんはただの普通の子で、コハルちゃんはただのおバカさんでしょ?変数になるような存在じゃなかった。」

 

ミカちゃんは、そう自問自答をしながら、何かに気づいたように聖哉の方を見た。

 

ミ「.....そういえば、一番大きい変数は先生だったね。先生が居なければ、あの時点でエデン条約を破綻させることが出来たし、私が負けることもなかった。」

「ミカ、あの時点というのは、ダーム事件の事か?」

 

ダーム事件.....あのドリンクによる、ゲヘナとトリニティの騒動って、そういう呼び方になったんだ.....

 

「そのことを知ってるという事は......あれは、アリウスの仕業。首謀者を教えろ。」

 

聖哉は、ミカちゃんに冷たい目線を向けた。

 

ミ「.....! そんな怖い顔をしないでよ.....ごめん、先生。私も詳しくは知らない。アリウスの子に教えてもらっただけ.....」

 

ミカちゃんの言葉を聞き、聖哉はフンと鼻を鳴らした。

 

「これだけのことをしておきながら、何も情報を持ってないとは.....全く、無駄な時間だ。」

「ちょっと聖哉!そんな言い方....。」

ミ「大丈夫、リスタ。事実だから.....。」

ハ「ミカさん、セイアさんは......」

 

ハナコちゃんの言葉を聞き、ミカちゃんは、俯いた。

 

ミ「本当に、殺すつもりじゃなかったの。今の私が何を言っても言い訳になるけど.....。多分、事故だった。セイアちゃん、元々体が弱かったし.....それに.....」

ハ「セイアちゃんは無事です。」

ミ「.....!?」

 

ハナコちゃんの言葉に、ミカちゃんは目を見開いた。

 

ハ「ずっと、偽装していたんです。襲撃の犯人が見つからなかったので、安全のためというのもあって.....トリニティの外で身を隠しています。」

ミ「セイアちゃんが.....無事?」

ハ「はい、傷が治らなくて、まだ目が覚めていないのですが.....救護騎士団の団長が、今もすぐそばで守ってくれています。そしてあの時、セイアちゃんを助けてくれたのは....いえ、これは直接、ご本人の口からがいいでしょう。」

ミ「....そっか。生きてたんだ....良かった....」

 

ミカちゃんは、安堵したように座り込み、聖哉の方を見た。

 

ミ「先生は凄いね。あれだけ、いろんな人から言われても、ハナコちゃんたちを信じた....信じ続けた。私の負けだよ。」

「ミカちゃん.....。」

 

ミカちゃんの言葉に、聖哉は首を傾げていた。

 

「お前は何を言っている? 俺は、こいつらの事を完全に信用してるわけではない。」

 

全「!?」

 

衝撃の発言をした聖哉に、この場にいるみんなが、驚愕した。

 

「あ、あんたは、何を言ってるのよ!?」

ヒ「せ、先生、どういうことですか?」

 

ヒフミちゃんの言葉に、聖哉は、フンと鼻を鳴らした。

 

「他人を信じるなんて、軽々しい言葉は言えない。もしかしたら、ヒフミは本当に犯罪組織のリーダーなのかもしれないし。」

ヒ「!?」

「コハルは、本当は賢いが、馬鹿のようにふるまっているだけなのかもしれないし。」

コ「は!?」

「ハナコが手を抜いていた理由はほかにあるのかもしれないし。」

ハ「......。」

「アズサは、本当にアリウスと繋がっていて、俺たちを騙しているだけなのかもしれない。」

ア「!?」

「そして、リスタは、アリウスと繋がっている可能性もある。ましてや、黒幕の可能性もある。」

「!? 私もかい!!!」

 

何だか、やばいことを言ってる聖哉に、皆は、黙ってしまった。

 

「信じれば救われる?仲間なら分かり合える?そんな希望的観測で世界が回るなら、誰も死なない、傷つかない。」

 

聖哉は、吐き捨てるようにそう言った。

 

「人間は間違える。恐怖で逃げるし、焦れば判断を見誤る。善人でも裏切る可能性もある....それが現実だ。」

ミ「......。」

「だから、こそ”それでも信じる価値があるか``を考える。俺にとって信頼は感情じゃない。願望でも綺麗ごとでもない。観察して、確認して、失敗も見て、それでもなお『共に戦える』と判断することだ」

 

聖哉はそう言い、私の方を一瞥した。

 

「信用は一瞬で崩れる。だから維持するには、覚悟がいる。」

 

聖哉は少しの間、間を置き、低く続けた。

 

「本当に信頼してる相手には、むしろ依存しない。相手が倒れても動けるように備える。裏切られても立て直せるよう準備する。死なれても目的を遂行できるようにする。」

 

聖哉はそう言い、生徒たちを見た。

 

「それが、相手の弱さを理解した上で信じるってことだ。無条件に信じ続けるのは、ただの甘えだ。『この人は自分を傷つけない』と期待しているだけだからな。」

「せ、聖哉.....」

「本当の信頼は違う。傷つく可能性を知っていて、なお相手を選ぶことだ。だから、俺はこうして、こいつらに背中を向けている。」

 

聖哉の言葉に、沈黙が流れた。少しの間、静寂が流れたが、ミカちゃんが、口を開いた。

 

ミ「あはは.....この先生に勝てるわけなかったね.....慎重すぎる勇者か......。」

 

ミカちゃんはそう言って、正義実現委員会に連れていかれた。

 

こうして、ミカちゃん率いるアリウスの生徒が起こした騒動は幕を閉じた。

 

「いや、まだだ。やることがあるだろう。」

「やること?」

 

.....そういえば、私たち、何のためにここに.....

 

ヒ「あー、色んな事がありすぎて、忘れていました。試験ですね。」

ア「現在時刻は午前7時50分。試験会場まで1時間で着かないと、走ろう。」

ヒ「えぇっ!?走るんですか!?」

 

試験会場まで走ろうとするアズサちゃんを聖哉が制止した。

 

ア「先生?」

「リスタ、飛翔のスキルでこいつらを試験会場に連れてくぞ。俺は、ヒフミとアズサちゃんを乗せる。お前は、ハナコとコハルを乗せろ。」

「なんか、タクシーみたいだけど.....そうよね。その方が気分転換になるわ。」

 

私は、飛翔のスキルを使った。私と聖哉は、空を飛び、この子たちを試験会場まで連れてった。

 

ア「す、凄い....空を飛んでいる。」

ハ「ん~。気持ちいですね!?」

コ「そ、それ、どういう意味!? エッチなのはダメ!!」

ヒ「あはは、でも.....綺麗ですね。」

 

夜明けを迎える暁の太陽は、まるで、この子たちの合格を祈っているようだった。

 

ヒ「つ、着きましたね。」

ア「は、速い.....。」

コ「秒で着いたわね。」

ハ「早速、行きましょうか。」

 

そう言って、補習授業部の子たちは、会場内に入ろうとした時......。

 

「おい、待て。」

 

全「!?」

 

聖哉が突然、皆に声をかけた。

 

「お前たちは、言う事があるはずだ。」

 

聖哉の言葉に、皆が気づいた。補習授業部の子たちは、息を合わせて....。

 

ヒ・ハ・ア・コ「せーのっ!『レディ・パーフェクトリー(準備は完全に整っています)』」

 

その言葉を聞いた聖哉は、フンと鼻を鳴らした。

 

「なら、行って来い。その言葉を言うという事は、合格しなきゃ許さん。」

「ちょっとは、頑張れの一つぐらい言ったら?」

 

相変わらず、不愛想な聖哉に、皆は一斉に笑った。

 

ヒ「それが先生ですからね。」

ア「行ってくる。」

コ「驚くぐらいの点数を取ってやるんだから。」

ハ「フフフ❤」

 

そう言って、補習授業部の子たちは第三次特別学力試験に挑んだ。私たちは、窓の外からその頑張りを見ていた。

 

後日、結果が届き......

 

ハナコー100点(合格)

アズサー97点(合格)

コハルー91点(合格)

ヒフミー94点(合格)

 

補習授業部ー全員合格

 

補習授業部の合格が発表された日。私は、一気に体の疲れが出たからなのか、ベットに入るとすぐに寝てしまった。

 

「はっ!?」

 

気が付くと、以前、セイアちゃんと会ったティーパーティーの部屋だった。

 

セ「気が付いたようだね、リスタルテ.....補習授業部の皆はしっかりと、自分たちの力で合格を勝ち取ったのだね。」

「セイアちゃん......?」

 

こちらの方を見て、微笑んだセイアちゃんは続けた

 

セ「流石だね、君の勇者は.....どうやら、私の危惧したことは、彼にとっては、取るに足らない事態だったようだ。」

「まぁ、聖哉は、『レディ・パーフェクトリー(準備は完全に整った)』だからね!」

 

私の言葉に、セイアちゃんは、一瞬、微笑んだが、すぐに険しい表情に戻った。

 

セ「.....だが、エンドロールには早すぎる。なにせ君たちが守るべき結末は、まだその全貌を現してはいない。この話がたとえどんな風に転がっていこうと.....全ては、破局へと収束していく。」

「!? どういう事?」

 

――は、破局!? 

 

セ「.....暗雲。誰の手にも負えないような、二度と太陽を拝めるとは思えなくなるような....そんな暗雲が、今ゆっくりと押し寄せてきている。」

「暗雲......。」

 

その言葉を聞いた瞬間、私は背筋が凍った。

――そうだ....まだ終わってない。根本的なことが解決していないわ.....でも....

 

「セイアちゃん、安心して。」

セ「!?」

「貴方は、私たちが絶対助ける。そして、どんなことがあろうとも、絶対、諦めたりはしないわ!!! 」

 

私は一呼吸をし、声を大にして、言った。

 

「聖哉は、傍若無人だけど、ありえないほどに慎重な.....『慎重勇者』よ!!!」

 

その言葉を聞いたセイアちゃんは、微笑んでくれた

 

セ「また会えるだろう。その時は、彼とも一緒に....」

「えぇ。待ってて。」

 

そう言い放った瞬間、前回と同じように視界にぼやがかかった。気が付くと、シャーレの部屋にいた。

 

エデン条約 第一章「補習授業部」完結

 

 




「聖哉、あの子たちが合格してよかったね。」
「あぁ。これからの人生、更なる壁があいつらの人生に用意されているだろう。だが、もう安心だ。あいつらには、何事にも代替えが出来ない仲間が見つかったのだからな。仲間と一緒に、慎重に準備すれば、怖いことは何もないだろう。」
「そうね.....大丈夫よね。」
「次はエデン条約だ。これに本腰を入れていく。」
「エデン条約.....これにたどり着くまでに、色んな事があったね。」
「あぁ。だが、まだ起こらないとは限らない。俺たちはそれに慎重に準備するだけだ。」

「次回『ヒナちゃんと霊トレ』」

読んでくださり、ありがとうございます。次回から、第二章が始まります。
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