蓮ノ空ヴィクロ✕キャプ翼サンシャイン! 〜 FUSION PARALLEL 〜   作:松兄

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第70話:コムトの動揺

 

 

 

 さて、日本が先制し、韓国ボールから試合再開する。

 

実況『さあ! 試合再開です!』

 

ピィイイイーーーッ!!!

RESTART!!!

 

 

 韓国ボールから試合再開。ボールはインチョンからキムへと渡る。

 

キム「走れ!!」ドッ!

 

 キムのサイドを走らせて攻撃を仕掛けるロングパス。ボールはユンへ。

 

ユン「潰してやるぜ……」

 

 ユンがドリブルを仕掛ける。そこに次藤が止めに入る。

 

次藤「させんタイ!」

 

 

MATCH UP!!

次藤 vs ユン

 

 

 両者のパワータックルが激突。だが、さすが巨漢の次藤。相手を返り討ちにして吹っ飛ばした。

 

ユン「ぐあっ!」

 

次藤「行くタイ! 日向!」ドンッ!!

 

 次藤の渾身のロングパス。ボールは一気に前線の日向へ。

 

日向「今度こそ……決める!!」

 

 日向は跳躍。ボレーシュートを放つ。

 

日向「[絶・ジャンピングタイガーボレー]だ!!」ドゴォオオォオオっ!!

 

 

 日向の後ろから来た難しいボールに対して直接(ダイレクト)で合わせるボレーシュート。

 

 ―――だが、

 

アン「させるかっ!」

 

バギィ!!

 

アン「うわあっ!?」

 

 ボールは相手の2枚のセンターバックのうちの一人に当たりこぼれ球に。上に跳ねたルーズボールだ!

 

 

晴也「!! ()る!!」ダンッ!!

 

 

 晴也は韓国の一瞬の隙を突いて鋭く踏み込み、高く跳躍。

 

 だが、同時に同じボールを見据えて跳んでいた影があった。

 

 

コムト「っ!」ダンッ!

 

 韓国代表のボランチ。激しい当たりを恐れず、果敢に空中で体をぶつけてきたのは、鋭い眼光を宿した女性選手だった。

 

ドンッ

 

 

コムト「きゃあっ!」

 

晴也(っ!!)

 

 空中で激しく肉体と肉体が衝突する。激しい衝撃に、お互いの空中バランスが完全に崩れた。重力に逆らえず、頭から真っ逆さまにピッチへと落下していく。

 

晴也(危ねぇ――!)

 

 彼女の、コムトの体勢の悪さが目に入った。

 

 このまま落ちれば、首や背中に深刻な大怪我を負いかねない。

 

 相手がどこの国の選手だろうが、ピッチの上で女の子が傷つくのを黙って見過ごすわけにはいかなかった。

 

晴也(間に合え………!!!)

 

 晴也は空中で無理やり体をひねると、自由になる両腕を伸ばし、コムトの体を胸の中に強く抱きかかえた。

 

 そして、自分が下になるようにして、激しく芝生の上へと叩きつけられた。

 

 

ドゴォオッ!!

 

 

 叩きつけられ、背中に強烈な衝撃と痛みが走る。春休みは思わず小さく呻いたが、腕の中の感覚に意識を集中させた。

 

晴也「……大丈夫か?」

 

 晴也の腕の中で、コムトは目を見開いたまま完全に硬直していた。

 

 

 コムトには、暗い過去があった。

 

 コムトは、かつて国際的なトラブルから男に誘拐され、無理やりレイプ紛いのことをされ、「男はみんな最低だ」と思っていた。

 

 当然この試合でも、日本はもちろん、味方の韓国の男たちのことも最低だと思っていた

 

 しかし、今自分を包み込んでいるのは、あの時の男たちのような卑劣な視線でも、汚い欲望でもなかった。

 

 今感じているこの感覚は、それとは何もかもが違う。

 自分をただ一人の人間として、いや、守るべき女性として傷つけないようにと差し出された、純粋で、温かい、命懸けの優しさ。

 

コムト「あ……、え……?」

 

 彼女の口から、掠れた声が漏れた、

 

 

 

 コムトの、自身に起きた異変―――。

 

 晴也が腕を緩めて体を起こすと、コムトは弾かれたように後ろへ飛び退いた。

 いつもならすぐに鋭い視線で睨みつけてくるはずのコムトが、今は借りてきた猫のように呆然と立ち尽くしている。

 

コムト「あ、あなた……何、を……」

 

 コムトの肌が、みるみるうちに耳の根元まで真っ赤に染まっていく。

 胸の奥から湧き上がる、今までに経験したことのない激しい鼓動。

 

 嫌悪感ではなく、熱い羞恥心と困惑がコムトの心を激しく乱していた。

 

晴也「あの、早く立って? 試合中だぞ」

 

 晴也が苦笑しながら手を差し伸べると、コムトはその手を見て、さらに顔を赤くした。

 

コムト「な、なんっ……! ち、違う、私は……っ!」

 

 

 母国語でさえ、うまく喋れない。普段の冷徹な佇まいはどこへやら、完全にしどろもどろになって言葉に詰まっている。

 

 差し出された晴也の手を握るべきか、それとも拒むべきか、視線を激しくあちこちに彷徨わせ、完全にパニックに陥っていた。

 

 周囲の韓国選手たちが「どうした!?」と集まり始める中、コムトは自分の両頬を両手で押さえ、真っ赤な顔を背けるようにしてトボトボと自陣へ走って戻っていった。

 

 その背中は、先ほどまでの「牙を剥いた獣」の面影など微塵もない、ただの恋する乙女のそれだった。

 

 

晴也「あん?」

 

 ――すると、

 

 ポン!

 

 梢先輩から肩に手を置かれた。

 

梢「晴也くん、後でお仕置きね?」

 

晴也「なんで!?」

 

 見ると、全員苦笑&呆れながらこちらを見ていた。

 

晴也「泣いていい?」

 

 

 さて、プレーが一度中断され、韓国のゴール前から韓国のキックで再開だ!

 

 ―――だが、スタジアムの空気は、先ほどの奇妙な接触プレーによって一変していた。

 

 

 韓国側からリスタートした試合。コムトを庇った余波か、あるいはスタジアムのどよめきが影響したのか、韓国の攻撃はどこかちぐはぐに変わった。

 

インチョン「攻めるぞ! ボールをよこせ!」

 

 人数をかけて攻めてくる韓国。だが、完全に攻め急ぎすぎており、翼さんが冷静にパスコースを読み切る。

 

翼「奪った!」

 

インチョン「クソっ!」

 

翼「行けえっ!」

 

 中盤で翼さんがインターセプトしたボールが、綺麗な弧を描いて綴理先輩のの足元へ。

 

 その瞬間、晴也は一気に加速。中央ラインを駆け上がり、敵陣深くへと侵入する。

 

 

綴理「はる!」ドッ!!

 

 綴理先輩の《無減速供給弾(ノーダウンクロス)》。ボールは晴也へ。

 

晴也「っし!」トンッ

 

 トラップする晴也。韓国も止めに来るが、

 

コムト「っ!」

 

 目の前には、先ほどあの空中衝突を演じたコムトが、ディフェンスの要として立ち塞がっていた。

 

 コムトは低い重心で構え、いつものように猛然とチャージを仕掛けてくる―――はずだった。

 

 

 しかし、晴也が間合いを詰めてフェイントを一つ入れると、彼女の動きがパタリと止まった。

 

コムト「あ……っ!」

 

 コムトの瞳が揺れる。晴也と視線が合うと、再びあの時の記憶が蘇ったのか、コムトはカッと顔を真っ赤にし、一歩、また一歩と無意識に後ずさりをしてしまった。

 

 

 あの鋭い目つきはどこへ行ったのか。

 

 ディフェンダーとして絶対に必要な「間合い」を自ら放棄し、完全に足が止まっている。

 

晴也(今だ……!)

 

 迷いはなかった。

 

 晴也はインサイドでボールを小気味よく右へ転がし、彼女の横を両足球交換(ラクロケタ)で風のように通り抜けた。

 

 本来なら激しく体をぶつけて止めに来るはずのコムトは、まるで金縛りにあったかのように動けない。

 

 背中越しに、彼女が小さく「あ……」と声を漏らすのが聞こえた気がした突破した視界の先には、最高峰のポジショニングでディフェンスの死角を突く日向の姿があった。

 

 

晴也「行けぇっ!!」ドッ!!!

 

 晴也は迷わず、右足のインフロントでカーブをかけたパスを放つ。

 

 ボールは韓国のセンターバック二人の頭上をふわりと越え、ペナルティエリア中央に走り込んだエースの足元へ、寸分の狂いもなく吸い込まれた。

 

 

日向「決める! これが[絶・ネオ・タイガーショット]だあっ!!」ドゴォオォオォオオォオオオンッ!!!!

 

 日向さんはボールを受けると、次の瞬間には渾身の[ネオ・タイガーショット]をール隅へと叩き込んだ。

 

 

バシャァアァアアッ!!

 

 シュートはネットをぶち抜き、ゴールを突き破った。

 

 

GOOOAL!!!

日本 2 ー 0 韓国

 

 スタジアムを割れんばかりの日本サポーターの歓声が包み込む。

 晴也の元へ駆け寄る日向と翼。晴也はハイタッチを交わしながら、ふと背後を振り返った。

 

 そこには、まだピッチのその場に立ち尽くし、真っ赤な顔で手で自分の頬を必死に冷やしている彼女の姿があった。

 

 突破された悔しさよりも、何か別の感情に翻弄されているような、そんな危うさと甘酸っぱさが混じり合った奇妙な緊張感が、このピッチには流れていた。

 

 

 日本の2点リード。前半の中盤辺りの時間帯。

 

 全日本は再び気を引き締め直した。

 

 

 

 

前半:27分

 

日本 2 ー 0 韓国

 

― つづく ―




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