蓮ノ空ヴィクロ✕キャプ翼サンシャイン! 〜 FUSION PARALLEL 〜   作:松兄

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第72話:韓国戦 前半終了!! ハーフタイム

 

 

 前半終了まで、残り8分。

 

 日本ボールのスローインから試合再開。岬がボールを投げ、ボールは梨子へ。

 

 だが、ピッチ上は、一進一退の壮絶な肉弾戦が続いていた。

 

晴也(っくそ、邪魔だな……!)

 

 韓国ベンチの奇策によって、晴也には常に2人の屈強なディフェンダーが影のように張り付き、まともに前を向くことすら許さない。

 

 そして晴也以外のルートは、本来のキレを取り戻したコムトがことごとくシャットアウトしていた。

 

翼(この状況、打開しないとまずい気がする……!)

 

 ドリブルする翼に、コムトが向かう。だが、韓国のエースの一人。イ・ヨンウンは、ピッチ全体の流れを見ながらある「違和感」に気づいた。

 

コムト「……………」チラッ

 

 コムトは確かに翼さんや日向を完璧に抑え込んでいる。

 

 しかし、ふとしたプレーの切れ間、晴也が遠くで激しいマークに晒されているのを見るたびに、彼女の視線がどうしても晴也に対しての方へ向いてしまっているのだ。

 

 その瞳には、かつての冷徹な拒絶ではなく、あからさまな心配と、熱い動揺が混じり合っていた。

 

ヨンウン(なるほどな……。あいつ、あの大海に完全にハートを持っていかれてしまったわけか)

 

 

 ヨンウンは考え込むと名案を思いついた。ニヤリと、少しばかり悪巧みを含んだ笑みを浮かべると、プレーの隙間を狙いコムトに近寄より、耳元で低く囁いた。

 

 

ヨンウン「おい、コムト。大海を目で追いすぎだ」

 

コムト「なっ……!? ち、違う、私はそんな………っ!」

 

 案の定、コムトは一瞬で顔を真っ赤にして激しく動揺する。

 

 ―――しかし、キャプテンの言葉はそこで終わらなかった。

 

 彼は意地悪く、しかしコムトの少女心を完璧に煽る言葉を続けた。

 

ヨンウン「隠さなくてもいい。けどな、男ってのは強い女、ピッチで誰よりも輝いてる女に惹かれるもんだぞ? あの男に、お前の全力のプレーで格好いいトコ見せてみろよ。……もしかしたら、試合後に向こうから振り向いてくれるかもしれないぞ?」

 

 

コムト「っ……!!!」

 

 

 ビシャーーン!! コムトの脳裏に、凄まじい衝撃の電流が走った。

 

 「私の一番強い姿を見せる」…………。

 

 「彼が振り向いてくれるかもしれない」…………。

 

 ――その言葉は、コムトのエンジンに、これ以上ない純度の燃料(ガソリン)を注ぎ込んでしまった。

 

 

 一瞬にしてコムトの瞳から雑念が消え、代わりに見たこともないほどの熱い「恋の闘志」がメラメラと燃え上がった。

 

 その直後のプレーだった。

 

晴也「今だ! [スプリントワープ・GX]!!」ビュン ビュン ビュン!!

 

チョ「っ!」

 

チャン「しまっ!?」

 

 晴也をマークしていた2人のディフェンダーが、ほんの一瞬、連携のミスで内側にステップを寄せてしまった。

 

 晴也はその一瞬の隙を見逃さず、必殺技で2人の間をぶち抜く。

 

 ついにマークを完全に剥がし、フリーで前を向く。 

 

 

 スタジアムの日本サポーターから大歓声が上がる。

 

晴也「よし、行ける!」

 

 そのまま一気に最高速度(トップスピード)へ乗り、韓国ゴールへと突進しようとした―――その刹那。

 

 

コムト「――させないっ!!!」

 

 

 鋭い声とともに、視界の端から弾丸のようなスピードで突っ込んでくる影があった。

 

 コムトだ。監督の「大海に近づくな」という指示すらも、恋のパワーで完全に無視してぶっ飛んできた。

 

 そのスピードと気迫は、試合開始直後の比ではなかった。コムトは長い黒髪をなびかせ、完璧なタイミングで俺の足元へとスライディングを敢行。

 

 荒々しい暴力ではなく、ボールだけを正確に、そして誰よりも美しく刈り取る、彼女本来の天才的なタックル。

 

 

ズシャァッ!!!

 

晴也「うおっ!?」

 

 激しく芝生が舞い、晴也の足元からボールが綺麗に弾き出された。

 

 

 「完璧に止められた―――」

 

 

 晴也は体勢を崩しながらも、その驚異的なディフェンスに目を見張った。

 

 

 してやったり顔のヨンウン。

 

 

韓国監督「な、何だあいつの今の動きは……!? マークの指示を無視して突っ込んだぞ!?」

 

 

 韓国ベンチでは、予想外の暴走に監督が飛び上がって驚いていた。コーチもタブレットを片手に目を丸くしている。

 

 

 しかし、ピッチの上では、見事に晴也止めたコムトが、荒い息をつきながら、倒れた晴也を上から見下ろしていた。

 

 だが―――、その顔は真っ赤に変色し、胸を激しく上下させながらも、「どう、私の今のプレー……格好良かった!?」とでも言いたげな、期待に満ちた潤んだ瞳で見つめている。

 

 

 そんなコムトの背後で、言葉を吹き込んだヨンウンが、不敵に笑っていた。

 

ヨンウン(よし! 狙い通りだ。恋する令嬢のモチベーションってのは、世界最高の監督の戦術よりも恐ろしいな)

 

 

 味方すらもハメるような卑劣(?)な一手。

 

 しかし、それによってコムトの戦闘力は上限を突破してしまった。

 

 

 

 そしてここで、

 

ピッ、ピィイイイーーーッ!!!

― 前半終了!! ―

 

 

 前半終了の笛が鳴る。両チームは一度ロッカールームへと引き揚げていった。

 

 

 2対0で日本がリードしているものの、前半終了間際の韓国の猛追、そして何より、コムト「異常な覚醒」によって、試合の流れは完全に混沌としていた。

 

 

 ― 韓国ユースのロッカールーム ―

 

 静まり返る室内に、ヨンウンが首にタオルをかけながら、監督とコーチの元へと歩み寄った。

 

 

ヨンウン「監督、さっきのコムトの暴走の件ですが……理由が分かりました」

 

韓国監督「理由!? 一体何があったんだ。私の指示を無視して大海に突っ込んでいっただろう!」

 

 詰め寄る監督に、ヨンウンは声を潜め、苦笑いを浮かべながら告げた。

 

 

ヨンウン「いや、実は……コムト、大海晴也に完全に恋に落ちてます。さっき俺が『良いプレーを見せれば向こうから振り向いてくれるかもよ?』って軽く煽ったら、あのザマですよ」

 

韓国監督「……は!?」

 

 監督とコーチは、同時に顎が外れそうなほど目を見開いた。

 

 あの、男を寄せ付けず、氷のようだった財閥令嬢が、日本の選手に恋?

 

 しかも、あんな弾丸のようなタックルの理由が「良いところを見せたいから」!?

 

 

 あまりの衝撃事実に、ベンチ首脳陣の脳の処理が追いつかない。

 

韓国監督「おい、ちょっと彼女を呼べ! 精神状態を確認する!」

 

 

 監督が慌てて部屋の奥を見やるが、当のコムトはすでに別の世界にいた。

 

 パイプ椅子に腰掛けた彼女は、スポーツドリンクのボトルを両手で握りしめ、目をキラキラと輝かせながら「フンスー!」と鼻息を荒くしている。

 

コムト「後半も……後半も絶対に、彼の前で最高のディフェンスを見せるんだから! 私の美しいタックル、ちゃんと見ててくれたかしら……。もっと、もっと良いところを見せなくちゃね……!」ブツブツ

 

 ぶつぶつと力強い決意を口にしながら、完全に自分の世界に入り込んでいる。

 

 戦術ボードの前に集まるよう指示が出ているにもかかわらず、1ミリも聞いていない。

 その様子を遠巻きに見た監督とコーチは、冷や汗を流しながら顔を見合わせた。

 

韓国コーチ「……監督、これ、下手に『落ち着け』とか『恋を気にするな』とか言わない方がいいんじゃないでしょうか……?」

 

韓国監督「う、うむ……。今の彼女はモチベーション(やる気)の化け物だ。変に現実に戻して、またおどおどされても困る。……ここは、気づかないフリをしてこのまま送り出すのが正解か……」

 

 

 百戦錬磨の監督たちですら、コムトの圧倒的なエネルギーの前に、そっと『触らぬ神に祟りなし』を、決め込むしかなかった。

 

 一方、周囲でアイシングを受けたり着替えたりしていた他の韓国代表メンバーたちは、引きつった笑みを浮かべながら彼女を凝視していた。

 

韓国選手(……おい、あいつ、あんなにチョロかったのかよ……!?)

 

 

 普段は財閥の権力と、誰も寄せ付けない冷徹なオーラで、チーム内でも「絶対零度の女王」として恐れられていたのだ。

 

 それが、日本の男に一瞬助けられただけで、キャプテンの安い口車に乗ってここまで激変してしまうとは。

 

 

韓国選手(っていうか、女の恋心って怖ぇえ……。あいつの今のスタミナとキレ、前半の倍以上になってるぞ……)

 

 ロッカールームに漂う、妙な緊張感と甘酸っぱさ、そしてそれを遥かに凌駕する圧倒的なプレッシャー。

 

 

 コムトの純粋すぎる(?)な暴走は、味方をも戦慄させていた。

 

ヨンウン「よし、後半も行くぞ! 配置は前半のままだけど……各自、彼女の『導火線』にだけは絶対に触れるなよ!」

 

 エースの一人、ヨンウンのその指示に、チーム全員が深く、静かに頷いた。

 

 ――一方、全日本の控室は、

 

 

 ― 全日本ユースのロッカールーム ―

 

日向「くそっ………」

 

 1点は取ったものの、中々決定機を作れない日向がタオルを首筋にかけて項垂れていた。

 

タケシ「日向さん……」

 

晴也「韓国のディフェンス、思ったより遥かに厚いな……にしても……」

 

翼「うん。あのコムトって人、最後のタックルとんでもなかったよ?」

 

岬「あんなのをバンバンやられたら、点が取れるかも怪しいよ」

 

 岬の言葉に頷く全日本ユース。

 

見上「うむ。今のメンバーは攻撃力は高いが、真正面からの突破に傾きすぎてる。メンバーを変えるぞ。岬、沢田、夕霧out。百生、大沢、松浦inだ。松山、ボランチの夕霧の位置に入って松浦がセンターバックに入れ」

 

吟子&瑠璃乃&果南「「「はい!!」」」

 

タケシ「頼みましたよ」

 

瑠璃乃「あいあい!」

 

岬「百生さん、お願い」

 

吟子「うん!」

 

果南「綴理さん、あとは任せて」

 

綴理「うん」

 

翼「よし! 行くぞ!」

 

 そしてハーフタイムを終えて両チームフィールドへ。

 

 

全日本ユースフォーメーション

 

FW       日向

 

OMF 吟子  翼  晴也 瑠璃乃

 

DMF    梨子  松山

 

DF   次藤  果南   慈

 

GK        梢

 

 

実況『さあ! 後半開始です!』

 

 

ピィイイイーーーッ!!!

 

 

 

後半:開始

 

日本 2 ー 0 韓国

 

― つづく ―




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