マ「素晴らしい.....。実に見事だ。勝利という芸術を極限まで追求している。やはりそなたならば、私の『崇高』を理解してくれるに違いない.....!」
誰もいない廃墟で異形なマネキンは、高らかと声を上げる。
マ「私たちでは到底、理解できない力。始めよう!!私の作品とそなたという作品を!!!」
〈古聖堂〉
地響きともに、古聖堂に出現した白い司祭服のようなフードを被った怪物。私は透かさず、そいつを能力通しをした。
ヒエロニムス
NO DATA
う、嘘!? プロテクトをかけられるなんて!! つまり、こいつの能力はこの世界の敵の中でも別格という事!!!
「せ、聖哉、あいつヤバいよ!! 能力値が見えない!!!」
――今まで能力値が見えない敵は強敵ばかりだった。もしかしたら、ドレイクよりも強い可能性が....
この状況に悲観していたが、聖哉の表情は変わらず、ヒエロニムスを据えていた。
敵が装飾が施された杖を突くと、ユスティナ聖徒会が周りに現れた。
「ほう。そいつらを呼び出せるのか。なら、『
聖哉がそう唱えると、私たちを守るようにメカタルテが出現した。ユスティナ聖徒会がメカタルテを倒そうと銃を撃つが、両者のステータスの差は歴然。さらに、対ゴースト特化の銃弾も相まって、ユスティナ聖徒会は蹂躙された。
「よし!! このまま、メカタルテであいつも倒すわよ!!!」
そう私が意気込んでいると、ヒエロニムスが右手に持っている杖を強く突いた。その時、メカタルテの足元に光り輝く魔法陣が現れる。魔法陣から光が隆起する。その光により、メカタルテは消滅してしまった。
「!? う、嘘.....! 何なの、あの攻撃!?」
「うむ。光属性の攻撃のようだが....しかも、必中の可能性がある。」
聖哉の言葉を聞き、戦慄した。
「ひ、必中!?ヴァルキュレ様の破壊術式みたいな!?」
「そう焦るな、必中攻撃を使う敵が現れたときの対処法は考えてある。」
「そ、それって.....?
聖哉はそう言うと、右手を前に突き出した。
「出でよ、ペロロ様!!!」
――......は? い、今、聖哉はなんて言ったの?
聖哉がそう唱えると、さっきまでメカタルテがいた場所に、白い生物が現れた。見た目は鳥のようだが、顔があまり可愛くないキャラクター。ヒフミちゃんが好きなペロロ様がそこにいた。
「えぇ―――――!!!な、何、あれ!?」
「どう見ても、ペロロだろう。機皇操士の技の応用だ。」
「いや、あんなもんで、勝てるわけないでしょ!!!」
私の予想通り、ペロロ様の足元に魔法陣が現れた。メカタルテ同様、粉々にされるかと思われたが、ヒエロニムスの攻撃を受けても、かすり傷が付く程度だった。
「いや、硬くない!?」
「ペロロは、基本的にメカタルテと同じだ。だが、材料が違う。今回は、リスタの髪の毛ではなく、ヒフミの髪の毛を入れている。しかも、メカタルテのように細身ではなく、丸みを帯びていることで防御力もアップだ。」
「で、でも聖哉。あいつがペロロ様にだけ、攻撃するとは思えないんだけど.....。」
私の言葉に聖哉は、
「安心しろ。ヒフミの毛のほかに、ヒフミが持っていたペロロ人形を入れている。それの影響からか、見た目がペロロになった。しかも、ペロロの毛を入れたことにより、『挑発』スキルも獲得した。」
――いや、何で、挑発スキル? 確かに、凄い顔をしてるけど......
だが、ペロロもとい、ペロロイドが防御力が高いからって、限度がある。依然として、あいつの攻略法が分からないことに変わりはない。そう思っていると、何やら空中に鎖のようなものが浮遊していた。
「これはまさか.....!!」
「
――ヴァルキュレ様のゴースト特化の破壊術式!!い、いつの間に.....
私が古聖堂の天井を見ると、破壊の鎖が壁から現れていた。いや、数十本どころではない。数百本、数千本にまで至る鎖が古聖堂の壁中から出現していた。
「いや、こんな量、いつの間に!?」
「無論。すべて今、出したわけじゃない。アンブロジウスが奥の手と言ったが、更に奥の手がある可能性を予想して、ヒフミが宣言してる時、アズサがサオリと戦っているときに、隙を見ては少しずつ仕掛けておいた。」
「な、何という、準備の良さ!?」
いや、これがこの勇者の強さ!!! 敵が想定外のものを出してこようとも、それを予想して準備する。もはや、この勇者に失敗はない!!!
古聖堂のいたるところから出現した破壊の鎖はヒエロニムスの手足、胴体、フードに至るまで巻き付いていく!鎖を破ろうと、ヒエロニムスがもがく。だが、身動きの取れないヒエロニムスに更なる鎖が折り重なる!繭のようになったヒエロニムスを聖哉は、見据えていた。
「聖哉、これからどうするの?」
「奴もアルテマイオスやほかのユスティナ聖徒会同様、半霊半物質の存在だろう。前回は拳で殴ったが、今回はこれを使う。」
そう言って取り出したのは、生物のような禍々しい見た目をした剣。デビルソードだった。
「『ヒナソード』だ。」
ヒ『先生。今、なんて言ったの?』
「な、何でもないよ、ヒナちゃん。」
皆と通話を付けたままだったからか、聖哉の言葉がヒナちゃんに聞こえそうになったようだ。
「
聖哉が呼吸音とともに凄まじいオーラを発散される。その瞬間、強烈な音が古聖堂に鳴り響く。狂戦士化をしたことによる速度により、聖哉が地面を蹴った所は大きな跡が残っていた。私でも視認できない速度。聖哉はヒエロニムスの眼前だった。聖哉は、破壊の鎖で拘束されたヒエロニムスにアデネラ様の超速剣を繰り出す。剣筋が見えない剣技は、切るというより叩くといった方が良いだろう。だが、一撃一撃がこの聖堂を崩壊させるレベルの攻撃だろう。
――す、凄すぎる!こっちがいじめてるみたいだわ!!!
最後に思いきり突きを喰らわせると、ヒエロニムスは拘束した鎖ごと、近くの壁に激突した。天地を揺るがす地響きとともに聖哉はアストラルブレイクを解除した。すると、中からはボロボロになり、今にも消滅しそうなヒエロニムスが現れた。
「あれでも、倒しきれないなんて、結構タフね。」
「問題ない、想定済みだ。そのために時間を稼いだ。」
「時間を稼いだ?」
聖哉の方を見ると、狂戦士化の赤髪ではなく、白髪になっていた。だが、白髪のまま狂気のオーラをまとっていた。
――これは、吸血鬼化!!でも.....
「せ、聖哉!吸血鬼化と狂戦士化って、併用が出来ないんじゃ.....。」
「狂戦士化は状態だが、吸血鬼化は変化だ。よって、併用はできる。」
で、でも吸血鬼になって、一体どうするの!?
そう思い、ふと、井を見ると....
「な、なんじゃこりゃ―――!!!」
古聖堂の天井には、赤黒い魔法陣が展開されていた。
「血液を魔力へ変換し、上空へ無数の血の矢を生成する。これが『
魔法陣から深紅の矢が出現する。それはまるで、ルシファ=クロウの「
「え、えぐっ!?」
――あ、圧勝!? この勇者、マジで強すぎない!?
「もう一発、いっておこう。」
「え?」
聖哉は、再び、手を振りかざした。
「
追い打ちをかけるように、聖哉はもう一度、深紅の矢を放った。強烈な爆音とともに、風圧で私は吹っ飛ばされそうになった。一度目の時点で古聖堂は崩壊寸前なのに、二度もすれば、聖堂の面影はなくなった。
〈廃墟〉
誰もいない廃墟。そこには、自分の作品が呆気なく壊されてしまった異形のマネキンがいた。
マ「.....。心から感謝しよう、先生。そなたという作品は、勝利を極限まで追求した完成された勇者。それに対し、私の作品は足元にも及ばない。だが、すぐに完成させて見せる。......では竜宮院聖哉。そなたにまた会える時を、心待ちにしている。」
〈古聖堂・跡地〉
崩壊した古聖堂。聖哉が放った「
「いつまで寝ている。」
「あ、あんたのせいでしょうが!?」
私の言葉に、聖哉はフンと鼻を鳴らし、周囲を探索しだした。その時
ア「先生!!今の地響きは!?」
アズサちゃんが息を切らしながら、走ってきた。
「アズサ。アリウススクワッドはどこに行った?」
聖哉の言葉を聞き、アズサちゃんは苦虫を嚙み潰したような表情で
ア「サオリたちは、私が気を失っている間に消えてしまった。」
「.....そうか。」
「どうするの、聖哉。あの子たちしか、ベアトリーチェの場所を知らないんじゃ.....。」
聖哉は、問題ないといった表情で
「安心しろ。土蛇のGPSをつけている。いつでも場所を割り出せる。」
「いつの間に.....。」
私たちは一旦、トリニティに戻り、一夜を明かした。こうして大波乱なエデン条約が幕を下ろした。
翌日、私と聖哉は、ある病院に向かった。
「聖哉、ここって.....。」
「.....百合園セイアの病院だ。」
「!?」
セイアちゃんの病院!
「奴を起こす。」
「だ、大丈夫なの、聖哉。セイアちゃんは起きることを拒絶してるんでしょ。」
「.....今なら、問題ない。今のこいつらならな。」
聖哉はそう言い、透明化をして、病室に入った。
「....!」
殺風景な病室。まるでモノクロの世界のようだった。だが、中央の病床にいる人影を見て、私は驚愕した。無理もないだろう。たった今、起こしに行こうとしていたのだが、百合園セイアは起きていたのだ。
「セイアちゃん!!!」
私は透明化を解除して、セイアちゃんに駆け寄った。それまで晴れた空を眺めていたセイアちゃんだったが、私の声に気づき、目線を向けた。
セ「おはようというべきかな、リスタルテ。そして.....」
セイアちゃんは、聖哉の方に視線を変えた。
セ「初めましてかな、勇者。君の活躍は見せてもらったよ.....君は私が出来なかったこと、投げ出したことを成し遂げた。『楽園のたどり着きし者の真実を、証明することが出来るのか』という問いに対して、君は『YES』か『NO』どちらかを選ぶのではなく、どちらに転んでも、対応できるように準備する。それは証明とは言わないが、どんなに不可能なことでも、そこに近づけることはできる。大切なのは、諦めないことか.....その発想はなかったよ。私の負けだ。」
セイアちゃんはそう言い、聖哉に微笑んだ。
「そもそも勇者と勝負して勝とうだなんて、無謀な話だったかな.....。元来、勇者というのは不可能と言われていることでも、成し遂げる存在なのだから。」
セイアちゃんの天使のような微笑み。夢の世界であったときは、未来に希望がないような表情だったが、それをみて、安心した。そう話すセイアちゃんを、聖哉は不思議そうに見つめていた。
「お前は何を言っている。」
セ「!?」
聖哉の発言に、セイアちゃんは理解できないようだった。
「なぜおまえが負けたことになる。お前は、リスタ介して俺に助けを求めた。お前はお前なりに、諦めずに考え抜き、この選択に至ったのだ。その点を見れば、この問題に勝ったと言える。」
セ「......!」
セイアちゃんは聖哉の言葉を聞き、気づいたように笑った。
セ「流石だね、慎重勇者。」
(ドンッ)
その時、突然、勢いよく病室の扉が開いた。息を切らした蒼森ミネちゃんだった。セイアちゃんの一件から姿が見えないと言っていたが.....
ミ「セイアさん!!.....!先生、リスタルテさん.....。」
セ「ミネ団長.....迷惑をかけたね。」
「ミネ。早速だが、こいつを連れていくぞ。」
ミ・セ「!?」
この状況に冷静にしゃべる聖哉。始めた会うミネちゃんは困惑していた。
「せ、聖哉!!セイアちゃん連れて、どこ行くの!?」
聖哉は、セイアちゃんの方を見た。
「お前には行くべきところがあるはずだ。」
セ「!?....そうだね。」
私と聖哉はセイアちゃんを連れて、あるところに向かった
「聖哉、ここって.....!」
聖哉が向かったのは、トリニティ。ティーパーティの部屋だった。中に入ると、ナギサちゃんとミカちゃんが話していた。
――って、ミカちゃん!?
「ミカちゃん、何で!?」
私たちの存在に気づいたようだ。ナギサちゃんは紅茶を飲むのをやめ、こっちに視線を向けた。
「俺が呼んだ。話をするためにな。」
「あ、あんたが!?」
ミ「そう。先生に呼ばれたんだけど.....」
ナ「先生、どういったつもりで....。」
「それは、こいつから話してくれる。」
ナ・ミ「!?」
聖哉の後ろから、セイアちゃんが出てきた。ナギサちゃんとミカちゃんは信じられないといった表情で、目を見開いていた。
ミ「セイアちゃん!?」
ナ「セ、セイアさん!?」
セ「....やあ、ナギサ、ミカ。久しぶりの集合だね。長い時間が経ち、いろいろなことがあったが.....私たちはそろそろ、お互いに話すべきだろう。言わなかったことや、言えなかったこと。そして、本当は言いたかったことを。誤解もあるだろう、信じられないこともあるだろう。たとえどこにも到達できないとしても.....それでも、他社の心という証明不可能な問題に向かうしかない。」
そして、セイアちゃんは、聖哉を一瞥し
セ「私たちは、お互い向き合わないといけない。諦めてはいけない。慎重に進まなければならない。」
ナ「......そうですね。」
ミ「うん、それはすごく同感....だけど、相変わらず難しいことばっかり。セイアちゃん、だから友達がいないんでしょ?ちょっとは自覚してる?」
ミカちゃんの言葉に、セイアちゃんはムッとした表情になり
セ「先ずはミカはその良くなりそうな頭に、教養と品格を入れてもらった方がよさそうだね?」
ナ「あの、お二人とも....。」
いがみ合うセイアちゃんとミカちゃん。それを仲裁しようとするナギサちゃん。だが、聖哉は見向きもせず、椅子に座った。
ナ「先生.....?」
「ナギサ、茶を淹れてくれ。」
ナ「.....!」
聖哉の一言で、ナギサちゃんが微笑んだ。前までは、ナギサちゃんの紅茶を飲まなかった聖哉。聖哉が他人が作ったものを摂取するという事は信頼の証でもある。
ナ「すぐにお淹れますね。茶菓子は何になさいますか?」
「市販品は何が入ってるかわからない.....ナギサ。お前は菓子作りが得意なのだろう。なら、それをくれ。」
ナ「.....!かしこまりました。」
ナギサちゃんはそう言って、自分の作ったロールケーキと紅茶を聖哉に差し出した。それを飲む聖哉。
「うむ、うまい。今まで飲んできたどの紅茶よりもうまいな。」
無表情でそういう聖哉。本当に思っているのかと、疑問に思うが、ナギサちゃんは嬉しそうだった。
ミ「あー!ちょっと、ナギちゃん。先生を独り占めにするのは良くないよ!」
セ「そうだね。私も勇者とは、もっと話をしたいのだが....」
仲睦まじく言い合う三人。私はこの光景を見たかったのだと、直感した。
だが、慎重勇者こと竜宮院聖哉はお茶を飲んでいても、その眼光は一切の油断がなかった。
「セイアちゃんが、起きて良かったね、聖哉。」
「あぁ。だが、まだ終わっていない。ここからだ。」
「そうね。ベアトリーチェ、ドレイク伯爵。こいつらを倒さない限り、終わらない。」
「最終準備が終わり次第、奴らを倒しに行く。」
「次回『血に染まった祭壇』」
「なんか、物騒なんですけど.....」
読了していただき、ありがとうございます。