芹澤菜々子と三宅川愛梨のお話   作:藍沢カナリヤ

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4 温泉、追憶(愛梨視点)

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「あいりちゃん、あいりちゃん」

「……ん、ななこ、さん?」

 ぼんやりする頭に、ななこさんの声が響く。重いまぶたを上げると、そこにはななこさんがいた。優しげな微笑みをしているななこさんは、とっても美しくて。

 

「ななこさん…………つづき、しないの……?」

 

 ウチはそう口にしていた。

「へ!?!?!? え、あ、えっとぉ……」

 当然、そんないきなりのおねだりに、ななこさんは狼狽える。その様子を見て、少しだけ頭も冴えてきた。

「したいけどぉ、その体力的に……そのぉ……はっ!? じゃ、じゃなくて!! ほら、あいりちゃん、もう夕方だよっ」

「んぇ、ゆうがた……? あ、旅館にいるんだっけ」

「そ、そそ、そうだよぉ。ほら、このままだともったいないからさっ……少し館内見て歩かない?」

「んへへ、そうする。二人で一緒に、ね」

 そうして、はがねのせいしんりょくでななこさんは無事ウチの誘いを断れた。ふへへ、慌てるななこさん、かわいいなぁ。

 

 館内を散策する。温泉旅行といえば定番の卓球台や紅葉が綺麗らしい中庭、大浴場もとってもいいらしい。とりあえずレンタルできるという浴衣をそれぞれ選んで着替え、ブラブラと見て回る。途中、何度か浴衣を着て色気が何倍にも増したななこさんを襲いかけたけど。中庭で体験させてもらった餅つきやななこさんがびっくりするほど弱かった卓球。とにかく楽しかった、ってこういうことを言うんだなぁと思った。

 そうこうしている間に、時間は過ぎて、夕食の時間。懐石タイプのお食事で、黒羊牛のあぶり寿司や根野菜の温泉蒸し、和風ビーフシチューなどなど。豪華な料理に目を輝かせながら、頬張っていたななこさんがとてもかわいかった。それに、

「んへー! おいしー!」

「…………」

「? どうかしたぁ? あいりちゃ~ん?」

「え、あっ、ううん……なんでもないよ?」

 食前酒の赤ワインで既にベロベロになってるななこさん。そのせいで浴衣がはだけ、隙間から生足が覗いていて。我慢するの、大変だったなぁ。

 

 夕食も終わり、大浴場へと向かう。宿泊客自体が少ないから、ほぼ貸し切り状態。身体を洗ってから早速露天風呂へ。何種類かあるうちの『紅葉の湯』に入れば、視界いっぱいに紅葉の赤が広がる。

「綺麗だね、せんせ」

「ほはぁぁぁぁぁぁぁぁ」

「ふふふ、温泉気持ちいい?」

「っ、あ、あはは……ついつい声出ちゃった」

「今度せんせと紅葉狩りにも行ってみたいなぁ……なんて」

「わ、それいいね」

 にこりと2人で笑い合う。さらに、今度は檜風呂へ。効能の看板を見てみると『檜風呂は、保温性に優れており熱が逃げにくいため、ゆっくりと温まることができます。また、檜の香りがリラックス効果を持ち、ストレスを解消してくれるとされています』と書かれていた。客室露天もそうだったけど、やっぱりいいなぁ、この香り。

「いい香り……」

「そうだねぇ。おうちのお風呂も檜風呂にできたらなぁ」

「せんせ、一応山奥にそういう家はあるよ? 今度借りてみる?」

「へぇ! いいね、今度借りて…………あー」

「どうしたの?」

「その山奥で、そのそういうコテージ?借りたら、たぶん1日中、その…………ね?」

「あっ……」

「でしょ? あはは」

 そう言って笑うななこさん。それに、そっか。そもそもそんな風に2人でコテージを借りて、なんて、まるで恋人みたいだもんね。

「ウチたちまだそういう関係じゃないもんね……」

 『そういう関係』。それは『恋人』という意味で言っていた。少しだけ胸の奥が痛む。すると、ななこさんはきょとんとした表情で言った。

 

「あれ? えっと……私たち、えっと、その……『恋人』だと思ってたけど」

 

「へ……!?」

「あ、あれぇ?」

「あの、えっと……その」

「あ、その……そっか、告白してなかったもんね」

 そこまで言うと、ななこさんは一瞬目を閉じ、ウチの両手を両手で包む。そして、

「……あいりちゃん」

「なあに、ななこさん」

「あのね、最初はほら、お酒で一線越えちゃっただけだけど……今はそれでよかったと思ってる。そのおかげで、あいりちゃんの心に少し近づけたから」

 

「だからね、あいりちゃん。これからも私の側にいてくれる?」

 

 それは告白だった。だから、不安になった。

「……ほんとにウチでいいの? だって、年の差だってあるし、せんせにはもっといい相手がいると思うし、その、えっと……」

 モゴモゴと口ごもってしまう。これが、怖い、つて感覚。本当にウチでいいのか、側にいていいのか、そう思う。

「年の差はまぁ、言われると私の方が痛いけど……」

 あははと笑うななこさん。それから少し表情を引き締めて、ななこさんは言った。

 

 

「好きだよ、あいりちゃん」

「……ん、ウチも好きだよ、せんせ。ずっとそばにいさせてください」

 

 

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 こうして、ウチとななこさんの関係性は変わった。ただ体を重ねるだけの関係から『恋人』へと。

「ふへへぇ」

 ベッドの上で、ゴロゴロと身悶える。あの後、結局、盛り上がったウチらはお風呂でもそういうことしちゃったし、お部屋に戻ってからもした。なんと合計4回も。心も体もあったかい。この旅行で、ウチはそれを学んだ。

 こうして、ウチとななこさんの温泉旅行は終わった。『恋人』へとステップアップできた、そんな素敵な旅行でした。

 

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