「覚悟しなさい、ベアトリーチェ!!!」
べ「女神!!!!!!」
と、大見得を切ったわ良いものの、この後どうするのか、考えていないのが私である。聖哉特性の魔導銃の残弾は残り2発。あと2発でベアトリーチェを倒せるとも思わない。どうにかして、奴を翻弄し、急所を狙わないと....
――取りあえず、皆を安全なところに....
私はベアトリーチェの攻撃をよけながら、倒れている皆を後退させた。
サ「リスタ......ありがとう。」
「どういたしまして。」
ミ「でも、これからどうするの?あんな化け物に勝てるの?」
「そ、それは.....。」
正直、自信がない。本当にあんな奴に勝てるの?
――......いや、勝つんだ。勝たないとこの子たちの未来が....
「私が奴を引き付ける。だから、貴方たちにはこれを.....」
サ「こ、これは.....。」
ヒ「せ、勇者が用意した七つ道具でしたっけ?」
ミ「これで何をするの?」
「わからない。だけど、聖哉ならこの状況を打開するような武器を用意してるはず!私は説明書を読む暇がないから、そっちでお願い。」
私は聖哉の慎重すぎる説明書をサオリちゃんたちに渡した。
ミ「重...!本当に読む必要があるの?」
「あるわ!これの手順を踏まないと、今欲しい武器は手に入らないわ!」
サ「リスタがこれほど言ってるんだ。私たちでやろう。」
ヒ「わ、わかりました。」
私はサオリちゃんたちにバックを託し、ベアトリーチェに接敵する。
べ「ふむ。さっきから避けてばかりで、さっきのような攻撃をしませんね。」
ベアトリーチェは少しの間、思考を巡らせると何かに気づいたように微笑んだ。
べ「なるほど。その銃。弾があまり入ってないようですね。強力な銃ですが無駄撃ちできない。そのために私をかく乱しよう考えているのでしょうが、そうはいきません。」
――ま、まずいわ、バレた!!
てかっ、撃ち落とした腕が再生してる!自己修復能力もあるの!?尚更、急所を探さないと....
〈サオリ・ヒヨリ・ミサキ〉
ミ「マダムに勝てる武器を探すって、これを読めばわかるの?」
サ「勇者が用意したんだ。絶対にあるだろう。」
サオリちゃんたちは、分厚すぎる説明書を開いた。
『なるほど。またこれを使わないといけない状況になったようだな。自分の無力さを痛感するんだな。』
ミ「い、嫌味な言い方だね....。」
サ「....いや、そうでもない。」
『だが、諦めなかったのは称賛に値する。これからも励むのだ。』
『よし。まずは、状況を把握しよう。対象が生物の場合は94p、物体である場合は189pへ』
ミ「まずそこからなんだ.....」
『その敵が人である場合96pへ、キヴォトス人である場合98pへ、魔物である場合103pへ、その敵の正体がわからない場合は113pへ』
サ「こ、細かすぎる!」
ヒ「し、慎重すぎます~。」
『なるほど。正体がわからない敵か。それの対策は当然してある。敵の種族、特性、弱点。それらの全てを打開する武器を用意した。2番の袋を開けろ。』
ミ「.....取り合えず、開けてみよう、リーダー。」
サ「あぁ、そうだな.....こ、これは!」
ヒ「ナイフ....ですかね?」
『ヴェスパ・ナイフ
ソビエト連邦が使用してたとされる『スペツナズ・ナイフ』とナイフの先端から高圧ガスが噴射される『ワスプ・インジェクターナイフ』を融合させた武器だ。材料はアダマンタイトの欠片、リスタル毛、そして秘密の素材だ。内部には強力なスプリングとガス圧縮機構を搭載することで刀身を射出することが出来る。無論、オリジナルより速度を高めてある。だが、このナイフの最大の特徴はワスプナイフの特性を持ってることだ。刀身が射出され、敵を貫いたときに高圧ガスが体内に噴射され、内部を破壊するのだが、ここで使われている高圧ガスに細工をしてある。高圧ガスに特製の毒を注入し、噴射する。この毒はペストリアに教えてもらったどんな生物にも効く毒だ。お前が接敵している者に効く保証がないが試してみる価値はあるだろう。これから使用上の諸注意に関して説明する。119pは行け。』
サ「す、凄い!」
ミ「こんなものまで作れるなんてね....。」
『まずこのナイフはオリジナルより威力と飛距離を高めているとはいえ、敵に当たる確率は極めて低いだろう。そこで敵が油断しているときに、当てなきゃいけない。第三者に敵を誘導してもらえ。その隙に当てろ。チャンスは一度きりだ。』
サ「誰かが誘導してもらってる間にか....。」
ミ「それなら好都合だね。マダムはリスタのことを警戒している。リスタが相手してる間に隙を見て、刺すしかないね。」
ヒ「そ、それで行きましょう。」
〈リスタルテ〉
――ダメだ!全然隙を見つけられない!サオリちゃんたちは.....。
私は飛翔のスキルで速度を上げながら、ギリギリでベアトリーチェの攻撃をかわしていた。
べ「さっきから避けてばかりで、退屈ですね、リスタルテ.....そろそろ、終わりにしましょう。」
「!?」
ベアトリーチェは、大技を放つか如く、タメの体制に入った。ベアトリーチェの眼前に発生するエネルギー弾。その魔力は、さっきのビームの倍ぐらいある。
――ま、まずい!あれをまともに喰らったら。
べ「喰らいなさい!!「ちょっと待ってくれ!!」
その時、柱の傍から声が響き渡る。サオリちゃんたちだ。その声を聞き、ベアトリーチェが攻撃をやめる。
ミ「ちょっと、リーダー!相手が油断してる時に撃たないと!!」
ヒ「み、見つかってしまいました!!」
サ「だが、あのままでは、リスタが!」
サオリちゃんの手にはナイフが握られている。あれが、聖哉の用意した武器。でも、一体どういう....
べ「サオリ。私の攻撃を邪魔するとはいい度胸ですね。」
サ「マダム。私は.....。」
べ「貴方の話は聞きたくありませんね。では、死になさい!!」
ベアトリーチェはサオリちゃんたちに接近する。
ヒ「ひ、ひぃ、来ましたよ!」
ミ「リーダー、早く!」
サ「くっ.....!」
(バンッ)
全「!?」
べ「くっ....!き、貴様....!」
サ「リスタ!」
「やって!!!」
サ「!!」
サオリちゃんは、私の銃弾で疲弊してるベアトリーチェにナイフを向ける。サオリちゃんがグリップにあるボタンを押すと、破裂音と共に刀身が射出。刀身はベアトリーチェを捉えたと思われたが....
べ「!!甘いです!!!」
ベアトリーチェはその長い腕を利用して、ナイフを叩き落とした。
サ「!?」
ミ「う、嘘.....。」
ヒ「そ、そんな!!」
「.....くっ!」
私たちの切り札を防いだからか、ベアトリーチェは不気味に笑いだした。
べ「これが、貴方たちの切り札ですか.....拍子抜けもいいところですね....。」
サオリちゃんたちの反応見る限り、あのナイフは一本だけ.....?違う.....違うわ!聖哉が失敗を考えないで一本だけ用意するなんて考えられない!あの病気的な慎重勇者が!!
「サオリちゃん、バックよ!バックをもっと漁ってみて!!」
サ「!!わ、わかった....こ、これは!」
ミ「!?」
ヒ「え、え?」
2番と書かれた袋には、何十本、いや何百本のナイフが入っていた。置手紙にはこう書かれていた。『どうせお前の事だ。何本も用意していたら、油断し、成功率を下げるだろう。だからあえて、チャンスは一回と言っておいた。だが、練習もさせてないのに、ぶっつけ本番は酷だろう。スペアを大量に用意しておいた。』
――いや、遠目からだけど、多すぎでしょ!?でも、これが、慎重勇者よ!!
サ「こ、これはいくら何でも、多すぎやしないか?」
ミ「四次元ポケットか、何かなの、この袋?」
ヒ「で、でもこれで....!」
三人は、ナイフを両手に持ち、ベアトリーチェに向けた。
べ「ま、まだあったのですか!?しかし、それも無意味!!」
ベアトリーチェはサオリちゃんたちに接近しようとした時、三人は同時にナイフを射出する。だが、ベアトリーチェに防がれてしまう。
べ「終わり....ぐあっ!!」
サオリちゃんたちが放ったナイフは防がれたと思われたが、ベアトリーチェの腹部に突き刺さっていた。
べ「な、なぜ....!」
「!?」
サオリちゃんたちの方を見ると、想像を絶する光景が広がっていた。
サ「....!....!....!....!....!....!....!....!」
ミ「ふん!ふん!ふん!ふん!ふん!ふん!ふん!ふん!」
ヒ「えい!えい!えい!えい!えい!えい!えい!えい!」
サオリちゃんたちは、ナイフを射出しては、また替え、撃っては替えを繰り返していた。それはまるでカツオの一本釣りのようだった。大量に射出されたナイフはベアトリーチェに突き刺さっていく。
べ「お、おやめなさい!!ぐはっ!や、やめ!!ぐはっ!」
この後、聞いた話だと置手紙の最後にはこう書かれていたようだ。
『これが『下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる』だ。』
ナイフが刺さりすぎたベアトリーチェ。私は彼女の姿を見てこう思った。
――何か、日本の弁慶みたいになったわね.....。
べ「くっ...!ですが、この程度のナイフが刺さった所で、支障はありません!」
あれほどのナイフが刺さった状態でサオリちゃんたちを襲おうとするベアトリーチェ。私は奴に向けて、銃を撃とうとした時
(プシュー)
ガスを噴射したような音が聖堂に響く。
「な、何?」
サ「.....。」
べ「....ぐふっ!?ぐあああああああぁぁぁぁ!!!!」
突然、ベアトリーチェが血を吐き出し、その場でもがき苦しみだした。
「こ、これは!」
べ「な、何なのですか、これは!?体が熱い!苦しい!サオリ、何をしたのですかぁぁぁぁ!!!!」
サオリちゃんに憎悪の視線を向けるベアトリーチェ。その視線を受けてもなお、サオリちゃんは冷静に彼女を見据えていた。
サ「.....これが勇者が用意した、ヴェスパ・ナイフ。蜂の名を冠する武器だ!」
――蜂の名前を!?つまり、あいつの体内に注入されたのは毒!しかも、聖哉の事だから、ペストリア様に教えてもらった強力な奴に違いないわ!!
べ「くっ!こんなことで....「哀れだな。」
全「!?」
低い男声が聖堂に響き渡る。その時、ベアトリーチェの横に深紅の霧が発生した。
サ「くっ、こんな時に....!」
「う、嘘!?」
霧から出てきたのは、ドレイクだった。奴を見た瞬間、ベアトリーチェの表情が変わる。勝利を確信したのだろう。
べ「良いところに来ました、ドレイク!さぁ、あの者たちを殺しなさい!!」
ド「あの者たちをねぇ....。」
ドレイクはそう言い、私たちを一瞥する。
べ「さぁ、早く!この愚か者たちに地獄を見せ、ぐはっ!!!」
全「!?」
予想外の事で言葉が出なかった。ドレイクがベアトリーチェを深紅の剣で貫いたのだ。ベアトリーチェ自身も何が起きたのかわからないといった様子だった。
サ「ど、どういうことだ!?」
ミ「な、仲間割れ?」
ヒ「ひ、ひいぃぃぃ!」
べ「ど、ドレイク、どういうことなのです!?」
ベアトリーチェの問いにドレイクは面倒くさそうに答える。
ド「貴様には失望した。我が君の英知を授かっておきながら、三流女神と子供に負けるとは....。」
ドレイクはベアトリーチェを睨みつける。
べ「ま、待ってください、ドレイク!私は貴方の要望に応えたはずです!」
ド「要望に応えただと?我の目的は勇者と女神の抹殺。勇者はまだしも、そこの雑魚女神に致命傷を与えられている奴がよく言えたものだな!!」
――さっきから、三流とか雑魚とか、失礼ね!こう見えても、上位女神なんですけど!!
ド「貴様は用済みだ、ベアトリーチェ。」
べ「お、お待ちなさい!!ぐはっ!!!ぐあああああああぁぁぁぁ!!!」
ドレイクは持っている剣でベアトリーチェを八つ裂きにする。もはや原形をとどめていないベアトリーチェ。私は鑑定スキルで彼女の絶命を確認した。
サ「マダム.....。」
ド「さて、リスタルテ!精神世界での攻撃は見事だった。褒めてやろう。」
「あんた達、協力したんじゃなかったの?」
私の言葉にドレイクが首を傾げる。
ド「協力だと?このババアとか?笑えない冗談だな。ベアトリーチェとは目的が一致してただけだ。こいつ程度、何時でも殺せたのだ。」
不気味に笑いだすドレイク。
ド「それより、リスタルテ。ベアトリーチェに撃ち込んだ弾丸。そして貴様の射撃能力は目を見張るものがあった。これは貴様の力か?それともすべて、勇者の筋書き通りか?」
――ま、まずいわね、この状況....!ただでさえ、ベアトリーチェに苦戦したのに、彼女よりも強いドレイクが出てくるなんて....
魔弾の残数一発。これでドレイクを倒さなければ、待っているのは死。いや、キヴォトスの滅亡だろう。
サ「ドレイク!!!」
その時、柱の方からサオリちゃんの声が響き渡る。彼女はさっきのヴェスパナイフを握り、ドレイクに向けている。
サ「.....!」
ナイフの刀身が射出される。私もチャンスだと思い、銃の引き金を引く。ナイフと銃弾。二つとも聖哉の力作。二つの光がドレイクを捉えたと思われたが
ド「甘い!!
ドレイクは一瞬で深紅の霧と化した。当然、ナイフと銃弾は通り抜ける。
サ「な、何!?」
ミ「あ、あれはあの時の!」
ヒ「う、うぅぅ、おしまいです...!」
ドレイクは誇らしげな顔で私たちを見据える。
ド「我は霧と化せる。我に効くのは光属性と炎属性の融合魔法のみだ。」
――そ、そんな!炎属性と光属性の技を同時に発動しなきゃいけないなんて!!
異なる属性の融合。かつて極限進化したアルテマイオスが使用していた魔法だ。そんな高等魔法は聖哉でも使えない!
ド「さて、余興も終わりにしよう。これからやることがたくさんある。早急に終わりにしよう。」
じりじりと私たちに歩み寄るドレイク。
――あぁ、私はこれで終わりなんだ。
私はサオリちゃんたちの方を見る。
サ「り、リスタ.....。」
ミ「.....。」
――ごめん、サオリちゃん、みんな。私では力不足だった。私は聖哉みたいに強くないし、窮地を脱する能力はない。この場にいるのが私ではなく、聖哉だったら....
――聖哉......聖哉、助けて!!!
『リスタ、予定の時間だ!』
その時、聖哉の声が聖堂に響き渡る。その声にドレイクも気づいたように、先ほどの笑みが消えていた。
『リスタ、予定の時間だ!』
二回、三回と繰り返される。これだけ繰り返されれば、何処から聞こえてくるのか分かってくる。さっきのタイマーだ。
――でも、予定の時間って?
ド「ふむ。どうやら勇者はいないようだな。さぁ、続きを再開しよう。」
とんでもない速さで私に剣を立てようとするドレイク。あの剣にはチェイン・ディストラクションを孕んでいるだろう。あれで殺されれば、私の魂は永久に崩壊する。
サ・ヒ・ミ「リスタ!!!」
私を庇おうとこちらに向かってい来るサオリちゃんたち。
「みんな、来ちゃダメ!!貴方たちは遠くまで逃げて!!!」
ド「ほう。こんな状況でも子供の心配とは、ますます女神だな。だが、終わりだ!!」
(カーンッ)
ドレイクの剣が私の首を捉えた時、金属の衝突音が聖堂に響き渡る。
ド「な、何!?」
サ「!?」
ミ「な、何が起こったの?」
ヒ「あ、あれを見てください!」
「....!」
死の宣告の一手から私を守ってくれた男。私が今一番、見たかった大きな背中。狂気のオーラをまとっているのに思わず、抱き着きたくる安心感。
「せ、聖哉!!!」
聖哉がアダマンタイターでドレイクの剣を受け止めていた。狂戦士化をしていることにより、ドレイクの能力値を上回っている。
聖哉はドレイクを押し返し、距離を取った。
ド「き、貴様!今までどこに隠れていた!!」
「....。」
聖哉は何も言わず、ドレイクに鋭い視線を向けている。
「.....リスタ。俺は約束の時間が来るまで待っていろと言ったはずだが?」
喜怒哀楽を感じさせない声色からでも、聖哉が怒っていることが分かる。
「ご、ごめん、聖哉!で、でも....。」
聖哉は私の方を一瞥し、深いため息をつく。
「.....だが、お前がサオリを助け、ベアトリーチェを退けていなければ、アツコは生贄にされ、サオリたちは殺されていた。そのため、お前に七つ道具を託し、サオリたちを守ったおかげで俺も準備が出来た。」
「せ、聖哉.....。」
サ「勇者....。」
準備。聖哉が何を準備してたのか、私にはわからない。だが、これだ。この安心感だ。これが慎重勇者、竜宮院聖哉よ!!!
「ドレイク。予定の時間だといったな。何の時間が経過したか、分かるか?」
ド「......!」
聖哉はスタイリッシュに剣を振り回し、ドレイクに向ける。
「答えを教えてやろう。それはすべての準備が整ったという事だ。お前たちの終わりを告げる鐘と共にな。」
私は思わず、息を飲む。
ド「き、貴様!!!」
「『
「ねぇ、聖哉。そう言えば最近、夜にどこかに出かけているけど、どこに行ってるの?」
「.....秘密だ。」
「また、秘密!?教えてくれたっていいじゃん!!」
「ダメだ。お前は口が軽い。よって教えるわけにはいかない。」
「けーち!!!」
「.....これだけは教えよう。今後につながることだ。」
「今後につながること?」
「次回『血翼の聖戦』」
読んでいただき、ありがとうございました。
聖哉が何を準備してたのかは、次回で判明します。