芹澤菜々子と三宅川愛梨のお話   作:藍沢カナリヤ

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7 ベルベットブルーサファイア【純白】

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 前回までのあらすじ。

 水族館で気を失ったと思ったら、目の前にウェディングドレスが並んでた。

「ほけー」

「あいりちゃん?」

「は!?」

「ダイジョブ?」

「う、うん」

 水族館とウェディングドレスという共通点のないもののせいで頭が混乱していた。そんなウチとは違って、ななこさんはもう部屋の中を調べて始めている。

「開かない。内鍵もない……」

「ええ!?」

 自分でも確かめてみると、開かないし鍵もない。少し狼狽えてるウチ。その間にななこさんはさらに部屋の中を調べていて。

「……たぶん、水族館ウェディングってやつだね」

「へ? そんなのあるの?」

「うん。教会や式場が普通だけど、一時期そういうのが流行ったんだよ。その証拠に、ほら」

 ななこさんは部屋の机に置いてあったであろうパンフレットを手に取っていた。中を見ると、確かにさっきの水族館の水槽をバックに、花婿さんと花嫁さんがキスをする写真が載っていて。わ、すてき!

「…………えっと」

「?」

 隣を見れば、ななこさんは自分の鞄からスマホを取り出していた。そうか、確かに外に連絡をすればいいよね。見れば、スマホは圏外。それどころか時刻は深夜2時45分。

「え!?こんな時間!? 下手したら怒られちゃうよぉ……」

「う、うーん。なんだろ、気を失ってここに運んでもらって、忘れられちゃった……とか? まぁ、流石に無理筋だとは思うけど」

 うーんうーんと唸るななこさん。ウチは親にどう言い訳しようか悩んでいて。

「うーん……。ななこさんの家にお泊りしてた、ってことにしてもいい?」

「ま、まぁ……それはもちろんいいけれど……」

「ありがと、ななこさん」

 とにかく親への言い訳はそれでいい。問題は出口が閉まっちゃってること。このまま出られないのは……まぁ、ウチはこのままななこさんと一緒に『幸せ』になれるならいいかなぁ、なんてね。そう考えている間にも、ななこさんは辺りを探索してる。いけないいけない。それは最後の希望だからね。

「ななこさん、なあに、それ?」

「ん、あぁ。これ」

 パンフレットの下に置いてあったらしいメモを見せてくれる。綺麗な1枚の羊皮紙。そこにはこう書いてあった。

 

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 わが女王にふさわしい催しを。もしきょひするのであれば、歌を。あなたたちが従うのであれば、さんびかに変えてやってもいいが、もしきょひするのであればきょうふのせんりつにかわるだろう。

 まずはいしょうを選べ。そこにある並んだしゃしんをさんこうに。

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「讃美歌……恐怖の旋律……」

 丁寧な文字だ。けど、漢字と平仮名が変に交じり、文全体が歪な印象を受ける。ななこさんもそう思ったようで、その羊皮紙を少しの間、じっと真剣な眼差しで見つめた後、近くのファイルを手に取った。写真と言われて、さっきのパンフレットのことかと思う。けれど、どうやらななこさんの手にあるファイルは、フォトアルバムだったようで、中には満面の笑みを浮かべる新郎新婦がいた。

「わぁ、どの写真も素敵!」

「うん、そうだね。たぶん例の水族館ウェディングをしてた頃のものなんだと思う」

「あっ、衣装を参考にって、もしかして、これ!?」

「…………これって、その……うぅ」

「もしかして、ななこさん恥ずかしがってる?」

 ななこさん、案外こういうストレートなのに弱いのかな、なんて思ったけど、恥ずかしがってる様子じゃない。むしろ……?

「…………いや、その……親からの結婚の圧力を思い出して、胃が……」

「あっ……」

 あんまり触れちゃいけない話題だったみたい。

「ダイジョブそ?」

「まぁ、うん…………大丈夫」

 ななこさんは苦笑いをしながらも、首をブンブンと振って頭からそれを追い出したみたい。ため息をひとつ吐いてから、改めてウチに向き直る。そして、

「うーん、じゃあ、着よっか。花嫁さん、こちらへ」

「あ! うぅ、ウチが先にエスコートしようと思ったのにぃ……」

「ふふ、残念」

 結局、ななこさんの方が1枚上手で。ううむ、今は手を取ってあげよう。でも、ぜったいウチがエスコートするんだからね!

 

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 衣装選びタイム。

 とはいえ、思ったよりも種類が多い。よく見るプリンセスラインやAライン、マーメイドライン、他にもミニドレスなんていうのもある。

「わわ! どれもきれいすぎて選べないよぉ」

「フフッ、なら、私が選んじゃおうかな」

「え、ほんと!? えへへぇ、ななこさんが選んでくれるなら何でも嬉しい!」

「どーれーが、にーあーう、かなぁ?」

 一着一着見ていくななこさんの後ろに着いて歩く。やがて、とある1着を見て、ななこさんはピタッと止まった。

「これだ!」

「ん? どれどれー?」

 純白。そして、そのドレスは他のドレスと比べて特に長い裾をしていた。後から知ったことだけど、それはロングトレーンドレスというらしい。

「どう、かな?」

「………………」

「あいりちゃん……?」

「…………うん、うんっ、うんっ!」

「よかった。その様子だと気に入ったみたいだね」

「うん! ありがとう、ななこさん!」

 ウチの言葉に、ななこさんはにこりと笑みを返してくれる。そのドレスを手に取り……って、まだ置いとこ。お返しに、ななこさんに似合う最高のドレスを選んであげなきゃ! そう思ったんだけど、

「あ、ごめん、あいりちゃん。私はもう決めてあるんだ」

「え、そうなの?」

「うん。実は、ね」

「そっかぁ……」

「ごめんね?」

 そう謝って、ウチの頭を撫でるななこさん。あ、困られちゃうのはイヤだ。

「っ、なんてね! わしちゃんは気にしてないよ! ななこせんせが着たいのを着るのが一番だからね!」

「……うん、ありがと」

「ではでは、フィッティングたーいむ! 覗いちゃダメだぞー?」

「…………わ、分かってるよ。あいりちゃんこそ覗かないでね」

 むきになって可愛いなぁ、と思いながら、フィッティングルームに入る。服を脱ぎ、下着の上からまずはドレスを当ててみる。うん、サイズも大丈夫そうだ。それから着替えをしていく。少し苦労をしながらもなんとか着替える。お化粧はないけれど、ティアラをつけて……うん、我ながら綺麗、だと思う。

「ふふふ、これならわしちゃんにななこせんせもメロメロだもんね~」

 そんな風に嘯きながら

「あいりちゃん……お着替えできた?」

「あ、うん!」

 フィッティングルームのカーテンを開けた。そこにいたのは、同じくウェディングドレスを着たななこさんではなくて、ファンタジーの世界にでてくるような王子様の姿をしたななこさんだった。

「フフッ、あいりちゃん、綺麗だね?」

「うっ、わわ……」

 なぜか分からない。けど、ななこさんが輝いて見える。直視できない。

「? どうかした?」

「な、ななこさん、きれいすぎ……かっこいい……すき……」

「フフッ、ありがと。でもね?」

 薄く笑ったななこさんはそのまま膝をつき、ウチの手をとった。そして、その唇を手の甲に落として。

 

「…………あいりはその何倍も素敵だよ」

 

「あうぅ……」

 顔が沸騰するくらい熱くなってるのが分かる。きっと今のウチは誤魔化しが効かないくらいには真っ赤、だ。

「じゃあ、私の花嫁さん、お手を。エスコート、しますよ?」

「う、ん……ありがと、ななこさん」

 下を向いたまま頷くと、ドアの方からカチャリ、と音がした。たぶん扉の鍵が開いた、かな。どうやら先に進めるみたい。

「進めるみたいだね。行こうか、あいりちゃん」

 ななこさんがそう促してくる。ウチはその手を再びとって、2人で歩き出した。扉を、開ける。

 

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