友達欲しさに陽キャに変身したら激重感情を向けられた!? でもでもまあ私が受け入れれば良いし大丈夫……え、三人も!? 作:匿名k
砂肝愛葉は自他ともに認めるコミュ障だ。
全く喋れないわけじゃないんだよ。でも相手のことを考えてしまうと次の句が継げず、最終的に黙りこくってしまう。
今の言葉は怒らせなかっただろうか?
これ言ったら不快に思われるんじゃないかな?
などなど、ぐるぐるとそんな思考が脳内を周遊して、結局何も言えない。
その結果、悲しきかな、高校二年生にして友達一人いないぼっちな女子高生が爆誕してしまったわけで。
昔は違った気がするんだけどなあ……あんまりよく覚えてないけど、小学校高学年の時に色々と言われたからだった気がする。それで中学からは他人に憶病になってしまったような……まあいいか。
ともかく。
そんな私でも友達は当然欲しいのだ。
現状不毛で不作で荒廃とした灰色の学生生活を歩んでいる私だけども、青春とかめっちゃ憧れる。一緒に勉強したりお出かけしたりゲームしたりっていう高校生らしいこと沢山したい。
でもこのままじゃ友達なんて作れない。
私ってばめちゃめちゃコミュ障だし、知らない人に話かける勇気もないし……。
そんな私が取れる最後の手段は一つしかなかった。
───どうか友達が簡単に作れる才能に恵まれますように!
カラカラと賽銭箱に小銭を投げ込み、パンパンと手を鳴らす。
一礼二拍手一礼。
これ即ち神社で願い事をする作法。
そう、私は自分での解決を諦めていた。
神頼み。
天に願いを委ねて自然解決を祈ること。
だってそうじゃん?
私に出来ないんだから他の誰かを頼るしかないし、でもでも私は頼れる姉とか兄だっていないんだから、神様に希望を託すのは自然の帰結と言える。
50円玉を投げこむ行為も今日が初めてってわけじゃない。
高校1年生の頃から自身に期待を辞めていた私は毎週のようにこの神社に通っていた。いわば私は常連客で、ここは推し神社なのだ……いや推し神社ってなによ。ただ家から近いだけだよ。なんなら境内は6畳より少し広い程度のスペースしかなければ、鳥居もそれに比例して小ぶりで、本殿は個室トイレくらいのサイズ。神なんて絶対にいないような神社に違いない。
こんな現実逃避気味な行動を起こすのも、既に諦めが勝ってしまっているからだろう。毎週のように通っていてなんだけど、私は神様を信じていない。だって神様がなんて人類に都合が良い存在がいたならば、もっと世界は良くなっていると思うし、人類はもっと信仰を深めていても良い気がするからだ。無神論を唱えるわけでも、ドヤ顔で「神は死んだ!」と言い放つわけでもないけど、こうして何度お願いしても叶わない以上はやっぱり神様なんていないなあと思うしかないわけで。
それでも祈りを捧げ続けるのは、ある種、現実への最期の抵抗なのかもしれない。
頭では諦めていても心では諦めていない。
私が出来る行動の範疇で、0.0001%でも可能性が存在する択があるのなら挑戦してみたい。
うん……愚かだなー私。
自分でそう思う。
無知愚昧で軽慮浅謀。
考えた末に神頼みなんて頭お花畑じゃん。
僅かな反抗心と共に溜息を吐き出す。それすら無意味と言わんばかりに春の風が掻っ攫って行く。
願っても叶わない。
結局肝要なのは変化。
世界に自分自身が適応する変化。
……それが出来たら苦労しないんだよな。
願うばかりの毎日に肩がドッと重くなる実感を得つつ、私は頭を上げようとする。そう、私は今まで目を瞑って必死に幻想と希望に祈りを捧げていたんだけど、所詮幻想は幻想、希望はあまりにも虚構。何も変化なく境内を浚う一筋の冷たい春風に身を捩らせて、目を見開く。
「おほん! お主にその願い、確かに聞き届けたのじゃ!」
───なんかいた。
狐耳を付けた少女が。
非常に得意気に胸を張りながら、尊大にこちらを見上げている。
ええと……何だこのシチュエーション。
近所の子供? それにしては立派な和服を着てるので、幼い容姿の割にあまり女児感を覚えない。
取り敢えず声を掛けないと……でも怖がらせちゃだめだよな……なんか良い言葉遣いを選ばないと。
「うーむ……驚かんか。肝が座っとるのう」
相変わらず偉そうな口調。というかババ言葉。
いや、これは唐突すぎて唖然としてるだけなんだけど。
「なんとか言わんかそこの小娘。ワシが何百年ぶりに登場したんに、おどれ無視か小娘。それともアレか、呪術に苛まれて喋れんのか」
「そ、そんなことはない……です」
「なんじゃ、喋れるならはよ喋らんかい。全く、最近の女子はまどろっこしいわい」
今にも紫煙を吐き出しそうな程に達観した瞳で私の身体を見る。
なんだろうこの子……ただの子供じゃない気はする。だって良くて女子小学生にしか見えない女児の一人称がワシで、ババ言葉を話して、達観した表情を浮かべてるし。ぴょこんと頭から飛び出した狐耳なんて完全にツッコミどころでしかない。
「え、ええと……コスプレ?」
「何じゃそれは。ワシはオスプレイのように垂直離着陸なぞ出来んぞ」
口調からして固く見えて意外にノリが良いのかな。いやオスプレイなんて一言も言ってないけども。
「あのその……貴方はだ、誰ですか?」
「あー、ワシのことを知らんか。そうそかそうか、知らぬか知らぬか! 知らぬなら教えて存ぜよう!」
何故か機嫌良く「かっかっかっ」と小魔王みたいな笑い方をすれば、履いていた一本歯下駄でカランと地面を打って口を開く。
「ワシはココノエ。お主らが言うところの縄文時代のその遥か昔よりこの地を護る土地神じゃ!」
「と、土地……神?」
「或いは土着神とも言えるかのう」
「か、神って……神様ってことですか!?」
「お、おおん。正しくそうじゃが」
狐耳の少女───ココノエは五月蝿そうに顰め面になって、耳をパタンと伏せた。しまった。音量調整を間違えてしまったらしい。ごめんなさい。
「ともあれじゃな。ワシはこうして姿を現して、お主の望みを叶えることにした。喜ぶが良い、お主の願いはワシが果たす」
「ね、願い……?」
「なんじゃ、何度もここに来ては願っていたろうに。同い年のオナゴと懇ろなりたいのだろう?」
「ね、懇ろは要らないです……!」
「仲良くなりたいのじゃろう? 凡そ同じようなもんじゃろ」
そんな不純な願いはしてないよ! 女同士でそんな関係性変だし!
……それにしても。
口に出してないのに本当に私の願い事を知っているということは……。
私はココノエの瞳を見る。キラキラと光る薄黄色の虹彩の奥には星霜の如く数多の光源が宿り───まるで深遠な宇宙を思わせる。
その年端を窺わせぬ双眸。
狐の少女、ココノエ、土地神、土着神。
彼女が人間じゃなくて神だと言われれば───納得はせずとも、否定はできない程度には、目の前の少女は超常的に見える。
だから、無意識に私は敬語で接してしまっていた。
「どちらでも構わんがのう。信仰には施しを。それがワシの神ニズムじゃ。信奉者の願いは叶える、だから安心せい、ワシの手に掛ればお主の来年今頃は友人1000人はおるじゃろうさ」
「そ、それは困るというか……」
「なんじゃ。足りんか。ならば1万にしてやろう。更にその1%は生涯を契り合った相手でどうじゃ?」
違うよ! 多すぎてって意味で困るって言ったの!
あと1万人の1%って……100人も恋人はいらないよ!?
「そ、そもそも……私は信奉者じゃないですよ?」
「いやお主はどこからどう見ても信奉者じゃろうに。今時毎週賽銭を落として神頼みする殊勝な子供などおらんよ」
「ま、まあ確かに珍しいかもですが」
「うむ。じゃがそれ以上にワシが見えるのが信奉者の証じゃ。世の凡人にワシの姿は見えんからのう……」
「見えない……?」
「おん。如何にも。なにせワシは神じゃ。神が大衆の誰しもに見える姿で存在してしまえば特別感が無くなるじゃろう。お主に分かりやすく言えば偶像崇拝ってやつじゃ。大衆には綺麗な部分だけを見せて、清濁全て見せる相手は選ぶ。アイドルならばマネージャーじゃろうし、ワシであれば昔は神社で共に暮らした巫女がおった。そうやって綺麗なイメージを保つのじゃよ、さすれば自ずと信仰は生まれる」
確かに……存在が不確かだからこそ神秘を帯びる側面はあるのだろう、と私は考えてみる。私だって神様なんていないだろうと思いつつ、だからこそ、その神秘性に微かな期待して一年間神社に通い続けた。
しかし、物の例えがアイドルとか随分と俗的な神様だなあ……。
今も「いや、アイドルといっても地下ドルは違うかのう……あやつら炎上ばっかじゃし」とか俗すぎる独り言を呟いてるし。
「じゃがしかし、時代の変遷と共にワシの存在は世間から忘却されてしまってのう。科学が未知を淘汰したのが一因じゃろう。未知が理知に解き明かされ既知になった。世に科学信仰が蔓延り神霊信仰が廃れてしまった───故にワシはこんな小さな神社の一角で余生を送る羽目になっておる。そんなオワコンのワシからすればワシの姿が見えて、にも関わらず神性に縋るお主は信奉者ってわけじゃよ」
「は、はあ……」
良く分からないけど、姿が目視できるのに偶像崇拝をしてるから信奉者ってことかな……。
「久々の信奉者じゃ、腕をなるのう。それで聞かせてみい。なにゆえ友誼を結ぶなどワシに願うのじゃ。普通に生きていれば100人は言わずとも10人程度は友人が作れよう」
う……っ。
ぐさっと刺してくるなこの子。いや神様なんだろうけどさ。
普通ってさ、普通ってなんだよ。
私だって望むならそういう普通になりたかったよ。
若干の反駁心がふつふつと湧いてくるけども、ココノエの顔を見ると言い返すのも馬鹿らしく思えてくる。
だってどうしようもなく見た目子供だしね……神様っていうのも大分半信半疑だ。
でもその老獪な視線。私へと話を進めるよう促す、優しくも何処か同じ視座にはない、超常たる視線。
それに圧し出されるように私は事情を話した。
他人と話すのが怖い事、他人からどう評価されるのかが怖い事。
そう言った忌避感が起因して友達が作れない事。
それを聞き終えるとココノエは「うむ……」と唸るように頭を捻った。
「珍しい悩みじゃな……今どきはこういう悩みがスタンダードなんじゃろうか? ま、いいわい。それなら良い道具がある」
「道具……?」
「ちょっと待っとれい」
そう言って本殿にココノエはぴょこんと足場に乗り、扉を開くと頭を突っ込んでガサゴソと何かを探っている。尻尾がふりふりと左右に揺れる。おお……っ、危うく気持ち悪い声がでかけた。
本能に訴えかけてくる可愛さというか、愛くるしさというか。撫で回して頬擦りしてモフモフしたい。ハフハフもしたい。飼いたいかも……この神様。
「お主……何を考えとるんじゃ? いますっごい背筋がブルンと来たぞ?」
「い、いえ……私はなにも」
「ならよいが……」
寒そうに身体を震わせながら振り向いてきたココノエにそう言葉を返すと、不承不承という顔をして再び本殿に顔を突っ込む。神様なら下々の人心にも明るいのだろうか。
「おお、あったあったぞ」
ココノエは暫く物探しを続けていれば、そんな声を上げてこちらへ振り向く。
右手には木製の小さな板が握られていて、板には深さの違う四本線の溝が刻まれている……なんか見覚えのある形状。温泉とかに行ったときの靴入れの鍵が正しくこんな感じだ。
「ほれ、これをやろう。スーパーアイテムじゃ」
「……なんですかこれ?」
「松竹錠じゃよ……という見たままの冗談は面白くないかのう」
私の顔色を見て自分のジョークがあまりパッとしないことに気づいたのか、すぐにココノエは言葉を翻す。
「これはのう、狐道具の一種じゃ」
「狐道具、ですか?」
「そうとも。狐の嫁入りって言葉は聞いたことはあるかの。まあアレは平成風に解釈すればただのお天気雨といったところじゃが、ワシのような神からすれば嫁入りという言葉はそう間違っておらん。日があるのに小雨が降ったら化かされた気分になるじゃろう? 狐は時に化かし、時に惑わす。その対象が人間だった時は、大方、魅力的な異性を演じて懇ろになろうとする。そういった意味で、言葉通りに嫁入りじゃ。この狐道具は言わばそんな狐の嫁入り道具の一種とも言えるかのう」
「嫁入り道具……」
「いかんいかん、長命になると話が長くなる。取り合えずこれをやろう」
ココノエから狐道具と言われた木板を受け取る。
手触りも木製。何の変哲もない物に見えるけど……。
「これがあの……何の役に立つんですか?」
「なんじゃお主、コミュ障を自称する割には結構強い言葉を使うんじゃのう」
「すすす、すみません……」
「かっかっかっ! 構わん構わん! ワシは寧ろ明け透けに言われる方が好みじゃ!」
鈴を鳴らすみたいに透き通った声で豪快に笑う。うーん……少し気を抜くと言葉が変になるのは宜しくない持病……。はい無残様。この砂肝愛葉、腹を切って詫びます。
「さて、その道具じゃが正式名称は
「え、ええ……そんなことが可能なんですか……?」
「勿論制約もあるぞい。これで変えられる5分限定、それに姿だけでなく精神性も変化する。例えば強い兵になりたいと願えば肉体は忽ち筋骨隆々に膨れ、心も敵対者を殺害しても同様一つない強者のマインドになるじゃろうな」
「そ、そうはなりたくないですけど……」
マッチョになって人殺しを厭わなくなった自分をつい想像してしまった。
うん……。
大分かなり非常に解釈違いです……。
「例えじゃ例え。察し悪いのー。ともあれお主のその口下手っぷりはこれで友達を作るのが是じゃ」
「な、なるほど」
「お主に足りないのは何より自信じゃよ。お主は他人を過剰評価している節がある。じゃがお主が思うほど他人は完璧じゃないし、完璧が良いこととも限らん。まずはそれを知って、行動力を培うのじゃ」
それは確かにそうかもしれない。
自信……自信かぁー。
「物は試しとも言う、一旦使ってみい」
「え、ええ!? そ、そんな突然……」
「何を驚く。友人が欲しいんじゃろう」
冷徹な視線に思わずたじたじになる。
そりゃそうですけど……やっぱり何というか心の準備というか。
狐道具、姿見一変。
松竹錠を見ながら私はごくりと唾を飲む。
神様とか、狐道具とか、色々と非現実的なことばかりに襲われて現実感が薄くふわふわしそうになる。
使って大丈夫なんだろうか? この道具?
そう言えば土地神───とココノエは言うけど。
見た目からして───神というより妖だ。
アニメとかじゃ妖狐とか言われるやつ。
妖狐って美男美女に化けて出る印象があるし、ココノエもその例に漏れない……まあ年齢が少々幼いのはさておきだけども。
と、要するに───私が現在進行形で化かされている可能性もあるってことで。
「安心せい。ワシは神じゃ。狐っころと違って化かさん」
心を読むようにココノエは穏やかな声で言う。読心……ではないと思うけど、或る程度心の揺れ動きは分かるみたい。
───でもココノエの言う通りだよね。
そりゃココノエはちょっと怪しく見えるし、この木が狐道具と言われてもはてなマークが10個くらい頭に浮かびそうになるけど、それでも。
友達が欲しいという願いは、その全てをねじ伏せられる。
神様神様。
願わくば、たくさん友達がいるような明るく元気な美少女になりたいです。
───刹那。
松竹錠から光がぶわっと漏れ出して私の身体を包み込んだ。
まぶし……っ!?
白く視界が塗りつぶされて思わず目を閉じる。
光の奔流はすぐに収まった。体感で1秒以下。
そして、私はすぐに心の違和感に気づく。
何だろう……全然不安が無いというか、頭がクリアになったというか。
なんか万能感っていうか?
今なら何でもできる気がする!
それにちょっと身体も違う気がする。具体的には背が高くなったような。
思わずスマホのインカメラで確認。
「え、金髪!? ってかこの私可愛すぎるね!? 睫毛長いし肌も綺麗だしおっぱい大きいし誰ですかこの完璧美少女!?」
「おお、おお。お主の理想はそれか。随分と声が張るようになったのう」
「ココノエちゃん、これ本当に私なの!?」
「齢五桁のワシをちゃん付けで呼ぶでないわ。こそばゆいじゃろうが」
と、言いながらも仄かに頬を赤くして照れてるココノエちゃん。え、可愛い。お持ち帰りして丁重に愛でてもいいかな?
「それで気分はどうじゃ?」
「何でもできそう! 今なら友達100人作れるかも!」
「ほうほう、良い傾向じゃな。先ほどの根暗さは微塵も感じん」
「根暗ってストレートすぎじゃないココノエちゃん! そりゃ私だってさっきより幾分明るくなった自覚はあるけどさ、事実陳列罪は良くないよ!」
神様にすら根暗って思われる女子高校生って大分致命的じゃないかな。
いやいや、でも今の私は違うし! どこに出しても恥ずかしくない女子高校生だし!
ともかく、この見た目と性格なら弱気な自分にならずに済む!
だって折角の高校生活! 華やかなJKライフを無為に捨てるなんて勿体ない!
まだ2年弱あるんだしここからでも十分に巻き返せるはず!
「───あれ、でも5分間しかこの姿でいれないんだっけ?」
色々とポージングをしながらパシャパシャと自撮りして自分の姿を確かめてながら話しかけると、ココノエちゃんは「うむ」と頷く。
「一応釘を刺しておくが、その姿はお主の理想であり虚構じゃ。姿見一変で変化した者は、本来の下地とは大きくかけ離れる姿になればなるほどぶり返しも強くなる。加えて言わずともじゃが───あくまでそれは練習用、いわゆる矯正器具じゃ。お主の軟弱無比な精神を鍛えるためのな。それを努々忘れるなかれじゃぞ」
「うんうん、分かった!」
「ホントに分かってるんじゃか……まあ一旦それで頑張るんじゃ」
「ありがとココノエちゃん!」
なぜか呆れた目をしながら、次の瞬間にはココノエちゃんは姿を唐突に晦ました。
アレ……どこに行っちゃったんだろう。
まあ神様だし何でも出来るのかな。
これは少し後で知ることだけど───。
変身後4分が経つと狐道具はぶるぶると震え始め、それからきっかり1分後に元通りの姿に戻った。
更に、ココノエの言う"ぶり返し"という現象を味わうこととなる。
簡単に言えば、超絶鬱。
鬱病ってほどじゃないけど、伸し掛かる憂鬱感は凄まじい。
気が重すぎて何一つ手が付けられないほどの放心。
暫くぼーっとしていれば治るとはいえあまり濫用すべきではないのかもしれない。
ココノエもあくまで矯正器具とか言っていた。長期での使用は考慮されていないのだろう。
これを使って友達を作って、その感覚を掴む。
そして最終的には砂肝愛葉の状態のまま友達を作って輝かしい高校生活を……!
すっかり私は今世紀最大のやる気で満ち溢れていた。
題して『友達メイキング計画』。
狐道具を使って私は友達を作ってみせるんだ!
そう意気込んで、手始めとばかりに何も考えずに昼休みの星紙さんに話しかけて、即座に頓挫したのは翌日の話だった。