ハイスクール 鬼と竜   作:謎の旅人

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第21話

絢音の言うとおり分かってた。小猫ちゃんがそういう意味で私を好きだって。でも私には兄さんが好き。小猫ちゃんを好きになることはできない。もし私が兄さんを好きにならなかったら同性だけど、恋人の関係になっていたかもしれない。

 

それくらい私も小猫ちゃんが好き。だけどもうそれは友人、親友と好きだから。これも変わらない。これからもずっと。私も小猫ちゃんのためにもそう言ったほうがいいのかな? 小猫ちゃんを傷つけたくないけど、これは必要なこと。

 

 

「そう必要なこと。君は小猫ちゃんに自分の思いを告げる。それが彼女のため。もしかしたら親友という関係が崩れるかもね。だって小猫ちゃんにとってきっと初めて誰かを好きになったんだから。これはどれだけ心が傷つくだろうね」

 

 

私を押し倒したままの絢音は上から口の端を吊り上げた笑みを浮かべる。それは危険を孕んでいそうな笑み。何かを企んでいるような笑み。

 

 

「絢音、ふざけないで」

「ふふふ、ごめんごめん。でもちゃんと言わないとダメだよ。あの子はきっとずっと君を欲する。君が曖昧なままだったら、異性との出会いもなくなる。関係を怖がって言えなかったら小猫ちゃんは未来を失うよ。分かっているよね?」

 

 

さっきのとは変わり、絢音の顔は真剣になる。睨んでいるようにも見えるその鋭い目は、私に嘘を許さない。させない。私も真剣になる。あの子は私の親友だ。曖昧な答えなんてしてたまるか。

 

 

「分かってるよ。あの子は私の親友だから。もし好きだとか言われたらちゃんと言うよ」

 

 

それを聞いた絢乃は優しく微笑んだ。まるで母親のように。

 

 

「さて、話はちょっと変わるけど、私はLOVEの意味で好きだからね」

「うう、それって小猫ちゃんと同じ意味だよね?」

 

 

そう聞くと絢音はクスクスと笑った。私はその反応に対し頬を膨らませた。私、なにか変なこと言った? 笑うとこじゃないと思うんだけど。

 

 

「私は家族としてのLOVEなの。小猫ちゃんと同じ意味じゃないよ。LOVEは特別な相手に。LIKEは友人に。絢乃にとっても家族は特別でしょ。だからLOVEなの。だけど、だからと言って絢乃と兄さんがやった性的なことをしたいというわけじゃないから」

 

 

絢音はニコッと微笑んだ。安心した。もし絢音まで小猫ちゃんと同じようだったら、ここに来にくくなるところだった。一応ここは精神的に休めるところです。体の疲れなどは多分完全に吸血鬼に覚醒したので、問題はないと思う。

 

とはいえ完全に覚醒してまだ数時間しかなっていない。まだ分からないことだらけ。いや、本当は吸血鬼ということも分かっていないのかも知れない。兄さんたちに吸血鬼のことを知っているように言ったけど、私はついこの前まで人間だったから。

 

 

「そうだね。君は吸血鬼のことをよく知らない。でも、私が教えられるのはこのくらいだよ。知識としては全部理解しても、本当の理解には及ばない。経験して初めて理解したといえるね」

 

 

未だに私の上にいる絢音は私のことをよく知っている。私という人間ができる前の自分も。絢音は私の作り出した存在だって言うけど、そのときの記憶がない私には事実かさえも分からない。

 

本当に私が作り出したの? 聞きたいけど怖くて聞けない。誰だって秘密があるし、他のことでいつか言うって言っていた。だから、いつか聞けると思う。でも、この思考も読まれているのかな? だとしたらもう聞いたのと同じだ。

 

 

「さて、そろそろこの体勢はきついね」

 

 

絢音は私の上から起き上がる。一瞬私の思考を読んで、それを誤魔化すためかと思ったけど、本当にきつかったらしい。その証拠に体を思いっきりのびをしていた。私も起き上がった。絢音に対し、私はそんなにきつくなかったのでのびはしなかった。

 

周りを改めて見るとここは室内だった。私と兄さんの部屋よりも3倍くらいでかいせいか、気付かなかった。本当にここは便利だ。でもこれが精神世界だというのが、残念だ。現実にもあれば、どんなに便利になるだろうか。

 

 

 

「さて、今日はもうこれでおしまい」

「もういいの?」

「今日は色々あったでしょ。それにまだ眠いからね。やっぱり覚醒のせいだね」

 

 

私も眠かった。今日は何度も寝たはず。それに十分な睡眠だった。だけど、まだ眠い。肉体ではないのにこの状態でもこんなに眠いなんて、やっぱり覚醒したあとの反動ですか。

 

 

「これって反動だよね。どのくらい続くの?」

「さあ? 私には分からないよ」

「絢音でも?」

「あのね、私は神様じゃないんだ。分からないことくらいある。私も絢乃と同じ人間だよ」

 

 

その発言に私は違和感を覚えた。詳しくは分からないけど、なにか違和感が……。だけど、それもすぐにそんなのあとでいいと思った。今はどれくらいかを知りたい。

 

 

「私の予想では数日は続くね。明日は学校だったけ?」

「ううん。明日は土曜だから休み」

「そっか。そうだったね。最近、色々とごちゃごちゃしていて、忘れていたよ。まあ、時間が経過すればその睡眠欲もだんだんと薄くなるさ」

 

 

よかった。さすがに授業中に居眠りはしたくないです。薄くなるならきっと我慢できるはず。できなかったときのことは考えない。マイナス思考はしないようにしています。私はベッドに腰掛ける。

 

ベッドの柔らかな感触が伝わる。現実のベッドより柔らかい。ちょっと羨ましい。絢音はいつもこんなベッドで寝ているんだ。うん。夜は絶対にここに来よう。そしてそのままこの心地良さそうなベッドでぐっすりと……。

 

そう考えたら自然と笑みがこぼれた。ここに来るだけで絢音といてあげられるし、ゆっくりと眠れる。まさに一石二鳥です。そんな私の隣に絢音が腰掛けた。

 

 

「ほら、寝るよ。いくらここの時間の流れを自由に変えられるからと言って、このまま寝ないのはダメだからね」

「分かってるよ。もう……ふわぁぁぁ……眠いからね」

 

 

大きく口を開け、あくびをする。人前ではできない行為です。私は耐えられず、布団の中へと入って行く。絢音も一緒に入ってきた。ベッドは大きいので私たち2人は簡単に入る。あと1人くらい入るでしょう。

 

私たちは互いに向き合う形になった。ベッドにはまだ余裕があるが、互いの距離はゼロの近い。私たちの体温が共有される。布団の中はすぐに温まった。

 

 

「ねえ、こうギュッてして?」

 

 

絢音が腕で輪を作り、どういうことか示した。つまり、抱き合うようにしてほしいということ。別に断る理由がない私は頷き、抱きしめる。やっぱりなぜかその感触を懐かしく感じた。どこでだろうか? その答えは見つからない。

 

私に抱きしめられた絢音は私の胸に顔を埋めた。これも懐かしい。どうしてなの? そのもどかしさが私の頭をいっぱいにする。

 

 

「もう考えなくていいよ。いつか分かるよ。今は寝なさい」

「……うん」

 

 

優しく言われ、私は考えるのを止めた。絢音からも手を私の体に回され、抱き合うようになる。姉妹みたいだなと思う。本当の姉妹もこうやって寝るのだろうか? 兄さんとはいつもこうだけど、他は分からない。

 

他の人から見たらこれは仲のいい姉妹なんだろう。それはそれでうれしいかもしれない。私たちの関係を言うなら私は姉妹だと思っているから。

 

 

「おやすみ、絢音」

「うん、おやすみ、絢音」

 

 

私たちは互いのぬくもりを感じながら眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は自然と起きた。時計はセットしていない。ただ自然に眠りから覚めた。やっぱりあっちの世界で主に精神を休めたおかげか、頭がすっきりしている。窓を見るとカーテン越しでも外は赤く、まだ朝早いということが分かる。

 

 

「くしゅっ」

 

 

体が寒くなり、くしゃみをする。自分の体を見れば私は何も身に着けていなかった。ただ下半身に布団がかぶさっているだけ。ああ、兄さんとそういうことをした後、そのまま寝たんでした。

 

隣に寝ている兄さんもまた何も身につけていないようだった。私は周りを見る。もちろん誰もいない。今、何をしても誰も見られない。ならちょっとだけいいよね。私の手は兄さんの体へとのびる。

 

私の手が向かったのは兄さんのお腹の部分。そのお腹は鍛えられたかのように引き締まり、腹筋を割らせていた。でも、だからといって分厚い筋肉があるわけではない。ちょっと鍛えたくらいのちょっと厚みのある筋肉。

 

さわっても大丈夫だよね? いきなり起きないよね? 触っている最中はそんなことが頭を駆け回っていた。

 

触れば分かるその硬さ。きっと私が鍛えてもならない男性特有の筋肉だった。あのときはゆっくりと見えなかったけど、今ならと思って触ったけどやっぱり色々と違う。この腕の太さも硬さも。

 

自分のを触るけど、私のはやわらかいし細い。こうやって自分のを確かめると自分がか弱い女の子にしか思えない。それなのにこの細い腕であの桜華崩拳よりも強い威力を放つことができる。

 

 

「う……ん?」

「!!」

 

 

兄さんの声が聞こえ、起きたと思った私は手を引っ込めた。ただ上半身は起きたままだけど。これだけなら言い訳ができる。ただ起きて兄さんを見ていたと。でも、どうやら大丈夫だったみたい。

 

焦ったせいか息が荒い。これが興奮によるものではないといいが。しばらくさっきのように私との違いを楽しんだ。そうしているうちに外も青白くなっていた。そろそろ起こしたほうがいい。

 

そう思い、兄さんの体を揺さぶった。でも、起きない。次は思いっきり揺さぶった。兄さんの体が大きく揺れる。どうです? これだけ激しく揺さぶられれば、どんなに深く眠っていても起きるはずです。

 

 

「う……ん。あと……20分……」

「お決まりの寝言を言わないでください!」

 

 

まさか本当にそういうことを言う人をはじめて見ました。でもこれでも起きる気配はない。くっ! さすが兄さん。手強いです。ならこれならどうですか。私の顔を兄さんの耳元へと移動させる。

 

 

「起きてください。朝ですよ。もし起きないんだったら……ちょっとエッチなことしますよ?」

 

 

私は兄さんを起こすために言った。そんなことをする気はなかった。ただ起きた兄さんに微笑みながら「おはようございます」と言うつもりだった。別に起きた兄さんが私にエッチなことをしたわけではない。

 

今、私はどういう体勢? どういう格好? 私は何も着ていない状態で、兄さんの耳元に顔を寄せている。それも覆いかぶさるように。覆いかぶさられた兄さんも何も着てない。どういうことか。

 

私の胸が重力に従い、兄さんの胸板に触れるということ。しかも、押し付けるようになっている。気づいたとき、私は恥ずかしくて顔を赤くした。すぐさま離れようとしたけど、私の声で起きたのか兄さんの目が開かれた。

 

 

「ん? んんっ!? ちょ、ちょっと待て!! 綾乃、な、何してるんだ!?」

「ち、違うんです!! 別に本当にエッチなことをするつもりじゃなかったんです!!」

「エッチなこと? おい、本当になにをしようとしたんだ?」

「あっ!」

 

 

どうやら兄さんは私のあの発言を聞いたわけではないようです。つまり私は自爆したんです。ただでさえこんな体勢なのに、さらに墓穴を掘るなんて……。

 

 

「これは本当に偶然です! ええ、起こそうとしてこうなったんです! ほ、本当ですよ?」

「う~ん、怪しいな。まあ、いい。それよりどいてくれ。いつまでもこの体勢じゃ、色々ときつい」

「え、ひゃあ!?」

 

 

私は慌てて兄さんから離れる。だけど、勢いがありすぎた。

 

 

「うぐっ!? いたっ!!」

 

 

私は手に掴んでいた布団とともにベッドから落ちた。頭から落ちたのでとても痛い。思わず頭を抱える。不老不死でも傷ではない限り治らない。つまりしばらく頭に痛みが残った。

 

 

「お、おい、大丈夫か?」

「だ、大丈――――きゃっ」

 

 

私は兄さんを見た瞬間、目を手で塞いだ。そのとき、つい声をあげた。私の下半身部分には落ちたときに手に持っていた布団がある。でもベッドの上には布団がない。兄さんは何も着ていない。

 

そんな状態の兄さんが私を心配して、こっちに来た。つ、つまり、兄さんのアレが見えてしまったというわけです。

 

 

「兄さん、隠してください!!」

「え? おわっ!? すまん。だが、昨日見ただろう」

「……兄さんはデリカシーがないです。見たことがあるないは関係ありません! 怒りますよ?」

「ごめんなさい」

 

 

兄さんも私も服を着る。体中ベタベタしていた。うう、やっぱり風呂に入ったほうがいいようです。この状態ではなんだか気持ちよくないですから。

 

 

「なあ、これはどうする?」

「どれです?」

「このシーツ」

 

 

シーツを見れば、そこには私がつい昨日のあの前までは、誰にも抱かれていないという証拠である血が付いていた。その血の染み以外の染みもあった。これじゃもう洗わないといけない。

 

でも、お母さんたちにばれずに洗うことはできない。魔法を使おうにもそういう魔法は知らない。こうなったら子猫ちゃんの家の洗濯機を使わせてもらおう。でも子猫ちゃんは私のことを好きなんですよね。

 

なのに、そんなあきらかにそういうことをしたと分かるシーツを持っていったらどうなるか。あまり考えたくはない。でも子猫ちゃんの力を借りるしかない。

 

 

「子猫ちゃんの洗濯機を借ります」

「おい、大丈夫なのか?」

「た、多分」

 

 

兄さんの問いに曖昧な答えしか答えられない。私が勝手に言ってるだけだから。

 

 

「私は風呂に入ります。兄さんも入りますよね?」

「そうだな。入ろうか。俺はあとからでいいから早く入って来い」

「なにを言っているんですか? 一緒に入るんですよ」

「お前こそなにを言っているんだ!! いくら恋人同士で婚約者だとしても、一緒に入るわけないだろう!!」

「そ、そこまで言いますか? もうちょっとやんわりと否定してくれても……」

 

 

もうちょっと優しくしてほしいですよ。確かに色々と強いですけど、心はガラスよりも弱いんですから。それにそこまで言われるとショックを受けますよ。

 

 

「じゃあ、こうしましょう! 裸ではなくてタオルを巻いて入りましょう! これならいいですよね?」

「う~ん、それなら……いいのか? いや、待て俺。俺が断ったのはそういうことでは……。だが、一応一緒に入りたいというのもある。入ってもいいよな? うん、入っていいよな。別に知らない異性でもないし、ましてや恋人だし。それにタオルを巻いてだし。さすがにタオルなしではまずいけど、これならまだセーフだな」

 

 

兄さんが1人でぶつぶつと言っている。さあ、どうですか! 入りますよね? いいって言いますよね? 言ってください! 小猫ちゃんの家でお風呂に入って思ったこと。それは兄さんも異性である私と入ることができるのなら喜ぶのでは? ということ。

 

つまり、ほとんどの確率で拒否しないはず。それに兄さんはエッチですから。理性で否定していたも、結局はエッチな自分に負けるはずです。兄さんは未だにぶつぶつ言っている。

 

 

「……分かったよ。一緒に入ってやるよ。もちろんタオル着用だ」

「やった!」

 

 

思わずガッツポーズをする。ふふふ、やっぱり兄さんも男ですね。自分の欲には勝てなかったと。いいんですよ、別に。私は受け入れますよ。

 

 

「早く行きましょう。今日は部室か小猫ちゃんの家に行かないと行けませんから」

「なにかあるのか?」

「あります」

 

 

アーシアさんの吸血鬼化が気になりますから。私の血と肉を取り込んでしまいましたけど、化物になるのに十分な血を取り込んでいません。ただちょっと長く吸血鬼化するだけです。もしかしたら、他に吸血鬼化以外の後遺症が表れるかもしれない。

 

そうならないといいですけど。もし表れたらどうにかしないといけません。もちろん絢音に相談しながらです。私一人の吸血鬼に関する知能は低い。私はアーシアさんのことが気になりながら、兄さんとともに風呂場へと向かった。

 

お母さんたちはもう起きていた。お母さんはリビングで家事を。お父さんは仕事へ行く準備を。みんなそれぞれのやることをやっていた。私たちは軽く顔を出し、あいさつをして風呂場へと向かう。

 

風呂場へと着いた私たちは背中合わせで服を脱いだ。や、やっぱりいざとなると恥ずかしい。服を1つ1つ脱ぐのに時間がかかった。体は恥ずかしさで熱くなり、鏡からチラッと見えた自分の顔は赤くなっていた。

 

後ろから聞こえる兄さんが服を脱ぐ音は、すでに止まっている。おそらくもう脱いだのだろう。私はあと下着だけ。いえ、ブラはしてないからパンツだけ。手がパンツの端にかかる。

 

 

「もう……終わったか?」

「ひゃ、ひゃう!!」

 

 

緊張していた上にいきなりだったので変な声を上げてしまった。

 

 

「もうちょっと待ってください! すぐに急ぎますから!」

 

 

いきなりでびっくりしたけど、おかげですべて脱ぎ終わった。タオルを手に取り、体に巻く。

 

 

「いいですよ」

 

 

私は兄さんのほうへと振り向く。兄さんの上半身にはタオルを巻かれていない。今朝見た光景が頭に浮かび上がる。

 

 

「き、きれいだ」

「あ、ありがとうございます。兄さんもいい筋肉です」

 

 

なんか変な褒め言葉になりました。なんですか、いい筋肉って。

 

 

「この腹筋は吸血鬼になったせいか?」

「多分そうです。あまりよく分かりません。そんなことより早く入りましょう」

 

 

私たちは浴室へと入って行く。浴室は大きいわけではないが、狭いわけでもない。あと1人は余裕で入る。でも、今の私は狭く感じた。今は朝なので風呂にはお湯は張ってない。だからシャワーです。

 

まず私がお湯を浴びる。でも、そしたら兄さんと入った意味がない。私は手に持ったシャワーを兄さんの前に持って行く。

 

 

「どうした? もう俺か?」

「いえ、兄さんが私に湯をかけてください。あと髪と体も洗ってください。じゃないと一緒に入った意味がありません」

「分かった。でも、体は背中と腕と足だけだからな。他は無理だぞ」

「はい! それでいいです!」

 

 

兄さんがシャワーを受け取る。私は体に巻いたタオルを風呂の端にかけ、プラスチック製の小さな風呂椅子に座る。兄さんが後ろに来て、頭からお湯をかけてきた。お湯が髪を伝い、体中を濡らしていく。

 

シャワーが止まると後ろからポンプが押された音がした。おそらくシャンプーだろう。頭に大きな兄さんの手が置かれる。そして、手が一定の方向に激しく動く。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってください」

「ん? どうした?」

「もうちょっと優しくしてください。男の人じゃないんですから、激しくされるのはちょっと……」

「ごめん。そうだな。優しくするよ」

 

 

兄さんの手がさっきと違い、優しく撫でるように洗ってくれる。私の髪は腰まであるので、時間がかかる。私はすぐ後ろにいる兄さんを感じながらその時間を過ごした。

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