ハイスクール 鬼と竜   作:謎の旅人

12 / 39
第9話

「祐斗!」

 

 

リアス先輩の声に木場先輩が飛び出してきました。へ~、速いですね。その手には剣を持っていました。その剣を私に向かって振り下ろされます。その剣をエクスキューショナーソード(断罪の剣)で防ぎました。

 

木場先輩の攻撃はさらに続きます。縦、右、左、左ななめ、右と色々な方向から剣が振り下ろされます。私はそれを的確に防ぎます。それも片手で。

 

 

「速い!」

「いえ、あなたが遅いだけです」

 

 

木場先輩の攻撃を防ぎながら、もう片手にいる小猫ちゃんをゆっくり床に寝かせます。

 

 

「『リク・ラク ラ・ラック ライラック 光の精霊 17柱!! 集い来たりて敵を討て 魔法の射手 集束・光の17矢!!』」

 

 

その手から17の魔法の射手が木場先輩に向かって放たれます。

木場先輩は攻撃を止め、一気に後ろに下がります。おそらく接近しすぎて防御できないと思い、下がったのでしょう。木場先輩は剣を盾にし、防ごうとします。

 

その後ろにはリアス先輩、朱乃先輩がいました。普通なら避けますが、避けたくても避けられなかったんでしょう。魔法の射手を受け止めます。

 

 

「祐斗っ!朱乃、障壁を張りなさい!」

「はい!」

 

 

朱乃先輩が障壁を張り、祐斗先輩を手助けします。拮抗しますが、しばらくすると剣が砕け、障壁が破壊されます。魔法の射手は主に木場先輩、朱乃先輩に当たりました。

 

ドオォン!

 

小規模の爆発が起きました。その爆発で家は半壊。隣の家にも多少傷が見られます。

3人はボロボロに傷だらけになっていました。これで終わったようです。

 

 

「殺さないであげる。私が不殺主義だということに、感謝しなさい」

 

 

そう言い振り返り、小猫ちゃんのもとへ行きます。小猫ちゃんの様子を見て、何もないことを確かめ抱き上げます。形的にお姫様抱っこです。

 

 

「あと、もう一つ。次にこの子に手を出したら、許さないから」

 

 

もう気絶しているかもしれませんが、私は言います。

 

 

「待ち、な……さい……」

「何ですか?」

 

 

リアス先輩のほうを向きます。まだ気絶してませんでしたか。2人が守ってくれたおかげみたいですね。ですが、その体には傷が多くあります。やっぱり無傷ではないです。

 

 

「あなた……は何、者?」

「教えません。残念です。リアス先輩たちとは仲良くなれると思ったのに」

 

「そこまでです!」

 

 

鋭い声が聞こえました。発せられた場所は破壊された壁から。そこにはまた複数の人影。発した者は私に殺気を放ち、睨んでいます。

 

 

「生徒会長ですか」

「ええ、そうです。動かないでください。動けば攻撃します」

 

 

その言葉に反応し、生徒会長の周りにいた人たちが、一斉に手を私に向けます。

 

 

「あなた方も敵ですか。狙いは小猫ちゃんですか?」

「あなたは何を言っているの?」

 

 

生徒会長は私の発言に疑問で答えます。これ、どういうこと?なにかかみ合ってない。

何が?どうして?私の思考がそれを中心になります。相手も同じように混乱しているようです。

 

 

「あなたはその子をどうするつもりですか?」

「決まってる。安全な場所に寝かせる」

 

 

私は小猫ちゃんの顔を見ていいます。小柄な体を抱きしめます。さっきまでボロボロでした。見るからに痛々しい傷と大量の血。まだ頭の中で鮮明に思い出せます。

 

 

「……兵藤さん、でしたか?」

「ええ、そうです」

 

 

答えなくてもバレますので、正直に答えます。

 

 

「これは誤解です」

 

 

誤解?小猫ちゃんを重傷にすることが?ふざけないでください。誤解で済まされることではありません。私は断罪の剣を発動します。

 

 

「何が誤解ですか?小猫ちゃんをここまでしておいて」

「それが誤解です。お願いです。それを解除してください。説明します」

 

 

断罪の剣を解除します。ですが、警戒は解きません。いつでも魔法を放てます。

 

 

「私たちはその子の味方です。そして、あなたも私たちの敵ではなく味方です。

リアス、動けます?」

「ええ、動けるわ」

「なら、あなたがどうしてここへ来て、私が来るまでを説明してください。その中に誤解を生んだ場面があるはずです」

 

 

リアス先輩に手を貸しながら、生徒会長が説明させます。リアス先輩はゆっくり立ち、私と向き合います。

 

 

「私たちは小猫が転移した場所で、何かが起こったことを感じたわ。そこで皆を集め、転移したの。転移した場所は人間の血で染まっていて、そこに無傷の絢乃と血まみれの生死不明の小猫がいたの。だから、私はすべて絢乃がやったことだと思って、祐斗に攻撃するように命令したわ」

「リアス、つまりあなたから仕掛けたのね」

「ええ、そうなるわ」

 

 

生徒会長はリアス先輩に質問し、答えを聞いたあと私の方を向きます。私と相手の間に緊張が走ります。そして、生徒会長が!

 

 

「申し訳ございません!」

 

 

頭を下げ、謝りました。どういうことです?いきなりで混乱してます。相手側も生徒会長の突然の行動に混乱しているようです。生徒会長の行動を理解しているのは、誰もいないようです。生徒会長はリアスのほうを向きます。

 

 

「リアス、これはあなたが悪いのです」

「……どうして?」

「いくら小猫さんの状態が分からないからといっても、多少話すことができたでしょう。それをせず、一方的に敵と認識したんです。ここまでされても文句は言えませんよ」

 

 

生徒会長の言葉を受け、リアス先輩が俯きます。これで生徒会長が謝った理由が分かりました。

 

 

「………絢乃、ごめんなさい」

「いえ、私もやりすぎました。もう少し冷静になっていれば、3人をここまですることはなかったのに……」

 

 

私とリアス先輩は互いに謝ります。私はリアス先輩に近づき、謝礼として抱きつきます。

 

 

「『リク・ラク ラ・ラック ライラック 汝が為にユピテル王の恩寵あれ ”治癒”』」

 

 

私が詠唱したことに一瞬周りが警戒しました。しかし、それを無視し魔法をかけました。リアス先輩の怪我はすべて大したことがないので、すべての傷が治っていきます。

しばらくすると私の腕の中に服がボロボロですが、体にほとんど無傷なリアス先輩がいました。

 

それを確認し、リアス先輩から離れます。皆の警戒もその効果を見て、なくなります。

これは私のせめてものの償いです。

 

 

「絢乃、これは?」

「治癒魔法です」

「あなたは魔法が使えるのね」

「はい」

 

 

私は他の2人にも魔法をかけます。こっちのほうが傷はひどいので、リアス先輩より傷が残りました。

 

 

「あや……の……さ、ん?」

 

 

小猫ちゃんの声が聞こえました。その声を聞き、すぐさま小猫ちゃんのもとへ行きます。小猫ちゃんはまだ体を動かせないようでした。私は小猫ちゃんの上半身を抱き起こします。

 

 

「気分はどうですか?」

「……何も問題ないです。でも、なんだか血が飲みたいです」

 

 

私は小猫ちゃんの歯を確認します。そこには私と同じ歯が存在していました。

これは……どういうこと?

 

 

 

 

 

 

 

 

「絢音、小猫ちゃんの歯が!!」

「私たちと同じような歯になっているんでしょ?」

 

 

絢音が知っていたように、言っていました。私は思わず、殴ります。ですが、絢音は涼しい顔で手で受け止めました。絢音が私の手をゆっくりと放し、私に近寄ります。

一瞬殴られるかと思いました。でも、殴られずに私を抱きしめます。

 

 

「落ち着いて。それは一時的なもの。いわゆる副作用」

「副作用?そんなのがあるなんて……」

「ごめんね。言ってなかったね」

 

 

絢音が謝り、さらに強く抱きしめられます。

 

 

「いいです。私もいきなり殴ってごめん」

 

 

私も絢音を抱きしめます。互いに抱きしめあいました。そうでした。絢音は私、私は絢音でした。絢音が私の気持ちや考えを分からずに、小猫ちゃんを吸血鬼にするはずがありませんでした。

 

それを理解したのか絢音は私に微笑む。私と同じ顔。いえ、それでも違うところが一つあります。それは目の色。私の目は赤く、いえ、紅く、絢音の目は金色です。

それ以外は何も変わらない。

 

 

「私たちの体は真祖の吸血鬼の体。その血を飲めば吸血鬼になり、不老不死になる。でも、少し飲んだだけじゃ簡単にはならない。少しの量なら一時的に吸血鬼になる」

 

 

絢音が私から離れ、歩きながら説明します。絢音はいつの間に着たのか、白衣を着てメガネをかけていました。聞けば「説明するときはこの服装が一番なんだよ」と微笑みながら言ってくれました。今度、私も着てみたいです。

 

 

「この世界にも吸血鬼はいるみたい。それはあの神父の発言が証拠。まだこの世界の吸血鬼は分からないけど、私たちより強力な吸血鬼はいないと思う」

「ならその吸血鬼の血を飲んでも、不老不死になるの?」

 

 

疑問に思い、聞きます。すると、絢音がピシッと私に指を指します。

 

 

「いい質問だね。結論は多分ならない。でもこれは真祖だけの特性。それほど真祖が強力だということだよ」

「思ったんだけど、それなら吸血したときにも、吸血鬼になるの?」

 

 

パンッ!

 

絢音が手を叩きます。すると絢音の横にホワイトボードが出現しました。私のところにも椅子が出現しました。私はその椅子に座ります。ホワイトボードに絵が描かれます。

 

 

「吸血鬼が吸血する理由は2つ。1つ目は食事のため。知ってのとおり吸血鬼は血を飲む。名前の由来でもある。2つ目は眷属を作るため。吸血鬼が眷族を作る理由はいくつもある。どれが正確な理由かは分からない。けど、血の伴侶を作るためだとか、仲間が欲しいからとか。つまり、この2つの吸血を操っているの。だから、血を吸っても吸血鬼にはならない」

 

 

説明によって次々に指す絵を変えます。分かりやすいです。吸血鬼になったときに色々と分かったと思ったんですが、まだほんの一部だったようです。

 

 

「では、血を飲んだときでの吸血鬼化と吸血による吸血鬼化の違いは何か。分かる?」

 

 

絢音はメガネをくいっと上げ、私に聞きます。しばらく考えますが、分かりませんでした。その間、ホワイトボードを一旦きれいにし、新たな絵が描かれます。

 

 

 

「分からないようだね。それは化物になるかどうか。血を飲んでのやり方は強力な力が手に入る。けど、その分吸血鬼が薄くなる。だから力に耐え切れず、力に飲み込まれ化物になる。それだけでなく、体が醜くなってしまう」

 

 

パチンッ!

 

絢音が指を鳴らします。すると絵に描かれていた人間の姿が化物に変わっていきます。

うぅ、たしかに醜いです。

 

 

「もっとも、私たちから吸血鬼になるだけの血を奪うなんて、できないけどね。次に吸血によるやり方。こっちはさっきのと比べれば、力は強力ではなく強いくらいしか得られない。でも、完全に吸血鬼になるの。だから、力に耐えられて、化物にならない」

 

 

パチンッ!

 

再び指が鳴ります。人間の姿の上に「吸血鬼化成功」の文字が浮き出ました。

 

 

「これが違い。分かった?」

「分かった」

「じゃあ、そろそろ戻ったほうがいいよ」

 

 

言われて思い出します。そ、そういえば今、小猫ちゃんと……

思わず頭を抱えます。結構な時間が経っているはずです。そうしていると、絢音が私の肩に手を置きます。

 

 

「大丈夫。現実ではまだ1秒しか経ってないから」

「どういうこと?」

 

 

パンッ!

 

絢音が手を叩くと周りの風景が変わります。あきらかにどこかの街です。

建物の中にも入ることができます。

 

 

「ここはこんな風に変えたり、さっきみたいに何かを出すことができる。それは意識の中だからということだけではない。それだけだったら、現実とここは同じ時間が流れている。けど、流れていない。ここはある意味、別空間といってもいい。だから、時間の流れが違うの」

 

 

それを聞き、少し安心しました。

 

 

「というか、前に何回もここに来たことがあるんだから、不思議に思わなかったの?」

 

 

言われて気付きました。そういえば、そうです。あれ?でも前に夜と同じくらいの時間だったような気が……

そこに私の思考を読んだ絢音が説明します。

 

 

「それはね。ここの時間の流れを変えることができるから」

「つまり、あの時は現実に合わせていたの?」

「そう」

 

 

なるほど。よく理解しました。結構便利です。でも、現実までに影響がでないのが残念です。影響するのは心、つまり意識です。精神的な疲労はここで休みましょう。それ以外にも遊んだりしてもいいですね。

 

 

「この空間を利用する気、満々だね」

「だって、便利だもん。それに絢音だって、遊び相手がいたほうがいいでしょ?」

「う、うん、たしかにいたほうがいい……」

 

 

絢音は恥ずかしそうに言いました。私も絢音も寂しがりやです。特に絢音は私よりも、です。絢音は私が来ないと一人です。私は絢音の目の前まで来て、その頭を撫でます。

 

 

「こ、子供扱いしないで!」

「ふふふ、本当はうれしいくせに」

「む~~~~」

 

 

ちょっとからかいます。絢音は口では抵抗していますが、体での抵抗はしてません。それどころか、頬は緩み喜んでいます。思わずさらに撫で続けました。

 

 

「もっとやって~~」

 

 

もう抵抗をせず、その気持ちよさに体を預けてます。私も調子に乗って撫で続けます。

 

って、いつまでやっているんですか!!私は撫でるのをやめます。そして、いつまでも気持ち良さそうにしている絢音の頭を、叩きます。

 

 

「いったーーー!な、何するの!」

 

 

涙目でこっちを睨むます。叩かれた頭は両手で押さえています。

 

 

「目を覚ましなさい!」

 

 

絢音に怒鳴りつけます。まだ寝ぼけているような目は、見開かれます。どうやら目を覚ましたようです。

 

 

「戻ったみたいね。それじゃ、もう行くね」

「……うん。分かった」

 

 

正気に戻った絢音にそう伝え、現実へと戻ります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「絢乃さん、体が熱いです。絢乃さんの血がほしいです」

 

 

小猫ちゃんが私の首に腕を回し、私を近づけます。周りからみれば、ちょっとピンク的な雰囲気に見えるでしょう。私は小猫ちゃんを引き剥がします。その行為に小猫ちゃんは悲しそうな顔をして、私を見ます。

 

 

「……絢乃さんは私のこと、嫌いなんですか?私は大好きです。だから、お願いします」

「私も小猫ちゃんのことは大好きだよ」

「だったら―――」

 

 

一瞬、喜びに満ちた顔になります。私はそれを否定する言葉を言います。きっと悲しむでしょう。でも、それより後悔する小猫ちゃんを見たくないです。

 

 

「ダメ。その行為は小猫ちゃんの理性があってのものじゃないし、やってはダメなこと。そして、本来あるべきものじゃない」

「違います!これは私の理性です!ダメなことではありません!あるべきことです!」

 

 

興奮した様子で私に訴えかけます。吸血鬼の本能が小猫ちゃんの欲望を暴走させているんです。周りの人たちはまだ理解してないようです。ただ小猫ちゃんの恋の行方を見ている様子です。

 

 

「あなたを化物にするわけにはいかない。だから、ごめんね。『リク・ラク ラ・ラック ライラック 大気よ 水よ 白霧となれ この者に一時の安息を 眠りの霧』」

 

 

小猫ちゃんと私のまわりに霧が発生しました。これは相手を眠らせる魔法です。

 

 

「な、ん……だか……眠く…………」

「おやすみ、小猫ちゃん」

「すぅ……すぅ……すぅ……」

 

 

すぐに小猫ちゃんから寝息が聞こえます。そこにリアス先輩と生徒会長が前に出ます。

 

 

「何をしたの?」

「小猫ちゃんを眠らせただけです」

「なぜ?」

 

 

リアス先輩は腕を組みながら聞いてきます。腕を組んだせいで、リアス先輩の胸が強調されます。私の胸より大きいです。ちょっと羨ましいです。

 

 

「小猫ちゃんの服とその血を見れば分かると思いますが、小猫ちゃんは重傷でした。そのため、私の血を飲ませました」

「どうして?」

「私は真祖の吸血鬼です。真祖の吸血鬼の血は副作用がありますが、傷を一瞬で治します」

 

 

私の正体を言ったところで、リアス先輩たちは驚いた表情になります。気にせずに私は続けます。

 

 

「今の小猫ちゃんはその副作用が働いているんです。さっきのラブシーンがそれです」

「まさか、発情することが副作用?」

「いえ、違います。小猫ちゃんが起きたときの言葉を思い出してください。なんと言いましたか?」

 

 

この問いにしばらく顔を伏せますが、しばらくするとリアス先輩と生徒会長は、はっと分かったように顔を上げます。

 

 

「分かったようですね。副作用は一時的に吸血鬼になることです。あのまま私が抵抗をせずに、血を飲めば完全に吸血鬼になっていました。それを阻止するために眠らせたんです」

 

 

私は抱きかかえている小猫ちゃんの頭を撫でながら言います。小猫ちゃんは気持ち良さそうに寝ています。

 

 

「分かったわ。小猫はどうするの?」

「そちらで預かってください。ついでに体の拘束もお願いします。拘束をはずすのは私がやります」

 

 

一瞬拘束する理由が分からなかったリアス先輩は顎に手をあて、考えます。なんだかその様は似合っている気がします。理由が分かったリアス先輩は頷きます。子猫ちゃんを抱えた私はリアス先輩の目の前まで行きます。

 

 

「では、子猫ちゃんを預けますね」

「分かったわ」

 

 

私は子猫ちゃんをゆっくりと丁重に渡します。それはすぐにでも割れそうな物を扱うようにです。リアス先輩も同じように丁重に預かります。まるでどこかのお姫様扱いですね。今はリアス先輩に抱かれている子猫ちゃんの頭を撫でます。

 

それに反応して顔が嬉しそうな顔になります。その顔を見るだけでも、満足してしまいそうです。いえ、しているんですけどね。

 

 

「ところで神父はどうしました?」

 

 

誰も神父を拘束していないことが気になり、質問します。リアス先輩は子猫ちゃんを落とさないように、首をかしげました。他のみんなも同じような感じです。

つまり、誰も神父の存在を知らないような感じです。

 

 

「すみません。見ませんでした」

 

 

あの神父、逃げましたか。気絶していた上に、ボロボロだったのにそこから逃げるなんて……。私は神父の事を伝えます。

 

 

「分かったわ。気をつけるわ」

「情報、ありがとうございます」

 

 

伝え終わった私はみんなから離れます。

 

 

「では、私はこれで失礼します」

 

 

離れた場所には出口はありません。私の行動に疑問の顔を示します。

ですが、その顔もすぐに驚愕に変わりました。私が床へ沈んでいったからです。

いえ、正確には床にあった影に、です。影を利用した転移魔法です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分の部屋に転移し、影から出てきた私は、その場に膝と右手を付きます。そして、左手で自分の胸元を押さえます。

 

 

「くっ、はあ……はあ……はあ……はあ……」

 

 

体中にひどい痛みが走っています。その上、ひどい倦怠感を感じます。表面では何もないように振る舞ってましたが、内面ではこの痛みと倦怠感に耐えていました。私は壁を使いながら、ゆっくりと立ち上がり兄さんが寝ているベッドへ向かいました。

 

その様子は今にも倒れそうな様子です。それでも、ゆっくりと倒れないように向かいました。1m、0.8m、0.5m……と少しずつ近づいていきます。その時、視界がぶれました。ぶれた視界はすぐに戻りましたが、床が縦にまるで壁のようになっていました。

 

私は倒れてしまったのです。あと0.2mというところでした。手はもう少しだったベッドに向けて伸ばされます。しかし、その腕の力は少しずつなくなっていきます。

そして、力が入らなくなり、床に落ちます。

 

私の体からも力が入らなくなります。視界も少しずつ狭くなり、ついに真っ暗になりました。体に力が入らなくなると私の意識はなくなりました。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。