お父さんたちの話を終えたあと、風呂に入り部屋でベッドに寝転がり本を読みながら過ごしました。くつろいでいるようで内心では焦っていました。だって時間はもう9時です。そろそろ兄さんに打ち明けないといけません。
私の鼓動が早くなる。それと同時に不安もよぎる。事実を言って兄さんは私から離れないだろうか? それが一番いやだ。事実を言って兄さんが私になにをしたってなにを言われたっていい。兄さんが離れなければ。
「そろそろ話してもらっていいか?」
その一言に私の鼓動は大きくなった。体中が熱くなり、体中から汗が流れ出る。それに伴い呼吸も早くなった。視界もぐらぐらする。
「おい、大丈夫か?」
「え、ええ。ちょっと緊張して……」
兄さんとチラッと顔を合わせる。私はゆっくりと深呼吸をした。体の熱は少しずつ冷めていく。ちょっとは落ち着いたみたい。
「はふうぅ……では話します」
私は睨むような感じで兄さんを見た。兄さん、こんな風に睨むみたいになってごめんなさい。緊張しているんです。兄さんはそれを同じように真剣な顔で見つめてきた。そのおかげか緊張もなくなった。
「では……話します」
室内の空気が止まる。
「私は人間じゃなく、吸血鬼なんです!!」
私は目を瞑り、思い切って告白した。これで兄さんは私が人間ではないと分かったはず。もう怖い。兄さんは私をどうするのだろうか? どんな目で見られるのだろうか? ゆっくりと目を開けた。
兄さんはただ話を聞いていた。なにも反応しない。びっくりしているのだろうか? 私はゆっくりと近づく。それに連れ、兄さんの視線も動く。
「それで?」
「えっ!? 私、人間じゃないんですよ!? 化物なんですよ!? どうしてそうしていられるんですか!?」
私は兄さんに迫り、興奮したまま言った。だって私は人間じゃないということを言ったんですよ! それをほぼなにも反応しないなんてありえない! まさか私が冗談を言っていると思われているの? ならいいですよ。
兄さんに私が化物だということを証明します。私は机からカッターナイフを取り出し、刃を出す。私は自分の左手を広げ、右手に持ったカッターナイフを振りかざし振り下ろした。いくら傷は再生するとしても痛いものは痛い。
目を瞑り痛みに備える。でもカッターナイフの衝撃や感触は来ない。代わりに来たのは温かい何かがぶつかった感触。恐る恐る目を開けた。そこに映っていたのは兄さんの手に私が持つカッターナイフが刺さっている姿だった。
その顔は苦痛に満ちていた。私はカッターナイフから手を離した。私は自分の手を見つめた。私はこの手で兄さんを刺した。自分が愛する人を刺した。目の前がさっきよりもぐらぐらとなる。
「あ……ああ……わた、しは……なん、て……こと、を……!」
「いいんだ。気にするな」
兄さんはそう言いながら、刺さったカッターナイフを抜き取る。血が溢れるが、それはすぐに止まり傷も治った。それは吸血鬼の能力。兄さんはそれを見たはず。でも驚いた様子はない。
「なんで……驚かないんですか? 兄さんの……それは……人外のもの……ですよ?」
「いつから俺の体はこんな風になったかは知らないが、結構な時間があった。その間に怪我くらいするさ。初めてのときは驚いたさ。これは絢乃の仕業だな? さっきの絢乃の告白を合わせると俺も吸血鬼ってとこだな。正解か?」
兄さんは再生した手をぷらぷらと振りながら言う。兄さんが驚くのではなく、逆に私が驚いた。
「ええ……正解です。私は兄さんを吸血鬼にしました。でもこれは訳あってのことです」
私は兄さんが吸血鬼になったときの経緯を話す。話している最中、兄さんはただ頷くだけ。
「なるほどな。よく分かったよ」
「ごめんなさい。本当ならすぐに言わないといけないのに」
「いや、いいんだ。俺が絢乃の立場だったら俺もそうしているだろう。怖かったんだろう?」
兄さんは優しく言う。そのときには私の緊張もなくなっていた。もう冷静だ。私は兄さんの問いに縦に頷く。
「それで吸血鬼ってなにがあるんだ?」
「え? あっはい。吸血鬼は人間より身体能力が高くなります。そして、夜型ですね。夜のほうが調子がいいはずです。そして、八重歯が伸びているはずです。その歯はもちろん血を吸うためです」
私は自分の口を開け口の端を指で引っ張り八重歯を見せる。兄さんの瞳には私が映し出されている。兄さんは自分の口に指をつっこみ、八重歯を確かめていた。
「本当だな。まあ、身体能力が高いってのは気付いていたよ。体育でそう感じたからな。まあ、それ以来から気をつけるようにしたけどな」
兄さんはアハハと笑いながら言ってきた。心がズキッと痛む。もう兄さんは友達とスポーツ系の遊びでは思いっきり遊べない。兄さんを救うためとはいえ、罪悪感が私の心に重く圧し掛かる。
でも、私はまだ吸血鬼のことで言わないといけないとことがある。それが一番言い難いことです。歯を見せたことで話が逸れたのが痛かったです。あのままこれも言えればどんなによかったか。でも、もう遅い。アレはアレ。これはこれです。
「えっとですね。吸血鬼にはもう1つあるんです」
「それは?」
「不老不死、です」
そのとき、兄さんは目を見開き驚いていた。しばらくはそのままだった。兄さんは俯き額に手をつく。兄さんはさすがにショックだったみたい。
「……それって数百年ってレベルか?」
「……いいえ。文字通りずっとです。きっと死ぬことはありません」
「は、はは、さすがにそれには驚いたな……」
兄さんは私を見つめる。
「私を……殴ってもいいです。どんな風にしても……いいです」
「そうか」
兄さんは私に近づく。兄さんになにをされるか分からない。私は目を瞑り、覚悟した。でも兄さんからされたのは殴られるのでもなく、服を乱暴に脱がされてなどではなかった。ただ抱きしめられた。
「え?」
「バカか、お前は」
「なっ! バカじゃありません!」
「確かにな、死ぬことはないって言われて、驚いたしショックも受けたさ。でもな、だからと言ってお前にそんなことをするか。お前にとっては俺を吸血鬼にしたことで何か思っているのかもしれない。だがな、俺はある意味感謝しているよ。――――――――のこともあるしな」
兄さんの言葉の最後のほうは小さくてよく聞こえなかった。気になったけど今はぬくもりに甘える。そして、密着したまま息を吸う。兄さんの匂いも鼻から入ってきた。私はこの匂いは好きです。
「にしても、悪魔に堕天使に天使に吸血鬼、か。まるでアニメの世界のようだな」
「ええ。でも現実です」
私は兄さんの胸板に頬をつけながら、その表情は真剣だった。兄さんはもう本当に人間ではなくなった。自らの事実を知ったときからもうそれは、私たちのような化物になる。これも私のせい。
「あと、妖怪もです」
「妖怪?」
「はい、小猫ちゃんは妖怪で悪魔です。なんの妖怪かは知りませんけど」
「はは、本当に現実かって思うよ」
私は兄さんから離れる。ちょっと名残惜しいですけど。
「ちなみに魔法もあります」
「……マジか」
「はい」
私は手に氷の塊を出現させる。兄さんはうおっと言って驚いた。そしてマジマジと見る。なんだか恥ずかしいです。
「へ~、これが魔法か。俺にもできるのか?」
「多分。兄さんは吸血鬼になりました。魔力もあります」
兄さんから感じる魔力。けど、なんだかおかしい。魔力が静か過ぎる。兄さんは魔力の扱いを知らないはずです。でも今の兄さんは魔力を完全に扱えていた。これも兄さんの才能ですか? 私は作り出した氷を握り潰す。
「じゃあ、兄さんも練習しますか?」
「う~ん、いや、いいよ。別に戦闘をするわけじゃないしな」
「まあ、そうですね」
私たちは別に堕天使たちと戦うわけではない。戦闘になることなんてほとんどないはず。でも、それは今だけかもしれない。長く生きれば私たちは狙われる。だから今を大切に過ごそう。
それに私たちは今は悪魔側。いざとなれば悪魔側に頼る。私は不殺主義。一番は兄さんと過ごすこと。悪魔の方々には悪いですけど、利用させてもらいますよ。でも小猫ちゃんは別です。小猫ちゃんは妖怪ですから。
そういえば、吸血のことを言ってませんでした。吸血鬼の吸血欲が高まれば、多くの人間の血を啜る本当の化物となる。化物の中の化物に。
「兄さんは今、飢えていますか?」
「えっ?」
「飢えていますか?」
兄さんはいきなりの質問にわけが分からないという顔をする。私は兄さんに迫る。これは大切なこと。一刻の余地もない。やっぱり飢えているの? なら早く私の血を飲ませないと! 私は上着のボタンに手をかけ、はずしていく。
「ちょ、何をしているんだ!? 手を止めろ!」
「飢えているなら早くしないといけないんです!! 止めないでください!!」
胸元をさらけ出すほどボタンを開け、首筋をあらわにさせる。そのまま首筋を兄さんの口元へ移動させる。
「本当に待ってくれ!! 飢えているか飢えてないかと聞かれれば俺はずっと前から飢えているぞ!!」
「やっぱり……そうだったんですね。さあ、私を!!」
やっぱり兄さんは飢えていた。ずっと前からってことは吸血鬼になってからすぐってこと。やっぱり吸血鬼になってすぐにではそうなるんでしょう。きっと今まで我慢してきたはず。私にも気付かせないように。
もう耐えられないはず。だから理性があるうちに兄さんに血を飲ませる。そうすれば解決のはず。兄さんも抵抗はしなくなった。
「いいんだな?」
兄さんは私の肩を持ち、そう言ってきた。
「はい。で、でも優しくしてください。初めてなので……」
昔の私は知らないけど、今の私は初めて。まあ、絢音にそこは聞くしかない。血を吸われるっていうのはどんな感じだろうか? そう思っていると兄さんが私をベッドに押し倒してきた。私は理解できなかった。だって私が寝たら吸いにくいから。
「え?」
私はそんな声を出していた。
兵藤 一誠side
「兄さんは飢えていますか?」
そう絢乃に聞かれた。最初はよく分からなかったが、絢乃がボタンをはずし始めて大体理解できた。俺だって男だ。
無防備で寝る絢乃を襲いたいなんて思ったのも一度や二度ではない。寝ている絢乃のおっぱいを揉もうとしたときもあった。もちろん未遂だが。そんな俺にそう言ってきたのだ。一応注意してみるが、対応は変わらない。
「いいんだな?」
最終確認をする。もう俺の理性もなくなってきている。もう絢乃にそういうことをしたいと。
「はい。で、でも優しくしてください。初めてなので……」
その発言がさらに俺をそういう気分にさせた。俺はゆっくりとベッドに押し倒した。パジャマの上のボタンは途中までしかはずれていない。押し倒したせいで胸元が大きく開かれた。ブラはしていない。
絢乃は寝るときはしないらしい。前に聞いたが、つけたままでは寝にくいらしい。簡単に男の俺にそういうことを言うなと言いたくなったが。俺はゆっくりと手をそのおっぱいへと伸ばした。
「ひゃっ!? に、兄さん!? な、なにを?」
「分かっているだろう。お前から誘ってきたんだから」
「ちょ、ちょっと待っ――――んんっ」
何か言おうとしたその唇を俺の唇で塞ぐ。それと同時に服の上からおっぱいも揉む。や、やわらかい! 俺はじっくりと楽しむ。別に絢乃のおっぱいに触るのは初めてではない。だけどこうやって自分の意思で触り、楽しむのは今回が初めてなのだ。
「んんっ!? ん、んんーーーー!」
キスをされながら、おっぱいを揉まれている絢乃は俺を引き引き離そうとする。だが、俺は止まれなかった。こんなところで止められるわけがない。おっぱいは俺の手の動きに合わせ変わる。
おっぱいは俺の手から溢れるくらいの大きさだ。だから俺の手が沈む。そろそろいいかな? 絢乃も慣れた頃だろう。俺はもう片方の手で絢乃のパジャマのボタンをすべてはずす。そして、胸元を完全に開かせた。
完全におっぱいが現れた。俺はようやく絢乃の唇から離れる。そして、その光景に思わず見惚れた。こうやって見るなんていつ以来だろうか? 確か風呂に一緒に入っていたのが、小学校の3年までだからそれ以来だろう。
こうしてはっきり見ると最後に見たときよりも大きくなっていると分かる。俺は服という障害物がなくなった2つの山に改めて手を伸ばした。俺の手が直接おっぱいに触れた。だがそこで気付いた。絢乃が目を手で隠し、泣いていることを。
「うぅ……ひっぐ……う゛う゛……えぐ……」
「あ、絢乃?」
「ひど、い……です……。無理矢理……なんて……」
どういうことだ? 絢乃がそう誘ったんじゃないのか? 俺は混乱した。俺が絢乃を泣かせた。それは俺の望むことではない。
「なんでそういうことを……しようとしたんですか!! いきなりなんてひどいです!!」
「絢乃がそう誘ったんだろう?」
「さ、誘ってません!!」
「だって飢えているかって聞いただろう?」
そう言ってしばらくすると絢乃は顔を真っ赤にした。
「ち、違います!! そういう意味で言ったんじゃありません!!」
「じゃあ、どういう意味だったんだ?」
「血を飲みたいかという意味です!!」
「血を?」
「そうです!!」
ああ、そうか。なるほど。理解した。飢えているかって言うのはそういう意味だったのか。俺が勘違いしたせいで絢乃には悪いことをしたな。きっと怖かっただろう。だが、絢乃も絢乃だ。男は全員そういう風に解釈する。
俺の下にいる絢乃は開いた胸元を閉じて胸を押さえていた。今はもう泣いていない。その視線は俺を向いていなかった。別のところを向いていた。
「兄さんが無理矢理する人だとは思いませんでした。ショックです」
「本当にすまない。許してくれ」
「…………」
絢乃はなにも言わない。顔はどう見ても怒っている顔だ。簡単には許してくれないな。しばらく沈黙が続いた。その間、絢乃はチラチラとこっちを見てくる。しかし、この体勢はきつい。絢乃を押し倒したときの体勢のままだからだ。
「……私だって兄さんとそういうことをするのは嫌じゃないんです」
絢乃が俺と目を合わせずにそう言った。
「いきなりでびっくりしましたけど、うれしかったです。恋人になって1年も経っていますし、もうそういうことをしてもいいんじゃないかって。でも、さっきはまだ心の準備ができなくて拒否してしまいました」
頬をほんのりと染めた絢乃は俺と目を合わせる。
「でも、もう準備は……できました。優しくしてください。こっちも初めてなので……」
さらに顔を赤くした絢乃は目を瞑る。俺もまた目を瞑り、そのまま顔を近づけ唇が重なる。そして俺は―――――――
兵藤 絢乃side
「いや、まさか絢乃があんなになるとはね」
そう言ったのは私と瓜二つの少女、絢音だった。兄さんとそういうことをやったあと、私はそのまま眠りここに来た。絢音はクスクスと笑っていた。私は恥ずかしさのあまり体中が熱くなる。
「ま、まさか見てたの?」
「ここは絢乃の精神世界。見ることくらいできるよ」
「!! な、なんで見てたの!! そういうときって空気を読んで見ないって選択はなかったの!?」
「うん、ないね。それにしても気持ち良さそうだったね。本当に初めてなのかって疑いたくなったよ」
「初めてに決まっているでしょ!! もう!!」
まさか見られていたなんて思いませんでした。もう恥ずかしくて穴に入りたいです。
「ねえ、今度私と変わってよ」
「な、何言ってるの!! 変わるわけないでしょ!!」
いくら絢音でも兄さんを渡すことはできません。まさか絢音も兄さんのことが? あるかもしれない。私と絢音は似たような存在。まあ、なんか性格とかは違うけど。私と同じ人を好きになることもあるはず。
「ふふふ、冗談だよ。そんなにむきになるなんてね。絢乃は可愛いね」
「なっ! からかったの!?」
「だって面白そうだったからね。それにね――――」
絢音は妖しい笑みを浮かべながら私に近づく。それとともに絢音の手が私の頬に伸びてきた。その手は私の頬を撫でる。私は避けない。というか、動けないんだけど。
「私は異性より同姓の絢乃のほうが好みかな」
その言葉に背筋がぞくっとなる。え? まさか絢音がそういうのだったなんて思いませんでした。私はすぐにその手を払う。でもすぐさま、両肩に手を置かれ押し倒された。やわらかい感触が後ろには何もなかったはずなのに、ベッドがあった。
おかげで痛い思いはしなかったけど、逃げ場はなかった。最近女の子に襲われてばかりです。なんで同性ばかりなんでしょうか? あ、いや、兄さん以外の異性に襲われるのは嫌ですけど。
「教えてあげようか?」
私の思考を読んだ絢音が上から言ってくる。何もできない私は、頷くだけ。
「みんな、絢乃が大好きだからだよ。小猫ちゃんもアーシアちゃんも、みんな大好きなんだよ」
「え?」
絢音からのまさかの事実。嫌われるより好かれるほうがいいですが、まさか周りの女子が私を好きだなんて。いえ、でもきっと友達という意味で、ですよね。そうに決まっています。私のこの思考を読んだ絢音は口を開く。
「う~ん、アーシアちゃんは分からないけど、小猫ちゃんは完全にLOVEだよ」
「あは、あははははっ! ま、まさか~。小猫ちゃんだよ。そんなのあるわけ――――」
「もう気付いているでしょ? 小猫ちゃんがLOVEで好きだって」