この勇者が透き通る世界でも慎重すぎる   作:かげもじ

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30話、投稿しました。エデン条約最終章になります。


エデン条約 第三章「神々に捧げるロザリオ」
観測者たちの密議


アリウススクワッドによる襲撃の件が、収束してきた頃。私と聖哉は、ナギサちゃんに呼ばれていた。

 

扉を開けると、そこにはナギサちゃんだけでなく、サクラコちゃんとミネちゃんがいた。

 

ナ「.....!先生、リスタさん。来ていただき、ありがとうございます。」

 

礼儀正しく、ナギサちゃんがお辞儀をすると、聖哉が

 

「そんなことはいい。用件はなんだ?」

 

聖哉の言葉にミネちゃんがサクラコちゃんに耳打ちをした。私と聖哉は、耳がいいので聞こえた。

 

ミ「やはり、聞いてた通りの無愛想な大人のようですね.....」

サ「.....ですが、とてもいい先生です。信用に値する大人だと思います。」

ミ「.....。」

 

――あんまり、ミネちゃんからは良く思われてないようね.....まぁ、ミネちゃんとは会って、1日しか経ってないからかな。

 

ミネちゃんとサクラコちゃんが内緒話をしていると、ナギサちゃんが咳払いをした。

 

ナ「コホン。気を取り直して。今回先生を呼んだのは、エデン条約襲撃事件の元凶。アリウス分校についてです。」

 

ナギサちゃんの言葉に、ミネちゃんとサクラコちゃんは真剣な表情に戻った。

 

ナ「エデン条約の会談場の襲撃、その実行犯であり黒幕だったのがアリウス分校でした。」

ミ「アリウス分校は長い間、我がトリニティとゲヘナの両方を憎んできたと聞き及んでいます。一度に両学園の要員を無力化させる絶好の機会だったのでしょう。」

ナ「さらに、エデン条約という『契約』を利用して不可解な兵力を手に入れておりました。」

ミ「はい。『ユスティナ聖徒会』の姿をした幽霊たち。それらがそのまま襲撃していたら、両学園は崩壊していたでしょう。」

 

三人は、あの亡霊の事を話したと思ったら、聖哉に視線を向けた。

 

ナ「.....まぁ、先生が対処してくれたのですが.....」

ミ「やはり、勇者というのは、本当のようですね。」

サ「先生が居なければ、危険な状況だったでしょう。」

 

ナギサちゃんは、紅茶を一口飲み

 

ナ「次に、巡航ミサイルの件です。アリウスの作戦では、ミサイルを聖堂に落とし、被害を出す計算でしたが......」

 

三人は再び、聖哉の方に視線を向けた。

 

ナ「.....それも、先生が事前に予測し、対処をしてくれたおかげで被害を抑えることが出来ました。」

ミ「あのミサイルを対処するなんて、凄いですね。」

 

確かに全部、聖哉が対処しちゃったけど.....

 

「あのミサイルは、キヴォトスには存在しない型だ。」

ナ「.....やはり、そうでしたか.....」

 

ナギサちゃんが少しの間、思考を巡らせて

 

ナ「そして、私たちを襲った赤い霧。」

 

ナギサちゃんが放った言葉により、部屋の空気が重くなった気がした。

 

サ「あれは一体、何なのでしょう.....。」

ミ「ツルギさんやハスミさんも一瞬にして、戦闘不能にされたと聞きました。」

ナ「......先生。貴方は、あれが何か知ってるのでしょう?」

 

ナギサちゃんは、聖哉に問いかけた。すると聖哉は、少し考えた後

 

「.....教えてやろう。あれは、魔王軍四天王の一人。ドレイク伯爵だ。」

 

全「!?」

 

ナギサちゃんは驚きのあまり、紅茶をこぼしてしまったようだ。

 

ミ「ま、魔王軍四天王!?」

サ「それって、ミレニアムの事件のですか?」

ナ「でもそれは、先生が対処したのでは?」

「何を言っている。魔王軍四天王と言ってるのだから当然、四人いる。そのうちの一番弱い雑魚を倒したに過ぎない。」

 

――ざ、雑魚って......結構、厄介な奴だったと思うんだけど.....

 

聖哉の言葉に、ナギサちゃんはさらに険しい表情になった。

 

ナ「アリウスだけでも、大変なのに、そんな敵まで.....」

 

ただでさえ、エデン条約が調印できなかった後処理に追われているのに、更に強大な敵が現れたら、焦るのも無理はないだろう。

 

ミ「な、ナギサさん!?落ち着いてください。」

 

頭を抱えるナギサちゃんに私たちは、何とか落ち着かせようとした。すると聖哉が、ナギサちゃんの前に行き、頭に手を置いた。

 

全「!?」

ナ「せ、先生.....!?///」

「ナギサ。ドレイク、アリウスの件は俺に任せろ。俺は政治についてはさっぱりわからん。そっちは任せる。」

ナ「せ、先生.....分かりました。」

 

すると、ナギサちゃんは姿勢を正し、礼儀正しく

 

ナ「これは、トリニティ総合学園生徒会『ティーパーティ』から、連邦捜査部『シャーレ』への正式な依頼です。魔王軍四天王『ドレイク伯爵』の討伐をお願いします。」

 

ナギサちゃんはそう言い、深々とお辞儀をした。

 

「あぁ、任せておけ。」

 

聖哉と私は、その場を後にした。

 

「聖哉、これからどうするの?」

「目的は、ベアトリーチェとドレイク伯爵。こいつらを倒すこと。そして、敵は協力関係にある可能性がある。」

 

私はその言葉を聞いて、体が強張った。

 

「まだステータスもわからないベアトリーチェに加えて、とんでもない力を持つドレイクが共闘してるなんて.....。」

「その為に、吸血鬼化を完成させる。リスタ、門を出せ。」

「吸血鬼化って、まだ技があるんだ。」

 

私たちは門をくぐり、神界に行った。神界に行くとやることがあると言って、聖哉は私の元を離れた。私は部屋で待機しようと椅子に座っていると、疲れていたからなのか寝落ちしてしまった。

 

「んー、ん?」

 

目を覚ますと、そこは知っている場所ではなかった。無骨なコンクリートの壁、まるで血のような色をしたライトに照らされた会議室は異様な雰囲気を醸し出していた。

 

黒「マエストロ、何か気になることが?」

マ「.....。」

 

「!?」

 

あ、あれは、黒服!?という事は、ここはゲマトリアの基地のようなもの!?

 

会議室のようなところには以前、アビドスに手を出して聖哉に情報を吐かされた黒服。マネキンのような姿をした者。血のように赤いドレスに目のようなものが複数ある怪物。コートを着ており、手に写真のようなものを持っている者がいた。

 

「あ、あんたたち!!ムぐ!?」

 

突然、口を布のようなもので抑えられた。抑えられながら振り向くと、そこには、セイアちゃんがいた。

 

セ「リスタルテ、バレる可能性がある。ここは大人しくしよう。」

「セイアちゃん、どうしてここに?」

 

私の質問にセイアちゃんは、首を横に振り

 

セ「私にもわからない。ミカと話をしようと待っていたのが、寝てしまって、気づいたらここに.....」

「私と同じ.....」

マ「ベアトリーチェに質問がある。」

「!?」

 

べ、ベアトリーチェ!?ってことはあいつが!!!

 

べ「.....はい、何でしょう?」

 

――マエストロ....聖哉がそう呟いていたのは聞いている。

 

マ「要請によって、私は自分の力を貴下に貸したのは覚えているな?戒律を守護せし者たちを複製して、そちらの計画に付き合わせた件だ。私の作品を貴下が使用することを許可した覚えはないのだが?」

 

マエストロの言葉にベアトリーチェは

 

べ「作品?全く、使い物にならなかったではないですか。あの勇者に完膚なきまでに破壊されたというのに.....」

マ「.....不躾だな。そういう問題ではないのだ。それは――」

べ「不躾?よくもまぁ.....私にそんな口を。」

 

侮辱されたことによりベアトリーチェは怒りを露わにしたが、コートを着た者が二人の間に割って入った

 

ゴ「まぁまぁ.....お二人とも落ち着いてください。事を荒立てないでくださいよ。」

デ「そういうこった!」

 

――な、何あの写真!?しゃ、喋った!?

 

ゴ「.....失礼しました。マエストロはきっと、普遍的な現象を通じて独創的な解釈をすることは、自分なりの表現だと考えているのでしょう。」

マ「.....。」

ゴ「しかし、それはマダムの立場では別段考慮する必要がない部分かもしれません。私たちは皆、この世界を解釈する方法が違いますから。」

べ「――つまり、私がマエストロの武器を勝手に奪ったことが気に食わない、という事ですよね?」

マ「.....貴下が行うの芸術ではない。そこには美学も何もなく、ただ兵器を生み出すだけの行為だ。」

 

マエストロの言葉に、ベアトリーチェはさも平然としたように答えた

 

べ「ええ、そうです。何か問題でも?それに、貴方だけではありません。私は黒服が提供した技術力も、ゴルコンダが解釈したテクストもそのように使っています。」

 

ベアトリーチェの言葉に会議室の空気が変わった。

 

べ「私はあなたたちの芸術に興味はありません。『ゲマトリア』の一員になるときから主張してきた話だと思いますが。」

黒「クックックッ.....その通り。それはそれで良いのではと、私はそう思っています。仲間同士で争う必要はないかと。彼女はキヴォトスに自分だけの領地を確保しています。私たちの計画に最も必要な存在ですから。」

ゴ「アリウス自治区ですね。あそこのすべての生徒と学園を自分の支配下に置くなんて、確かにそれは偉業です。」

 

セ「!?」

――アリウス.....こいつのせいでサオリちゃんたちは....

 

ゴ「黒服のアビドスは残念でしたが.....おっと、失礼。皮肉を言ってるつもりではありません。」

黒「ククッ.....お気になさらず。確かに惜しかったですが――あの先生(勇者)と女神の存在は私の計算に入ってなかったので。」

 

黒服の言葉にベアトリーチェの目が鋭くなった

 

べ「.....ところで、黒服。なぜあの勇者に私の存在が知れ渡っているのですか?まさか、貴方が.....」

 

――聖哉が黒服に、情報を吐かせたことに感づいている!?

 

黒「いえいえ。私とあなたは協力者。裏切るようなことはありません。」

 

黒服はあの時の記憶がないのか、知らないようだった。

 

べ「『シャーレ』の先生....もとい勇者。私の計画を悉く、潰す邪魔者ですね。」

 

――やっぱり聖哉の事も知れ渡っているようね。

 

黒「....まさか、あの勇者と戦うつもりですか?」

べ「当たり前です。私たちの敵対者なのですから.....」

マ「私としては大変気に入っているのだが....あの者は、私たちの理解者になってくれるかもしれない。」

 

――せ、聖哉を仲間に!?何を言ってるのこいつら!!

 

べ「愚かで怠惰な思考ですね。あの勇者と女神は必ず排除しなければなりません。」

 

ベアトリーチェの言葉に、黒服が首を傾げた

 

黒「ほう。貴方はあの者の強さを理解していないのに、勝つつもりですか?」

べ「どういうことですか?マエストロの作った人形との闘いを拝見しました。確かにあの赤いオーラは危険と言わざる負えません。ですが、私たちの敵ではないでしょう。」

マ「私たち.....?貴下は誰の事を言っている?」

べ「おっと....口が滑ってしまいました。兎に角、必ず排除します。」

 

ベアトリーチェの言葉に黒服は奇妙な笑い声をあげた。その声にベアトリーチェは不快の感情をあらわにした

 

べ「何が可笑しいのですか、黒服?」

黒「失礼しました。今の言葉で貴方があの勇者の強さに気づいていないようでしたので。」

べ「.....。」

黒「あの勇者の強さは、あの圧倒的な能力でも、彼の背後についている天上の神々でもありません。」

べ「!?それを教えなさい、黒服!!!」

黒「いえ。これはご自身で体験したほうが良いでしょう.....」

べ「.....まぁ、良いでしょう。勇者に勝つ方法を順に追って説明しましょう。」

 

セ「!?」

「聖哉に勝つ方法!?」

 

べ「聖園ミカがアリウス自治区を訪れて以降、彼女に多くの事を手伝っていただきました。」

 

セ「.....ミカ?」

――ミカちゃん!?

 

べ「そう.....いわば聖園ミカは私にインスピレーションを与えてくれる.....ミューズとでも言いましょうか。『エデン条約』を利用して太古の威厳を確保するというアイデアも、予知夢の大天使を真っ先に処分すべきだという判断も、彼女のおかげで実現できたのです。」

 

――ミカちゃんを利用したってこと!?

 

べ「預言者なんて厄介な存在はさっさと排除するに限りますからね。珍しい技術を提供してくれたデカルコマニー.....いえ、ゴルコンダに感謝します。」

デ「そういうこった!」

ゴ「私はテクストを提供しただけで、それを形にしたのはマダムですよ。それに、むしろその技術がマダムの足を引っ張っていませんでしたか?」

べ「ええ.....ですが、生贄の体であらかじめ植えておいた防御システムのおかげで助かりました。感謝します、黒服。」

黒「.....クックックッ。無名の司祭たちの技術が役に立ってよかったです。」

 

ベアトリーチェが黒服たちに感謝をする異様な光景を見て、私は背筋が凍った。だが、ベアトリーチェは声を低くして

 

べ「......ですが、全てあの勇者には、無意味。」

 

全「!?」

 

ベアトリーチェの言葉に黒服たちは理解できないようだった。

 

黒「ベアトリーチェ。貴方は何を!?」

 

黒服の問いにベアトリーチェはある剣を取り出した。ガードの部分は花の装飾がされており、深紅の剣だった。だが、私が戦慄したのは、その剣が纏っているオーラだった。

 

「あれは、チェイン・ディストラクション(連鎖魂破壊)!?」

セ「チェイン・ディストラクション?」

 

ゴ「それは、何なのだ、マダム。」

べ「.....あの勇者と女神はこの世界で殺しても、死にません。」

 

ベアトリーチェの言葉に

 

黒「それはまたまた、興味深い。不死身という事ですか?」

べ「いえ。あの者たちは神界という所からこちらの世界に来るのですが、女神は死んでも復活し、勇者は元の世界に戻るというのです。」

マ「貴下がいう事が本当なら、倒せないではないか?」

 

その言葉にベアトリーチェは、不気味に笑った。

 

べ「そのためにこれがあるのです。あの者たちは神界にあるディバインソウル(本来の魂)によって生み出されている仮の魂を持って、こちらの世界に召喚されています。なら、その仮の魂ごと、本来の魂を壊してしまえば、良いのです!!」

 

セ「!?」

――神界の事を全部知っている!?

 

べ「『チェイン・ディストラクション(連鎖魂破壊)』これがあれば、あの者たちをこの世から消し去ること出来るのです。」

 

セ「.....。」

 

黒「確かにすごい技術です。ですが、私が気になるのは、なぜ、そのような技術をあなたが持っているのですか?」

べ「.....良いでしょう。来なさい。」

 

全「!?」

 

ベアトリーチェの呼び声と共に、姿を現したのは色が悪い皮膚、銀色の長髪、黒いマントに身を包んだ瘦身の人型をしていた魔物。あの時、ツルギちゃんたちを襲ったドレイクだった。

 

黒「そのものは?」

マ「なぜ、私たちの会合に参加できる?」

 

ド「お初にお目にかかります、ゲマトリアの皆さん。我は魔王軍.....いえ、魔王帝国四天王が一人、純血の伯爵『ドレイク』です。以後お見知りおきを。」

 

セ「リスタ、あの者は何なのだ!?」

「.....ドレイク。違う異世界から来た魔王軍四天王よ。」

セ「別の異世界から.....。」

 

予想外の敵の登場に私たちは困惑していた。

 

黒「貴方が、ベアトリーチェに技術を?」

ド「無論。だが、あれを授けてくださったのは我が君。魔王帝国の君主『ネクロディウス』王だ。」

マ「魔王帝国.....これはどういうことなのだ?」

ゴ「テクストが書き換えられている!?」

 

困惑する黒服たちにベアトリーチェ

 

べ「安心してください。あなたたちも思い知ることになるでしょう.....あの方の力に。」

ド「待て、ベアトリーチェ。」

 

ドレイクが突然、声を上げた。

 

べ「どうしたのですか?」

ド「ネズミがいるようだ。これは.....大天使と女神か!!」

べ「何ですって!!」

 

セ「!?」

――や、やばい、バレた!!!

 

べ「ドレイク。無事で返さないでください。」

ド「分かっている。」

 

するとドレイクは、持っている杖を掲げて

 

ド「クリムゾン・マッドネス(紅禍心蝕)!!!」

 

マ「この力は!?」

黒「ほう。興味深いですね.....。」

 

ドレイクがそう言い放った直後、杖から禍々しい霧が発生した。霧は聞き耳をしていた私たちを包み込んだ。

 

セ「こ、これは!?」

「な、なに....よ、これ.....。」

 

赤黒い霧は、私たちの意識を刈り取り、その場に倒れた。

 

目を覚ますと、そこは聖堂のような場所だった。横を見ると、セイアちゃんが倒れている。

 

「セイアちゃん!!....「彼女はまだ起きませんか。」

「!?」

 

声の先を見ると、ドレイクとベアトリーチェがいた。

 

ド「流石は、天上の女神。状態異常の耐性はそこの大天使と比べ物にならないな。」

「あんたら、セイアちゃんに何をしたの!!!」

 

私の怒りの籠った声に、ドレイクは

 

ド「.....あの勇者が阻止したダーム事件。あの時の魔法はこういう使い方もできるのだ。」

「くっ.....!」

べ「それより、早く始末しましょう。そこの女神はまだしも、百合園セイアは厄介です。」

 

ベアトリーチェは私たちの予想外の行動に焦りを感じているようだ。私たちを早く始末したくてたまらないのだろう。

 

ド「待て、ベアトリーチェ。この世界は我が作った精神世界。場所はアリウス・バシリカだが、本来の世界ではないのだ。故に、実体には傷をつけることはできない。」

べ「.....そうですか。なら、どうするのですか?」

 

ベアトリーチェの言葉に、ドレイクは不気味な笑みを浮かべた。

 

ド「....実体に傷を付けれなくても、精神には影響を及ぼせる。」

「!?」

 

ドレイクは、セイアちゃんの首を締め上げた。

 

セ「ぐ!?....ぐぅぅぅぅぅっ!!!」

「セイアちゃん!!!」

ド「やっと起きたか、百合園セイア。お前は危険だ。あのまま一生眠っててほしかったが、今ここで永遠の眠りにつかせてやろう。」

 

凄まじい握力でセイアちゃんを締め上げるドレイク。そんな光景を見ながら、私は何もできない.....いや、諦めてはいけない。聖哉が居なくても、セイアちゃんだけは.....

 

私は上体を起こし、ドレイクの前に立った。奴の魔法の影響か、まだからだをうまく動かせなかったが、そんなことを言ってる場合ではないことは明白だった。

 

ド「ほう。やるのか女神よ。あの勇者が居なければ何もできない出来損ないのくせに。」

べ「この状況をどうやって打開するのですか?今の貴方では、不可能だという事を分かっているでしょうに。」

 

2人は私をバカにするように、笑い出した。

 

――私だって.....私だって!!!

 

私はドレイクとベアトリーチェに手をかざし、声を張り上げる。今こそ!金の女神バルドゥル様に教えてもらった光属性の呪い封じを使うときよ!!!

 

「ヘイヘーイ! ヘイヘイヘヘーイ、ヘイへヘイへ!!!」

 

べ「.....は?」

セ「り、リスタルテ.....」

 

私はこの状況でノリノリに叫びまくる。急に奇声を上げる私にベアトリーチェは、意味が分からない様子だった。

 

べ「この女神、血迷ったか!!!そんな子供騙しで私を愚弄して!!!ドレイク!!!」

 

ベアトリーチェはドレイクにトドメを指すよう命令する。だが、ドレイクの様子がおかしかった。

 

セ「かはっ!!はぁ、はぁ、はぁ......」

 

ドレイクはセイアちゃんの首から手を引き、苦しみだした。

 

ド「ぐ、ぐああああ!!!」

べ「どうしたのですか、ドレイク!!!」

ド「こ、これは、光属性の退魔法!!!」

 

――き、効いてる!!!い、いけるわ!!!

 

「ヘイヘーイ! ヘイヘイヘヘーイ、ヘイへヘイへ!!!」

ド「ぐっ!?クリムゾン・マッドネスが崩壊する.....!」

 

私の呪い封じにより、徐々に大聖堂に亀裂が出来始めていた。

 

べ「.....ここまでですか。女神よ。このままで終わると思わないことです!!!」

 

ベアトリーチェがそう吐き捨てた時、視界が光に包まれた。精神世界が崩壊したようだ。

 

目が覚めると、私は統一神界の部屋にいた。私は透かさず、キヴォトスの状況が気になり、水晶玉で覗いていると....

 

トリニティの郊外にアリウスの生徒がたくさんいた。気になって、そこに座標を合わせると.....

 

「!?」

 

そこには、アリウスの生徒に囲まれているサオリちゃんたちがいた。攻撃を受けたらしく、あのサオリちゃんでも傷を負っていた。

 

ミ「まずいね、この状況。弾薬もほとんど残っていないし。それに.....」

 

私は、アリウスの生徒の中から現れた奴に驚愕した。色が悪い皮膚、銀色の長髪、黒いマントに身を包んだ瘦身の人型をしていた魔物。さっきまで精神世界でセイアちゃんに危害を加えたドレイク伯爵だった。

 

サ「貴方様が何で.....この前は助けてくれたではないか!」

 

サオリちゃんの言葉に、ドレイクは口角を上げ

 

ド「勘違いするな、錠前サオリ。我が貴様らを助けたのは、任務だからだ。だが今は、ベアトリーチェの命令により、排除しろとのことだ。だが、そこの秤アツコをこちらに渡せば、見逃してやらんでもない。」

 

全「!?」

 

――アツコちゃんを!? 一体何を企んで.....

 

ドレイクの言葉に、アツコちゃん以外は銃を向けた。

 

ド「ほう。」

サ「撃て!!!」

 

サオリちゃんたちが放った弾丸がドレイクに向かっていく。だが

 

ド「ミスト・アポセオシス(霧化転身)

 

ドレイクの体は霧状になり、銃弾は当たらなかった。再び人型に戻り、煽るように口角を上げた

 

ミ「う、嘘!?」

ヒ「ひ、ひぃ!!お、お終いです。」

ド「さて、どうする?ここで死ぬか、おとなしくそいつを渡すか。」

サ「..... 一つ聞きたい。」

 

この絶望的な状況の中、サオリちゃんはドレイクに問うた。

 

サ「この圧倒的な力を持っているのに、なぜ、マダムに従っている?」

 

サオリちゃんの言葉にそれまで笑っていたドレイクの表情が、一変した。

 

ド「.....それは、我が目的を果たすためだ。貴様ならわかるだろう、何度も対峙してるのだから。」

 

全「!?」

 

――何度も対峙している.....それってまさか!?

 

サ「貴様の狙いは.....先生か.....」

ミ「!?」

ア「ス、スススッ」

ド「.....で、どうする?」

 

邪悪なオーラを放つドレイク。サオリちゃん以外の子はその覇気に、圧倒されていた。だが、サオリちゃんは動じず、銃口をドレイクに向けていた。

 

ド「まだわからないか?圧倒的な能力差を。」

サ「それでも、姫は渡さない!!!」

 

サオリちゃんの決死の叫びに、ドレイクの表情が一変し

 

ド「.....そうか。なら、死ね。」

全「!?」

 

ドレイクは私の目でも追いつけない速さで、サオリちゃんの背後に回っていた。ドレイクは血で生成した剣でサオリちゃんの首筋を斬ろうとした時

 

ア「待って!!!」

 

全「!?」

 

アツコちゃんがマスクを外し、前回会った淑やかな声色とは裏腹に、声を低くしてでドレイクを止めた。

 

サ「アツコ!?.....一体何をっ!?」

ア「.....もういいよ、サオリ。全部、無意味だよ。ここを切り抜けたその先は?一体どこに向かうの?」

サ「.....。」

ア「トリニティにゲヘナ―――そしてアリウスさえも私たちを追いかけている。」

 

アツコちゃんは少し間を開け、声を低くして

 

ア「このキヴォトスで私たちが安心できる場所は無いよ。私たちの命が尽きるまで、息を潜めて逃げ隠れる人生が続くだけ。」

ミ「.....。」

ア「でも、それも私がいるからの話。サオリも、ミサキも、ヒヨリも。私のせいでこうなってしまったから.....。だから、私が終わらせる。今回くらいは自分で選択してもいいでしょ?」

 

アツコちゃんの言葉に、ドレイクは高らかに笑った。

 

ド「良いだろう。貴様が来るなら、こいつらには手を出さないでおこう。」

ア「お願い。」

 

すると、ドレイクは誰かに連絡を取っていた。

 

ド「これで良いのだろう、ベアトリーチェ。」

?「えぇ、まぁ、良いでしょう。傷一つないよう、丁重に扱ってください。儀式は明朝、日の出と共に始めます。」

ア「.....元気でね。サオリ、みんな――さようなら。」

 

ドレイクとこの場を去ろうとするアツコちゃん。サオリちゃんは、そんな彼女を追いかけようとしたが

 

サ「!?」

ミ「こ、これは催眠ガ.....ス.....。」

ヒ「ひ、姫ちゃん.....」

 

突如として現れた霧により、サオリちゃんたちは眠ってしまった。

 

「ま、まずいじゃないの!?と、取り合えず、聖哉に報告しないと!!!」

「呼んだか?」

「と、わぁ――――!?いつからいたの?」

「今さっき、戻った。ひとまず状況整理だ。」

 

こんな事態でも冷静な聖哉。でも、そのおかげで落ち着くことが出来た。聖哉は私の頭に手を置き、空間ディスプレイを表示させた。

 

「こ、これは!?」

「土蛇モニターの応用だ。お前の記憶をモニターに念写することが出来る。」

「す、すごい!」

 

聖哉はさっきの光景を何も言わず、無心に凝視していた。

 

「.....なるほど。だが、ドレイクがベアトリーチェに協力する理由がわからないな。」

「た、確かにサオリちゃんも言ってたわ。」

「ベアトリーチェに協力して、得る利益....土地、財.....力。」

 

聖哉はそう呟くと、何かに気づいたように

 

「リスタ、門を開け。あっちでやることがある。」

「え、え!?わ、わかったけど.....」

 

私は聖哉の言う通りに門を開いた。異界の門は聖哉にご要望の通りにトリニティ校門に開いた。

 

「リスタ、俺はやることがある。4時間くらいかかる。その間待機してろ。」

「え!?やることって何よ!」

 

私の言葉も聞かずに、気づけば、聖哉の姿が見当たらなかった。

 

「もう、一体何なのよ!!」

 

(プルルルル)

 

突然、シッテムの箱に電話が買ってきた。

 

「え......」

 

電話の内容を聞き、私は絶句してしまった。

 

 




セ「そういえば、勇者。私が昏睡状態の時、体に何かしたかい?目覚めた時、臀部の方に痛みを感じたのだが.....。」
「何のことだ?同じ体制でいたから、筋肉が緊張したのだろう。気にすることは無い。」
「まぁ、そうだよね。いくら聖哉でも、寝てる女の子にやばいことしないよね.....。」
「......。」
セ「勇者?」
「!! 何その反応!? 本当に何もしてないよね!?」

「次回『プリンセス・ブレイクダウン』」

読了いただき、ありがとうございました。

今回は、リスタのかっこいいところを書きました。

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総合評価:1723/評価:8.4/連載:41話/更新日時:2026年05月25日(月) 23:51 小説情報


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