ハイスクール 鬼と竜   作:謎の旅人

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第22話

兵藤 一誠side

 

俺は今、妹でもあり、恋人でもあり、婚約者でもある兵藤 絢乃の体を洗おうとしていた。髪を洗ったときは自分と同じような感覚でやってしまい、失敗してしまった。次は失敗はしない。

 

そうだな。そういえば体を洗うときはタオルを使うよりは、素手のほうがいいと聞いたことがある。それに優しくタオルで洗うなんて器用な真似ができない。絢乃の肌を傷つけないためにも、やっぱり素手のほうがいいな。

 

俺は手にボディーソープを垂らす。垂らされたボディソープを泡立たせたあと、そのまま絢乃の背中に触れる。昨日何度も触れたが、こうして触れると吸血鬼ではなくただの女の子にしか見えない。だが、こうして触れているとちょっとドキドキするな。

 

 

「に、兄さん!? ちょ、ちょっと何をしているんですか!?」

「うおっ!!」

 

 

いきなり絢乃が振り向いてきた。なぜか分からない。分からないが……目の前に揺れる2つの山がある。そう、おっぱいだ! つい手が伸びそうになる。その手と自分の状態に気付いた絢乃は俺の顔面を殴り、すぐさま両手でおっぱいを隠し、前かがみになる。

 

 

「ぐあっ!」

 

 

俺の声が浴室に響き、後ろに倒れそうになった。ぐおおお、あ、あぶなっ! もう少しで頭と床がくっつきそうになった。絢乃の顔は俺におっぱいを見られたせいか、顔を赤くしていた。

 

 

「に、に、ににに、兄さん!! さっき私の胸を触ろうとしましたよね!? いえ、そもそもどうして素手なんですか!! そういう道具があるじゃないですか!! ほら!!」

 

 

絢乃が壁にかけられたタオルを指す。

 

 

「まあ、待て。これには理由があるんだ」

「どんな理由ですか!!」

「俺が聞いた話ではな、こういうタオルで洗うより素手のほうがいいと聞いたんだ。詳しくは知らない。聞いた程度だからな。それにこれってざらざらしているだろう? 絢乃は女の子だ。そして、俺は男で今、絢乃の体を洗おうとしている。このタオルで洗えば力加減の下手な俺は絢乃のやわらかな皮膚を傷つけるかもしれない。いくら吸血鬼だとしても、だ。俺にそんな趣味はない。ならそのためにもやっぱり素手のほうがいい。理解したか?」

 

 

俺は真剣に答える。

 

 

「理解はしました。でも、せめて一言あってもいいじゃないですか! ただでさえ緊張しているのに、いきなり素手でなんて……」

「嫌だったか?」

「べ、べつに嫌とかじゃないです。でも、兄さんがどうしてもって言うなら素手でお願いします。どうですか?」

 

 

おっぱいを隠し、前かがみになっている絢乃が上目遣いで聞いてくる。さて、俺はどうするか。もちろん決まっている。

 

 

「どうしても素手で洗いたい」

 

 

俺はきっぱりと答えた。何も恥じることはない。俺も男だ。異性の肌に触りたいなんていう感情はある。それに相手は別に触ってもいいと言っているのだ。断る理由がどこにある。ないだろう。

 

それに別にいやらしいことをするのではない。あくまで絢乃の体を洗うのだ。たとえ体を洗う過程で間違って胸を触っても仕方ないことだ。

 

 

「迷いなくきっぱり言うんですね。なら、素手でお願いします」

「ああ、分かったよ」

 

 

では、失礼して。再びその手が絢乃の背中に触れた。泡のついた手は滑って行くように背中の上を踊った。背中は泡で肌が隠れる。ふむ、次は腕だな。絢乃の片腕ずつ両手で丁寧に洗う。

 

やはりその腕にあるのは細くて俺が力を入れれば折れてしまいそうなものだった。俺のと違うその腕の柔らかさと触り心地。

 

 

「あの、兄さん?」

「なんだ?」

「遊んでませんか? さっきから腕ばっかりなんですが」

「そんなことはない。ただきれいにしようとしていたら、時間がかかっただけだ。決してこのやわらかな感触を楽しんでいるわけではないんだ。本当だぞ」

「……分かりました。なら早くしてくださいよ。そろそろ体が冷えそうなんです」

「それはすまない。名残惜しいが、早く終わらせよう」

 

 

俺はもう片方の腕も洗い始める。急いでいるが、しっかりと丁寧にだ。さて、次だ。俺はごくりとのどを鳴らす。その手は後ろからは見えないおっぱいに伸びようとしている。いやいや、俺はいったい何をしようとしているんだ?

 

まさかここで襲っちゃうのか? 襲っちゃおう。ただそのおっぱいをも――――じゃない、ただ触るだけだから。男はやはり欲には勝てなかった。今の俺はただの狼だ。ただ自分の欲に従う獣。

 

 

「えっ!? 兄さん?」

 

 

俺の泡に包まれた両手がそれぞれのおっぱいに触れた瞬間、絢乃が驚き聞いてくる。だが、俺は答えない。もう答える余裕なんてない。手にあるふにっとした感触。昨日も感じた感触だ。

 

けど、今は朝でここは風呂場。リビングには両親がいる。そんな激しいことなんてしない。揉んでいる手に力を入れた。

 

 

「ひゃんっ! ちょ……やんっ……待って……っ! ダメッ……うぅ……そ、れ……以上、は……か、感じちゃうっ……」

 

 

絢乃の甘い声が浴室に響く。おっと、やりすぎたか? でも、もうちょっとだけ。そのためにも俺はシャワーの蛇口をひねり、お湯を出した。シャワーから出たお湯が床を跳ね、絢乃の声を目立たなくする。お湯は絢乃の体にもかかり、すべての泡も流される。

 

 

「んん……ああんっ……はああ……ああ、あっ……んあっ……そん、なに……強く、した……ら、ダメ……です……」

 

 

後ろからおっぱいを揉まれる絢乃はその背中を俺に預けるように寄りかかる。俺の胸と絢乃の背中が触れた。絢乃の体は熱くなっていた。

 

 

「ん、やっ、はあぁっ……くうぅ……あう……あ、はふんっ……」

「どうした? 気持ちいいのか?」

 

 

俺は耳元で囁くように言う。顔を赤くした絢乃はこくんと首を縦に振る。もっと絢乃をめちゃくちゃにしたい。もっと気持ちよくさせたい。ただその欲だけが深まって行く。

 

 

「口で言ってくれ。気持ちいいのか?」

「は、い。気持ちいい……です。でも、もうちょっと違う刺激も……欲しいです。お願い……します」

 

 

首だけを俺のほうへ向け、恥ずかしがりながら言った。その意味を理解した俺は右手を絢乃の下腹部のほうへと伸ばして行く。そして――――

 

 

「絢乃、イッセー? 朝ごはんよ!」

 

 

もう少しでというとこで母さんの声が響いた。いきなりでびっくりし、俺と絢乃は離れた。あ、危なかった!! もしあのままだったら最後までやっていたかもしれなかった。くそっ、俺は何を!!

 

俺は反省した。まさか両親が近くにいるのにこんなことをするなんて……。絢乃のほうもどうやら反省しているようだ。これは俺が悪いな。

 

 

「あ、絢乃、俺はもうお湯を浴びてすぐに上がるよ。絢乃はどうする?」

「わ、私も出ます。そこのタオル取ってください」

 

 

かけてあったタオルを綾乃に渡す。綾乃は軽くシャワーを浴び、すぐさま体に巻きつけた。俺もまたシャワーを浴び、絢乃とともに浴室を出た。

 

互いに背中合わせで後ろからは絢乃がタオルで体を拭く音が聞こえた。それでまた意識する。着替え終わると、ちょうど綾乃も着替え終わる。互いに顔を合わせるが、恥ずかしくて顔を伏せた。とても気まずい。

 

 

「ほ、ほら、母さんたちのとこへ行こう。綾乃も腹減ったろ?」

「え、ええ、そうですね」

 

 

ぎこちない動きでリビングに向かった。

 

 

 

 

 

兵藤 絢乃side

 

私は今、とても穴に入りたい気分です。風呂場で兄さんに胸を揉まれ、その快感に浸っていました。それにその間に色々となんか言ったような気がします。そう思うと……うう……もう恥ずかしい!!

 

でも、もとはと言えば兄さんが悪いんです。い、いきなり兄さんが後ろから胸を揉むから。しかも、昨日より余裕があるみたいでした。私はそんな余裕はなかったのに! まるで兄さんに弄られているみたいでした。

 

 

「絢乃? どうしたの? 手が止まっているわよ」

「え? ああ、ちょっと考え事です」

 

 

私がぼーっとしていたことを指摘される。隣にいる兄さんはもう落ち着いているのか、黙々と朝食を食べていた。むかつきます! 私はテーブルの下で兄さんの足の指を踏みつける。

 

 

「ぐっ!」

 

兄さんの苦悶の声が聞こえる。だけど、お母さんたちは気付かない。兄さんが睨んでくるけど、私は無視する。兄さんが悪いんですからね! そんなことを考えながら次々と料理を口に入れていく。そうしている間に私の料理はなにもなくなり、みんなよりも少し早く食べ終わった。

 

食べ終わった私は先に部屋へと戻った。戻るとすぐにベッドへ前倒れする。顔や体に柔らかな感触がした。それとともに、昨日の行為のにおいがする。頭のなかにはさっきの風呂のことを思い出す。

 

再び体が熱くなった。まるで発情しているみたい。昨日、そういう行為をしたのに。私ってやっぱりエッチな子みたいです。前はそんなのじゃなかったのに。

 

 

「…………一誠さん」

 

 

兄さんではなく一誠さんと呟いた。ただそう呟いただけなのに、鼓動が激しくなりさらに熱くなる。それはとても心地よかった。これを兄さんにも共有してもらいたい。そう思うほど。

 

兄さんはどうだろうか? この気持ちを分かってくれるだろうか? 分かって欲しい。これは愛なのだから。

 

 

「なににやついてんだ?」

「!! い、一誠さん!!」

「え?」

「あっ!」

 

 

いきなりでびっくりして、つい兄さんを一誠さんと呼んでしまった。今度は別の意味で顔や体が熱くなる。私はすぐにベッドから降りて、兄さんに言い訳をしようとする。

 

 

「ち、違うんです! ただ間違えただけです! ほら、兄さん。ね?」

 

 

焦ってなんだかおかしくなる。

 

 

「別にいいって。というか、もう一回言ってくれ」

「も、もう一回ですか?」

「ああ、頼む」

 

 

さ、さすが兄さんです。私に恥ずかしかったのにそれをまた言わせるなんて。兄さんはそうやって顔を赤め、恥ずかしがる私を見て楽しむんですね。私は自分の胸の前に手を持っていき、ちょっと上目遣いで兄さんを見上げる。

 

 

「……一誠さん」

「………………」

 

 

兄さんは何も言わない。こ、こっちは兄さんのために言ったのに、兄さんが何も言わなかったら気まずいですよ……。そう思ってそのままでいると兄さんに抱きしめられる。暑かった体がさらにさらに熱くなった。

 

私の体はどこまで熱くなるのだろう。熱さのせいか、頭がぼーっとする。もう何も考えられない。足に力が入らなくなり、崩れそうになるが抱きしめられているせいか崩れない。

 

 

「……っと、大丈夫か? ちょっと熱いな」

「はい……。大丈夫、です……」

「そうか。でも、悪かったらすぐに言えよ。お前が倒れるのは見たくはないからな」

「はうう……」

 

 

抱きしめられている私はその身を兄さんにあずけるだけ。私の体は兄さんに横のまま抱き上げた。いわゆる、お姫様抱っこである。兄さんは私をベッドまで運び、そこに寝かす。

 

 

「ほら、寝とけ。どこか行くのも今すぐってわけじゃないだろう?」

「そうですけど、別に風邪とかじゃないです。ただ恥ずかしかっただけです」

「でも、あんなに熱が上がるものか?」

「い、色々とあるんです! それよりもさっきのはどうでしたか?」

「さっきの?」

 

 

兄さんは分からないという顔をする。私はちょっとムカッとして頬を膨らませ兄さんを睨んだ。兄さんから言ってきたのにそれを忘れるなんて! 

 

 

「さっき頼んだじゃないですか!! に、兄さんを名前で呼ぶことを……」

「ああ、良かったよ。なんだかこう胸に来るな」

「そ、そうですか。それはうれしいですね」

 

 

そう話している間に私の体の熱は冷め、いつも通りになっていた。顔は照れたせいで赤いままだけど。

 

 

「兄さんのことはやっぱり一誠さんと呼んだほうがいいですか?」

「まあ、そうだな。でも、絢乃のほうは大丈夫か? 絢乃が嫌じゃなければ、そう呼んで欲しい」

「分かりました。でも、それはお母さんたちが海外に行ったあとでいいですか?」

「なんで?」

「お母さんたちがいなくなったあと、私たちは2人きりになります。これからは2人だけで家事やらなんやらしないといけません。それはふ、夫婦みたいですよね?」

 

 

お母さんがお父さんと一緒に行くということは家事やらを私たちで行うということ。それは結婚生活と同じです。私と兄さんは結婚をするつもり。私たちに血のつながりはない。なので何の問題もないです。

 

もし無理だったらどうしようかと思いましたけど、なくてよかったです。あったらなんて考えたくないです。

 

 

「だから、色々と切り替えるために、その日からというほうがいいなと思って」

「そういえばそうだな。もうすぐで俺たちだけになるんだな」

「忘れていたんですか? 昨日お父さんから話されたのに」

「いや、昨日の夜にお前と色々したから、そっちのほうが印象が大きかったんだ」

「!!」

 

 

その言葉に昨日のことを思い出す。恥ずかしさのあまり一気に恥ずかしさがこみ上げる。表現するならボンッという音が出て、頭からは煙が出ているのがふさわしい。今日は体が熱くなるのが多い。

 

私の意識は熱によって、一瞬薄れかけた。熱で意識を失いかけるって、私はコンピュータですか?

 

 

「や、やっぱり兄さんはエッチですね!!」

「男はそういう生き物だからな! エッチでないといけないんだぜ!」

「開き直らないでください!!」

 

 

全く、真面目からエッチになるなんて。そのとき、私に眠気が襲った。

 

 

「ふあああ」

 

 

手で口を覆い、あくびをする。やばいです。完全覚醒の後遺症です。ベッドで横たわっているから余計に眠くなる。でもここで寝るわけにはいけない。ここで寝たら夜まで寝るような気がする。

 

 

「寝るのか?」

「いえ、寝るわけにはいきません」

 

 

今日はアーシアさんの確認しないといけないんですから。私はベッドから起き上がり、兄さんを見る。

 

 

「兄さん!!」

「は、はいっ!」

 

 

私は怒鳴るように言った。それに兄さんが驚き、ビシッとなった。

 

 

「今から行きますよ!!」

「わ、分かりました!!」

 

 

私たちは着替える。もちろん背中合わせでです。いくら恋人でも恥ずかしいですから。用意が終わると一階へ行く。リビングにいるのはお母さんだけ。どうやらお父さんは仕事に行ったみたいだ。

 

 

「お母さん、今からお友達の家に行きます。昼はそこで食べるのでいりません。夕食前には帰ります」

「そう。分かったわ。でも、絢乃。イッセーが持っているその大きな荷物は何かしら?」

 

 

兄さんが持っているのは大きな袋で。中にはあのシーツ。もちろん洗うため。今、ここでお母さんに言うわけにはいかない。

 

 

「これはお友達の家で使うものです」

「分かったわ。遊んでらっしゃい」

「はーい」

 

 

ちゃんとお母さんに許可をもらい、私と兄さんは家を出た。そこで兄さんが手を差し出す。

 

 

「ほら」

「……はい」

 

 

私たちは手を繋ぐ。でもただ繋ぐだけでなく、互いの指を絡める恋人繋ぎです。周りから見たらやっぱり恋人に見られるんですよね。それはうれしい。まるで兄さんは私のものだと主張しているみたいですから。

 

 

「それでどこに行くんだ?」

「そうですね。まずは小猫ちゃんの家です。その洗い物をどうにかするのが先です」

「そうか。でも俺は道は知らんぞ」

「大丈夫です。私が知っています」

 

 

たったの数回だけですが、ちゃんと覚えています。相手は大切な親友です。そういうことはすぐに覚えます。これが全く興味のない人だったら小猫ちゃんの何倍の数だけ行かないと覚えないでしょう。

 

それくらいなのですよ。私にとっては。私はやっぱり人間ではない。そういう考えが私にとって正しいと思っている。ただ大切なものだけがいればいい。他はどうなろうが知らない。そういう考えに。

 

 

「ああ、そっちは右です」

 

 

私が兄さんを誘導する。そうやってしてちょっと時間はかかったけど小猫ちゃんの部屋の前に着く。兄さんは周りをキョロキョロと見渡していた。その兄さんの脇を肘でつついた。

 

どういう意味か気付いた兄さんはビシッとなる。全く、他の人に見られたら恥ずかしいじゃないですか。ちょっとは大人な対応をしてほしいです。私はインターホンを押した。

 

ピンポーン

 

その馴染みのある音が響く。しばらく待っていると中からこっちへ向かってくる足音が響いてきた。そして、ドアが開かれる。兄さんは一応、ドアから離れさせた。

 

 

「おはよう、小猫ちゃん」

「むっ、絢乃さん、おはようございます」

 

 

パジャマ姿でまだちょっと寝癖があった。それにまだ眠そう。きっとさっきまで寝ていたのだろう。私はその姿を兄さんに見せるわけにはいかないので、ドアから動かないよう目で言う。もちろん伝わっているので兄さんは動かない。

 

女の子のこの姿を男子に見せるわけにはいきません。私だって寝癖がついた姿を兄さんを見られるのは恥ずかしいです。

 

 

「今日は兄さんと来たの」

「……なるほど、私に自慢しに来たんですか」

「ち、違うよ。ここにアーシアさんはいるかなと思って」

「ここにはいません。部室に寝かせたままです。アーシアさんに用があるなら早くそっちに向かってください。私は寝足りないので寝ます」

 

 

小猫ちゃんはちょっと不機嫌そうだ。思い当たるのは小猫ちゃんの私への気持ちです。誰だって好きな人が別の相手といたら不機嫌になります。私も兄さんが別の女性と仲良くしていたらそうなります。

 

 

「ま、待って! ちょっと洗濯をさせてほしいの。ちょっと色々な事情があってこっちではできなくて……」

「……どれです?」

 

 

私は兄さんの手に持つ袋を持ってくる。それを見た小猫ちゃんは目を細め、一瞬だけ驚き悲しみ怒り戸惑いまた悲しんだ。私にはなぜか分からなかった。小猫ちゃんの目には涙が溜まっていた。私も困惑する。兄さんはそれを見て、どういうことだという顔だ。

 

 

「ど、どうしたの?」

「…………うう……そん、なのって……」

 

バンッ

 

涙を流し、扉を思いっきり閉められた。私はまだよく分からなかった。いろんな表情をしたあの顔。その理由が一番分からなかった。兄さんは私の隣に立つ。そして、頭に手を置いてきた。

 

 

「また何かしたのか? 一瞬だが扉を閉めるとき泣いているように見えた」

「……分かりません。どうしてなのか」

 

 

私たちは扉の前で立ち尽くすだけだった。

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