黄昏の姫と緑の勇者: RTA Any%怪異譚~ミドナが語る『世界線物理学』のミステリー 作:nocomimi
「超特急で行きたいんだ、ミドナ。話しは後でしよう」
リンクは四角い非常用リフトに乗ると言った。私がわけもわからず彼の肩にしがみつくと、リフトはやがて空中に浮き始めた。
広場から見て左側の執務棟に至る道は、途中で断ち切られるように崩壊していた。ザントの仕業だろう。
だが、非常用リフトが浮上し、その間隙の上を越えていく。
ところが、リンクはリフトが到着する前に横を向くといきなり横跳びした。
彼は向こう岸ギリギリのところに着地すると、またダッシュし始めた。
「おい!待てってば!」
私は慌ててついていくしかない。リンクが執務棟の入り口扉を開けると、私たちは中に飛び込んだ。
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そこはさっきの部屋にも増して陰鬱に改装されていた。ザントの趣味なのだろう。蝙蝠が飛び回り、向こう半分には黒い霧が満ちている。
だがリンクは躊躇わず前進すると天井に向けてクローショットを撃った。鉤爪が照明器具にかかり、引き上げられると、リンクはすぐに飛び降りた。
ちょうど足元に非常用リフトが浮上してきたところだった。
まるで全てを知っているかのような動きだ。
非常用リフトが前進していく。リンクはそこから部屋の中ほどに立てられた背の高い舞台に飛び移ると、その先に満ちた黒い霧の上を浮遊している複数の非常用リフトの上を器用に飛び移っていった。
だが、奥の突き当たりの段差の上に、
しかし私が警告の声を発する前に、リンクは非常用リフトの上を渡り切り、剣を抜いて
敵が崩れ落ちると、段差の上の隅に木箱が出現した。開けると、中身は鍵だ。リンクはそれを回収し、突き当たりの扉を開錠すると先に進んだ。
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扉を抜けると、リンクはダッシュして目の前の段差を飛び降りた。
だが下のフロアには黒い霧が広がっている。
しかも、影の使者たちの姿も見えた。だがリンクは突っ込んでいく。霧の中に入ると、たちまちその姿が狼に変わった。
だがきっとリンクは承知の上なのだ。そう確信した私は装備を回収すると、彼の背中に乗った。
魔法柵が発動し、私たちは三匹の使者たちに囲まれた。だがリンクが私に合図する。私は結界を広げた。敵が結界に触れて稲妻が走る。
リンクは力を解放した。彼は宙を飛んで三匹の鬼どもに致命傷を与え、床に降り立った。
敵が倒れると魔法柵が解除された。だが、部屋の奥に
だがリンクはやおら踵を返すと霧の中に戻り、私に合図した。
―何の合図だろうか?結界か?
私は不思議に思いながらも結界を広げた。
すると、驚くべきことに、私たちの周囲に
リンクが弾丸のように飛び掛かる。一体に打撃を与えると直線的に方向を変え、二体目、三体目と痛烈な打撃を食らわせた。敵どもが全壊し床に転がった。
リンクは歩いて霧の向こう側に抜けると私に唸った。私は彼を人間に戻しつつも、驚愕の念で首を振った。
「リンク....お前は敵が次にどこに出現するか知っていたのか?」
「さあね。それより鍵を見つけなきゃ」
彼は曖昧に笑うと、クローショットを腕に嵌めて壁を狙い撃った。照明器具を伝って、壁際の段差の上に降り立つと、彼はいつの間にか出現していた木箱を開いた。中身は鍵だ。
「もう一個のソルはもうすぐだよ。そしたらザント戦さ」
彼は鍵を仕舞うと、クローショットで照明器具を伝って奥の段差の上に渡った。そして先へ進む扉を開錠すると、向こう側に出た。
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次の部屋に入ると、またもや背後の扉に自動で格子がかけられた。
だが、私はもう驚かなかった。リンクは剣を抜いて目の前の段差を飛び降りる。
やはり、部屋の奥にはあの巨大な手の像が置いてあり、ソルを握っている。
そして、リンクが進んでいくと予想通りファントムザントが空中に現れた。
だがリンクは手慣れた様子で相手に三連突きを喰らわした。そして以前と同様に部屋の中央に引き下がり、姿を消した相手が再び出現したタイミングで殺到し、また三連突きをブッ込む。
とうとう、一度も魔法を発動することなくファントムザントが崩れ落ちて姿を消した。
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私はもう感嘆の言葉も見つからなかった。
いっぽう、リンクはファントムザントの残していった霧をギリギリ避けて彫像に近づくと、クローショットでその手からソルを回収し、それを抱え上げて走り始めた。
予想通り、巨大な手が異音を立てながら動き始める。
リンクは部屋の中央に向けて急いだ。霧が引いていく中、広場の中央にしつられられた円形の窪みが見えた。
だがその瞬間、左右から地を這う雑魚魔物どもが挟み撃ちにするように迫ってきた。
リンクは投げ捨てるようにソルを落とすと、前転して敵群の攻撃をかわした。ソルが床の窪みに嵌まり、たちまち隠し階段がせり上がってくる。
背後には雑魚の群れだけではなく、影の使者が一匹降りてきて、追いすがってきた。
だが、リンクは既に階段の中途にいた。残りを駆け登ると、彼は振り返ってクローショットでソルを撃ち、それを回収して走り始めた。
影の使者や雑魚たちがなすすべもなく立ち尽くすなか、リンクは扉を開けて向こう側に出た。
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向こう側に出ると、リンクは少し進んでからソルを前方に投げた。
転がっていったソルが床の中央の穴に嵌ると、私たちが立っていた床が持ち上がった。隠し階段が出現したのだ。
リンクはダッシュして階段を駆け登り、出口近くまで到達して振り返ると、眼下の床の穴に嵌ったソルを狙ってクローショットを撃った。
ソルはたちまち引き寄せられ、リンクはそれを抱えて出口に向け走った。
その頃には巨大な手が扉を抜けて追いかけてきた。
だが遅すぎた。リンクはソルを持ったまま扉を開けて去っていった。
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リンクはその次の部屋でも、ソルを抱え上げながら非常用リフトの上を器用に渡っていき、出口に到達すると扉を開けて向こう側に出た。
すると、またもや付近にいた変身途中の影の使者が悲鳴を上げ、元の人間の姿に戻った。
「良かった....」
私は呟いた。苦しめられていた民が一人でも救われたのを見るのは、心の慰めだった。
だが、リンクは突如としてソルを前方に思い切り放り投げた。球体が音を立てて道路を転がっていく。
「な....っ...お前、何をするんだ!」
リンクは返事をせずにダッシュすると、道なりに進んで、来るときに使った非常用リフトに飛び乗った。私が慌てて追いかけると、彼は浮上したリフトの上から道端に転がったソルを狙い撃ち、クローショットで回収した。
「このほうが早いんだ」
彼は微笑んで答えた。だが私は呆れて溜め息をついた。
「まったく...驚かせるなよ。だいいち、これは私たち影の者たちの貴重な生命エネルギー源なんだぞ?もっと丁重に扱え」
「ごめんごめん。でも、君だって一刻も早く国を取り返したいだろ?」
「それはそうだが....私はそんなに超特急じゃなくたっていいんだがな...」
私はボソっと呟き、そして続けた。
「だって...そうしたらお前との冒険も早く終わってしまうってことじゃないか」
そう言ってしまった後、私は雷に打たれたように顔を上げた。
私は、今......何を言った?
だが、リンクが聞いていなかったのが幸いだった。彼はリフトが向こう岸につくや否や走り出し、広場に設えてあるもう一つの穴に向けてソルを投げつけた。
転がっていったソルが穴に嵌り、広場に刻まれた文様に光が宿った。
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王宮のエネルギーがようやく回復され、私は安堵した。
すると、リンクは円形の文様の中央に歩み寄っていき、剣を抜いて立った。
そして不思議なことが起こった。リンクの剣の刀身が光輝き、光の粒のようなものが発散されているのだ。
「すごい・・・ソルの力が剣に宿ったんだ」
私は思わず言った。
「この世界の守護神も味方してくれてる!やっぱり、リンクは選ばれし者.....真の勇者なんだ!」
だが、そう言った後、私は小さな違和感を感じた。
もはや、リンクが『普通の剣士』ではないことは私が一番よく分かっている。
だが、彼が『普通でない』ということの意味合いが、私自身つかみ切れていない。
彼は並外れて強いのか?いや、それだけではない。
彼は驚くほど賢いのか?いや、それだけではない。
彼は呆れるほどの強運なのか?それだけでもない。
―私は彼をむしろこう形容すべきだ。
『全てを予め知る勇者』。
だが、そんなもの、この世に存在していいのか?
だが、思索にふける私を置いて彼は王宮への坂道をダッシュし始めた。我に返った私は慌てて追いかけた。
リンクは坂の頂上で回転斬りを放った。するとザントが防壁替わりに流していた黒い霧がたちまち晴れた。ソルの力が剣に宿ったおかげだ。
リンクは足元にあった間隙を飛び越え、道を疾走し王宮の扉に走り寄って中に入っていった。
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王宮の一階は、民も出入りする謁見の間だ。
だが、中に入るとそこにも黒い霧が満ちていて、私は顔をしかめた。ザントの好き放題にムカっ腹が立った。
だが、リンクは剣を振り回しながら中に突っ込んでいく。いまや、彼の剣は影を払うことができるのだ。霧が引いていくなか、リンクは少し高くなった奥の舞台にまで到達した。そこでリンクは剣を納めると言った。
「ミドナ、これから霧の中に戻って『わざと』狼に変えられる。そしたら結界を頼むよ」
「なに?『わざと』?どういうことだ?」
「まあ見ててくれ」
舞台の上には、ソルの中継球が二つ置いてある。本来なら、それを床の穴に嵌めて階段を出現させなければ、二階には行けないはずだ。
だが、リンクはブーメランを取り出すと、顔を上げた。フロアの壁の上方には、棚のような形で二階フロアがしつらえられている。
リンクは、二階を飛び回る蝙蝠に狙いをつけてブーメランを放つと、すかさず部屋の中ほどに戻って霧の中に突っ込んだ。
リンクはすぐに霧から出てきた。だがその姿がたちまち狼に変えられる。私が彼の背中に乗ると、ちょうどブーメランが戻ってきた。
その風の中に、蝙蝠が捕えられている。
その時、私はリンクの狙いを悟った。結界攻撃を応用したスーパージャンプだ。
私が結界を出すと、ブーメランに捕えられて引き寄せられた蝙蝠を結界が包み、その体表に稲妻が走った。
だが、ブーメランそのものに殺傷力はほとんどない。蝙蝠はやがて体勢を立て直し、二階に戻っていった。
しかし予想したとおり、距離が離れても結界は蝙蝠を捕えたままだった。
蝙蝠が二階に到達した瞬間、リンクは力を解放した。
信じられないほどの跳躍力だった。
狼リンクは、吼え声とともにジャンプし、一挙に二階に到達した。
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「お...お前どうやってこんな技を?」
私は彼を人間に戻しながら驚きもさめやらぬ声で尋ねた。
結界の作用上、このような現象が起こりうることは理論的には知られていたが、実践してみた者など誰もいないからだ。
「さあね」
装備を整えたリンクはいたずらっぽく笑うと、二階の床に設置されたスイッチ球を無造作に剣で打った。
たちまち足元に非常用リフトが出現し浮上する。私たちはそれを使って向こう側の壁に設えられた二階フロアに渡った。
すると、
敵が全滅すると、フロアの隅に木箱が現れた。中に入っていた鍵を回収すると、私たちは非常用リフトに乗って三階層に上昇し、そこに設えられた出口を開錠すると外に出た。
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扉の向こう側は広大なバルコニーだった。
この私も、平和な時代にはここで遠くを見ながら寛いだものだった。
だが、思い出に浸っている暇はない。
.......と気を取り直して前を向くと、リンクは既にダッシュしていた。
「お~い!待ってくれ~!」
私が追いかけると、リンクはうろついていた影の使者の横を通り過ぎ、バルコニーの縁にあったスイッチ球を剣で打った。
私がやっとのことで追いつくと、足元に非常用リフトが出現し浮上し始めた。
「全く....お前は王女の私よりもこの王宮を知ってるみたいだな」
「そうかもね」
私が文句を言っても、リンクはいい加減な返事しかしない。
ところが、ふと周囲を見ると真っ黒な怪鳥がうようよと飛んでいる。
そいつらがこちらを見咎めて近づいてきた。
「リ......リンク!」
「今のマスターソードなら一撃だよ。心配いらない」
リンクは剣を軽く振ると、寄ってきた怪鳥を片端から斬り捨てた。
やがて非常用リフトはバルコニーから少し離れた足場に到達した。リンクはそこで
「おっと、ボス鍵を取らなきゃね」
彼はそこで呟くと、建物側の壁に向き直った。目を上げると、上方から黒い霧が滝のように流れ落ちている。リンクは剣を抜いて回転斬りを放ち、霧を払うと、クローショットを腕に嵌めて上方を狙い撃った。
たちまち身体が引き上げられ、私たちは足場の上に立った。霧が再び流れ落ちてくるが、私たちはその向こう側に抜けたのだ。リンクはクローショットで次々に足場を登っていくと、一番上の足場に置いてあった木箱を開けた。
中には、黒い金属の大きな鍵が入っている。私は鍵を仕舞いながら言った。
「ザントの奴....鍵をかけて閉じこもってるんだな?」
「そういうことさ。小心者に限って、偉そうに見せたがるものだからね」
リンクは笑った。
「まったく同意だな。さあ、お前の腕を奴に見せてやれ」
だが、リンクは返事もせずに剣で回転斬りを放って霧を払うと、いきなり足場から飛び降りた。
「リ....リンク!お前また.....」
だが彼は遥か下方で器用に着地し前転すると、周囲に出現した
敵が全滅すると、バルコニーの隅に木箱が出現している。リンクはその中から鍵を回収すると、王族の会議の間に通じる扉を開錠した。私も慌てて追いつくと、ふたりで中に入った。
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会議の間に入ると、周囲に魔法柵が出現し、影の使者たちがさっそく出迎えてきが、リンクの回転斬り一発で全滅した。
リンクが床にあったスイッチ球を打つと、私たちは出現した非常用リフトに乗って上昇した。
上昇したところで彼はいきなり宙に飛び出した。
「リン....!」
だが、その瞬間その先に新たな非常用リフトが出現し、彼はその上に立った。
「お前....いちいち人の心臓を停めるようなこと....」
私は文句を言う気力も失いそうだったが、ある確信が心の中に湧き上がってくるのを感じた。
間違いない。リンクは『全てを知っている』。
リンクは次々とリフトを乗り継ぎ、途中で出現した
最上階に設えられた扉を開錠し、向こう側に抜ける。
もうすぐだ。ザントとの戦いは。
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扉の先は大臣や側近たちの部屋だ。だが、やはり黒い霧が立ち込め、影の使者がうろついている。
リンクが手近の使者を斬り倒し、霧を払いながら前進すると、たちまち魔法柵が出現して閉じ込められた。
だが、リンクは剣を構えると、敵が出現してもいないのに回転斬りを放った。
次の瞬間、天井から影の使者たちが降りてきた。だがリンクの剣の刃で打たれて、着地とともにたちまち崩れ落ちる。
リンクは数歩歩いて位置を変え、また回転斬りを放った。すると、ちょうど降りてきた新手の使者たちが一挙に斬られ、脚で立つ間もなく倒れ伏した。
彼は何度か同じことを繰り返した。その度に、降りてきた影の使者たちがあえなく倒れた。
リンクの挙動ははっきりと示していた。
彼は敵の出現位置を予め知っているのだ。
敵が全滅すると、魔法柵が消失した。
目の前には、王の間の重々しい扉がある。鎖がかけられ錠前で封じられていた。
だが、私が鍵を差し込むと錠が開いて鎖が落ちた。
「いよいよだな....」
「ああ。いよいよだ」
私たちは顔を見合わせると、扉を開けて前進した。
(次回に続く)