私と聖哉は、アズサちゃんを止めるべく、アリウススクワッドがいると思われる廃墟に向かっていた。
「リスタ。今回、あいつの戦いには直接参加しない。」
「じゃあ、どうするの?」
「援護する。」
聖哉はそう言い、透明化をして、廃墟に入った。中に入ると、サオリちゃんたちの声が聞こえた。
サ「シャーレの先生、もとい勇者により、こっちの戦力が大幅に削られた。だが、安心しろ。あのお方が、力を貸してくれる。あの勇者とて、恐るに足りない。」
ミ「いくらあの方がいるとしても、油断は禁物じゃない、リーダー。あの勇者は何を隠しているかわからない。」
ア「ス、スー、ススッ」
サ「.....そうだな、姫。細心の注意を払いッ......!」
ヒ「リーダー?」
サオリちゃんが何かに気づいたように、顔をしかめた。
サ「.....あいつがいる。」
(ドカ―ン)
ミ「ブービートラップ、いつの間に.....!?」
あ、アズサちゃんが得意のゲリラ戦!! トラップで相手の動揺を誘っているんだわ!!
アズサちゃんの奇襲に対応しようとサオリちゃん以外が行動に出ようとした時
サ「動くなっ!!」
サオリちゃんの怒号が、廃墟に鳴り響く。それを聞いたミサキちゃんたちは動きを止めた。
アリ全「!?」
サ「この狙いは私たちの動揺だ。私たちの隙を突くためのもの。相変わらず、そういう手法だけは上手い。しかし逆に冷静に対処すれば.....。」
(ドカーン)
ヒ「いえこの感じ、おそらくまだ周囲にもありますよ!?早く出ないと.....!」
ミ「ヒヨリ!)
ヒヨリちゃんは、サオリちゃんの忠告を聞かず、建物から出ようとした時
(ドカーン)
ヒヨリちゃんは、アズサちゃんのトラップに引っ掛かり、意識を失った。それを見ていた聖哉は....
「なぜ、トラップがあると分かってて、突っ込む?全く、慎重じゃないな。」
ヒヨリちゃんの行動が理解できず、解せぬといった表情だった。
サ「逃がすか!!」
サオリちゃんは、アズサちゃんを捕らえるべく、向かっていた。
ミ「.....それにしても、アズサ。さっきから結構な弾薬を使ってるのに、弾切れしないね.....」
ア「ス、スッ」
「それは、俺が土蛇で補給をしてるからだ。」
「あんたが!?」
「言っただろう。援護をすると。」
アズサちゃんは、たった一人(聖哉の援護あり)でアリウススクワッドに前線してたかと思われたが、サオリちゃんの接近戦、ミサキちゃんたちの挟み撃ちにより、捕らえられてしまった。
サ「チェックメイトだ、アズサ。」
アズサちゃんは、アリウススクワッドの猛攻により、銃を突き付けられた。
サ「....お前にしては良くやった。それでも無駄だ。お前の考え方、思考、それらは最初から全てお見通し....。最初から、無駄な抵抗だったんだよ。」
ア「......いつから?」
サ「?」
ア「いつからアリウスは、巡航ミサイルなんて物を.....?それにいつの間に、あんな不思議な力を操れるようになったんだ.....?.....『ヘイローを壊す爆弾』も。」
その言葉を聞き、聖哉は何かに気づいたように
「....なるほど。やはり、ミサイル、ユスティナ聖徒会やヘイロー破壊爆弾。ゲマトリアが用意したものか....」
やっぱり、アリウスの黒幕は、ベアトリーチェなのね!! 絶対に、許せない!!!
サ「アズサ、どうしてお前が勝てないのか分かるか?弱いからだ。」
ア「.....。」
サ「何が人を『人殺し』にすると思う?それは『殺意』の有無。そういう事なんだよ、アズサ。意志さえあれば、道具は関係ない。重要なのはただそこに込められた『意志』だけ。ミサイルを含め、それ以外の手段や何やらは、私たちの恨みを証明する道具でしかない.....それ以上でも、それ以下でも無いのさ。」
冷徹な視線をアズサちゃんに向け、話すサオリちゃん。しかし、アズサちゃんは
ア「サオリ.....もう一度聞く、『いつから』だ?その恨み、私はあの時ただあそこで『習った』だけだ.....その恨みは、一体誰の.....」
アズサちゃんの言葉を聞いたサオリちゃんは、憎悪がこもった表情になり、トリガーに指をかけたその時!
――ま、まずいわ!!
「
サ「うっ!?」
全「!?」
聖哉が透明化を解除し、守護神の特技を使って、サオリちゃんの銃弾を跳ね返した。跳ね返った弾丸は、サオリちゃんの腹部に命中し、彼女は顔をしかめた。
ア「先生.....? 何でここに.....」
アズサちゃんの言葉に聖哉は振り返らず、答えた。
「あとで何度でも、説教してやる。」
聖哉はそう言い、サオリちゃんたちの方を見つめた。
サ「来ていたか、勇者。」
ミ「まずいね、この状況....」
ア「ス、ス、スッ。」
聖哉は、銃ではなく、剣を抜いて、話した。
「サオリ、質問だ。」
サ「.....!」
「なぜ、アズサにそこまで執着する。確かに、優秀な隊員が裏切ったのだから、始末しようとするのは当たり前だが。」
――せ、聖哉は何を言ってるの?
「サオリ。お前がアズサに執着する理由。それは、アズサが自分にはない物。自分では、手が届かないものを手に入れたからではないか?」
サ「!?」
「信じていた隊員が、裏切ったことで、お前は自分が正しいと信じてきたものに疑念を持った。」
聖哉は、無表情で話した。すると、サオリちゃんは
サ「竜宮院聖哉!!!」
心の中を言い当てられたからなのか、サオリちゃんは聖哉に向かった突進した。すると聖哉は、「コォォォォ」と静かに息を吐きだしていた。聖哉の呼吸に合わして剣の刀身が光を帯びる。
――ま、まさか!?
「喰らえ.....!
アリ全「!?」
聖哉の土魔法の剣撃により、強烈な轟音を鳴らし、このフロアどころか、この建物全体が崩壊した。
聖哉は、技を放った後、アズサちゃんを抱えて、脱出した。脱出した後、神界に戻った。
「あ、あんたは加減ってものを知らないの!? あんなの喰らったら、いくらキヴォトス人でもただでは、済まないでしょ!!」
私の声に、聖哉は何とも思っていないように
「安心しろ、手加減はしている。その証拠に狂戦士化は使用していない。使用していたら、あいつらは助かっていないだろう。」
「いや、そういう問題じゃ.....」
聖哉は、私を横目に部屋の隅でうずくまっているアズサちゃんの方を向いた。
ア「なんで.....なぜ、助けた、先生!!!」
聖哉を殴ろうとするアズサちゃん。だが、疲れてるからなのか、その拳は弱かった。アズサちゃんは聖哉の胸に顔をうずめて
ア「うっ、うぅぅっ.....!!ああぁっ.....!!」
聖哉の胸の中で泣いてしまった。
「アズサちゃん.....。」
アズサちゃんの姿にやるせない気持ちになったが、聖哉は相変わらず、喜怒哀楽を感じさせない表情だった。
ア「先生......もう、私に関わらないでくれ。私がやらないといけない。」
「アズサちゃん、それは....。」
ア「私がやらないといけないんだ!!!」
アズサちゃんの心からの叫び。それを聞き、私はなんて声をかけてあげればいいのか、わからなかった。
(ぺシーン)
「!?」
一瞬、何が起こったのかわからなかったが、アズサちゃんの頬が赤くなっていたことで、聖哉がアズサちゃんに平手打ちをしたことが分かった。
ア「!?」
「聖哉!!アズサちゃんになんてことを......」
私は、アズサちゃんを庇うように、聖哉と彼女の間に割って入った。私は、聖哉を睨むように見ると、彼の表情は一見冷たいように見えたが、その眼は優しかった。
「アズサ、単刀直入に言う。お前には、この事態をどうにかする力はない。」
ア「.....!」
「ちょっと、聖哉!!」
冷たい言葉をかける聖哉に、私は憤りを感じた。だが、聖哉はそんな私を横目に
「お前もわかっているはずだ。自分の力だけでは、どうすることもできないと。なら、友達を頼れ。」
ア「.....!」
「ヒフミは、お前と一緒にいたいと言っていた。ヒフミだけじゃない。ハナコやコハルもそうだ。仲間の力が必要なのに、頼らないのは慎重ではない。」
聖哉の言葉は、冷たいようだが中身は温かいようだった。
ア「先生.....私は.....。」
「俺とリスタもいる。一人では手が届かない場所でも、複数人なら手が届くこともある。」
聖哉の言葉を聞き、アズサちゃんは何かを決心したように
ア「先生、手伝ってくれ。サオリを止めたい。」
アズサちゃんの言葉に聖哉は
「
聖哉はそう言った時、ハナコちゃんから電話がかかってきた。
『どうした、ハナコ。』
ハ『先生、大変です。トリニティの過激派がゲヘナに宣戦布告すると言っているんです。』
『!?』
ま、まさか、この事態に乗じて、ゲヘナを潰す気!?
『....分かった。すぐ向かう。』
私たちは、すぐにトリニティに向かった。所が、聖哉が向かったのは、ミカちゅんが収容されている施設だった。
「聖哉。何で、ミカちゃんの所に行くの?」
「過激派というのは、パテル派の奴らだろう。ナギサは重傷。セイアも昏睡状態。そうなれば残るは.....。」
「なるほど。まだミカちゃんの権限は剝奪されていない。ミカちゃんを開放し、トリニティのメンバーを率いて、ゲヘナを襲撃する気ね。」
私たちは、扉の前に行くと、パテル派の怒号が中から聞こえてきた。
ティモブ「世間知らずのお嬢様が!わざわざ牢屋から出してあげようっていうのに、調子に乗って.....!」
(バンッバンッ)
殴打だけでなく、銃も使ってるようだった。
ミ「あーもうっ.....痛いな。」
「せ、聖哉!! 助けないと.....。」
「まぁ、待て。」
「待てって何よ!!! ミカちゃんを....。」
パテル派に暴行をされるミカちゃん。その時
コ「な、何してんのっ!?」
コハルちゃんが、怯えながらも駆けつけていた。
「コハルちゃん....。」
「.....。」
ティモブ「何だ、お前は!?」
コ「い、いじめはダメっ!どうして、こんなに大勢で寄ってたかって.....!こ、こんなの、私が許さないんだからっ!!」
ミ「.....!」
コハルちゃんの必死の声にパテル派は声を荒げて
ティモブ「どけっ!!」
コ「!?....い、嫌っ!私はバカだから、何がどうなってるのか全然わからないけど.....でも、これは違う!こんなの絶対にダメ!!」
コハルちゃんの言葉に、パテル派は銃を向けた。
「聖哉!!」
「問題ない。」
ティモブ「うっ!?」
コ「!?」
ミ「!?」
突然、パテル派が唸りだした。何事かと思ったが、その子たちの首に土蛇が噛み付いてるではないか!!たちまち、過激派の子たちは、霊体になった。
「『
「それで本当にする!?普通!!」
霊体になったパテル派たちは、何が何だか分からなく、困惑していた。
コ「な、何が起こってるの!?」
ティモブ「体が浮いて.....」
ミ「.....!」
「幽霊になった気分はどうだ?」
聖哉が、ミカちゃんたちの前に姿を現した。
コ「先生っ!!」
ミ「.....!」
ティモブ「シャーレの.....あの傍若無人な....」
ティモブ「貴方がこんなことをしたのですか!!」
「あぁ。霊体にした。その肉塊から繋がっている糸を切るとお前らは本当に死ぬ。」
聖哉はそう言い、剣を抜いて、糸に当てた。
ティモブ「貴方、何を!?」
ティモブ「待って、先生のあの表情....本当に殺る気だよ!!」
そう。パテル派を躊躇なく殺そうとしてる聖哉の表情は、冷徹だった。
ティモブ「先生!! そんなことをして、心が痛まないのか!!!」
「痛む?何を言っている。こんな時のために、お前らの分の『ごめんなさいシール』を作っておいた。」
あ、あれは!! 捻曲イクスフォリアの時の!! こ、この勇者本気よ!!!
「これさえあれば、罪悪感は減る。よって、遠慮なく殺すことが出来る。嫌ならさっさと、失せろ。」
ティモブ「ひ、ひぃ!!」
ティモブ「う、噂は本当だったんだ!!」
ティモブ「ご、ごめんなさいーー!!」
パテル派はそう言うと、部屋から出て行った。
コ「せ、先生.....リスタ....。」
コハルちゃんは、半泣きで私の胸に飛び込んだ。
「かっこよかったわよ、コハルちゃん。流石は正義実現委員会のエリートね。」
コ「リスタ.....!」
ミ「.....。」
「久しぶりだな、ミカ。リスタ、ミカのけがを治療しろ。」
ミ「!? だ、大丈夫だから。そんな怪我してないし.....。」
「少しの怪我が命取りになる。良いから言う事を聞け。」
私は聖哉の言う通りにして、ミカちゃんの怪我を治した。
ミ「ありがと、リスタ。」
「ミカちゃんはどうしてさっき....。」
ミ「ゲヘナは今でも嫌い、何だけど.....どうしてだろ.....。私にもよく分かんないな....」
その言葉を言うミカちゃんは、自然と涙を流していた。
ミカちゃんは、理由を探してた。ゲヘナが嫌いな理由を。そうして間違いが合わさって、こんなことを.....。これが真意だったんだよ、セイアちゃん。
ミ「セイアちゃんに会いたい。ナギちゃんに会いたい。こんな私じゃ、もうダメかもしれないけど....。」
目に大粒の涙を浮かべながら、聖哉に言った。
「ミカ。それはお前の今後の行動次第だ。逆を言えば、行動次第でどうとでもなるという事。」
ミ「先生.....ありがとう.....。」
聖哉はそう言うと、背を向け
「まずはこの事態を収拾する。コハル、ついてこい。」
コ「わ、わかった。」
私たちは、ミカちゃんを後にして、トリニティの校門前に来た。
ハ「先生、リスタ。どこに行ってたんですか!?」
ヒ「先生.....アズサちゃんが....。」
眼に涙を浮かべながら、ヒフミちゃんは言った。
「ヒフミ、ハナコ、コハル.....もう一人いる。」
全「!?」
暗闇の中から姿を現したのは、アズサちゃんだった。
ヒ「アズサちゃん!?」
ア「ヒフミ......ハナコ、コハル......」
アズサちゃんはそう言い、頭を下げた。
全「!?」
ア「みんな、すまない。こんな私を許せないかもしれないが.....助けてほしい。手伝ってほしい!!」
アズサちゃんの言葉に、皆は微笑んだ。
ヒ「アズサちゃん、無事でよかったです。」
コ「助ける? 何当たり前のこと言ってんのよ。私たちの仲でしょ。」
ハ「フフ、喜んで助けますよ。」
ア「み、みんな!!」
この光景を見て、私は安堵した。対して聖哉は、無表情で
「これで舞台はそろった。サオリたちは古聖堂に行くだろう。」
「何で、わかるの?」
私の疑問に、アズサちゃんが答えた。
ア「サオリたちは、。トリニティの地下にある『教典』で戒律を直そうとするだろう。それがあるのは古聖堂の地下だ。」
「なるほどね。」
「.....これで準備も整った。行くぞ!!」
全「はい!!!」
私たちは、サオリちゃんたちがいる古聖堂に向かった。荒廃した古聖堂。天気は雨。そこには、サオリちゃんたちアリウススクワッドがいた。
サ「アズサ、勇者!!! よくも姫を.....!絶対に許さない.....!」
聖哉のあの土魔法の剣撃により、アツコちゃんは、瀕死の重体になったらしい。
「なるほど。ユスティナ聖徒会の力が弱まったと思ったが、あいつが重症になって弱くなったとなれば、筋が通る。」
「どういう事?」
「詳しくは知らん。だが、あいつらにとって、あの女は重要な存在という事だ。」
ホ「うへぇ~。大変なことになってるみたいだね、先生。」
こ、この声はまさか!?
私たちは、振り返ると、アビドスの子たち....もとい覆面水着団が来ていた。
「み、みんな、何でここにいるの?」
ホ「目には見を、歯には歯を。無慈悲に、孤高に、我が道の如く魔境を行く.....」
シ「ん。それが私たちのモットー。」
セ「別にそれ私たちのモットじゃないから!?」
ア「覆面水着団のリーダーであるファウストさんのご命令で、集合しました。」
ファウスト.....ヒフミちゃん?
この場にいる全員がヒフミちゃんの方を見た。すると、ヒフミちゃんはファウストの袋を被っていた。
ヒ「わ、私の正体は....覆面水着団のリーダー、ファウストです!!!」
ホ「うちのリーダーを怒らせたら怖いよ~。」
ノ「ファウストちゃんを泣かせると、最強の勇者を怒らせますよ♧」
シ「ブラックマーケットの銀行だって襲える。朝飯前みたいに。」
「み、みんな、ノリノリね......。」
すると、すぐ後ろから、聖哉がリスタルテ面を付けていた。
「そうだ。このファウスト様が我らのリーダーである。この者は、天上の女神の祝福を受けている。皆、崇めるように」
「いや、お前も混ぜるんかい!?」
急に、聖哉が茶番に混ざるので、私は驚いた。
「今日より、神聖ファウスト帝国を建国する。法律は『悪いやつにはげんこつ』以上だ。」
「いや、それ法律じゃねーわ!!!」
すると聖哉は、急に真面目な顔になり
「ホシノ。そのボックスに『対ユスティナ聖徒会』用の弾薬が入っている。それを使え。」
ホ「うへぇ~。先生は相変わらずだね。」
ヒ『先生。こっちの準備は整ったわ。』
ハ『こちらも準備が整いました。』
突然、通信でヒナちゃんとハスミちゃんから合図がかかってきた。
「よし、始めるぞ。」
全「はい!!!」
す、凄い!! トリニティ、ゲヘナ、アビドスが手を取り合って、共通の敵に立ち向かってる.....
皆がそう返事をして、各自のポジションにつくと、サオリちゃんが声を荒げて
サ「ふざけるな!!!この世界は、殺意と憎しみに満ちている。あらゆる努力が無駄だ!!!」
サオリちゃんが、息を切らしながら、そう叫ぶ。すると、ヒフミちゃんが前に出た。
ア「ひ、ヒフミ?」
「ヒフミちゃん.....。」
ヒ「私はあの方々について怒っています。殺意ですとか、憎しみですとか.....それが、この世界の真実ですとか.....。それを強要して、全ては虚しいのだと言い続けていましたが.....。」
ヒフミちゃんは、大きく深呼吸をしたとき、聖哉がヒフミちゃんの肩に手を置いた。
「せ、聖哉?」
ヒ「先生......」
「まぁ、待て。何かあいつに言いたいことがあるのはわかるが、今の状態で前に出ると危険すぎる。少し待て。」
ア「待て?」
聖哉はそう言うと、両手を空に掲げた。途端、ゴゴゴゴゴと地鳴りが響く!同時に足下がグラついて、私含め補習授業部の子たちが尻もちをついた。
サ「くっ.....! なんだこれは!?」
ヒ「リスタさん、あれを見てください!!」
「あ、あれ.....?って、えぇーー!!」
この古聖堂を囲うように、厚さ2メートルを超える壁が、地面から現れていた。壁は、傘のように古聖堂を覆っていく!
「ま、まさか!!」
「『
「いや、だからって、壁を張る!?」
「案ずるな。もう一つ、理由がある。ヒフミが話している最中にアリウススクワッドが逃げる可能性もあるからな。逃げ道を塞ぐには最適だ。」
「まぁ、言ってることは納得できるんだけど....。」
「それと、まだやることがある。」
「まだ、あんの!?」
あまりにも過保護すぎる聖哉に、アリウススクワッドの子たちは困惑し、ハナコちゃんたちは驚愕していた。そして、聖哉の保護対象のヒフミちゃんはドン引きしていた。
ヒ「あ、あの~...先生?」
「安心しろ。言いやすいように土台を作ってやる。お前の周りに盾の神から授かったバリアを何重にも張っておく。」
ヒ「先生!!!」
ヒフミちゃんは、腹から声を出し、聖哉を止めた。
ヒ「先生。私を大切に思ってくれてるのは感謝します。ですが、私も学びました。確かに、あの人たちの前に出るのは怖いですが、覚悟はできています。」
「......。」
ヒフミちゃんは、深呼吸をして、声を大にして言った。
ヒ「
ア「ヒフミ.....。」
ハ「ヒフミちゃん.....。」
ヒフミちゃんの言葉に聖哉は、フンと鼻を鳴らした。
「そうか。なら、行ってこい。だが、警戒はしろ。」
ヒ「....はい!」
ヒフミちゃんはそう言うと、前に出た。
ヒ「例え、世界の本質がそうだとしても....先生は言いました。自分で考えて、悩んで、見極めろと。アズサちゃんが人殺しになるのは嫌です。そんな暗くて憂鬱なお話、私は嫌なんです.....私は先生やリスタさんみたいな特別な力はありませんが、私が好きなものについては、絶対に譲れません。」
ヒフミちゃんの言葉に、息をのんだ。
ヒ「友情で苦難を乗り越え、努力がきちんと報われて、辛いことは慰めて、慰め合って.....!苦しいことがあっても.....誰もが最後は、笑顔になれるような!そんなハッピーエンドが私は好きなんです!!」
ヒ「誰が何と言おうとも、何度だって言い続けて見せます!私たちの描くお話は、私たちが決めるです!」
ヒ「終わりになんてさせません、まだまだ続けていくんです!」
ヒ「私たちの物語.....
荒廃した古聖堂に響き渡る小さな勇気.....だが、この勇気は小さなままでは終わらない。たくさんの人に新たな勇気を与えると直感的にそう思った。
ヒフミちゃんの宣言の後、ユスティナ聖徒会が消えていった。
ミ「.....リーダ、ユスティナの統制が弱くなっている。」
サ「!!」
ユスティナ聖徒会が消えた! ど、どういう事!?
この事態に吞み込めないでいると、ハスミちゃんから通信がかかってきた。
「どうした、ハスミ。」
ハ『先生!! と、突然....て、天気が晴れました。そっちで何かあったんですか?』
『天気が晴れた!?』
衝撃の事実に驚愕していると、聖哉がアイアン・ドームを解いた。徐々に壁がなくなっていく。隙間から日差しが差し込んできた。
「う、嘘!?」
「ほう。」
ミ「気象の操作.....?いや、これは.....。」
ヒ「き、奇跡ですか?」
ミ「っ、奇跡なんて無い!何これ.....!まさか、戒律が.....?」
戒律.....?そ、そうか!! こ、これがエデン条約なのね!!
ふとっ、聖哉の方を見ると、珍しく困惑していた。
「どういうことだ?ヒフミは何を言ってるのだ。全く理解できん。」
「いや、理解できないのかよ!? エデン条約よ、エデン条約!トリニティ、ゲヘナの主体が集まったこの場所で新たなエデン条約を作ったのよ!!」
私の言葉を聞き、聖哉は納得したようにうなずいた。
「なるほど。新たなエデン条約が発足されたことにより、亡霊の力が弱まったのか。」
聖哉が理解したようにうなずいているとき、サオリちゃんの怒号が聞こえた。
サ「ふ、ふざけるな!!!ハッピーエンドだと!?ふざけるな!そんな言葉で、世界が変わるとでも!?それだけでこの憎しみが、不振の世界が変わるとでも言うつもりか!?何を夢のような話を.....!」
「何を言っている?」
サ「!?」
「言葉だけで世界が変わるわけがないだろう。ヒフミが言ったのは志の話だ。あいつらは、これから有限の時間を使って、慎重に夢を実現させていく。」
「せ、聖哉.....。」
ミ「リーダー。アンブロジウスを使うよ。」
サ「.....あぁ。」
ミサキちゃんが何かを言った時。広場にユスティナ聖徒会とは一回り二回り大きい巨体を持った怪物が現れた。
「せ、聖哉、何あいつ!?」
「.....ユスティナ聖徒会よりステータスが高い。あいつらの奥の手か?」
私が驚いていると、サオリちゃんが....
サ「勇者、終わりだ。」
「何が終わりだ。こんなこと容易に想定できる。」
聖哉はそう言うと、目の前からいなくなった。アンブロジウスの方を見ると、かろうじて、深紅のオーラを放った聖哉が見えた。
「モードダブル・エターナルソード・フェニックス・ドライブ《二刀流連撃剣・鳳凰炎舞斬》」
聖哉が炎を帯びた双剣を縦横無尽に振るうと、アンブロジウスの前に幾何学模様のような魔法陣が出現する。狂戦士化、アデネラ様の超速剣。そして炎属性の必殺技により、アンブロジウスは細かく刻まれ、蒸気のように消えた。
サ「う、嘘だろ!?」
ミ「あれを瞬殺するなんて!?」
こ、これが一億人に一人の逸材! 数多の究極難度を救済してきた勇者。竜宮院聖哉よ!!!
聖哉は、アンブロジウスがいた場所を見下ろしていた。私はその姿に嫌な予感がした。
「せ、聖哉.....?」
この勇者は、何もない場所に手をかざしていた。聖哉の左手は紅蓮の炎に包まれる。
「
左手から発射された炎は、瞬時に広場を炎上させた。
「やると思った―!!!」
サ「あ、あ......!」
「ヘルズ・ファイア、ヘルズ・ファイア、ヘルズ・ファイア、ヘルズ・ファイア、ヘルズ・ファイア、ヘルズ・ファイア、ヘルズ・ファイア、ヘルズ・ファイア!!!」
狂ったように魔法を繰り出す聖哉に、私だけでなく、この場にいる全員が戦慄した。
「いや、ゴーストだからってやりすぎだろ!!!みんな引いてるじゃん!!!」
「ゴーストには、エンドレス・フォールは使えない。入念に燃やす必要がある。」
ア「さ、流石、先生だ。」
コ「慎重を通り越して、狂気なんだけど.....」
ハ「フフッ」
ミ「流石に無理だね、これは....。」
ヒ「これ以上はもう....。」
サ「まだだ、まだ古聖堂の地下にはあれが.....。」
サオリちゃんが突然、地下の方に走っていった。
ア「サオリっ....!」
ハ「古聖堂の地下....何か手段が残っているような言い方でした、止めなくては!」
「まぁ、待て。」
全「!?」
聖哉が、サオリちゃんの元へ行こうとする補習授業部の子たちを止めた。
ヒ「先生、何で止めるんですか?行かなくては.....」
「お前たちは、ここにいろ。アズサ、行くぞ。」
ア「!?」
「お前には、まだやることが残っている。」
「.....そうね。行こう、アズサちゃん。」
ア「....!あぁ。」
私と聖哉は、アズサちゃんを連れて、サオリちゃんを追いかけた。
「待て。罠が仕掛けてる可能性もある。探知スキルを使っているが、限度があるだろう。」
「じゃあ、どうするの?」
「
聖哉がそう唱えると、聖哉含め私とアズサちゃんの体が透明になった。
ア「せ、先生、これは?」
「全員を透明化した。これで気づかれるリスクはないだろう。」
私たちは、慎重にサオリちゃんの後を追いかけた。途中、聖哉が安全確認をしすぎて、私はもどかしくなった。
地下に潜っていくと、鍾乳洞のようなところにサオリちゃんがいた。
「アズサ、行ってこい。もしもの時は助けるが、前回のように援護はしない。ケリをつけろ。」
いつもは、影ながら援護するのに、今回はアズサちゃんに任せるようだ。
ア「分かった。」
アズサちゃんがそう返事をすると、聖哉はアズサちゃんの透明化を解いた。
サ「アズサ.....。」
ア「サオリ、もう終わりにしよう。」
サ「.....良いだろう。すべてをかけて、最後の戦いにしてやる。まだ私と一対一で、正面から勝てると思ってるのか?」
ア「私は一人じゃない。」
アズサちゃんの発言にサオリちゃんは、気づいたようだ。
サ「.....!まさか、あの勇者がここに....。どこに隠れている!!!」
サオリちゃんの声が、洞窟に響き渡る。だが、聖哉は姿を現さない。
サ「居ない.....。隠れながら、援護ができるという事か...。」
ア「違う。」
サ「!?」
ア「先生は、今回、助けない。戦うのは私一人だ。前回は負けたが、あの時の私じゃない。」
サ「アズサ-----!!!」
サオリちゃんが、アズサちゃんに向かう。激しいCQCを行う両者。一見、サオリちゃんの方が優位に見えたが
(バンッ)
サ「くっ!?」
アズサちゃんの銃弾が、サオリちゃんに当たる。
――アズサちゃん、前より強くなっている。どうして?
サ「技のキレ、体術、銃による戦闘。いくらアズサとはいえ、ここまでの強さに....。」
私は、強くなったアズサちゃんの理由を考えていると、聖哉が
「アズサを救出した時。あいつと修行をした。能力値は、一刻前とは別人だ。」
「や、やっぱり、あんたの仕業なのね。まぁ、そのおかげでサオリちゃんに前線してるんだど......。」
だが、いくら能力値が上がったとしても、サオリちゃんとアズサちゃんの実力は互角、いや、サオリちゃんの方が上かもしれない。
――この戦い。どっちが勝つかわからない。
(バンッ)
サオリちゃんの弾丸がアズサちゃんに当たったと思った。だが、それはアズサちゃんが仕掛けた身代わり人形だった。
サ「くっ....!小細工を!!」
ア「......!」
――あ、アズサちゃんの戦い方、まるで聖哉を見てるみたいだわ。聖哉流の戦闘も教えてたのね.....。
あらゆる方法で、サオリちゃんを翻弄するアズサちゃん。しかし、サオリちゃんも負けじとアズサちゃんに弾丸を命中させている。
長期戦になると思ったが、戦いはすぐに決着がついた。
ア・サ「くっ!?」
サオリちゃんが、倒れた。勝負はアズサちゃんの勝利かと思われたが、アズサちゃんもギリギリの状態。今にも倒れそうだった。
サ「ア、ズサ......。」
ア「はぁ、はぁ、はぁ.....。」
アズサちゃんが倒れそうなとき、聖哉が間一髪で支えた。
サ「!?」
ア「先生.....。」
「良くやった。リスタ、アズサを治療しろ。サオリもだ。」
「サオリちゃんも!?」
聖哉は、倒れたサオリちゃんの方を見た。
「もう十分だ。」
?「ありがとう、先生。」
全「!?」
岩陰の所から、アツコちゃんが出てきた。
サ「げほっ!姫、どうして逃げなかった.....。」
アツコ「私たちの負けだよ、アズサ。」
ア「!?」
アツコちゃんの言葉に、サオリちゃんは
サ「だ、ダメだ、姫!喋ると、彼女がー」
ア「大丈夫、もう全部終わりだから。それにどちらにせよ、彼女は私を生かしておくつもりは無かったはず。だから、良いの。」
い、生かしておくつもりは無い!? そ、それって.....
「リスタ。アツコの傷を治せ。」
ア「大丈夫だよ、先生。サオリ、もうやめよう。」
サ「アリウスに変えるという事か....?帰ったところで、私たちは殺されるだけ....。」
ア「だから逃げよう、一緒に。アズサと先生が教えてくれた。この憎しみを、私たちは習った。それからずっと、私たちのものだと思い込んでいた。だけど、アズサは気づいた。様々な経験を得て。いい大人に出会えたんだね、アズサ。」
アツコちゃんは、聖哉の方を一瞥し、再び、サオリちゃんの方を見た。
ア「だから、サオリ、逃げよう。この場から、アリウスから。私たちのものじゃないはずの憎しみから。」
サ「逃げるだなんて、そんな.....。」
その時、聖哉が何かを警戒するように狂戦士化をした。
「せ、聖哉!?」
ア「先生、どうしたんだ!?」
聖哉は、鋭い眼光で一言。
「マエストロ.....。」
「!?」
突如、この洞窟全体に地響きが鳴った。古聖堂に、外見は顔がなく。司祭服のようなフードを被った怪物。でも、その姿はとても神秘的だった。
ア「まさか、あの『教義』が、完成した....?でも、レベルが違う.....。」
サ「どういうことだ.....。」
「お前ら、下がっていろ。」
聖哉は、皆を一瞥し、背を向ける。
ア「待って、先生。あれは次元が.....」
「こうなることは、予想していた。」
「ど、どうするの、聖哉!!!」
聖哉は、剣をスタイリッシュに振り回し、準備運動をしていた。
「
「アツコ。お前は、花が好きなのか?」
ア「.....うん、好き。花は私にとって、大切な存在.....。」
「だったら、私が花をプレゼントするわ。こう見えても、結構詳しいのよ。」
ア「いいの?」
「うん。お花を見ると、心が安らぐからね.....あの子のように.....。」
ア「あの子?」
「あ....!な、何でもないわ、あはは....」
「......。」
「次回、『誇りと矜持の衝突』」
読んでくださり、ありがとうございました。
ヒフミのブルアカ宣言のところは悩みましたが、聖哉が慎重に土台を作るという感じにしました。