それでは第五話、どうぞ。
それと、前回の話で勘違いしてしまった方がたくさんいらっしゃったので、改めて訂正させていただきます。
一夏の力は【IS症候群】ではありません。
その辺りを含め、今回の話を投稿したいと思います。
それでは、どうぞ(^_^)/
□天災鍛冶屋/blackSmith
そして世界は反転する。何もかもが、通用しない世界にへと。
彼には常識など一切通用しない。
なぜなら、彼は英雄だからだ。
彼自身も、自分が何者なのか正直明確な答えは示せないだろう。
人間なのかすら分からない。
だって、彼はそういう存在なのだから。
地獄の日々から解放される前、少年だった彼は言葉を聞いた。
心が壊れ、何もかもがどうでもよくなった日々。
その日々の中、彼は声を聞いたのだ。
頭の中に響いてきた自分自身の声を。
―――織斑一夏。世界と契約する気はないか…?
いつの間にか、目の前には自分が立っていた。
まだ、心が壊れる前の優しかった自分。
それが微笑みを浮かべてそこにいた。
差し出された手。彼はそのとき、なんとなく理解していた。
この手を取れば、きっとすべてが変わる。
彼は躊躇しなかった。
地獄を見ていた彼には、それは救いの手に他ならなかったからだ。
直後、世界は反転する。
辺り一面に広がる虚の空間。
真っ暗で、目を閉じているように何も見えない。
それでも、彼は前に進んだ。
やがて、一筋の光が見えた。
彼は必死でその光を追う。
そして直後、世界は再び反転した。
気づいたとき、彼は自身の姉に抱きしめられていた。
辺りには粉々に壊れた機械の数々。
怯え、困惑し、愕然とする彼をモルモットとしてきた人間たち。
瓦礫は崩れ、上には空が見えた。
そして、目の前には真っ赤な血が見えた。
姉は体の一部を失いながらも、なお自分を優しく抱きしめてくれていた。
―――契約は果たされた。おめでとう、君は今日から英雄だ。
頭に響く声に、彼は瞳を閉じる。
誰にも止められない。頭の中から溢れて。彼を包み込む。
彼は人であって人ではなくなった。
もう彼は、ただの人間でない。英雄となったのだ。
―――だから守ってもらうよ、すべてを。生きてる時も…死んだ後も。
見上げた先に広がる大空。
彼は知る。この空こそ、自分の世界なのだと。
夢や希望もない。愛することもできない。
けど、そこにあるのは間違いなく自分の世界だった。
「…My dream is Infinit Stratos…」
わが夢は遥かなる空の彼方へ…。
契約の元、彼は力を与えられた。
空っぽになった心を埋めるように、彼は人を求めた。
そして手に入れた。何よりも大切な者を。
そして知った。自分にはそれを守る力があることを。
だから彼は飛び立ったのだ。遥かなる空の彼方のその先へと…。
*
「【同調開始(Trace on)】!!」
その瞬間。一夏は、体の中に電撃のような感覚が走った。
そして、すべてが見えるようになった。
この場にいる全員の呼吸。心臓の鼓動。血液の流れ。気の流れ。細胞の動きすらも。
何もかも、全部が。
情報の多寡(たか)で頭が割れそうだった。
けど、一夏は続けた。その先にある勝利を目指して。
「っ!」
張りつめた空気がセシリアにも伝わったのか、セシリアはごくりと唾をのんだ。
けど、この雰囲気で黙っているほど、セシリアは無知ではない。
これまでの一夏との戦いで、セシリアは知っているからだ。
織斑一夏には、常識など一切通用しないのだということを。
「そう何度も好き勝手にはさせませんわ!舞いなさい【ブルーティアーズ】!!」
だから、先手必勝。
何かをされる前に、セシリアは一夏を潰しにかかる。
が、それに一夏は動じない。
シールドエネルギーなどなきにしもあらずだ。次に一撃を貰らえば、間違いなく一夏は落ちる。
それでも、一夏は動かなかった。
「…全長、推定1,5m。幅、推定30㎝。重量、推定150㎏と仮定する―――」
ぶつぶつと一夏は何かを呟きだした。その間にも【ブルーティアーズ】は、目の前に迫ってくる。
でも、一夏はやはり動じなかった。彼にはその感情がないのだから。
恐怖と言う名の感情が。
「内部構造の把握完了。全体イメージの構築完了。操作技術の想定…完了」
そして、全てを終え一夏は瞳を開いた。
直後、目の前に迫る【ブルーティアーズ】が目に入る。
それを見て、一夏はほくそ笑んだ。
長い、長い闘いの執着が、ついに見えたからだった。
「【同調完了(trace off)】…」
【ブルーティアーズ】から光が放たれる。その攻撃を、一夏は避けることができない。
一瞬で、一夏は爆炎にのみこまれた。
それでも、セシリアはスコープ越しにその瞬間を確かにとらえていた。
彼がほくそ笑んでいるその瞬間(とき)を…。
*
「…終わった」
それは誰の声だったのか、その声を発したであろう本人である箒と麻耶にも分からなかった。ただ、一つ言えることがあるとすれば、その言葉に信憑性は皆無と言うことだけだった。
2人とも、確信はできていなかった。本当にこれで、終わったのかと。
爆炎は明らかに問題の量だ。下手をすれば致死量にすら届くかもしれない。
けどやはり、これは終わりではなかった。
ポツリと千冬が呟く。これは終わりではない。寧ろ―――
「…いや、始まりだ」
千冬は知っていた。
これから起こるのは常識では図れないことだと。
なぜなら、あそこにいる自分の弟は、非常識が服を着て歩いているような存在だ。
なぜなら彼の名前は織斑一夏。【英雄/非常識な人間】なのだから。
*
爆音がアリーナ全体にこだまする。
セシリアは、今度こそは…と確信していた。シールドエネルギーは喝々。そんな状態のISを仕留められないのでは、英国の代表候補生の名折れだ。
いや、そんなものはとっくの昔に折れている。武器なしのISにいいように扱われていたその辺に。これは英国の代表候補生としてではない。
セシリア・オルコットとしての名折れだった。
けど、やはりセシリアは感じていた。あり得ないとはもちろん思う。
けど、やはり感じずにはいられなかった。
とてつもなく、嫌な予感を。
そして、その予感は当たっていた。
「…My dream is Infinit Stratos…」
再び聞こえてきたその声に、セシリアは戦慄した。まるで大劇場で聞いているオペラ歌手の歌声のように耳に響き、心に響く。不快ではなく、だが心地よいわけでもない。
そんな不思議な言葉の旋律に、セシリアは凍りついたのだ。
爆炎が晴れていく。そこに白い機体が見えた。
飛んでいる。明らかにオーバーキルな攻撃だったはずなのに、織斑一夏はそこに在り続けていた。
「…No, I shouldn't,I can't believe it.…
―――…うそ…。信じられない…」
それは無意識に出た言葉だった。
全身の細胞が震えあがったような感覚。
恐怖が全身を支配する。こんな、こんな思い初めてだった。
セシリアはたとえドラゴンが目の前に現れたとしても戦える自信があった。けど、目の前にいる男はなんだ?ただの人間。人間のはずだ。
けど、そんなことではもう言い表せない恐怖がセシリアを支配した。
あそこにいるのは、人間じゃない…ただの、化け物だった…。
「monster…
―――化け物…」
「…分かってんじゃねーかセシリア。そうだ、俺は【化け物】。ただ、人肌が恋しいだけの…【寂しがりな化け物】なのさ」
直後、セシリアはライフルを構えてしまった。冷静沈着な狙撃兵のセシリアだが、この状況で冷静な判断ができるほどに、まだ人間が出来ていなかった。
だが、そんなの当たり前だ。だって彼女はまだ15歳の少女なのだから。
そして、ここでライフルを構えてしまったことが命とりだった。
人間、危機的状況には思わず手に持った武器を構えてしまう。そこから恐怖のあまり振り回すにしろ、冷静に照準を構えるにしろだ。
だからこそ、命とりなのだ。なぜなら、一夏はもうすべて(・・・)を知っているのだから。
「…【戦乙女(valkyrja)】」
「っ!?」
刹那、一夏は一閃した。
白式が牙をむく。【戦乙女】の圧倒的スピードが、セシリアのすべてを切り裂いた。
何が起こったのか、観客には分からなかっただろう。それはきっと、モニターの向こうで見ている箒も麻耶も同じこと。千冬姉は例外としても、この場にいるほとんど人間が何もわからなかったに違いない。
そう、やった本人である一夏と。
ブルーティアーズのアラートを聞いているセシリアを除いては…。
「!? Shit…!!」
驚嘆の瞳で、セシリアが叫んだ。だけど、すべては後の祭りでしかない。
そのときにはすべてが、終わっていたのだ。
「…戦場では、一瞬の判断ミスが命取りなのだぜ。英国淑女(セシリア・オルコット)」
その瞬間。セシリアの虎の子、ビット型兵器【ブルーティアーズ】四機が一斉に爆散した。
爆音がアリーナ全体に響き渡り、爆風は2人の髪を靡かせる。
セシリアはただただ愕然とした。
そこらかしこに散らばった【ブルーティアーズ】の残骸。それが、セシリアにとって圧倒的有利であり続けた物の末路だった。
思わず逃げ出したい気持ちがセシリアを包んだ。
けど、一夏の瞳がセシリアを捕らえる。逃げ道は…なかった。
「…My dream is Infinit Stratos…」
一夏が呟く。世界が反転する。
その言葉の旋律に、セシリアは身構えた。
こんなところで負けるわけにはいかない。セシリアは片時も忘れなかった長年の思いを思いだし、折れそうな心を持ち直した。
―――わたくしは、こんなところで負けるわけにはい…!!
それは小さい頃の記憶。
セシリアの家庭は典型的な女尊男卑の家庭だった。
婿養子だった父は、いつでも母にペコペコしてひれ伏してばかり。その姿が情けなくて、彼女は男を嫌いになった。
小さい頃は男なんて…と、何度も思った。
自分に優しくしてくれた父を何度も邪険にした。
けど、両親が列車事故で亡くなったとき。そんなことはどうでもよくなった。
若くしてオルコット家を率いることとなったセシリアは、その若さで社会の辛さを知ったのだ。
若いからと言う理由で軽んじられ。セシリアはこれまで何回も、何回も、頭を下げてきた。それこそ、あのときの父のように。
ときには身体を求められたこともあった。
けど、セシリアはめげなかった。
頑張って、頑張って、何とか英国の代表候補生にもなって、そしてようやくここに来たのだ。
時期、この女尊男卑の世界は終わる。それはセシリアが私情無しに考えた末の結論だった。この世界で、女性は調子に乗りすぎたのだ。
別に、それが悪いわけではない。男性だって、かつてはそうだったのだから。
けど結局、それではお互いの憎しみしか生まない。
だから、セシリアは決意したのだ。
時期に起こる戦争。それを自分の手で終わらせ、真の意味で男女平等の世界を創ると。
―――だから、負けるわけにはいきませんわ!!
「舞いなさい!!【ブルーティアーズ】!!」
その決意を思い出した時、セシリアの目が甦る。セシリアはライフルを構えた。そして直後、2機の青い物体がブルーティアーズから放たれる。【ブルーティアーズ】だった。
放たれた新たな【ブルーティアーズ】が白式に襲い掛かる。
その攻撃に、一夏はまた笑みを浮かべた。
「…知ってたさ」
その瞬間、一夏は突撃してくる【ブルーティアーズ】を軽々避けた。
レーザーやミサイルではなく【特攻】してくる事も何となく分かっていた。
だって、ライフルを構えた時点で、セシリアにはそれしか(・・・・)できないのだから。
本命は【セシリア(本体)】だった。
「Fall into the ground!! ichika!!
―――墜ちろ!!一夏!!」
キュインッ。ライフルから弾丸が放たれる。
正確に、確実に、俺の眉間を狙ったショット。土壇場で、今日一番の弾丸が放たれたのだ。
一夏は心のなかで歓喜した。さすが、さすがはセシリア・オルコットだと。こんな状況でもまだ、こんな引き金を引けるだなんて。
一夏は改めて感じさせられた。
あぁ。やっぱりそうだった。織斑一夏ではセシリア・オルコットには決して勝てない。
なぜなら、織斑一夏はISの操縦が素人(・・)も同然なのだから。
誤魔化し誤魔化しやってきたが、やはり彼女には勝てない。一夏は口元をニヤリと上げた。
やはり、使わなければいけないのか。この力を。
「…【鍛冶屋(blackSmith)】」
直後、一夏の世界が反転する。
青空のもと、一夏は何本も差し出される剣の柄に手を伸ばす。
この力の元となった人と同じ、じゃじゃ馬な力がこもった【紫の柄】の剣を。
瞳を開く。瞬きほどの時間しかたっていないはずなのに、世界が違って見える。
力は1つ1つしか使えない。だから、ここではもう【戦乙女】は使えない。それ以前に、身体が限界だ。使いすぎたのだ。【戦乙女】の力を。もう、【戦乙女】の力を使うだけの余力など残ってもいない。
だから、残るはこの力のみ。一夏は迫りくる弾丸に瞳を向けた。
その瞳はまだ、死んではいなかった。
―――頼むぜ、じゃじゃ馬。
そして一夏は高らかに声を上げた。残った力、そのすべてを込めて。
「【投影開始(trace on)】!!!!」
*
そのとき、世界が反転した。
セシリアは自分の目を疑いたくなった。
目の前に広がるのは、どこまでも続いていく青い空。
おかしい。なぜ、自分はこんなところにいるのか、セシリアは愕然とした。
確かに、さっきまで自分は織斑一夏と戦っていたはず。
虎の子の【ブルーティアーズ】を破壊され、絶望しかけたのも覚えている。
自分の夢が、思いが崩れ落ちそうになった。
これまでの自分の人生をすべて、否定されそうになったのだ。
けど、セシリアは絶望しなかった。
だから、セシリアは自分が持てる限り最高の攻撃を一夏に放ったはずだ。
今までにないほど集中していたと思う。
引き金を引いた瞬間、セシリアは魂が洗われたような心地だった。
頭の中が真っ白になるほどに。
その結果がこれだった。
引き金を引いた瞬間、セシリアは“どこまでも続く青い空にいた”のだ。
観客も、アリーナも、地面もなにもない。
それ以前に、さっきまで夕焼けで空は真っ赤に染まっていてはずなのに、ここはまるで真昼の蒼穹のようにどこまでも澄み渡った青空。
セシリアは現状を理解できなかった。
「…なん、ですの…ここは…」
無意識に出た言葉が大きなこの空の彼方へと、かき消されたような気がした。
分からない。ここがどこで、どうやって来て、なぜいるのか。
セシリアにはまったく分からなかったのだ。
「…My dream is infinit stratos…」
そのとき、声が聞こえた。
今日、もしかしたら一番聞いたかもしれない声。
それは何かあるたびに一夏が呟いていた言葉。
その声が聞こえたのだ。
セシリアは戦慄する。
何となくだが、セシリアは理解出来たような気がした。
この世界は現実のものではない。
夢か、はたまた幻か。だけど、敢えて言えることがあるとしたら。
ここは“織斑一夏”の世界だということだった。
「【投影開始(trace on)】!!!!」
そして、世界は再び反転した。
*
「え…」
気づいたとき、セシリアは再びアリーナにいた。
その刹那、アリーナがまた激しい爆発音に包まれる。
だが、セシリアはその爆炎にも目もくれず茫然と立ち尽くしていた。
さっきまで起こっていた夢のような現象に、茫然とさせられてしまったのだ。
今のは一体なんだったのですか…?
正直、気味が悪かった。けど、あれはなんだったのか、思考が停止してしまいそうなほどの衝撃だったのには違いない。
まるで自分が自分ではなくなったみたいに感じた、あの不可思議な世界での出来事を思い描いた。
ところがセシリアは気が付いた。
さっきまでいたあの世界の記憶が、曖昧なのだ。
確かに、さっきまでセシリアはどこか別の場所にいたはず。
そのことは確かに覚えているし、記憶もあるから間違いはない。
けど、なぜだかそれを思い出すことができないのだ。
セシリアは自分の現状に、困惑した。
もう一度、もう一度、よく考えてみる。
あの世界。仮にそう呼ぶ場所に、セシリアは確かにいた。
それがどんな世界だったのかは、いまいちよく思い出せない。
けど、セシリアは1つだけ、確かに確信したことがあったはず。
何か…何かを、重大なことを―――…
―――…My dream is Infinit Stratos…
そうだ。そうだった。そういえば、声を聞いた気がした。
その声を聞いたことで、セシリアは確信したはずだ。あの世界が、あの世界は―――
―――【投影開始(trace on)】…。
「っ!」
その瞬間、セシリアはハッとした。
思い出した。あの世界のことは、まだ全然思い出せないけど、セシリアは確かに確信したはず。
あの世界は、他の誰のものでもない。
今、目の前にいる【織斑一夏の世界】だったということを。
「…その反応。そうか、セシリアは招かれたのか…あの場所に…」
声が聞こえた。
小さすぎて、よくは聞こえなかったが。その声は、確かに目の前の爆煙の中から聞こえきた。
誰の声かなんて聴く必要もない。
この声の主。そんなの、1人しかいないのだから。
「一夏…様…」
「…生憎と、まだ墜ちてないぜ。なんせ俺は化け物なんだからな」
そして、煙が晴れていく。
セシリアは唖然とした。目の前に広がる光景が、あまりに有り得ない事だったから。
そこに広がっていた絵は想像だにしなかったものだった。
「…舞え」
キュインッ。一夏がそう呟いた刹那、“それ”から放たれた光がセシリアの躰を貫いた。
シールドエネルギーが一気に減少する。
何が起こったのか、一瞬判断がつかなかった。
なぜなら、彼女の目の前で絶対に有り得ないことが起こったからだ。
地面に激しく叩きつけられる。
砂埃が一気に舞い上がった。
地面に強制的に仰向けに落とされてから数秒、セシリアは茫然と空を見上げていた。
目の焦点が合わない。真っ赤に色づいた空が何重にもぶれて見える。
そのときになって、セシリアは初めて気が付いた。
自分は今、撃たれたということを―――…
「W,What happened…?
―――な、なにが、起こったのですか…?」
釈然としない現状。
セシリアは、再び宙に舞いあがった。
そして気が付いた。目の前にある圧倒的な光景に。
「な、なんで…どうして…」
「…安心しろ。夢でも幻覚でもない。目の前にあるのは正真正銘現実(リアル)だからな」
震える唇でやっとのこと出した言葉に、目の前の男。織斑一夏はそう言って、ニヒルな笑みを浮かべた。確かに、彼の言うとおり、セシリアははじめ、この現状を信じたくはなかった。
できれば、夢や幻覚であってほしい。そう願ってもいた。
だけど、それは紛れもない真実(リアル)。疑いようのない現実だった。
セシリアは震える唇を無理やり動かし、さらに言葉を紡ぐ。
「な、なんで…一夏様。なんで…」
そこにあった現実(リアル)を認識するために―――…
「なぜ、あなたが【ブルーティアーズ】を操っているのですか!!一夏様!!」
瞬間、世界は反転する。
誰もまだ知らない。本当の真実(リアル)に向かって。
*
この世界には秘密がある。
それはまだ誰も知らない虚空のような現実。
決して、開けてはならない禁断(パンドラ)の箱のように。
誰も気にすることなく、ただ永遠にそこにあり続けてるはずだった。
だがある日、その箱は開かれてしまった。
自らの運命を呪い、誰よりも人の温もりを求めた少年の手によって。
そして、彼は呪われた英雄となった。
それは彼自身が望んだことでも、生まれながらに得た運命でもない。
この醜くも美しい世界が彼をそうさせたのだ。
偉人には三種類ある。
生まれたときから偉大な人、
努力して偉人になった人、
偉大な人間になることを強いられた人。
「偉大な人物になる3つの方法」シェイクスピア
織斑一夏。
彼は、生を授かっている間に世界を壊し。
死後に、世界を守る守護者となる。
そんな数奇な運命を背負った、英雄となることを強いられたただの人間なのだ。