蓮ノ空ヴィクロ✕キャプ翼サンシャイン! 〜 FUSION PARALLEL 〜   作:松兄

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第68話:星空の誓い

 

 

 〈スタークラウンスタジアム〉でのユニバーサルユース開会式の翌日。

 俺たち日本代表は3日後に迫った初戦。韓国戦に向けての練習を行っていた。

 

 グラウンドの芝生に、鋭いホイッスルの音が響き渡る。

 

 韓国との試合を控えた全日本ユースのトレーニングキャンプ。

 ピッチ中央には、今大会の公式試合球がいくつも転がっている。選手たちが足元で転がすそのボールは、ただの道具ではなく、すでに戦術の一部だ。

 

 ピッチ上の空気は、ピリピリとした心地よい緊張感に包まれており、練習は公式球の、「転がるスピード」と「跳ね方」を完全に体に染み込ませるための『鳥かご』からだ!

 

 

吟子「もっと速く!」

 

善子「ワンタッチで外しなさい!」

 

慈「ボール受け取る前の味方の確認遅いよ!」

 

 

 チームメンバーの声が飛ぶ。

 

 韓国の激しいハイプレスを想定し、プレッシャーの距離はいつもより一歩分狭く設定されている。

 俺たちが蹴り出すボールは、まるで意思を持っているかのように、芝の上を滑っていく。

 

 受け手の足元にピタリと止まる正確なキック。相手が寄せるより一瞬早く、逆サイドのフリーの選手へとボールが展開される。

 

 ピッチのサイズを狭めた紅白戦が始まると、全体のギアがもう一段上がった。

 

姫芽「行きますよ!」

 

果南「抜かせない!!」

 

 韓国戦の鍵となるのは、こぼれ球(セカンドボール)の回収と、1on1(デュエル)の強さだ。

 

 選手たちは激しく体をぶつけ合い、泥臭く泥を跳ね上げながらボールを奪い合う。

 

次藤「行くタイ!」ドッ!!

 

 センターバックの次藤が前線へ鋭い縦パスを打ち込むと、トップ下の花帆先輩が絶妙なトラップ&ターンで前を向く。

 

岬「狙って!」ダッ!

 

タケシ「こっちです!」バッ!!

 

 サイドハーフの岬と沢田が猛然と激走(スプリント)し、ディフェンスラインの裏のスペースへ抜け出す。

 

花帆「お願いします!!」ドッ!!!

 

 そこに寸分の狂いもないタイミングで、回転を抑えた花帆先輩のライナー性のパスが突き刺さる。

 

 ボールのブレまで考えた、完璧な軌道だ。

 

 全体の動きが終わった後、ピッチには静けさが戻り一時休憩。

 

翼「日野下さん、トラップ上手いね……」

 

花帆「ありがとうございます! 翼さんに褒められちゃった♪」

 

松山「大沢もいい感じだったぞ。やっぱり蓮ノ空組の"技術(テクニック)"は俺たちを超えてそうだな」

 

梢「いえ、まだまだですよ……」

 

さやか「最後の方もう少しサイドを意識するべきでしたね」

 

葵「十分だったと思うけどな〜」

 

千歌「梨子ちゃん、もう少し間合いの詰め早くできる?」

 

梨子「やってみるわ……けど、さやかさんが間合いの詰め方上手いのよね。インターハイの時よりも遥かに」

 

見上「確かにな。何かやってたのか?」

 

 

 監督や皆が聞いてきたので、俺達は異世界の自分達のことは話さなかったが、ボルダリングや柔道。

 ピッチングマシーンを使ったキーパー練習や、フェンシングの仕掛ける時の踏み込み、フィジカル強化のボクシングなどの練習をしていたことを伝えた。

 

 

 ―――すると、

 

翼「異種競技の特訓がそんな形で力になってたのか……」

 

見上「誰かから教えてもらったのか? 実に理にかなった特訓だぞ?」

 

 苦笑いする俺達。その練習を取り入れるかをコーチ陣が検討し初め、休息終わって最後に行われるのは、勝敗を分けるセットプレーの確認。

 

 

 ゴール前には、『仮想・韓国代表』の長身ディフェンダー陣に見立てたダミー人形が並び、キッカーが慎重にボールをセット。

 

晴也「行くぞ!!」ドッ!!

 

 短い助走から振り抜かれた右足から放たれたボールは、壁を鮮やかに越え、鋭く急カーブして落ちながらゴールネットを揺らした。

 

 キーパーに立った聖良が、反応できても触れないほどの、完璧な軌道。

 

 キーパーには若島津、梢先輩、そして今日合流した若林さんが順番に立ち、メンバーのフリーキックを受けていくが、さすが若林さん。

 ペナルティエリアの外からは決めさせないと言う伝説の通り、ゴールは奪えなかった。

 

 

 

見上「そこまでだ!」

 

 

 練習終了のホイッスルが鳴る。

 

 選手たちの顔には激しい疲労感とともに、確かな手応えの笑みが浮かんだ。

 汗を拭いながら、お互いのポジショニングについて熱く議論を交わす全日本ユース。

 

 

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 ―――そして夕食後の喧騒が遠ざかった宿舎。そして先ほどまで練習していたグラウンド。

 

 夜風が火照った体に心地よく吹き抜ける。手元にあるのは、昼間の練習でも蹴り込んだ大会公式のサッカーボール。

 

 試合を控え、チーム全体の緊張感は最高潮に達している。

 

 だが―――、

 

晴也(………………)

 

 晴也の体にはまだ熱が残っていた。どうしても、あのボールの感触をもう一度、右足に刻み込んでおきたかった。

 

 

 芝生の上にボールを落とし、静かにタップを繰り返す。

 

 

 

  トン トン  トン  トン   トン

 

 

 規則正しい音だけが夜の闇に響く。インサイド、アウトサイド、そして足の甲。公式球特有の、わずかに吸い付くような革の質感を確かめるようにステップを踏む。

 

 ―――すると、

 

?「………やっぱり、ここにいたか」

 

 不意にかけられた声に、動きを止めて振り返る。

 

 暗がりの向こうから歩いてきたのは、日本の絶対的なエースストライカー、日向さん。

 

 そして、チームの精神的支柱であるキャプテン、翼さんの二人だった。

 

 手にはそれぞれ、スポーツドリンクのボトルを持っている。

 

日向「お前、昼間のあれだけハードなメニューの後に、まだ蹴り足りないのか?」

 

 日向さんが不敵な笑みを浮かべ、歩み寄ってくる。

 

日向「俺も部屋でステップの確認を始めようとしてたんだが、お前のボールの音が聞こえてな」

 

翼「はは……」

 

 翼さんも笑いながら、俺が転がしたボールを足元でピタリと止めた。

 

 

 そのトラップ一つをとっても、一切の無駄がない。

 

 

晴也「韓国のディフェンス陣の映像を観たら、どうしても完全にボールをモノにしておきたかったんです」

 

翼「いい心がけだね」

 

 翼さんがボールを低く押し出すようにパスしてくる。

 

翼「世界のサッカーは容赦がない。だが、俺と晴也くんが中盤でタメを作って、日向くんが仕掛ければ、必ずスペースは生まれる」

 

 

 そのパスを晴也が受け、直接(ダイレクト)で日向さんの足元へ送る。

 日向さんはトラップすることなく、優しくボールをすくい上げてリフティングを始めた。

 

 

日向「裏へ一本通してくれれば、俺が全部ゴールに叩き込んでやるよ。あのDF陣が相手なら、一瞬の隙があれば十分だ」

 

 

 夜の静寂の中、3人の間で静かにパスが回り始める。

 

 激しい練習ではない。ただ、お互いの感覚を、ボールを通じて確かめ合うような贅沢な時間だった。

 

 しばらくボールを動かした後、翼さんが足元でボールを収め、俺と日向さんの顔をまっすぐに見つめた。

 

翼「全員で、世界の頂点へ行くぞ」

 

日向「当然だ。俺が点を取りまくって、得点王と優勝、両方かっさらってやる」

 

 日向さんが不敵に、しかし確かな闘志を瞳に宿して笑う。

 

晴也「…………………」

 

 俺は二人の言葉を聞きながら、胸の奥から熱いものが突き上げてくるのを感じていた。

 

 今の日本サッカーの看板を背負う二人の怪物。その彼らと今、同じピッチを見据えている。

 

晴也「俺も、死ぬ気でチャンスを作ります。いや、俺自身もゴールを狙いに行きます。3人で、このチームを引っ張りましょう」

 

 

 晴也がそう言うと、翼さんは満足そうに頷き、ボールを抱えて手を差し出してきた。

 

 そこにエースが、そして俺が、お互いの手を強く重ね合わせる。

 

晴也&翼&日向「「「絶対に優勝しよう!!!」」」

 

 

 誰からともなく呟いたその言葉は、確信に満ちた誓いとなって、夜の空気へ溶けていった。

 

 

 

 そして3日後―――、

 

 

実況『さあ! いよいよユニバーサルユース、日本の初戦です! 初戦の相手は韓国代表! 非常にフィジカルの強いチームです!』

 

晴也(その強い(・・)フィジカルでテコンドーサッカーしてくるからな……)

 

 

解説『さあ! 間もなく試合開始です!!』

 

 

 ――キックオフまで、あと5分。

 

 

― つづく ―




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