白い空間。そこは私がいる場所。どう見ても現実ではありえない場所だった。あの時、私は死にました。それは確実です。薄っすらとまだ生きていると思いたいが、現実ではありえないこの場所がそれを否定する。
ここが天国か地獄なのでしょう。しかし、それにしては何もないですね。さびしい所です。
「そうだろう。何せここは天国でも地獄でもないからな」
「っ!!」
「おっと警戒しなくていい。俺は神だ」
振り向くとそこには一人の男の人が立っていた。服装は白くどこか神々しい。神? この男の人が? なぜかそう思う。それにしてもいつの間に私の後ろに? やっぱり神だからですか? それにしても、な、なんだかかっこいいです。
「かっこいい、か。ありがとう」
「!!」
思わず口を手で塞ぐ。しかし、私はなにも言っていない。そこで思いつくのは私の心を読んだということ。神は私がそう思った瞬間、
「正解。俺は君の心を読んでいる。それで分かっているだろうが、君は死んでいる」
「……分かっています」
「そして、一気に吹っ飛ばして単刀直入に言うが、君には転生してもらいたい」
「転生……」
「そう、転生だ。言葉のとおりの意味だ。生まれ変わるということだ。そして、ここは死と生の狭間ではあるが現実だ。なせ君がここにいるのか。転生してもらうためだ。なぜならこの転生はある意味仕事なのだから。ではなぜその仕事を神である俺ではなくて君にするか? 俺以外にも神はいる。しかし、神たちは忙しいし、問題すべてに神が関わるということはできない。そこで俺たち神は転生者を使うことで、解決することにした」
「少しわかりました。でもなぜ私なんですか? 神様なら生きていたときの私を知っていますよね?」
「もちろん知っている。君がどういう人間かもね」
「ならふさわしくないと思いますよ」
私の人生を振り返ってもそういう大切な仕事をうまくできるとは思わない。むしろ失敗して迷惑をかけてしまいそうだ。それにあまり人と関わりを持ちたくない。だって怖い。
また裏切られるかもしれない。そんな人に対して恐怖を抱いている私が、神様の仕事をできるわけがない。仕事は人間関係で成り立つ。一人で成立するようなものではない。神は私の心を読んでいるし、私を知っているので分かるはずだ。
だからと思って神の顔を見るとその顔は優しい笑みを浮かべていた。なぜだろうか。その表情は私を安心させた。
「俺が君を選んだのはこの仕事が成功する失敗するとかではない。俺が君がいいと思ったから選んだのだ。それはただ見た目とかではない。君のすべてを知っているから選んだのだよ。それは人間たちの言うすべてを知っているとはレベルが違う。天と地以上の差だ。君しかいないんだ」
「な、なんだか照れますね」
「まあともかく、仕事をしてくれるか? 一応俺は神だが力を行使して無理やりなんてしない。するしないの選択肢は君にある。どうする?」
私の握った拳に力が入る。これは本当に私の人生を動かす選択。しないと言えばそこで私という魂は終わり、すると言えばやり直しではないが私の魂は存続し、生きていたころにできなかったことができるかもしれない。
でもそれを理由にするのはいいのだろうか? それは自分の欲のためのような気がする。これは仕事なのに欲をも満たそうとしている。そんな考えを持つ私でいいのだろうか?
「問題ない。君だって人間。それに俺たち神だってずっと仕事ばかりではないのだよ。ちゃんと休む。仕事さえやってもらえば、君のやりたいことをやっていい」
神が私の心を読み答えてくれた。
「……やります」
「よし! なら決まりだな!」
「ちょっと待ってください。どんな仕事ですか? 思えば内容を聞かずに決めたなと思って……」
「む、そうだったな。ならまずどんな世界かを言おうか」
「え? 世界が違うんですか?」
「違う。君がいた世界ではない。君が行く世界は妖怪やらと人間の世界だ。この世界はこの2つによって世界を保っている。しかし、今は争っている。そのせいでバランスが崩れかかっている。ちなみにバランスは生態系のことだ。君にはその争いを止めてもらいたい。バランスはどういうものかは言ってもちょっと難しいので言わない」
「それで止めるにはどうすれば?」
「方法はいろいろだ。例えば、どちらかの勢力についてバランスを取るんだ。相手を多く殺したり、殺さなかったり」
「こ、殺さないといけないんですか?」
「別に殺さなくてもいい。これは方法の一つだ。でも、こちらはすすめない。殺すということはバランスが傾きすぎるからな。そしてもう一つはどうにかして話し合いをし、争いを止めさせることだ。これなら殺さない」
「そんな難しいことを私にできるでしょうか?」
「それは分からない。俺は君がふさわしいと思ったから、転生させようと決めた。お前が死んで失敗すれば別の転生者を送ることになっている」
なんだか私は神様の駒みたいですね。あまりいい気分じゃありません。
「確かに駒みたいだな。それはすまない」
「!!」
びっくりした。そういえば心を読めるんでした。油断できない。もうやる気がなくなりますよ。
「言っておくが、成功すれば自由に暮らしていいんだぞ? お前はまだ恋愛をしたことがないだろう。そこで好きな異性を見つけ、自由に暮らせばいい」
「余計なお世話です!! でも、私、銃とか使ったことありませんよ? 大丈夫でしょうか?」
「銃? ははは、何を言っている。君が使うのは銃ではない。君のようなオタクなら、一度は使いたいと思ったことがある魔法の類だよ」
て、転生すれば、ま、魔法が使える!? なんともすばらしいことでしょうか!! でも、それは争って私が人を殺すことを意味します。魔法だってアニメのような便利なものはないです。きっと戦闘用が多くあるはずです。
どんなにあこがれても現実はアニメや漫画とは違う。そんな力いるでしょうか? 人を殺したくはありません。ならそんな力……。
「いらない、か。だが、それは無理だ。俺は君に力を授ける」
「でも、私は殺したくはありません」
「俺はさっき方法を言ったじゃないか。話し合いにすれば殺さないですむ。だが、それは難しいことだぞ。争っている相手と仲良くするんだからな。とにかく、力は君の命を守るものだ。使いたくなければ使わなければいい。持っているのと持っていないのでは違う。いいか?」
「……分かりました」
「では、君が思う強い人物を思い浮かべたまえ。もちろんアニメでも漫画でもいい」
私は2人のキャラを思い浮かべた。もちろんあの漫画のです。一人目はエヴァンジェリン.A.K.マクダウェル。二人目はネギ・スプリングフィールド。
「2人か。しかも漫画。なるほど、作中では強いな。ほう、なるほどな。そうか。それもいいな。ならこうしてみるか。少し条件が難しいが、これでも十分強いからな。できなかったらそれでいい。うん、そうだな」
神様は一人でぶつぶつと言っていた。内容からして何か企んでいるみたいだった。大丈夫だろうか? 少しこれからの自分の人生が怖くなった。
「決まったよ。君にはこの二人の能力にする。今からその世界に行ってもらうが、心の準備はできたか?」
「はい」
「そうか。まあ、がんばれよ。俺にできるのはここまでだ。君に力を与え転生させることだけだ」
「いえ、十分です。あなたは私にこうやって新たな人生をくれたんです。私、がんばって仕事をやり遂げます!」
「その気持ちはうれしいが、忘れるな。確かに仕事ではあるが、君に幸せを求めてはいけないという決まりはないのだと」
「覚えておきます」
「ならいい。ではがんばりたまえ」
その言葉を聴いた瞬間、私の足元に黒い穴ができ私はすっと吸い込まれてしまった。吸い込まれた瞬間に見えた神様の顔はやはり優しいものだった。