ソリテールのほのぼの子育て物語   作:皮膚呼吸

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中々書く時間が取れないぜ•••


二話 魔族と共に生きるということ

 人間の街への買い出しはグローベの仕事である。そして人間の文化や魔法に関する物を手に入れてくる。

 殺人を数え切れないほどしてきているグローベだが、無意味に犯罪をすることは無いため、基本的にそれらをお金を払って手に入れる。しかし、一度ソリテールがそれを望めばグローベはどんな犯罪も迷わずに遂行して来た。グローベの判断基準はいつもソリテールである。

 人間達は規則を作り、互いに制限し合う事で本質的には個に過ぎない人間たちが集団を維持してきた。けれど、魔族には規則はない。強いて挙げるなら弱肉強食のみがルールである。

 そしてその魔族にグローベも入りつつあった。人の道理を理解し、それでも尚魔族を慕う、狂信者である。

 

 そんなソリテールはグローベに自由に使って良いお金も与えている。といってもそれはグローベのためにと言うよりもグローベがどんな事に使うのかという実験のための意味合いが強い。

 そんな事はつゆ知らずグローベは今日、そのお金の使い道を決め、とある店に入っていった。

 

 すると、店の外である剣を携えた男が何やら話していた。

「俺の故郷の戦士の村が魔族に滅ぼされたらしい•••もうそこにはもう•••誰も残っていなかったそうだ•••全滅•••だろうな。」

 そこでグローベはそんな話を聞いた。

 その男の声から滲み出すのは魔族への怒り、そして魔族によって親族を殺されたことへの悲しみだった。

 

 こういう話を聞くのは初めてではなかった。グローベは一年前頃から人間の街に出入りしている。ソリテールが人間を知るために、人間社会のものを求めているのだ。

 これは、グローベの存在により、ソリテールの『人間の研究』にうまく働いていていることのほんの一例である。

 しかし、それによってグローベにはある変化が起きていた。

 ソリテールによって育てられ、ソリテールの知識を、常識を、何よりその感性のみに触れてきたグローベが、人間たちの『普通』の感性に触れ始めたのだった。

 そこから生じるのは僅かな違和感、僅かな歪み。それをグローベは既に自覚していた。だか、それはまだ僅かであり、誰にも気づかれておらず、この歪みが後にどんな影響をもたらすかを知っている者も当然いないのだった。

 グローベは己が意志とは何か、正気とは何か、正義とは何か、それを問うように目当てのそれ(・・)を手に取った。

 

 グローベが買い出しを終え、ソリテールが居る街から少し遠くにある建物に向かう。少し前に手に入れた(・・・・・)建物である。

 すると、その道中の草原でソリテールは立っていた。

 草花は風でゆっくりと動いており、陽の光に照らされて光って見えた。

 闇に生きる筈のその魔族はグローベを見ながら微笑んだ。

 

 ソリテールはあからさまに何かを隠しているように腕を後ろに回しながら、あからさまに何か話したいことがあるようにグローベを見つめていた。

「•••どうなされたのですか?お母様?」

「ふふっ、グローベ。私ね、プレゼントを用意してみたの。」

 そう言ってソリテールが見せた物は、血の付いた花束であった。

 青、緑、紫といった花で十分に色付いたそれは、血によって過剰な濃さをもっていた。

「どうかしら?」

 この花束がグローベのことを想って渡したものなのか、単なる反応を見る為の実験なのか、それを確かめる方法をグローベは持ち合わせていない。

 仮に実験なのだとすれば、血が付いたままなのは意図的なのか興味を示さず放置しているのかも、確かめる術はない。

 魔族とは悪なのだろうか。魔族は何処までも純粋である。悪意を持たない魔族を悪人と呼ぶならば、悪意を持つ人間は一体何であろうか。

 魔族とは純粋に人類の()である。人を食い、猛威を振るい、悲しみや苦しみを振り撒くのが魔族であっても、それでも人の姿をした純粋な生き物である。極めて不完全で、歪んだ生き物である。

 そして、その歪んだ生き物に育てられたグローベも歪んでいるのだった。その幼き少女は理性を超え、論理を超え、ただひたすらに敬愛するソリテールからの贈り物に自分でも恐ろしいほどの喜びが湧き上がってくるのを全身で感じた。

「お母様、ありがとうございます。とても嬉しいです。」

 そこに有ったのは一目見ただけではあたかも幼気な少女がはにかんだだけのように見えるほのぼのとした風景であった。

 

「お母様、実は私もプレゼントを用意しておいたんです。」

 そう言って取り出した物はあの店で買ってきたネックレスだった。

 銀色の鎖に、ソリテールの髪色と同じ蒼い宝石を付けられたあまり安そうには思えないそれに陽の光が差し込み、美しく光っていた。

 ソリテールはそのネックレスと、少し不安そうに上目遣いでソリテールを見つめるグローベとを無表情のまま交互に見ていた。

 その時間は永遠にも感じるものだったが、ソリテールが微笑んだ事でその場の緊張はふっと霧散して行った。

「ありがとう、グローベ。とっても嬉しいわ。」

 そう言ってソリテールはグローベの頭にそっと手を置き、ゆっくりと撫でた。

 

 ソリテールのおっとりとしたその声に、微笑むその表情に、仕草に、血濡れた服に、香りに、何より、実験動物を観察するように見つめるその視線に、グローベは強く、どうしようもなく、狂気的なまでに惹かれていた。

 ソリテールはグローベの影響によって史実よりも人間に対する理解を深めている。ただでさえ話術に長けた魔族が生まれたときから育ててきた子供を支配下に置くことなど容易な事であった。

 人間を実験動物の様に見るソリテールへの狂気的な崇拝。アウラの服従させる魔法(アゼリューゼ)の様な紛い物とは異なる、本心からの支配はグローベという6歳の少女の心に深く絡み付いていた。

 グローベは人間である。それ故に罪悪感も抱く。しかしそれもソリテールという支配者の前によって塗り潰されていくのだった。




次話、原作キャラ登場(予定)


•••3月中には何とか出したいなぁ。
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