蓮ノ空ヴィクロ✕キャプ翼サンシャイン! 〜 FUSION PARALLEL 〜   作:松兄

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第71話:韓国の策

 

 

 

 日本対韓国の試合は前半の中盤で日本が2点をリード。

 

 スタジアムの喧騒が続く中、韓国ベンチとピッチ上の選手たちの間には、先制点を奪われたこと以上の動揺が広がっていた。

 

 

ピィイイイーーーッ!!!

RESTART!!!

 

 韓国ボールから試合再開。パスを繋ぐ。――だが、

 

 

韓国監督「くそっ! いったい何が起こってるんだ!!」

 

 さっきから顔を赤らめ、オドオドしっぱなしのコムト。韓国ベンチに苛立ちが募る。だが、コムトが単なる実力派センターバックではないことは、チームの誰もが知っている。

 

 韓国屈指の巨大財閥の令嬢。本来なら何不自由ない世界で、誰からも愛されるはずの少女だった。

 

 しかし、ここからは韓国メンバーも知らない話だが、あの忌まわしい事件が彼女の心を閉ざし、男たちを見返すための「鎧」として、荒々しいフィジカルと意地を張ったプレースタイルを選ばせていただけなのだ。

 

 

 だが今、晴也の文字通り命懸けの優しさによって、その鎧はいとも簡単に崩れ去ってしまった。

 

 呼び起こされたのは、本来の彼女が持っていた優しさと、生まれて初めて知る激しい恋心。

 

晴也「貰った!」

 

コムト「っ!」

 

インチョン「おい、しっかりしろ! ポジションが空いてるぞ!」

 

 韓国キャプテンが声を荒げるが、彼女の耳には届かない。

 

 試合中だというのに、彼女は赤くなった顔を両手で覆い、指の隙間から晴也をチラチラと盗み見ては「はぅっ……!」と小さく身悶えしている。

 

 もはや鉄壁のボランチの姿はそこになく、恋に大混乱中の女の子がピッチに迷い込んでしまったかのようだった。

 

 

 

 韓国のベンチでは、監督が頭を抱え、テクニカルエリアで激しく怒鳴り散らしていた。

 

韓国監督「交代だ! コムトを下げるぞ! 試合に集中できていない!」

 

 

 だが、コーチ陣は慌てて監督に必死の形相で手元のデータタブレットを差し出す。

 

韓国コーチ「か、監督、お待ちください! 交代させるにしても、控えのメンバーでは大海と日向、大空翼を止められません! コムトと控えでは、実力差が違いすぎるんです!」

 

 

 そう。コムトは財閥の令嬢という肩書きを抜きにしても、その圧倒的な身体能力(フィジカル)戦術眼(タクティクス)で、韓国ディフェンスラインの《核》として君臨していた。

 

 他のディフェンダーたちとは、比べるまでもなく実力の桁が違う。彼女を下げれば、韓国の守備崩壊は目に見えていた。

 

 

韓国監督「くそっ……ならばどうする!? あんなおどおどした状態のまま、日本の攻撃陣とマッチアップさせろと言うのか!」

 

 

 監督が吐き捨てる。

 

 ピッチ上の韓国の選手たちも、どう声をかけていいか分からず、困惑の表情で彼女を見つめていた。

 

 対戦相手の晴也や日向、あの翼でさえも、あまりの豹変ぶりに

 

日向「……おい、さっきの凄まじいタックルはどこに行ったんだ?」

 

 と、奇妙な空気に戸惑いを隠せない。当の本人は、チームメイトの心配をよそに、胸の鼓動を抑えるので精一杯だった。

 

コムト(な、何なのよ、あの男は……! 私を助けるために、あんな……。あんなに真っ直ぐな目で心配されたことなんて、今まで……っ)

 

 思考が完全にショートしている。

 

 そんな彼女の視線の先には、鋭い眼差しで攻め上がる晴也の姿があった。

 

 日本が韓国攻撃陣からボールを奪い、雪崩込んでくる。

 

 実力的にコムトがピッチに残り続けるしかない以上、この「恋する令嬢」は真っ向から日本と対峙しなければならない。

 

 

晴也「日向!」パス!

 

 ここで晴也は日向にパス。すると、

 

コムト「っ! させないわ!」

 

日向「っ!」

 

ドゴオッ!!

 

日向「ぐわっ!?」

 

 

 コムトの激しいチャージング。日向からボールを奪った。すぐにパスを出すコムト。

 

 ――だが、

 

韓国コーチ(…………?)

 

 韓国の監督ではなく、コーチが今のブロックに違和感を覚えた。

 

 相変わらず晴也に対してはオドオドして戦力外。だが、他のメンバーに対しては本来の実力を遺憾無く発揮していた。

 

韓国コーチ「っ! まさか……!」

 

 コーチは急いでデータ収集していたタブレットを見てデータを照合する。

 

 すると、

 

これを見たコーチの脳裏に、電撃のような閃きが走った。

 

韓国コーチ「!! 監督、名案があります! 彼女を交代させる必要はありません!」

 

韓国監督「何だと!? どうするつもりだ!」

 

 興奮気味に詰め寄る監督に、コーチはピッチを指差しながら一気にまくしたてた。

 

韓国コーチ「あの大海のマークから、コムトを完全に外すんです。その代わり、選手2人を大海にベタ付けして、徹底的にマンマークで圧力をかけて封じます。そして、コムトにはそれ以外のエリア、つまり大空翼と日向たち他の攻撃陣を潰す役割を任せるんです!」

 

韓国監督「!! なるほど!」

 

 たしかにこれであれば、コムトが晴也の前でおどおどして突破されるリスクはゼロになる。

 

 それどころか、他の強力な攻撃陣をコムト一人で完全にシャットアウトできるという、完璧な配置転換(タスクシェア)だった。

 

 瞬間、韓国の監督の目が輝いた。

 

 すぐにタッチライン際から、メガホンを通じてピッチ内の選手たちへ新たな指示が怒号となって飛び交う。

 

ヨンウン「なるほど! それなら!」

 

 その指示は、迷っていた韓国チームに明確な指針を与えた。

 

 

 その指示はピタリとハマった。

 晴也が中盤でパスを受けようとした瞬間、先ほどまでとは違う、韓国の屈強なディフェンダー2人が左右から挟み込むようにガッチリと寄せてきた。

 

 徹底的なツイン・マンマークだ。自由を奪われ、さすがの晴也も前を向くのが困難になる。

 

晴也(なら……!)

 

 晴也はマークを引きつけてから、相手ディフェンスの死角へ走り出す日向へとスルーパスを供給した。

 

 

日向「よし!」

 

 

 ―――だが、

 

コムト「そこっ!」

 

ドゴオッ!

 

日向「ぐっ、またお前か!」

 

 しかし、そこに猛然と立ちはだかったのは、本来の冷徹さを取り戻したコムトだった。

 梢先輩に似た容姿ではあるが、漆黒の長いサイドテールの髪をなびかせ、一歩も引かない鋭い読みでパスコースを完璧に遮断。

 

 激しいスライディングでボールを刈り取ってみせた。

 

 

ムン「っ! コムト、ナイス!」

 

 

 韓国の選手たちに士気が戻り、スタジアムの韓国サポーターからも大歓声が沸き起こる。

 

 コムトの鉄壁の守備を中心に、韓国代表は完全に息を吹き返し、再び日本ゴールへと怒涛の反撃を仕掛け始める。

 

 ピンチを脱し、むしろ試合の流れを引き戻したピッチを見て、韓国の監督は大きく息を吐き出した。

 

 ベンチのパイプ椅子に深く腰掛け、隣のコーチの肩を力強く叩く。

 

韓国監督「よくやった! お前のあの瞬間の機転が、チームを救ったぞ。素晴らしい戦術眼だ!」

 

韓国コーチ「ありがとうございます、監督。コムトの『弱点』が、大海晴也一人だけだと分かれば、対策はいくらでも立てられますから」

 

 コーチは控えめに微笑みながらも、確かな手応えに胸を張った。

 

 再び激しさを増していくピッチ。

 

 ピッチでは韓国がカウンターを仕掛け、ボールはインチョンへ。

 必殺シュートを放つ。

 

インチョン「喰らえ![爆・重戦車シュート]!!」ドゴォオォオォオオォオオオンッ!!

 

 まるで戦車の砲身から発射された砲弾の様な破壊力のシュートがゴールを襲う。

 

 そこに次藤が立ち塞がる。

 

次藤「止めるタイ!」

 

 バギィ!!

 

次藤「ぐおおおおっ!!???」

 

 

 しかし、次藤の体を張ったシュートブロックを弾き飛ばし、ボールはゴールへと一直線。

 

 しかし確かに威力は弱まった。

 

梢「止める!!」

 

 梢はコースを読み切り、横っ飛び。

 

 ―――そして、

 

バシィイイイッ!!

 

 ノーマルワンハンドキャッチで、必殺シュートを止めた。

 

 

インチョン「何ィっ!?」

 

松山「ナイス乙宗!」

 

 

 だが、全日本の攻撃の2本軸の1人である晴也への徹底的な2人マークと、本来の力を取り戻して他のメンバーへと牙を剥くコムトのディフェンス。

 

 ならばと梢は翼へとボールを蹴る。

 

梢「翼さん!」ドッ!!

 

 梢のゴールキックからボールは翼へ。胸でトラップして前を向く。

 

翼「よし……」

 

 攻め上がろうとする翼さん。――だが、

 

梨子「! 翼さん! 後ろ!!」

 

キム「させるかっ!」

 

バゴォッ!

 

翼「うわあっ!?」

 

 ボールはタッチラインを割って日本のスローイン。

 

 完全に勢いを取り戻した韓国。全日本にとって、本当の試練がここから始まろうとしていた。

 

 

前半:37分

 

日本 2 ー 0 韓国

 

― つづく ―




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