(アビドス自治区〉
サ「おかしい.....街が静かすぎる。元々人通りが少ない場所だが、ここまでではなかったはずだ。」
私たち以外、人ひとりもいない街。暗い道を照らす街灯が不気味さを一層強めている。
ヒ「なんか....知らないものが増えています。」
ミ「そうだね.....違和感は、私もさっきからすごくある。」
「待って、誰かいるわ!」
全「!?」
私は人の気配を感知し、皆を物陰に隠れさせた。私はそっと気配の方向に視線を向けると見たこともない奴がいた。
ヒ「な、何ですか、あれ!?」
ミ「ユスティナ聖徒会ではないね....。」
サ「リスタ....あれは何か....!」
――な、何....あ.....れ....
悍ましいフードを被った者。フードの下は骸骨になっており、眼窩からは黒い霧が出ていた。
ルシアン=ブラックウッド卿
種族アンデット 状態正常
HP 239137 MP 95037
攻撃力 120739 防御力 189468 素早さ 148592
魔力 195739
耐性 氷・風・水・雷・土・毒・闇・麻痺・眠り・状態異常・即死・呪い
特殊スキル 魔王の加護(Lv.MAX)闇魔法(LV.MAX)能力透視(Lv.MAX).....
――な、何このステータス!? ミカちゃんとかよりは低いけど....私たちでは勝てない...!
サ「り、リスタ、どうする....」
「ま、まずは逃げる....「逃がしませんよ!」
全「!?」
ミ「か、囲まれた....!」
気が付くと、アンデットに軍勢に囲まれていた。
サ「チッ、罠か....!」
アンデットの軍勢の中から、ホログラムを使ったベアトリーチェが現れた。
べ「ええ、勿論です。」
「ベアトリーチェ!!!」
べ「....女神。ドレイクの技を退けるとは驚きましたが、ここは私の支配下にある領地。貴方たちの位置や目的地、その経路に至るまですべて把握しております。それより、勇者が見当たりませんね....全く、仲間を見捨てるとは、勇者とは言ったものですね。」
ベアトリーチェがそう言うと、不気味に笑みを浮かべた。
べ「それなら好都合ですね。貴方たちでは、私はおろか、そこにいるドレイクの眷属。ルシアンですら勝てません。」
ミ「全て、手のひらの上だったのね....。」
サ「マダム.....こいつらは一体....。」
べ「.....サオリ。貴方たちの存在はは無意味でした。」
全「!?」
するとベアトリーチェが、指を鳴らすとルシアンが杖を振った。
ル「
ルシアンがそう唱えると、杖の宝玉からブラックホールのような渦が現れた。
サ「くぅ....!」
ミ「な、何、こ...れ...。」
ヒ「体が焼けるようです....!」
「みんな!!」
突然、サオリちゃんたちが苦しみだした。
「何をしたの!!!」
ル「....この魔法は生物の生命力を吸い取るもの。そして、我が身に活力を漲らせ、回復させるのだ。」
べ「感謝します、ルシアン.....これで貴方とお話が出来ますね、女神。」
「!?」
ベアトリーチェはそう言うと、私の方に体を向けた。
べ「改めて、自己紹介をしましょう。私はベアトリーチェと申します。そして、ゲマトリアにおける現在唯一の成功者です。」
ベアトリーチェは突然、不気味な笑みを浮かべた。
べ「女神....勇者の居場所を話すなら、どうやってアリウスを手中に入れたのか、教えてあげますよ。」
「.....そんなの知る必要はないわ!!」
べ「.....そうですか。私の名誉のために言っておきますが、私はドレイクや貴方たちのように特殊な能力などありませんよ。憎悪、怒り、軽蔑、嫌悪――そういった負の感情を利用し、偽りと欺瞞で子供たちを支配してきました。」
「.....。」
かつてこれほどの怒りが募ったことがあるだろうか.....私は怒りのあまり、声がうまく出せなかった。
べ「....そもそもこの自治区は、私が来る前から内戦をしておりました。お互いに対する府の感情が、既に十二分に満ちていたのです。――私は、ただソレを活用しただけ。そんなもの、ありふれた光景じゃないですか?」
さも当たり前のように話す怪物。自分の功績を誇らしげに語る化け物。私は心の底からそう思った。
べ「この世界『キヴォトス』は、貴方の神界と同レベル。理解などが一切及ばない、神秘と恐怖が入り混じった崇高の転炉。貴方の勇者が知りたそうな情報を、教えることもできるのですよ。いかかがですか?」
「.....要らないわ.....あんたなんかの、要求なんて吞まないわ!!!」
私の怒気を含んだ叫びにベアトリーチェは、無表情になり
べ「そうですか.....ルシアン、この者たちをもてなして差し上げなさい。」
「くっ.....!」
ベアトリーチェはそう言うと、通信を切った。その途端、ルシアンが私たちの前に立ちふさがった。
サ「くっ....ここまでか....。」
諦めちゃダメ。何かあるはずだ。何か.....
ルシアンが闇魔法を放とうとした時
ミ「はいはい~、邪魔だよ☆」
ル「き、貴様は!?ぐはっ....!」
(ドカーンッ)
ミカちゃんの強烈な拳により、ルシアンは壁に吹っ飛ばされた。
サ「....まさか、ここまで追いかけてきたのか。」
「ミカちゃん.....。」
ミカちゃんは、内に秘めた憎悪を感じさせない天使のような笑顔をしていた。
ミ「さっきはしてやられたよ、リスタ。正直舐めてた....あの爆発....下手したら大怪我だったんだから☆」
そう言う割には、無傷の彼女に私は戦慄した。その時、ミカちゃんの後方からエネルギー弾が発生していた。先にいるのはミカちゃんに吹っ飛ばされたルシアンだった。
私は咄嗟に声を出していた。今は敵なのに、何故か助けようとしたのだ。
「ミカちゃん、後ろ!!!」
ミ「!?」
彼女は瞬時に振り向いて、エネルギー弾を素手ではじいた。
ル「我が、魔法を素手で!?」
ミ「.....!」
(バンバンバンッ)
まさに蹂躙。ミカちゃんの魔力が籠ったサブマシンガンの連射により、ルシアンは面影がなくなるほどの肉片となった。
ミ「.....リスタ、何で助けたの?私は今は敵だよ....。」
確かに、今は敵だ。だけど....
「敵だとしても、私の....いや、私と聖哉の生徒だから!!!」
ミ「!?」
私の言葉にミカちゃんは少しの間、沈黙した。その場に膝から崩れた。
ミ「どうして.....どうして?」
ミカちゃんは涙と鼻水で顔をぐちゃぐちゃにしながら、そう呟いた。
ミ「どうしてリスタは、そんなに優しいの?いっそ、私はダメだって言ってくれた方がよかった。私はトリニティの裏切り者で、皆の敵で.....――何度もセイアちゃんを傷つけてしまった魔女だって言ってくれた方が....。」
「ミカちゃん.....。」
ミ「こんな姿.....先生は呆れると思う.....いや、なんとも思わないのかな?先生の手間を取らせたし、殺そうとした。そんな生徒を目を掛けたりしないよね?」
「違うわ!!!」
ミ「!?」
私は咄嗟に否定した。確かに、あの勇者なら呆れはするだろう。だが、これだけは言える。
「確かに聖哉は、無愛想で傍若無人な勇者だけど、生徒が道を踏み外そうとしてるのに、黙っている人じゃないわ!」
サ「!?」
ミ「....。」
私の言葉に彼女は俯き、涙を服で拭った後、起き上がり
ミ「....でも、ごめん、リスタ、先生。私は許せないの。私は全部失ったのに、あなた達は....あなた達は、何の代償も払わないで、何も奪われないでいるなんて.....」
サ「....。」
ミ「あまつさえ、リスタと先生の優しさに付け込んで、庇護を受けるなんて.....私には、何の意味も残らないのに.....。私は、どうしたらいいの....?」
力なく答えるミカちゃんに、私はなんて声を掛けたらいいのかわからなかった。彼女は私たちに背を向け
ミ「だからリスタ、私を止めないでね。」
トボトボと、路地裏に歩いていった。
ミ「リーダーどうする?あの女、また私たちを追いかけてきそうだけど....このままバシリカに突入するのは少し危険かもしれない。」
バシリカという言葉を聞き、思い出した。ドレイクが精神世界で作り上げた大聖堂。奴はそこをアリウス・バシリカと言っていた。もしそれが本当なら、ベアトリーチェもドレイクもアツコちゃんもそこにいるに違いない。
サ「....このまま旧校舎地下の回廊を通ってバシリカに進入する。行くぞ。」
ヒ「は、はい!」
ミ「....仕方ない、か。行こう、先生。」
〈アリウス分校・旧校舎〉
サ「こっちだ。」
「ここが....。」
西洋風の建築物。廃墟になってしまって、廃れているが、元は立派な校舎だったと分かる。
ミ「ここは廃墟というより、もはや遺跡に近いからね。」
サ「急ぐぞ....回廊は地下にある。」
私たちは、中に入り、地下回廊を通った。
ヒ「み、見つけました!こっちです!」
サ「そうか。」
ミ「待って!」
突然、低い声でミサキちゃんが言う。
ミ「リーダーの言葉通り、ここがバシリカまで一直線に繋がっている通路なら....この地形は危ない。」
サ「待ち伏せの可能性なら私も考えている。だが、むしろ一直線なら.....。」
「ミカちゃん、でしょ....」
私の言葉にミサキちゃんが頷く
ミ「彼女にとって一番の障害は多分、何処にいるのかもわからない先生と怪我をさせたくないリスタだろうから。ならきっと....。」
(ゴゴゴゴゴゴゴ)
ミサキちゃんがそう言いかけた途端、地響きが鳴り轟く。
ヒ「き、気を付けてください!リスタさん、後ろから柱が.....!!」
突然、柱が倒壊する。ミサキちゃんが私を前に押し出してくれたおかげで助かったようだ。
「た、助かったーー....」
ヒ「よ、よかったです.....急に柱が壊れるなんて....いったい....。」
私は状況を把握するために辺りを見回す。その時、サオリちゃんの姿が見えないことに気づいた。
「さ、サオリちゃんは!?」
ヒ「り、リーダーはどこに!?」
サ「.....ここだ。反対側にいる。」
反対側からサオリちゃんの声が反響して聞こえる。だがその声色には、不穏な雰囲気が隠れていた。
ミ「リーダー、聞こえる?そっちに戻る道が塞がっていないなら、合流地点を探すよ。」
サ「.....いや、それは厳しそうだ。」
焦るようにサオリちゃんは答える。
?「.....良かった!リスタが巻き込まれると思って、威力を下げたんだけどさ。それでも不安だったから。」
――この声は、ミカちゃん.....!
倒壊した柱の向こうからは、強大なオーラが発せられていた。サオリちゃん一人じゃ、彼女には太刀打ちできない。
どうにかして、柱の向こう側に行かなければ!
私はそう思い。聖哉の便利道具を探すためにバックを漁っていた。漁っていると、ギラギラした小袋を取り出した。
「な、何これ?...保冷バック?なんにせよ、使えないわね.....。」
こうしてる間にも、サオリちゃんの危機は刻一刻と迫っている。
ミ「リスタ!何かないの?」
ヒ「この柱、びくともしません!」
――そうだ、さっきの説明書....
私は、聖哉が用意した慎重な説明書を取り出し、読んだ。
『またこれを頼るつもりか?これを頼った時点でお前の脳みそは猿以下だと思っておけ。』
いつもの失礼な物言いに驚かなくなった私は、淡々と説明書を読んだ。
『まず今置かれてる状況を整理しよう。対処したい対象が、敵...生物である場合は94pへ、物である場合は124pへ。」
ま、まぁ、これくらいでは驚かなくなったわ....
『うむ、お前が置かれてる状況はわかった。一本道で障害物に遮られているという事だろう。そして、ダラダラとそれを撤去してる暇がないほどの危機的状況。まずは、その障害物の素材を教えろ。』
や、やっぱり、凄いわ、この人!!!普通ここまで、予想できる人いる?
(バンバンバンッ)
「!?」
柱の向こうから、二種類の銃声が響き渡る。
――ま、まずいわ!サオリちゃんとミカちゃんが戦ってる!!
『障害物の素材が無垢材の場合は134p、集成材の場合は154p、御影材の場合は178p、大理石の場合は197p、凝灰岩の場合は236pにいけ。そして未知の素材だった場合は986pだ。』
いやいや、そんな専門的な素材の話されても知らないし!てかっ、未知の素材って何よ!?
「ミサキちゃん。この建物の柱の素材はわかる?」
ミ「素材ね.....確かではないけど、ここはアリウス自治区。トリニティにある大聖堂と作りは同じだから、大理石とかかな?」
「大理石ね、分かったわ。」
私はすぐさま、197pを開いた。
『ふむ、大理石というのは、石灰岩がマグマの熱や地殻変動による圧力を受けて再結晶化した変成岩だ。滑らかな肌触り、美しい光沢により、古くから装飾や彫刻などにも使われているが、酸や衝撃に弱いといった欠点がある。』
いや、そんな謎知識を今教えられても、役に立たないじゃん!!
『よし、状況を把握することが出来たな。今までの条件から当てはまる武器がある。5番の箱を開け。』
私は指示に従い、袋に入っている5番の箱を開いた。すると
『
材料は、足場ハンマー、リスタの毛一本、アダマンタイトの欠片だ。ポイントは口の内部は空洞になっており、そこに破壊エネルギーを込めた砂が入っている。叩いた時の衝撃で引火。爆発的な破壊力を得ることが出来る。大理石ぐらいなら簡単に破壊することが可能だろう。』
――す、凄い!!ここが魔法と科学の融合!!!これさえあれば
私は柱の前に行き、ハンマーを構えた。
ミ「リスタ、それであの女を倒せるの?」
ヒ「そ、そんな小さいので倒せると思えませんが.....。」
――倒す....?違うわ!!
「助けるのよ!!」
私は柱めがけて、ハンマーを振った。
「えい!!」
(カーンッ)
鈍い音と共に、衝撃により破壊の粉に引火するのが手に伝わる。その瞬間
(ドカーンッ)
全「!?」
ハンマーの口から強烈な爆発が起き、前方の柱を破壊した....のだが、爆風により、私自身も吹っ飛ばされた。
「ぐへっ....!」
ミカ「.....!り、リスタ!?」
気が付くと、ミカちゃんとサオリちゃんの間に割って入っていた。サオリちゃんは、さっきと同じひどい傷を負っている。
サ「リスタ.....姫を助けに行ったんじゃ.....?」
「.....私は確かに聖哉が居ないと何もできない。だからこそ、貴方たちの力が必要なの。一人も欠けちゃいけない。」
サ「.....!!」
ミカちゃんは倒れた私の方に駆け寄ってくれた。
「ミカちゃん.....。」
ミカ「リスタ.....。」
彼女の眼には、涙を浮かべていた。
ミカ「....気づいたの、私。私がすべてを奪われたように、サオリも奪われてたんだって....。そしたら私は.....」
ミカちゃんが言いかけた瞬間、宙に漆黒の幾何学模様が描かれる!
サ「....!お前ら、リスタとミカを守れ!!!」
全「!?」
咄嗟に目を瞑ってしまった。一瞬の出来事。目を開けるとそこに映ったのは、深紅の鮮血。何が起こったのかわからなかったが、目の前に移る光景を見て、すぐに理解した。
サ「くっ.....!ぐああああああぁぁぁぁ!!!」
ミカ「さ、サオリ!!!」
ヒ・ミ「リーダー!!!」
目の前には、左腕を切り落とされたサオリちゃんがいた。想像を絶する痛みに悶絶するサオリちゃん。私の横にいるミカちゃんはこの状況を把握できていないようだった。
ミカ「さ、サオリ....何で私を.....。」
サ「お、お前は.....私と同じ機会を望んでいた.....くっ...!」
切り落とされた左腕の傷をを抑えながら、サオリちゃんはそう答える。
「サオリちゃん、今治すから!!」
私が彼女の切られた腕を治そうとした時、ある男の声が響く。
?「
忘れるわけがない。あの時とは違い、喜怒哀楽を感じさせない機械音声のような声。だが、あの声はかつて、聖哉が戦った戦士の声だ。
全「!?」
機械のような無骨な声と共に、凄まじいほどの衝撃波が発生する。それにより、私たちは吹き飛ばされた。奴が技を放ったところには大きなクレーターが出来ていた。
ミ「な、何なのあいつ!?」
ヒ「さ、さっきの骸骨よりやばい感じがします!」
暗闇の中からは、この世のものとは思えないほどの邪気を放っている一人の男が現れた。身体は闇にのまれたように虚空となっていた。だが、出で立ちはあの時と同じ覇気を放っていた。
「戦帝ウォルクス=ロズガルド!!!」
ミ「戦帝?」
ヒ「り、リスタ、誰なんですか?」
「昔、聖哉が苦戦を強いられたゲアブランデ最強の戦士....。」
ミカ「せ、先生が....!?」
戦帝が持っているのは、『
?「いかかでしょう、女神。」
「!?」
ホログラムから出てきたのは、ベアトリーチェだった。
「ベアトリーチェ!!!」
サ「ま、マダム......!」
べ「痛いですか、サオリ?貴方たちが感じたことのない痛みでしょう。」
「あんた、どうやって、戦帝を!!!」
私の言葉にベアトリーチェは不気味な笑みを浮かべた。
べ「当初は聖女バルバラを顕現する予定でしたが、それではあの勇者に倒されてしまうでしょう。その時、ドレイクがある提案をしてきました。そう、それは勇者が苦戦した相手を用意すればいいのではないかと。彼はある髪の毛を渡してきました。」
ベアトリーチェは両手を高く上げ、こう言い放った。
べ「さぁ、殺戮の時間です。十分にもてなして差し上げなさい。最強の戦士『戦帝ウォルクス=ロズガルド』!!!」
ウォ「
戦帝が漆黒に輝く剣を上に掲げると、黒の幾何学模様が現れる。戦帝は一瞬で私たちとの間合いを詰める。もうダメかと思われた時、ミカちゃんが前に出て、戦帝の攻撃を受け止めていた。だが、凄まじいほどの剣圧に全ては捌ききれず、ミカちゃんの体には切り傷を負っていた。
ミカ「くっ.....!?」
「ミカちゃん!!!」
ミカ「リスタ、アレは私が引き付ける!」
「で、でもあれは....。」
ミカちゃんは戦帝の攻撃を銃で受け止めながら、こういった。
ミカ「どれだけ時間を稼げるかわからない....でも、サオリ!!」
サ「!?」
彼女はサオリちゃんの方に顔を向け
ミカ「アツコを絶対助けて!!」
サ「で、でも....!」
ミカ「行って、リスタ!時間が無いんでしょう?」
「....絶対助けに行くから!!!」
私たちは、この場をミカちゃんに任せ、サオリちゃんを抱えて先に進んだ。
―――――――――――――――――――――
「サオリちゃん、どう?」
サ「あ、あぁ、凄いな!」
ミ「ま、まさか、切られた腕が治るなんて.....。」
「それより、この先が.....。」
サ「あぁ、アリウス・バシリカだ。」
――もしかしたら、聖哉はここに.....
至聖所を見渡すと聖哉の姿はない。だが、不気味なステンドグラスの傍の十字架にアツコちゃんが張り付けられているのが分かった。
サ「アツコ!!!」
ミ「.....気を失ってるだけみたい。」
ヒ「は、はやく姫ちゃんを....。」
ヒヨリちゃんがアツコちゃんの所に向かおうとすると、何処からか声が聞こえた。
べ「お待ちしておりました、治癒の女神。――私の敵対者たちよ。」
「ベアトリーチェ.....!!」
柱の陰から現れたのは、ベアトリーチェだった。
べ「....この事態になっても、勇者は来ないようですね。」
彼女はそう言うと、不気味に笑いだした。
べ「全く、勇者とはよく言ったものですね.....やはり、私たちの敵ではありません。」
「アツコちゃんを返しなさい!!!」
私の言葉にベアトリーチェは驚いたように目を見開いた。
べ「ロイヤルブラッドを?返してほしいなら、返してあげましょうか?」
全「!?」
――ど、どういう事?ベアトリーチェはアツコちゃんの生贄にして力を得たいんじゃ....。
べ「ロイヤルブラッドはもう私には必要ありません。なぜなら、私にはあの方の力を得たのですから.....」
「!?」
――ま、まさか!?
その瞬間、ベアトリーチェから凄まじいほどのオーラが発生した。彼女から発せられる覇気による突風が肌を撫でる。私にはわかる。あれは、魔王の邪気。
サ「こ、この力は!?」
ヒ「と、飛ばされそうです!!
ミ「まずいね、これは.....。」
ベアトリーチェは邪気を抑え込め、少し沈黙した。
べ「.....ロイヤルブラッドは、人質としておきましょう。貴方たち相手では意味がありませんが、勇者が潜んでいないとも限りませんから。」
ベアトリーチェはそう言うと、深紅の剣を取り出し、アツコちゃんの肌に当てた。
べ「実に悲劇なことです。私がこの時のために育てた生贄が、圧倒的な力の前には無価値になってしまうのですから.....。」
「....黙って......。」
べ「....何?」
「黙れって言ったのよ、ベアトリーチェ!」
私の怒号にベアトリーチェはさっきまでの笑みは消え
べ「.....やはり、わからせるしかないようですね....良いでしょう。あの方からいただいた力を見せましょう。」
(ゴゴゴゴゴゴゴ)
魔王に魂を売ったベアトリーチェにもう人の原型はない。完全なる魔物になった。
べ「かかってきなさい、サオリ。」
サ「リスタは、私たちの後ろに!!」
サオリちゃんたちは、ベアトリーチェに向けた銃を連射する。だが、効いた様子のないベアトリーチェにサオリちゃんたちは困惑した。
ミ「き、効いてる様子がないね.....。」
ヒ「戦術兵器ですら、効かないなんて....。」
サ「.....!!」
サオリちゃんがベアトリーチェめがけて、突進する。奴の後ろに回り込めたと思われたが
サ「ぐはっ!?」
ヒ・ミ「リーダー!!!」
「サオリちゃん!!」
眼で追えなかった。ベアトリーチェは凄まじい速さでサオリちゃんを捕まえた。
べ「これで終わりですか、サオリ?」
ベアトリーチェはサオリちゃんを強く握り締める。
サ「ぐあああああああぁぁぁぁ!!!」
ミ「ヒヨリ!リーダーを!!」
ヒ「は、はい!!」
(ドゴーンッ)
ベアトリーチェはすかさず、ヒヨリちゃんめがけて高出力のレーザーを撃った。ベアトリーチェの猛攻により、私たちは成すすべがなかった。
「み、みんな.....。」
べ「こんなところですか.....あとは貴方だけです、女神。」
どうすればいいの....こんなの勝てるわけ.....。
『諦めるな。』
何処からか、声が響き渡る。その声は私が今一番聞きたい人物の声。
「聖哉!!!」
べ「!?勇者!!何処に....!」
聖哉と聞き、明らかに動揺しているベアトリーチェ。
『まだ、諦める時ではない。』
――やっぱり、聖哉の声だ!でも、一体どこから.....
私は声がする方に、視線を向けるとそこには、私が持ってきたバックがあった。
「確かにここから....。」
中を漁ると、一つのタイマーが出てきた。
「な、何これ!?」
いや、私が諦めそうなタイミングを予想して、タイマーをセットしたってこと!?エスパーかよ!?
だが、おかげで元気が出た。そうだ。まだ諦める時ではない。私はまだ最善を尽くしていない。
私は、一つの銃を懐から取り出し、ベアトリーチェに向けた。
べ「!?私と戦う気ですか、女神。貴方ごときではどうすることもできないと分かっているでしょうに。」
サ「り、リスタ.....。」
べ「.....まだ喋れるのですか、サオリ。目障りです。死になさい!!」
ベアトリーチェは自身の鋭利な爪でサオリちゃんを貫こうとする。だが....
(バンッ)
べ「!?」
サ「!?」
ベアトリーチェの爪はサオリちゃんを貫けない。なぜなら、私が銃で奴の腕を撃ったからだ。自分の腕が転がる光景を見て、ベアトリーチェは困惑した。
べ「な、な!?」
ミ「銃弾が貫通した!?」
私は狙った場所に銃を当てることが出来ない。それは私の心が問題なのだと前回の世界で気づいた。それを聖哉は逆手に取り、窮地を脱出したのだが。今回は明確に狙った。ベアトリーチェに向けて、銃を撃った。なぜ当たったのかわからない。だが、私はある意思を持って引き金を引いた。
――皆を私が守る!!!
腕を飛ばされた、ベアトリーチェは私の方を向き、目を見開いてこういった。
べ「どうやったのですか?私の皮膚を貫通できる兵器はこの世にはありません。なぜ、どうやって!!!」
ベアトリーチェは私に向かって、突進する。私はすぐに飛翔のスキルを使って、奴の攻撃を避けた。
べ「何!?」
サ「こ、これは....」
ミ「天使の翼.....。」
私はこの聖堂を飛びながら、こう叫ぶ。
「覚悟しなさい、ベアトリーチェ!!!」
べ「女神!!!!」
聖哉が居なくても、こいつだけは....ベアトリーチェだけは絶対に倒す!!!
サ「リスタ、勇者はいつも、あんな道具を持たせているのか?」
「そう!!荷物持ちだーとか言って、有りえないほどの薬草とか、松明とか持たされたことだってあるのよ!!!」
ミ「だからって、あんな便利な道具を渡しておかないと思うけど....。」
ヒ「さ、流石に出来すぎてますよね~。」
サ「....まさか、もう私たちの後ろにいるとか?」
「いや、そんな背後霊なことする!?.....いや、あいつならやりかねないわ!!」
「次回『駄目神の奮闘』」
本文で書いていませんが、リスタの銃弾は必ず当たるようになっています。
リスタルテの能力は心によるものだと思い。今回は生徒を必ず守るという意思がリスタに力を与えているという設定にしました。
原作では、リスタの優しい心が邪魔するという回がありました。
まぁ、聖哉はそれを利用して、敵に勝利してましたが.....