まどろみに浮かぶ静かでゆったりとした空間は、急に眩しいほどの激しさに変わる、
要するにあさが来たってことだろう。
「んぬわぁ....」
朝か。
朝。私がなかなかに苦手とする強敵だ。眠気という気持ちの良い欲望を無理にシャットアウトされ、現実へと引き戻される。そんな感覚がたまらなく苦手だった。
「ふふっ、良いお目覚めかしら?」
「うわっいつのまに」
隣で抱き枕に擬態するかのようにベッドに潜り込んでいたのはディスマジシャン。デュエルマスターズという名のカードゲームのカードからなんの因果かは知らないが飛び出してきた美女だ。
本家のディスマジシャンは美女というより男って感じがしたが、どうやらカードから飛び出すときは所有者が最も望んでいる姿に少し手を加えて現れるらしい。
美しく輝く紫色の髪の毛に、今にも零れそうなほどの胸。そして泣きぼくろが特徴的な美人であるディスマジシャンは、乳房が見えそうになるのも構わず私の方を向き、微笑みかけた。
「あらマスター。今日はおやすみよ?早く起きる理由なんてないのに」
「それよりいつの間に私のベッドに?」
「あなたが抱き枕を抱いたあたりで、ね?」
要するに入れ替わったってことだろう。マジシャンの名を冠するだけに、彼女のマジックは魔法と見紛うほどだ。
いや、マジシャンというのは魔法使いという意味も混じっていたか。もしかしたら本当に魔法なのかもしれない。
そこのところは私は知る由もない。
「寝た方がいいわよ?無理は禁物」
「目が覚めてしまってね。それに、今日は休みといえどやることもある」
「それは?」
「秘密」
ディスマジシャンはなんだか驚いたような顔をしていた。どうやら私が彼女に内緒事をするのに意表をつかれたらしい。
なかなかに失礼だな。
「まあでも、マスターのことだからカードショップにでも行くのでしょう?」
「それは悩んでるところ」
ベッドから起き上がり、身支度と問答を繰り広げる。自分の仕事がない。要するに、休みの時の恒例となっている。
「マスターが私を使わなくなってから寂しいのよ?」
「使わないんじゃなくて使えないの。プレミアム殿堂でしょうがあなた」
プレミアム殿堂。強すぎて大会出禁になった強者どもの称号だ。デュエル・マスターズにおいてプレミアム殿堂となったものは一枚たりともデッキに組み込むことができない。
「それもそうね」
お得意のマジックか魔法かわからないものでふよふよと飛んで私の後をピッタリとつけてくるディスマジシャン。
彼女の豊かなではだけた双峰がむにゅりと押し当てられる。
「ねえ、マスター。やっぱりお家にいない?」
「どうして」
「寂しいのよ。最近、なんだか構ってくれないし…」
「そっか。ごめんだけど、今回は外せない」
「そう…。なら仕方ないわね」
彼女は至極悲しそうに了承してくれた。
▽
ディスマジシャンがいる家へ戻ってきた。
すでに時刻は夕方になってしまったが、致し方ない。お目当てのものが見つからなかったのだ。
いや、結果的に言えば見つけることができた。かなりの痛手…具体的には給料三ヶ月分となったし、ちょっとは我慢を強いられるだろうが、それでも私はこれに満足している。
「ただいま」
「…おかえりなさい」
いつもの魔女っ子のような私服にいつの間にか着替えていたディスマジシャンが迎えてくれる。
だがどうしてか気分が沈んでいるようで。
「どうしたの?浮かない顔して」
「…自分の胸の内に聞いてみてはどうかしら」
困ったな。私の胸はすでに不安でいっぱいなのだ。
「今日はどんな日か、わかってる?」
一定の沈黙の後、彼女はついに口を開いた。
「え?ああ。もちろんだとも」
「……なら、どうして」
「やりたいことが、あったんだ。どうしても」
「…」
目を見て伝える。誰かに何かを伝えたい時。心を打ち明かしたいならば、目を見ることは絶対条件なのだ。
「そう…、なら、いいわ。もう、決めたから」
「決めたって何を…」
強烈な浮遊感と、急激に感じたその感覚に対するまるで不思議な魔法を見せられたような驚き。
その次に来るのは、ぽふんという、感じている感情にしては気の抜けた、あるいは魔の抜けたと言える音がなる。私の背がベッドにふれた音だ。
毎日のように感じるその柔らかさが、今ではなぜかとても淫靡で恐怖すべきもののように思えてくる。
「いい?私があなたにやることは
彼女はそう言って私に馬乗りになった。
「あなたに見せるマジックの中では一番、美しくないかもしれないわ。でもね、これを見せないと、気が済まないの」
彼女によく似合っていたスカートのジッパーをゆっくりと下ろしてゆく。白い太ももが露出すればするほど何だか心がドギマギする。
「待ってくれ」
「待たないわ」
私は意を決して彼女にあるものを見せた。
「これは…?」
「指輪だよ。給料三ヶ月分のね」
「それって…」
「私は、君にどうやら惹かれすぎていたらしい。君の五年間をかけた壮大な術にまんまとハマったわけだ。それで、私のみがどうこうしてしまわないうちに、言葉にして、伝えようと思ってね。君と出会った記念日のこの日に、どうしてもしたかったんだ」
私の言葉に、彼女は静まり返る。
「受け入れて、くれるかい?」
「……どうしようかしら」
私の心臓が早鐘を打つ。
彼女はそんな私を見て、微笑むようにして言った。
「なんてね。…嬉しいわマスター。やっぱりあなたは……」
彼女は私に覆い被さり寝転ぶように抱きつく。
柔らかでしなやかな心地よさと、シトラスの香りが体を包む。
彼女の耳は少々赤い。
「これ以上は言わないでおくわ」
でも、代わりに…と彼女は続ける。
「マジックは、最後まで見てもらうわよ」
その刹那、彼女と私の風がはだける。
まるで魔法にでもかかったように、誰かの意思がそこに存在するように。
彼女の大事なところも包み隠すことなくあらわれている。
「さあ、ショータイムよ。私を楽しませてね。マスター♡」
彼女は、私に馬乗りになり、妖艶な顔でそう言った
本当はマジシャンの方も心情入れようと思ったんだけど入れちゃったらそれ以上に駄文になるのでやめました