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ゼーレの誕生日だったので、急いで書きました。
ちょっと難産気味です。
本編はもう少しお待ちを……。
『誰かの願いを果たす為に生きる』
『おれは何故、歌うのだ』
「ごめんね、カインお兄ちゃん……急に来てもらって」
「別に良い。この程度の事なら幾らでも手伝いはする」
とある日、デパートから出てきたカインが大量の荷物を手に持ちながら一息ついている。
隣にはゼーレが申し訳なさそうな表情をしながら、カインを見つめていた。
「皆んながブローニャお姉ちゃんを応援したいって、準備してたんだけど……突然の事だったから何も用意出来てなかったんだ」
「そういう事か。道理でホム系のグッズが多いわけだ……」
そうして確認した荷物の中には、大量の菓子や食材、果てにはホムのグッズやらよくわからない尻尾の様なアクセサリーまで。
「でも、今日はお休みだったんだよね?それなのにゼーレがカインお兄ちゃんに連絡しちゃったから……」
「休みと言っても、やる事も特に決めては無かったからな。それにゼーレからの頼みを断る筈がない」
この日、偶然休日であったカイン。せっかくの休みなのでどうしようかと辺りを歩いていたところで、突如としてゼーレから連絡を受けていた。
普段無かった連絡に困惑した彼だったが、話を聞いていると孤児院の皆からのお願いであったらしく、先に待っていたゼーレと共に買い物をしていたのだった。
「それにしても凄い量だな……よくわからない物もあるが」
「あはは……多分、ロザリアとリリアが使うんじゃないかな?」
「あのお兄ちゃんもお揃いにするのよ!」と息巻いていた
確かにカインには尻尾などは付いていないが……まさか、その為のアクセサリーなのだろうか?これにはもう一人のアイドル志望もジト目であった。
「──あっ、次はこっちのお店だね。ここでしか買えない物があるんだって」
「じゃあ、先にその店に行くとしよう。昼飯はその後だな」
ゼーレの発言と共に再び両手に荷物を持ち、店に向かおうとしたカインだったが、ふとゼーレがある事に気づいた。
「……あれ?カインお兄ちゃん、このお菓子って……」
荷物の中に入っていた高級な菓子の箱が二つ。少なくとも、孤児院の皆への買い物の中には入っていなかったが────
「ん?ああ、それか。それは俺からゼーレ達へのプレゼントだな」
「……え?」
カインの返答にゼーレの足が止まる。そんなゼーレの態度に首を傾けながらも、カインは話を続けた。
「普段から子供達を見ているのはゼーレだ。なら、その日頃からの頑張りに対するご褒美だ」
「でも、それはゼーレがやらなきゃいけなかったからで……」
「それでもやり通せているのだからな。偶にはこういうご褒美があっても良いんじゃないか?」
そんな発言と共に荷物を置き、ゼーレの頭を撫で始めたカイン。
くすぐったい様な嬉しい様な表情をゼーレが見せているその光景は実際の兄妹の様だったという。
「………」
「……ゼーレ?」
そんな中、突如として彼女の纏う空気が変わった。
赤くなった瞳に、何処か威圧的な態度を持ち、先程とは真逆の雰囲気になった彼女を見て、カインは安堵の息を吐いた。
「漸く出てきたか。今日は気分が悪かったのかと心配していたからな」
「【別に……あの子が楽しんでいる中を邪魔する様な趣味は無いのよ。だから出てこなかっただけ】」
ぶっきらぼうな言い方をしているが、どこまでも
そんな彼の表情を見てか、無理矢理話題を変える様に菓子へと視線を向けた『ゼーレ』。
「【……何?わざわざ私の分まで用意したの?
「?、当然だろう?私にとっては二人ともが大切な妹だ。二人分用意するのは兄として当たり前のことだ」
キョトンした顔で答えるカインに『ゼーレ』は少しの間無言となる。
そして、溜息をついた後に髪を指で弄り始めた。
「【──そう、そうだったわね。お兄様はそういう人だったわね】」
「納得してくれたらいい。後できちんと二人で分け合え」
「【わかってるわよ。私がそんなに食い意地を張ってる訳ないでしょ?】」
「それもそうだな。まぁ、こんなに優しくて心強い妹達がそんなことするわけもないか」
「【っ……本当にこの
そんな風に軽く言いあっている中で買い物は続いていく。
ついうっかり、『ゼーレ』が出ずっぱりになってしまい、途中から戻ってきたゼーレが泣きそうな表情をしていたのは余談だ。
ーーーーーーーーーーーーーー
『誰だか知らないが……彼女達に手を出すな』
最初に聞いたお兄ちゃんの声は、そんな怒りに満ちた声だった。
量子の海の中、姿を現した
『っ、お前達は先に行け!私の事は後にしろ!』
『ですが、カインを失うわけには……!』
『律者コアを持っている以上、お前達が先に行くべきだ!それでもというなら、後で助けに来てくれればそれで良い!』
『カイン……』
『何より、
次に見たのは、自分を犠牲にしてでも私達を送り出そうとしている姿。
必死に走り続けて、それでも追いつかれてしまった時、お兄ちゃんは私達の代わりになって引きづり込まれてしまって────
『この……臆病者っ!!』
『【──仕方ないわね】』
そんな人を助けたいと思ったから、呆然として泣いていたブローニャお姉ちゃんを助けたいと思ったから。
私達は初めて、この力を使った。
『た、助けてくれてありがとうございました!ブローニャお姉ちゃんの事も、いつもありがとうございます!』
『礼はいらない。私は自分がやるべき事をしただけだ……それに、こちらこそブローニャに世話になっているし、助けに来てくれた事に感謝する』
私達の方が助けて貰ったのに、頭を下げてくるお兄ちゃんに
『あの……ちょっと良いですか……?』
だからこそだったのかもしれない。
そんな彼だったからこそ、私達は彼にブローニャお姉ちゃんと同じものを見たのかもしれない。
『カインさんの事をお兄ちゃんって、呼んでも良いですか……?』
『───そう呼ばれるのは、二回目だな。私のことは好きに呼んでくれて構わない……もう一人の方もな』
『っ、はいっ!……って、え?』
『……?何かおかしい事でも言ったか?目の色や雰囲気が変わっていたから、もう一人居るんだろう?』
そんな事が、私達とお兄ちゃんの始まり。
『すまない、ゼーレ……これが私の本質だったらしい』
聖痕計画への対抗策を皆で考えている時、お兄ちゃんは突然現れた。
皆が心配していた中で、現れたお兄ちゃんは見た事も無い姿をしていた。
『終わりを見ろ、絶望を知れ……報いを受ける時だ』
漆黒の鎧に目の部分だけが赤く光っている仮面。
まるでブローニャお姉ちゃんが遊んでいたゲームのキャラクターがそのまま出てきた様な、まさに『魔王』の様な姿。
『我が名を魔王ラグナロク。全てを無に返す者』
そう話すお兄ちゃんの顔は仮面で見えなくて。
本当は見たくもなかった、信じていたかった人間の悪性を見せられてボロボロの心だったのに、そんなことなんてなかった様に必死に振る舞っていて。
『この子を頼む……この子しか助けられなかった』
そうして、私達の前に一人の少女を置いていった。
紫の髪にボロボロの服ともいえない布切れ、そして──こびりついた赤い血の色。
『っ!カインお兄ちゃんっ!!』
『心配はしなくてもいい、キアナ達はすぐに目を覚ます……これでお別れだ』
周りのみんなはお兄ちゃんに倒されてしまった。こんな姿をしている彼をそのままにしてはおけないと、誰もが立ち向かったにも関わらず、数分程度で皆が気を失ってしまった。
……残っていたのは私だけ。私に力なんて無かったけど、今のお兄ちゃんをこのまま行かせてしまったら、きっと、二度と、会うことなんて───!
『待ってぇ…!行かないでぇ…!カインお兄ちゃん…!』
『………ゼーレ』
泣きながら縋り付く様に腕を伸ばす私に、お兄ちゃんは歩みを止めた。
振り返ったお兄ちゃんの表情は見えなかったけど、その手先は僅かに震えていて─────
『私は、君達の兄にはなれなかったな』
『───────』
私を抱きしめられながら、お兄ちゃんは小さな声で呟いていた。
そんなわけ無いのに。私達の方こそ、カインお兄ちゃんに沢山支えてもらったのに。
『ゼーレ達は光ある場所で生き続けてくれ。あの繭は私が持っていく』
『おに、いちゃん……』
『どうか、その優しさを忘れないでくれ』
そうして私から離れていったお兄ちゃんを、私はただ見ているだけだった。
私は、お兄ちゃんを止める事は出来なかった。
私が、私こそが最後に止められた人だったかもしれないのに。
手を伸ばしただけで、何も掴む事は出来なかった。
私は何よりも、誰よりも弱かったんだ。
『そうだ、持っていくがいい……私の過去も、願いも、真実も……お前達のものだ!』
『ゼーレ達、お兄ちゃんに何かしてあげられたのかな』
『【ゼーレ……】』
『いつもカインお兄ちゃんに頼ってばっかりで、ゼーレ達の思いは何にも伝えられてないよね?』
そうして、お兄ちゃんはその命を自ら絶ってしまった。
私達は何もしてあげられず、何も出来なかった。
思いも何も、伝えられなかった。私達に呪いを残していって。
『……次なんて、無いのにね』
ーーーーーーーーーーーーーー
「ゼーレ、この前のキアナからの連絡だけど……」
「ええ、勿論見たわよ。お兄様が何処かで生きてるって話よね?」
とあるカフェの片隅、二人の少女が洋菓子を食しながら話をしている。
一人は目を細めながら、「
あの日から数年、かつて彼を兄と慕っていた少女達は身体的にも内面的にも大きく成長していた。
一人は天命で最も人気な医療小隊の隊長に。もう一人は多くの部下を率いる第二小隊隊長に。
今や天命には不可欠な人物とまでになっていた。
「やっぱり、お兄ちゃんは凄いね。あんな風になったのに生きてたなんて……」
「そうね。でも、何年も私達を放置しておいて自分だけ楽しく生きていた事には違いないわ」
そんな二人の話の主役は、既に死した筈の彼。
自分達の友人から送られてきた連絡は多くの者達を驚愕させ、様々な感情の渦に巻き込んだ。
姉と慕う現ゲームプロデューサーは、珍しくその生活態度を改めて。
世話になっている現在の天命大主教は、自らの息子の生存に号泣しながら酒をラッパ飲みしたり。
自分達と同じように彼を兄と呼んでいた風の少女は、自傷の跡を撫でながら暗い笑みを溢していた。
特に印象的だったのは、現在は聖フレイヤで教師をしている元雷の律者。
連絡を聞いた後、笑みを浮かべながら後輩達の指導に向かっていた彼女だったが、その日の指導は普段の5倍は過激なものである様にすら思えた。とある後輩の二人組は泣きかけた。
「全くもう……何でこんなに色んな人達に思われてるのに、あんな風になっちゃったのかな。事情があったのはわかるけど、もうちょっと私達の事も考えて欲しかったなぁ……」
「本当にクソボケよね。ずっとあんな調子だったんだから、私達どころか、ブローニャお姉様達の思いすらわかってないわよ」
そんな彼女達の姿を思い出し、彼が如何に愛されていたかを感じる二人のゼーレ。
自分達以外にも、多くの女性から思いを寄せられているにも関わらず、全く気付いていなかったであろう彼の姿に少しずつ苛つきが溜まってきた。
少なくとも、自分達はただの妹分にしか見られていなかったのだろう。
「「ねぇ、ゼーレ」」
ピシリと、声と共に握っていたグラスにヒビがが入る。
洋菓子を食べるために使っていたフォークが歪み、形を変える。
よく見れば、二人の表情や瞳に黒みがかかっている。皿を回収しようとした店員は静かに引き返した。
「「あの
二人して同じ事を考えていた事に、笑い声が溢れる。
側から見ていれば微笑ましい光景に見えるが、その実態は真逆のものであった。
「まずはキアナと芽衣さんと……ブローニャお姉ちゃんの分だね。あの三人が最初になっちゃうのはしょうがないかな?」
「それは仕方ないわ。でも、その後は話が別……私達の番にするわよ」
まるで夕食の内容を決める様に何事も無く、彼を自分達の物にする為の計画を話していく。
仮にこの光景を金星の問題児が見た場合には、珍しく揶揄いもせずに苦笑いを浮かべるだろう。
「まずは孤児院の皆にも協力してもらわないと。空ちゃんに話をすれば、きっと分かってくれるから……その後だね」
「その後は何処でも良いから閉じ込めれば良いわよ。私達がやる事は変わらないんだから、三人で居れる空間があれば良いじゃない?」
「そうだね、どうせだったら私の部屋に閉じ込めよっか?」
二人して笑みを浮かべながら話をしているが、その瞳に光はない。
あるのは、熟成され続けたかつての恋心と二人の物にするという独占欲、そして彼に対する情欲だけ。
かつては置いて行かれた二人の少女。確かに二人は彼が望んだ様に心優しい人間へと成長し、今や多くの者達に尊敬されるほどになった。
しかし、それは彼を除いた者達にだけ。
彼に対しては捕食者でしかなく、彼への愛に狂った者でしかない。
「しょうがないよね……うん、カインお兄ちゃんが悪いから。これは必要な事だから」
「私達を狂わせといて、自分だけ楽しく生きてるなんて……許すわけないでしょ?悪人には罰が必要よね?」
あまりにも身勝手な暴論。だが、彼女達からしたら彼こそが『悪』であり、患者なのである。
彼の身勝手な自己犠牲の癖は、自分達が
「これからは私達が診てあげるから……ずっと一緒に居ようね」
「罰として私達から離れられない様にしてあげる……絶対逃さないから」
かくして、量子の双翼の密会は日が沈むまで続く事となる。
今日も彼の人生の墓場への包囲網は着実に作られているのであった。
ゼーレ・フェレライ
別名白ゼーレ。天命一の人気者。
量子の海に居た際にブローニャと一緒に殴り込んできた彼に脳を焼かれた。
なんだかんだで彼もゼーレ達を可愛がっていた。もしかしたら、無意識に家族というものに憧れていたのかもしれない。
彼を止められず、散ってしまった事で壊れた。
死生の律者になった事で更に歯止めが効かなくなってるかもしれない。
なお、後にキャストリス&ホタルと彼を取り合い、殴り合う。醜い争いである。
お兄ちゃんに必要な治療をしているだけだから。何も問題は無いよね?
『ゼーレ』
別名黒ゼーレ。ツンツンデレ隊長様。
最初から彼に存在を見抜かれ、多少毒気が抜けている。
彼としても、黒ゼーレの存在はそういうもの程度にしか考えていなかった。
彼が散った後にもう一人のゼーレと同じくネジが外れた。
金星の問題児に彼を弄られた際には、割と洒落にならない程にキレた。
なお、後に自分の並行同位体と戦闘になる。愚かな戦いである。
お兄様をわからせようとしているだけ。何も問題はないでしょ?
ブローニャ
健康的な生活をした結果、何がとは言わないが本編よりデカい。
芽衣
ちからを ためている。
金星の問題児
『自由になりたい。その為には───』
かくして、
魔王
産まれてしまった黒さを認めて仕舞ったらどうしよう
鏡に映った理想で壊してくれよなぁどうしようもない
世界の輪廻も超えるような唱で俺を否定しろ
今すぐ溶かしてよこの呪いを
おまけ『【ネタバレ】クソボケ、終焉の時』
「キアナ、俺を殺してくれ。
魔王なんて名乗って倒されていったのは本当に悪かった、かつての俺が娑とヴィタに関与したのも事実だし、昔にセナディア達に呼ばれたのも事実だそのせいでセナディアと夢追い人が軽い暗黒面に目覚めているのも事実だ、この世界の大半の事に俺が関わっているのは本当だ、本当に悪かった。
でも、流石に終焉の権能を使って
「カインの意識はそのままで手足は固定して、永遠に体をピクリとも動かせない状態にして芽衣先輩達が待ってる部屋に放り込んで搾り取る!」
っていうのは流石に重すぎるんじゃないか」