一般通過脳焼きクソボケ大魔王   作:Nemusugi

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お気に入り1000人突破、誠に感謝です。



ドンキアナ復刻件ホワイトデー記念回。
クソボケ魔王、分からせタイム。

感想をくれると、とても嬉しい。


クソボケ魔王が自分の葬式を観て反省した後、彼女に食べられるまでのお話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どんよりとした黒雲が空を覆い、雨が降る午後。

 土砂降りの中であり、外出している人は少ない。

 雨足は更に強まっており、遠くで雷が鳴る音が響いている。

 

 風も轟音を立て、まるで世界が何かを訴えている様だった。

 

 

 

 

 

 

 

 そんな中、聖フレイヤ学園に多くの人が集まっている。

 

 人混みの前方には、大理石の台とそれを囲む様に沢山の花束。そして、彼が最期に遺したペンダントだけが鎮座されている。

 

 

 皆が沈んだ表情の中、淡々と準備が行われていた。

 

 

───この日、学園では彼の葬式が行われるのだ。

 

 

 

『──魔王を謳った彼を、英雄を今ここに悼むわ』

 

 

 

 そう話し始めたテレサの声に、何人かの少女が肩を震わせる。

 

 遂に、彼との別れの式が始まる時間だ。

 

 

 

『キアナ……』

 

『…もう、大丈夫だよ………』

 

 

 姉に声をかけられ、返事をするキアナだったが、その様子は決して普通ではなかった。

 

 

 綺麗な白銀の髪はボサボサになっていて、枝毛が目立っている。体は彼と最後に戦った時よりも窶れてしまっていたりと、誰がどう見ても大丈夫とは言えない状態だ。

 

 

 こうなってしまっているのは、彼女だけでは無い。

 

 

 芽衣は硬い表情をしながら、会場に訪れていた。問題ない様に見えるが、何処か危うい雰囲気を纏っていた。

 

 

 ブローニャは終始無言で、俯きながら参加していた。その手の中には、かつて彼と共に遊んだゲームセンターで取れた、ホムのキーホルダーが。

 

 

 フカは静かに始まりを待っていたが、目元には隈がある。時々、目を拭う動作をする彼女も思う事があるのだろう。

 

 

 ウェンディは只々、止められなかった事に対する懺悔の言葉を口にしている。その腕には、自ら付けたであろう切り傷の跡があった。

 

 

 皆の前に立っているテレサですら、見る人が見れば様子がおかしかった。

 

 

『彼の功績等は、割愛するわね。……皆がここに集まれた事こそが、何よりの功績なのだから』

 

 

 テレサの言葉に、誰もが静かに頷く。彼が成し得た結果は、この場に居る皆が理解していた。

 

 

 人を好きになったからこそ、崩壊を背負って消えていった1人の青年。

 そんな彼の死を、多くの者達が悔み、悼んでいる。

 

 

『共有しましょう。彼が愛したこの場所で、共に過ごした時間を──』

 

 

 こうして始まった彼の葬式は、悲しみの雰囲気に包まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして────、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、そこまでか……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その光景を見たクソボケが、目を逸らしながら呟いた。

 お前のせいだろうが─────。

 

 

 

 

 

 

 

 

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───目を開けたら、そこは知らない天井だった。

 

なんて事が、自分に当てはまるとは思いもしなかった。

 

 

「───知らない天井だ」

 

 

 先程まで、列車内で昼寝をしていた筈なのに、目が覚めたら謎の空間にこんにちわ。

 特に身体の状態に問題も無く、すぐに動ける状態だった。

 

……少なくとも、夢や幻覚ではない様だ。

 

 

「……特に怪しい物は無い、か」

 

 

 状況確認の為に辺りを見回すが、特に危険な物などは見つからなかった。

 それどころか────、

 

 

「ホテルか……?随分と豪華だが……」

 

 

 まるでホテルの様な室内には、見える限りでも多くの物がある。

 

 巨大なモニターに、飲み物や料理が入っている冷蔵庫。

 大きなバスルームや丈夫そうなベットまで。

 泊まろうとするならかなりの値段になるだろう。

 

 

 何より一際、目を引いたのは───、

 

 

 

 

 

 

『御葬式観ないと、出られない部屋

 

 

 

 

 

 

「なんだこの看板」

 

 

 出口と思われる扉の上框にある、意味が分からない看板。

よく見てみると、看板内の文字の幾つかが、新たな文字を上から貼られている。

 

 

 

 

 

……というかこれって───、

 

 

 

 

 

 

 

(あの有名な部屋か────ッ!!)

 

 

 

 

 

 

 

 ネットでよく見かける、『例の部屋』そっくりだった。

 尤も、本家そのままの内容ではなく、少し改変されてはいるが。何だ御葬式って。誰のだよ。

 

 

……だが、碌でも無い部屋である事は変わりない。だからこそ、さっさと脱出したい。

 

 

 

「……一応、確認してみるか」

 

 

 微かな希望を信じて、出口がないか探索をした。

 

 

 

 扉は───勿論、開かない。

 

 

 窓は───こちらも開かない。

 

 

 壁などは───特に抜け道などは無い。

 

 

 家具の下などは───何も無い。

 

 

「抜け穴は無いか……」

 

 

 完全な密室の様だ。何処にも出口は無い。

………穏便な方法で、脱出したかったが仕方がない。

 

 

「──壊すのが、手っ取り早いな!」

 

 

 虚数空間からビームライフルを取り出し、構える。

 製作者には申し訳ないが、俺はこんな場所に居たくはない。居続けたら、確実に酷い目に遭う気がする……!

 

 

「いくぞ例の部屋────」

 

 

 ここがどの様な場所かは知らないが、勝手に閉じ込めたのなら、こっちだって勝手に脱出してやる…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前の耐久性は充分か────!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何でだよ……」

 

 

 出れなかった。何故か切っても、打っても、殴っても開かない。どれだけ頑丈なんだ。本当に、この部屋は何なんだ。

 

 

 

「…………」

 

 

 

 ふと、横を見れば、巨大なモニターに使えと言わんばかりの椅子とリモコンが。

 

 

……正直、嫌な予感が凄い。絶対に碌な物じゃないだろ。

 看板に書いてある通り、おそらく観ることになるのは誰かの葬式だろう。

 何で好きでもないのに、葬式会場なんて観なきゃならないんだ。

 

 

「でもな……」

 

 

 同時に、このままでは出られない事も事実だ。

攻撃しても開かない以上は、何かしらの条件を満たさなければ、鍵が開かない仕組みになっている筈。

 

 そして、その条件は看板に記載されている事だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───仕方ない。

 

 

 

 

 

 

 

「取り敢えず、見てみるか……」

 

 

───まだ、観るだけならいいか……。

 

 

 数分悩んだ結果、やっぱり観ることにした。

 閉じ込められ続けられるよりは、さっさと観た方が早いと思っての判断だった。

 

 そうして、嫌な予感が体に伝ながらも、モニターの電源を入れると少しの待機時間の後に、映像が流れ始めた。

 

 腹立たしい程に座り心地の良い椅子に座り、上映会は始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───そうして、地獄の状況を知ることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 この時、彼は知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この場所に居るのが、彼だけではなかった事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 上映を見ているのも、彼だけではなかった事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして────、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『キアナ達の犬にでもなんでもなってやるさ』

 

「へぇ……そうなんだ……」

 

 

 

 

『何でもないです貴女の従者です』

 

「少し……距離が近すぎないかしら……?」

 

 

 

 

『それじゃあ、2人でデートといこうか』

 

「……別宇宙の私と………」

 

 

 

 

 

 

『俺程度の死で済んだのだから、ハッピーエンドだな』

 

 

 

「はぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

───彼女達が、この場所に来ていた事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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『あたくし達の目の前で……っ!その命を……っ!』

 

 

「───いや、違うんですよ」

 

 

 映像の中、テレサがポロポロと涙を流している。

 普段なら、絶対に見せない様な表情をしている彼女に罪悪感が湧いてきた。

 

 

 確かに、俺が死ぬ状況を色んな人が見える様に工夫というか、細工をした事は事実だ。

 

 

 

 事実ではあるのだが……、

 

 

 

 

「皆が魔王を倒せた事を、確認できる様にしただけなんです……」

 

 

 一応、敵だったから”倒されたという証拠は多い方が良いか”ぐらいの出来心だった……。

 

 後は、”死亡確認は分かりやすい方が良いよな”ぐらいの考えで見せていただけなんだよな…。

だから、そんなに泣かないでもらっても……。

 

 

 

 

 

 というか、つい見入ってしまったが────、

 

 

 

「御葬式って俺のかよ……!」

 

 

 胃が痛い…!精神的に辛い…!正直言って、ここまで悲惨な状況になっているとは思ってなかった……!

 

 

「皆、泣きすぎじゃないか……?俺、魔王だぞ……?」

 

 

 ここまで泣かれたりすると、流石にキツくなってきた……!

 テレサに至っては、育ててもらった恩があるから余計にキツい……!

 

 

「一応、敵になった筈なんだけどなぁ……!」

 

『彼が……っ!あたくしの前に現れた時っ……!』

 

 

 ……ん?気づいたら、テレサが懐を漁っている。

 

 

「何かあったか……?」

 

『無理矢理にでも引き留めておけば……こんな物を──っ!』

 

「───はぁ!?まだ持ってたのか!?」

 

 

 テレサが懐から取り出したのは、一枚の紙。

項目欄には、俺の文字が記入されていて────、

 

 

こんな物(退学届)を叩き付けてくることなんて……!』

 

「…早く処理してくれ………」

 

 

 魔王になった際に”学園へ迷惑をかけない様に”と思って、出しただけなんだが……!

 

 あぁ…退学届を見たゼーレや芽衣がまた涙を……。

そして、それに釣られて、ブローニャも……。

 

 

『ぅ…カイン、お兄ちゃんがっ…ゼーレ、達の前からっ、居なくなる前に、言って、くれたんです…』

 

 

「今度は何だ……?」

 

 

 そんなに号泣する様な事をした覚えは─────、

 

 

 

『『すまない、ゼーレ』って……!『私は、君達の兄にはなれなかった』って……!抱きしめてくれて……!』

 

「……あれかぁ……」

 

 

 確かに言ったな……言ってしまってたなぁ……。

 魔王として戦ってる時、ゼーレが止めに来た際に言ってしまったな…。

 俺に手を伸ばしてるゼーレを見て、ついやってしまってたな…。

 

 

 あぁ……ゼーレの発言で、また何人か泣き始めてる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 うーん………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

「俺、マジでやらかしてしまったのでは……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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『……大切な人が傷付くのは、見たくないんだよ』

 

「………そうなんですね」

 

「……後で覚えておきなさい…」

 

 

 

 

『お前の隣に立てる様な者じゃないとな』

 

「……そうですか。私達を差し置いて、こんな事を……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……口調などは変わっても、相変わらずですね…」

 

「本当に何をやっているのよ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

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───消えたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ごめんなさいっ…!カインお兄ちゃんに救われたのにっ……!助けてあげられなくて……!』

 

 

 

 

 

「塵となって消えたい……」

 

 

 ウェンディが俺の遺品の前で、大粒の涙を流している。腕には服で隠れているが、リストカットの跡が見えた。重過ぎないか?

 

 

 というより、葬式に出席した皆の様子がおかしい。

 

 

「皆が皆、思い詰めてる……」

 

 

 芽衣は棒立ちのまま泣き始めて、ブローニャは初めて会った時以上の無表情のまま泣いていて。

 

 フカも最初は普通だったが、途中から鼻声になっていて。ゼーレは言うまでもない。

 

 

「マジ、かぁ……」

 

 

 皆が俺の葬式で涙を流していた。

 

 俺の死を悔やんでいた。

 

 別れを心から悲しんでいた。

 

 

 

 

「あぁ…キッッツイなぁ……」

 

 

 まさかここまで、俺の死を悲しまれるとは思っていなかった。

 敵となった以上、罵詈雑言をぶつけられる覚悟は出来ていたが、そっち方向の覚悟は出来ていなかった。

 

 それに加えて、ここまで悲惨な状態になっているとは考えていなかった。

 

 

「うごごごごご……」

 

 

 あまりの惨状に頭を抱え込むが、現実は何も変わらない。この映像は、既に過ぎた過去の話なのだから。

 あっ、デュランダルさんがちょっと泣いてる。

 

 

 そうして頭を抱え続けて、気づけば彼女の番で───。

 

 

 

 

『──カイン』

 

「キアナ……」

 

 

 

 その姿は最後に見た時より、少し窶れていて。

 髪も手入れをしていなかったのか、綺麗な白銀にほつれが見える。

 

 

 

 

 そして─────、

 

 

 

『またね……!ずっとずっと、大好きだから……!』

 

 

 涙を流す中、くしゃくしゃな笑顔で別れを告げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あのキアナが、あんな事になってしまったか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「断頭台って、近くにあったか……?」

 

 

 本格的に消えたくなってきたな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「漸く、終わるわね……」

 

「はい……彼がまだ、生きている事は分かりましたが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふっ、カイン君ったら……やっぱり一度……」

 

「一回殴った後は……寝室に縛りつけて……」

 

「カインお兄ちゃんったら酷いなぁ…。やっぱり…分からせないと……」

 

「そうね……閉じ込めてでも、思い知らせてあげる……っ!」

 

「少し……説教が必要ですね……!」

 

 

 

 

 

「ちょっと、出かけてくるね…?大丈夫……3日ぐらいで戻ってくるから……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「どう、しましょうか……?」

 

「……もう、カインに任せましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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『ご覧いただき、ありがとうございました』

 

「……漸く、終わった………」

 

 

 上映会が終了し、俯いているカインが呟く。

 椅子から滑り落ちており、心身ともに物凄いダメージだった様だ。

 自業自得だが。

 

 

「………」

 

『出口は背後の扉となります。気をつけてお帰りください』

 

 

 モニターに映る映像には、淡々と帰りの案内が表示されている。

 尤も、今の彼の目には入っていなかったが。

 彼は今、自責の念に囚われている。

 

 

「はぁ……」

 

 

 あまりの衝撃に、ため息を吐いてしまう。自分のした事の被害の甚大さに漸く、彼は気づいたのだ。

 

 多くの人の涙や悔む姿を見た彼の心は、ズタボロだった。

 

 

 

 ただ、同時に思っていたのは────、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(俺って、結構愛されてたんだなぁ……)

 

 

 

 

 

 

 

───結局は、こういう事なのである。

 

 

 

 時に、隣で彼女達に寄り添った事。

 

 時に、背中を預け合いながら崩壊と戦った事。

 

 時に、プライベートにも付き合っていた事。

 

 真っ直ぐに彼女達を信頼して、共に居続けた。

 

 

 その様な事をしておいて、あの様な最期を迎えたのだから救いようが無い。

 

 というよりは、彼からしたら”それぐらいの事しか、してないのに?”程度にしか考えていなかったので救いようが無い。

 

 

(後で、ロボットフィギュア買おう……)

 

 

 ふと、列車に居るだろう男が頭を過ぎる。散々忠告をしていてくれたが、本当にそうだとは思っていなかった。

 

 

 詫びとして、彼が喜びそうなフィギュアを贈ろう──。

 

 

 そんな事を考えながら、退室しようとした時だった。

 

 

 

『最後になりますが────』

 

「ええ…まだあるのかよ……」

 

 

 

 映像の最後に、再び巨大な文字でモニターに表示される。

 早くこんな部屋から、退室したい彼であったが───、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『隣室では、聖フレイヤ学園の皆様などに、貴方が死亡した後の記録を閲覧して頂いております』

 

「………………は?」

 

 

 

 

 

────その願いは、叶わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ロックを解除します』

 

「待てっ!?今なんて───」

 

 

 

 そう彼が叫んだ瞬間、空気が変わる。

 

 

 

 

 ガチャリと、背後で開かなかったはずの扉が開く音がする。

 

 

 

 

 

 

 同時に、誰かが部屋に入ってきた様な足音が響く。

 

 

 

 

 

 

 その足音の主は、こちらに向かい進んでいる。

 

 

 

 

 

……部屋の湿度が、一気に上がった様な気さえ感じた。

 

 

 

 

 

 

 そして───、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───捕まえた」

 

 

「アッ」

 

 

 

 

 

 

 突如、何者かによって、ベットに倒れ込むカイン。

顔を上げれば、そこには────、

 

 

 

「キ……キアナ……っ!」

 

「久しぶりだね?カイン……!」

 

 

───激怒している彼女の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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上映会から数十分後、建物の廊下を2人の人物が歩いている。

 

 

 

 

「全く……カインときたら、別の宇宙で生きていたなんて……!」

 

「そうですね……ですが、元気そうでなによりでした」

 

「それでもよ!『帰る資格は無い』なんて言って……!」

 

 

 1人は、聖フレイヤ学園長等を務める『テレサ・アポカリプス』。

 

 もう1人は、天命組織所属のS級戦乙女にして、キアナの姉である『ビアンカ・アタジナ(デュランダル)』。

 

 

 今、2人は上映会でのカインの言動について語り合っている最中。

 

 相変わらずな彼の在り方に、口では苦言を発しているテレサであったが、その表情は明るいもので喜びを隠しきれていなかった。

 

 そして、そんなテレサを宥めながら、ビアンカ自身も心から喜んでいた。

 

 あの様な結末を迎えてしまったからこそ、彼の生存を確認出来たのは2人にとって、これ以上無い程の既報だった。

 

 

 

 そんな2人が隣室の前を通りかかった時だった。

 

 

 

 

 

 

「たすっ……!助けっ……!」

 

「あっ…………」

 

 

 

 

 

 開いていた扉から、匍匐前進でカインが出てくる。

 服は乱れ切っており、体の至る所に掴まれた跡が付いている。

 

 首には、妙な模様が浮いた首輪を着けており、体を震わせながら2人を見ていた。

 

 

 

 

 しかし────、

 

 

 

 

「逃げちゃうんだ…?ふーん……?」

 

「テレサっ……!デュランダルさんっ……!」

 

「──優しくしてあげようと思ったけど、やっぱりやーめた」

 

「助けてくれっ……!──ぐわぁぁぁぁぁ!!

 

 

 背後から伸びてきた手によって、引き摺り込まれていく。所詮、力を失った彼では彼女に逆らう事は出来ないのだ。

 

 

 その後、静かに扉は閉じられて静寂な空気が漂った。

 

 

 

───2人は目を逸らした。

 

 

 

 

「……遅かれ早かれ、こうなる運命だったのかもしれませんね」

 

「……えぇ…そうね」

 

 

 扉が閉まる際、一瞬だけ見えたキアナの情欲に満ちた瞳は見なかった事にした。

 全部、彼が悪いのだから仕方ない。

 

 

 静まり返った空気の中、2人は静かに笑みを浮かべる。

 

 

「フフッ……雷電芽衣さん達が怖いですね…」

 

「彼女達はずっと思い詰めていたもの。それなりの対応はされるでしょうね」

 

 

 そう言うと、笑い合う2人。

 漸くあの頃の日々が戻ってきた様な気がした。

 

 

「さて、あたくしは皆に彼の帰還を伝えなきゃ」

 

「私も手伝います」

 

 

 

 

 

 そうして、2人はこの場を後にした。

……背後から聞こえた断末魔は、聞かなかった事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───窓から見える空は、雲ひとつない晴天で晴れ渡っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 外には誰も居なくなった部屋の中、1組の男女が閉じ込められている。

 

 

 

 

 

「好き……好き……ずっと大好きだったんだから……」

 

「うっ……ああっ………」

 

「本当だよ…?えへへ……可愛いなぁ……」

 

 

 ベットの上に押し倒され、首輪をつけられたカイン。そんな彼に抱きついたキアナは、耳元で囁き続ける。

 

 

 

「全くもう……勝手に逃げちゃ駄目、だからね?」

 

「っ……あっ……」

 

 

 

 より女性らしい成長を遂げた体を押し付け、身動きが取れない彼に首輪を付けたのは良いが、どうやらまだ抜け出そうとしているらしい。

 

 

 

「駄目……っだ…………こんな事……は……!」

 

「ここまでされておいて、まだそんな事を言うの…?本当、頑固なんだから……」

 

 

 耳元で囁かれる中、何とか起きあがろうとするカイン。

 だが、その哀れな姿はキアナの欲情を更には誘うだけのものだった。

 

 

「ほらっ、動かないで?」

 

「ぐっ……あっ……!」

 

「……本当に、弱くなっちゃったんだ……」

 

 

 首輪の影響でうまく力が入らず、動く事が出来ない。

 そんな彼を軽々と押し倒せた事は、彼女の興奮を高めるスパイスにしかならなかった。

 

 ゆっくりと、彼女はその口の形を三日月型の笑みへと変える。

 

 

「全部、ぜーんぶカインが悪いんだからね?」

 

「ずっと側に居てくれたのに……勝手に消えて、勝手に裏切って、私に殺されて……」

 

「どれだけ辛かったか、分かってる?」

 

 

 彼の胴体に跨り、上着を脱がせていく。

 

 

「それなのに……別の宇宙で、女の子達を誑かして……」

 

 

 彼の胸元で、円を描くように指先を滑らせながら彼女は言う。

 

 

「だから、これからされる事もカインが悪いんだよ?」

 

「……!やめっ……!」

 

「もう……まだ分からないかなぁ……」

 

 

 未だに抵抗している彼を愛おしく見つめるその目には、沸立つハート型の何かが覗いている。

 

 

 

 

 

 そして────、

 

 

 

 

「っ……!?何処、触って……!?」

 

 

 

(カインが、自分に価値を持てないなら───)

 

 

 

 

 彼の胸部にある傷を───かつて、自らが貫いた跡を指で優しく触れながら、彼女は笑う。

 

 

 

 

 

(──無理矢理にでも、与えてあげる)

 

 

 

 浮かべたその笑みは酷く甘く、それ以上に重いもので。

 

 

 

「キア……ナ………っ!」

 

「───ねぇ、カイン?」

 

 

 

 見つめるその瞳には、愛情や独占欲が蕩けていて。

 

 

 

「もう良いよね?」

 

「責任、取って貰うけど良いよね?」

 

「───嫌って言っても、取って貰うけど」

 

 

 

 纏う雰囲気は、誰もが見惚れる程に綺麗で、妖麗で。

 

 

 

「泣いて謝っても、許してなんかあげない」

 

 

「逃げようとしても、何処にも行かせてあげない」

 

 

「絶対に、もう離してなんかあげない」

 

 

「──カインの帰る場所は、ここだけなんだから」

 

 

 

 口から漏れ出る吐息は、生暖かく、湿っていて。

 

 

 

「だから、もう離れようなんて思わないくらい───」

 

 

 

 その美しい美貌を、彼の顔に触れる寸前まで近づける。

 

 

 

「ぐちゃぐちゃにしちゃうから……」

 

 

 

 

 彼の顔に手を添えて、彼女はそっと唇にキスを落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

───お帰りなさい。貴方(カイン)の全ては、私のもの。

 

 

 

 

 

 

「一緒に、幸せになろうね……♡」

 

 

 

 

 そうして、2人の影は重なった─────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 薄れる意識の中、扉の上框にあった看板が目に写る。

 

 

 先程までは紙が貼り付けてあり、隠れていた文字が読めなかったので、放置していた物だった。

 

 

 

 

 だが、現在はその紙が剥れており──、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◯◯◯をしないと、出られない部屋

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(──────おい)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────罠だろこれ。

 

 

 

 

 

 

 





カイン
 皆の地雷を踏みまくった上で、死んだ馬鹿。
 圧倒的大戦犯。善意で地獄を作り上げた男。人の心とか無いんか?
 ちなみに遺した特大の爆弾はまだある。

 遂に食われた。3日後、ボロボロになって発見される。
 タコ殴りにされた後、また食われる。体中、跡だらけ。
 その後、関係者の皆様に囲まれながら、土下座する事になる。

 輝く星々に手を伸ばしたら、流星群を喰らったアホ。


芽衣
 本当に……!生きていてくれて良かった……!
→カイン君?『俺程度』ってどういう意味かしら?
→キアナちゃん、まずは貴方が教えてきて?これから、皆で教え込まないといけない様だから……。
 

ブローニャ
 やっぱり、生きてるじゃないですか…!
→別宇宙の私とゼーレに絡まれて、キスされて……は?
→キアナ、あのクソボケを縛り付けといてください。少し、準備をしてくるので……。

 
上映会参加の方々
 クソボケがーッ!!
 実は、目の前で彼が死ぬ光景を見せられていた。葬儀後は更に酷い有様だった。

 元気にしてる姿に泣いたり、怒ったりして情緒がぶっ壊れた。
 3日後、ボロボロになっているカインをタコ殴りにする。

 ゼーレ達は何か裏でコソコソしてるらしい。監禁とか言ってる。一体何をしてるんだ……?


 










 キアナ
 ずっと隣に居てくれた青年が、殺してしまったと思っていた人が、大好きな彼が生きていてくれた。
 
 喜んだのも束の間、別宇宙で知らない女の子達を誑かしていた。

 この場所には、帰らないと言っていた。

 自分には価値が無いとか、帰る資格は無いとか話していた。



 逃すわけには、いかなかった。



───もう二度と、絶対に離してなんかあげないから。



 3日後、艶々した状態で部屋から出てきた。




 





『例の部屋』
 気づいたら飛ばされていた。何故かは誰も分からない。
摩訶不思議な出来事だっただけ。


































後日

 消えたカインを探す星穹列車やヤリーロ-Ⅵ、果てにはオンパロスの者達までにとあるメッセージが届く。
その内容は───、



『私達、結婚しました──!』


 その文言と見知らぬ女性がカインに抱きついている写真。

 写真内の彼の指には、お揃いの────、























『返せぇぇぇぇ!!!』



───この日、2つの宇宙を股にかけた大決戦の火蓋が切られた。

クソボケの末路は──

  • 当然の結果
  • 自業自得
  • まだ居るだろ?
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