学園では箒とセシリアとラウラだけで、ちょっとさびしいのでオリのヒロインを加えます。
感想よろしくお願いします(#^.^#)
□喧嘩とお告げと決闘と
約三時間ぶりの再会だった。面と向かい合ったファースト幼馴染。だが、タイミングがあまりにも悪かった。
一人部屋だと思っていたから油断した。誰がシャワーを浴びていると考えるだろうか?いや、それ以前にこぼ状況自体がおかしい。幼馴染とはいえ、俺は男で箒は女だえぞ?俺は絶句し、箒も呆けている。
が、数瞬後、箒は状況を理解したのか壁に立てかけてあった木刀を手に取り、俺に思いっきり振り下ろした。
「ううぇい!?」
避ける。でも、いきなりの出来事によける瞬間変な声が出てしまったのは、ご愛嬌ということで勘弁していただきたい。箒の一撃は俺が横になっていたベッドの淵に当たる。微妙に欠けていた。おい、弁償ものじゃないのかこれ?
そんなことを思ったのもつかの間、箒はキッと俺を睨み再び木刀を振り上げた。
やばい。殺される…。瞬間的にそう思った。ごめん千冬姉、こんなところでくたばる不出来な弟を許してください。天に祈った。そして、ついでにいい年してウサ耳着けた神の頭脳を持つ女にも祈った。何のご利益があるかは知らないが。
その祈りが通じたのかは分からないが、箒がグッと木刀を振り上げたまま思いとどまった。
未だに羞恥に燃える箒の顔。下手なことを言うとやっぱり殺されると思う。
けどとりあえずは…。束さんありがとう!!俺は今、初めてあんたに感謝したよ!!
遠くでアリス擬きがくしゃみする音を俺は確かに聞いた気がした。
「なぜ、お前がここにいる!!」
「いやいやいや、それはこっちのセリフだ!!お前こそなんでこの部屋にいるんだよ箒!?」
質問するくらいまでは冷静になったらしい箒は、一気に捲し立ててくる。
だけど、そんなことを言われても俺にもさっぱりなのだ。
「そんなの決まってる。ここが私の部屋だからだ!!」
「はいぃ?そ、そんなバカな…。俺の部屋もここなんだけど…」
「はあ!?」
俺はそう言って、未だに手で握っていた鍵を見せた。箒が意味がわからないという顔をする。それは俺も同じ気持ちだった。
「まさか、お前が私の同室なのか?」
「…あぁ、どうやらそうらしい」
「ど、どういうつもりだ」
「はい?」
「どういうつもりだと聞いているっ!?男七歳にして同衾せず!!常識だ!!」
いつの時代の常識だよ。武士っ娘か、お前は。あぁ、武士っ娘だったか…。ていうか、この言葉が分かる俺もそうとうなんだけどな…。
そんなことを考えながら、頭を切り替える。
だが、確かに箒の言うとおり15歳の男女が同じ部屋で生活するのは問題だろう。
何より、俺には一人でいた方がいい都合があった。ここにいること自体がイレギュラーだというのに、俺はさらに行動を縛られることになる。しかも、相手は箒だ。お堅い彼女のことだから、きっと俺が夜、部屋を抜け出すことも注意されるはずだ。
俺はこれからのことを考えて頭を抱えてしまった。
「ま、ま、まさか――――」
「まさか?」
箒が顔を真っ赤にしたと思ったら、すぐ青ざめる。木刀を握る力が緩んだ気がした。
そのことにホッとし、俺も肩の力が抜けた気がした。
「まさかお前から、希望したのか…?私の部屋にしろと…」
「んなわけあるか!?」
が、その瞬間、俺はさっき以上に肩に力を入れて命一杯叫んでいた。箒が少し残念そうな顔をしたような気がするのは、気のせいであると信じたい。が、また一瞬の後には俺を睨む彼女の姿があった。鈴か、お前は…。あ、間違えた。猫か、お前は…。
俺は冷静になった頭でこの状況を考えるため、息を吐いた。頭の中がすっきりした気がした。
「はぁ…落ち着け、箒。俺もいったん頭の中を整理したいから…」
「うっ…しかし…」
「そしてできれば木刀も下ろしてくれないか?そんなの振り回されたら俺の命がいくらあっても足りないから」
「す、すまない…」
怖かった。どれくらいかというと、千冬姉が俺を連れ去ろうとした雇われを、叩きのめした時の10分の1くらい怖かった。
木刀は下ろしたが、未だに俺を睨んでいる箒。だが、それよりも俺にはもっと重大な問題が残っていた。
「あとな、箒。その、すごく言いにくいんだけど…」
「…なんだ?」
「いやね、さすがのそろそろ…何かお召し物を着ていただきたいのですが…ダメですか?」
「っ!?み、見るな一夏!!」
「くぺっ!?」
風呂上りのためバスタオル一枚のままだった箒。その一撃が俺の頬を捉えた。木刀持ってない方で叩かれたのはせめてもの罪悪感からか…。どのみち、俺には不条理すぎる結末だ。
にしても、どこかのセカンドと比べたらあのふくよかな体つき…変わりすぎだろ、箒。胸についてるデカいもの本気でメロンかと思ったぞ…。欲情できないのがホントに残念だよ。
「あ、あわわ…たびたびすまん一夏。あと、できれば少しの間後ろを向いててくれないだろうか…」
「いててて…。へーへー分かりやしたよ、お嬢様」
俺は慌てて後ろを向く。その前になぜか渡された木刀を、俺は暇つぶしに眺めた。
…ひびが、入ってました。うわぁ…マジで殺す気だったんだ。全身からブワァと一気に汗が出た。シャワー浴びたいよ。けど、もう一時お流れだろうな。
布の擦れる音が聴こえる。着替えをしている箒の姿を思い浮かべないようにしながら、俺はとりあえず素数を数えるのだった。
「すまん一夏。もういいぞ…」
「お、おう」
着替えが終わったのか、箒からお許しの声がかかる。俺が振り向くと、そこにはなぜか浴衣を着た箒の姿があった。一瞬、見惚れてしまった。
きっと、これが彼女の寝巻なのだろう。けど、わずかな隙間から見える谷間や太ももは、とてつもなく扇情的で色っぽい。本当に、欲情できないのが残念だった。
「ごめん、箒。その…お前のあれを見ちまって…」
「いや、こちらも少し感情的になりすぎた。すまない、一夏」
まずは互い非を認め謝罪をする。着替えというワンアクションを挟み、冷静になったのだろう。
冷えた頭で言葉を交えた後、箒から話題を振ってきた。
「その、なんとうか…本当にすまなかった」
「いやいや、それはこっちも悪かったんだしお互い気にしないようにしよう、な?」
「だが…」
「相部屋のことについては俺があとで千冬姉にでも聞いとくから。今日のところは、もうこれだけにしとこうぜ。今日はいろいろあったからな…」
「あぁ、そうだな…」
『『…。……』』
暫しの間、沈黙が流れた。ちょっと、無神経だったかな。
俺は自分の鈍感スキルを少しだけ呪った。人付き合いいい方じゃないけど、これからは少しずつ変えていかなければな。一番の障害であるこのスキルはもう、どうしようもないような気がするけど。
俺はそんなことを考えて自嘲気味に笑った。
仕方なく、俺は辺りに目を向ける。ベッドの傷。これ、いくらぐらいするんだ?…ばれなきゃいいけど、見つかったら千冬姉にこっぴどく絞られそうだ。
それから、天井を見上げた。何もない白い天井が広がっている。うん、つまらん。
仕方なく、俺はベッドの横の机に目線を移した。すると、そこにはいい具合に俺の方を向いている写真がある。俺は知らぬうちに笑みを浮かべていた。
「一夏。その写真は…?」
「ん?」
俺の視線の先に気が付いたのか、沈黙を破って箒が口を開く。俺が眺めていたもの、写真を見て不安そうな声で問いかけててきた。
ここでもオートスキル『鈍感』が働いてしまった俺は、平然と箒の問いに答えるのだった。
「…。あぁ、こいつは昔に写真だよ。中学の頃のな」
その写真に写っていたのは、さっき見た夢の俺達だった。
中心でふて腐れた顔の俺。その隣で俺に抱き着く鈴。そのまた隣で満弁の笑みでダブルピースをする弾。鈴とは反対側では俺の肩を抱く数馬。そのまた隣では千冬姉が薄く、けどどこか嬉しそうに笑っている。
けど、箒が特質したのはその中でも俺に抱き着いている彼女だった。
「一夏。この女は誰だ?」
「ん?あぁ…鈴か」
「りん?」
俺の隣で満弁の笑みを浮かべる鈴は、身内のひいきを差し引いても可愛いのだろう。トレードマークのツインテールはまだ鈴の付いたリボンでまとめられている。とても可愛らしい少女だった。
そんな彼女と俺が共に写っている。箒が興味を抱いたのはそのことについてだろう。
数馬、弾。お前ら、写真ですら興味を持たれなかったぞ…。今は亡き親友に、俺は心の底から同情した。苦笑いし、俺は鈴の説明を掻い摘んでした。
「ほら、俺ってさ、小三の終わりにいろいろあったじゃん。悪いけど、その辺は省いてくれるとありがたいからいいか?」
「あ、あぁ。それは…すまない」
一瞬で箒の顔が暗くなった。その有り様に俺はポンポンと箒の頭を軽く叩く。
一気に顔が真っ赤になった。子ども扱いしてしまって怒ったのか?けど、不機嫌そうな顔ではないからひとまず安心だ。寧ろ嬉しそうな顔なのは気のせいだろうな。
元気がなさそうな箒のテンションを上げるためにも、俺は意識して明るく話を続けた。
「はは、今日の箒、ホント謝ってばっかだな。ま、その話はいいか。で、それから一年間。いろいろあったんだけど、小五のときに同じ学校に戻れてな。で、その頃であったのが鈴なんだ」
「待て、少なくとも私は小四の終わりまではお前の学校にいたはずだぞ?なぜ、私は彼女の存在を知らない?」
「あぁ、それは鈴も転校生だからだな。見た目じゃわかんないかもしれないけど、鈴は日本国籍じゃなくて中国国籍なんだ。母親は日本人だからハーフなんだけどな。で、なんでも親父さんが母親の故郷である日本で中華料理を広めたいとかって理由で日本に来てな。小五のときに転校してきたんだ」
あの頃の自分を思い浮かべてみる。
人形なんて呼ばれ、群れることを嫌い、尖った刃物のようにいつもギラギラしていた。
そんな俺の前に現れたのが鈴だった、俺は、今でもあの日を忘れない。だって、あの日俺の世界に新たな力が加わったのだから。何者をも寄せ付けない戦闘力を持つ力が。
俺の説明に、箒はどこか納得したように頷いた。
「…なるほど、私も知らないわけだ。それで、どうしてお前とこの鈴?って女は仲良くなったんだ?」
「えーっと、それは…今は聞かないでほしいな。ちょっと言いにくいことだから。けど小五から中二まで、ずっとつるんでたからな。所謂幼馴染ってやつだ。箒がファーストで、鈴がセカンド幼馴染」
「ファースト、セカンド…。そうか、私がファーストか、ふふん」
俺の言葉がどうやらお気に召したらしく、箒の機嫌はいつの間にか上機嫌になっていた。俺には、箒がなぜそんなに上機嫌なのかまったく理解できていない。嬉しそうに何かをぶつぶつ呟いている。
が、すぐに正気に戻ったのか、ゴホンと咳払いをし、箒は思い出したように言ってきた。
「そういえば、教室でも親しそうに話していた女子がいたな。あれは誰だ?」
「セシリアのことか?さすがに金髪の娘と友達には…ごめん、今のは忘れてくれ」
「?なぜだ?」
「いや、若干一名ほどフランス人の女の子に知り合いがいてな…。あまり公にはできない娘だし、俺の口からはちょっとな…」
「…ほう、つまり、お前にはその鈴という女以外にも女の知り合いがいたと?」
「あ、あぁ。あと、親友の妹にも少し…」
「い~ち~か~!!お前そこに直れ!!正座しろ!!」
また再び阿修羅羅刹のごとく怒りを見せる箒。
再び木刀を手に持ち、一気に俺に襲い掛かった。
「な、何すんだ!?」
「黙れ!?お前というやつは…私と会っていなかった7年の間に…、その腐った根性!!私がじきじきに叩き直してやる!!!!」
「不条理だあぁああああああああああああああああ!!!!」
入学初日の夜は、このように騒がしく更けていったのだった。
*
「いててて…たく、容赦ないんだから箒のやつ…」
翌朝、俺は痛む顔を消毒し、入学2日目のIS学園の桜並を歩いていた。
朝、俺が起きたときには箒は部屋にはいなかった。と、いうより俺は昨日何時に寝たのか、その記憶すら曖昧だった。
ただ、覚えているのは昨夜、箒が若干涙目になりながら木刀片手に全力で追いかけてきたこと。
ホント、あの狭い部屋の中でよく逃げていたと思う。その代償が、顔の頬を一発ぶたれただけなのがだから軽いものだ。ま、夜中に暴れてたから千冬姉が部屋まで来て、高価な家具が大変なことになっているのは見られたせいで小遣い半年ストップは痛かったけどな…。
「容赦ないよ。千冬姉…」
とほほ、と。俺は涙ながらに足を学園にへと進めて行った。
ちらほらと、登校する生徒の姿が見える。
だけど、何ともなしに1年生の姿が少ないように感じられた。けど、それも仕方がない。
なんと言っても、入学したての昨日のうちに徴兵なんてさせられたのだ。まともな心でいられるはずもないだろう。もしかしたら、退学に準備をしてるのかもしれない。
俺はもう間近なIS学園の校舎を見まわすように眺めた。
ここもいつか、戦場になる。だからきっと、今家に帰ろうとしているやつらの考えは間違ってないはずだ。俺も目の前に迷っている生徒がいたのなら、それを進めるさ。
それでも残りたい奴がいるなら…、俺は容赦しないからな…。
「迷える子羊の気配がします」
不意に聞こえてきた電波なその言葉に、俺は耳を疑った。
明らかに、それは俺のすぐ後ろから聞こえてきた。俺は慌てて振り返る。
すると、そこにはやはり一人の女生徒の姿があった。
「は…?」
「まぁ、今回の子羊はとても有名なお方ですわ。初めまして、迷える子羊君」
「え…、あ、あぁ…初めまして…」
呆けた俺に関係なく話を進める彼女とは対照的に、俺は未だに状況を把握していなかった。
とりあえず、彼女の容姿だけでも紹介しようと思う。
見た目は清楚なお嬢様。金色に輝く髪の色から、外国人だとは分かった。しかも数馬辺りが喜びそうなとびきりの美少女である。が、特筆すべきはそこではない。
問題なのは彼女が身に纏う、その服装だった。IS学園の制服は全面的に改造が許可されている。セシリアのフリルの付いたロングスカートがいい例だ。
けど、彼女の制服はその比ではない。全身を覆う肌を全く見せないその姿は、間違いなく――――
【シスター】だった。
ご丁寧に被り物までしているのだから凝っている。
そんな彼女に、俺は突然声をかけられたのだ。これを混乱せずにはいられない。
そんな俺の思いなど露知らず、目の前のシスターはニコニコと俺に微笑んでいた。
「え、えーっと…すみません、どこかでお会いしたことありましたか?」
咄嗟に何とか絞り出したのは、そんな分かりきったことだった。
さっき、この人は「はじめまして」と言ったじゃないか。俺は5秒前の俺を恨んだ。
俺の言葉に、彼女はくすくすとおおらかに笑みを浮かべた。
「いえ、わたくしはあなた様を存じ上げてはおりません。ですが、何度かテレビなどで拝見させていただいたことがございます」
「あ、あぁ…そうですか…、それで、俺に何か?えーっと…?」
「あぁ、これは申し訳ありません。わたくしはIS学園2年3組の【キアラ・フォルナーラ】と申します。親しい方にはキアと呼ばれておりますわ。以後、お見知りおきを」
「先輩だったんですか…。キア…それじゃ、キア先輩とお呼びしますね」
「はい。子羊君にそう呼んでいただけるなんて、光栄ですわ」
「…その呼び方、やめてくれませんか?」
「あら?どうしてですか?可愛いらしいじゃないですか」
「…もう、いいです」
ふて腐れながらそう言う俺に彼女、キア先輩はふふっと笑みを浮かべた。
だいぶ混乱も落ち着いてきた。どうやら悪い先輩ではないみたいだ。俺は心を落ち着かせ、言葉を紡いでいった。
「それで?キア先輩、さっきの言葉はどういうことなんですか?」
「はぁ、先ほどの言葉、とは?」
「いや、子羊がどうとか言ってたあれですよ、あれ」
一瞬本気で分からないといった表情を浮かべたから性質が悪い。
もしかしたら、この人は天然なのかもしれない。俺は小首を傾げた彼女に苦笑いした。
「あぁ、はい。あれですか。ふふ、そうですね…あれは主のお告げですあります」
「主…それってキリスト様のことか?」
「はい。我らが主。イエス・キリスト様のことでありますわ」
やっぱり電波なのか?俺は首を捻った。
悪い人じゃないんだけどな…。けど、だいたい彼女のことは分かってきた。
よくよく考えたら、ここはIS学園。国際的にも豊かな人材の宝庫だ。きっと、彼女は本物のシスターなのだろう。それを考えたら、なんともまあ最悪な邂逅だ。
片や平和を祈る教会の天使、シスター。片や世界の方かいを目論む生粋のテロリスト。
鈴風に言うと、これは必然の出会いというわけだ。
そんな俺にお告げとは、神様も見当違いなことをしてくれる。俺は、出会うべくして出会ったこの出会いに苦笑してしまった。
「…子羊君。あなたはこれから困難な道に進むでしょう。ですが、案ずることはありません。あなたが信じる者を信じて進めば、必ず、その願いは果たされるでしょう」
「っ!?」
が、すぐに俺は驚嘆した。彼女の言葉、それがあまりにもリアルすぎて。俺は絶句してしまったのだ。
けどキア先輩はそんな俺にニコリと微笑むと、何かの紙を差し出してくる。
茫然としていた俺は、その紙を黙って受け取った。最後にもう一回ニコリと笑みを浮かべ、彼女は俺の耳もとに唇を寄せ、そっと呟いた。
「困ったことがあればいつでもご連絡ください。わたくしは迷える子羊の願いならいつでも、聞いて差し上げますわ」
「キア…先輩…?」
「ふふ、何をしているのですか子羊君。もうすぐ始業ですわよ。遅刻しないように気を付けてくださいませ」
「ちょ、ま、待ってください!!」
俺の声に、キア先輩は振り返らなかった。
そのまま、生徒の人ごみの中に彼女の特徴的なシスター服が消えていく。何が何だか分からなかった。
茫然とその場に立ち尽くす、俺を避けて登校する生徒が不思議そうな顔で通り過ぎて行った。
俺は最後に、キア先輩に渡された紙を開いた。そこには、キア先輩の言った通り、彼女のアドレスらしきものが書かれていた。
いったいなんだったのだろうか。俺は夢にでもなりそうな今の出来事をもう一度思い浮かべた。
けど、結局は何が何だか分からないままだった。
とりあえず、俺はポケットに紙を押し込み、校舎への道を歩き出した。
さて、今日からIS学園での学園生活の始まりだ。
*
「子羊君。どうか、あなたに神のご加護があらんことを…アーメン」
キアラ・フォルナーラは、廊下の窓から見えた一夏に、もう一度祈りの言葉を授けた。
それは深く静かに天に届き、彼の元へきっと幸福が送られるだろう。キアラが一夏に話しかけた理由はお告げがあったというのが半分。それに興味があったというのが半分だった。
男が珍しかったという理由ではない。ただ、彼の雰囲気に纏う何かが、自分たち人間と別次元の存在のような気がして、彼女は気になったのだ。
まるで、本物の英雄と話しているような…そんな気が。
「そのようなこと、あるわけありませんよね…」
けど、結局はそれを否定する。授業開始まであと数分。キアラは急いで教室に向かった。
「ふふん。どうしたんだいキア。お祈りなんかしちゃって、気になる男でもできたのかい?」
「ふふ、さぁどうでしょうね。それにIS学園(ここ)でそれを肯定してしまったら白状しているも同然ですよ?」
「つまらないわね~もうちょっと初心な反応しなさいよ~あんた“本物”のシスターでしょ?このまま処女で人生終わるってのも悲しいわよ~」
「それがシスターの務めですから。余計なお世話です」
不意に後ろから現れた少女に、キアラは慌てることなく対応した。
もう慣れたものだ。突然どこからでも現れる彼女の破天荒なところも、彼女のセクハラ発言も。
もうニコリと微笑む余裕すらあった。そんなキアラの対応に、彼女はふて腐れたように口をとがらせていた。
「はぁ、キアが最近冷たいなぁ…。それで?どうだった?例の男子は?」
「あら、気づいていらっしゃたのでありますか?」
「まあね、キアの考えることならお姉さんなんでもお見通しさ」
「ふふ、怖い怖いですわ。そうですね…子羊君、彼は実に面白い方ですわ。おそらくきっと、あなたも興味を持たれると思いますわ」
「へ~キアにそこまで言わせるなんてなかなかに、ねぇ…」
ニヤリ。悪巧みをしていそうな笑みを浮かべる友人にキアラは苦笑いを浮かべた。
いつもいつも、彼女には振り回される。それこそ、1年前に同じクラスになって親友宣言されて以来、キアラは彼女に振り回されっぱなしだった。
けど、それを楽しいと思う自分もいるのも事実だった。キアラは思う。一夏はとんでもない女に目をつけられてしまったと。これはもう一度祈っておく必要があるかもしれない。
本当に、少しは自重してほしかった。この親友には――――
「あまりイジメないいでやってくださいませね【楯無】」
「分かってるよキア。私【更識楯無】は更識家の名に懸けて学園が壊れない程度には自重するさ…」
*
始業まで、あと数分。俺はさっきのキア先輩の言葉を身に染みて感じていた。
どうして…どうしてこうなった…!!
「織斑一夏様。わたくしセシリア・オルコットはあなた様に決闘を申し込みますわ」
目の前でそう宣言する彼女は昨日までの英国淑女ではなかい。
そこにいたのは正真正銘の【戦乙女(ヴァルキュリア)】だった。
オリキャラ情報
〇キアラ・フォルナーラ
身長/156㎝ スリーサイズ/82/55/85
国籍/イタリア 立場/???
IS学園2年3組所属の生徒。楯無、虚の親友でもある。あだ名はキア。
正真正銘のシスターで、IS学園の制服はシスター服風にアレンジしている。
国籍はイタリア。シスターであるため、基本的に丁寧な言葉使いを使う。
若干天然が入っている。一夏の呼び方は「子羊君」