もちろん開放なんてしない。俺はまだ人間だからな。多分、本当に化け物として生きるのならこういう冷徹な判断を簡単にしていたのかもしれない。俺は心は人間のままでいたいと思っている。
だから、吸血鬼の本能に負けないようにしないと。まだ経験したことはない、吸血鬼の本能である吸血欲に。綾乃曰く、ものすごく飢えるらしい。それも今までで感じたことがないほどの飢えだそうだ。
飢えてしまえば俺は何人もの人間を喰らい続けるらしい。そうならないためにも飢えたらすぐに私に言ってくださいと綾乃は言っていた。つまり俺は綾乃の血を飲むというわけなのだ。そして、俺が吸血するとき、綾乃も俺の血を吸血する。
「落ち着け。絶対に変な真似をするなよ」
「だったら早く解決してください。こっちは兄さんとのスキンシップを邪魔されたんです。これは重罪です。死罪です」
なんでそんなに重い刑なんだよ。あと本当に怖い。
「スキンシップくらい今でもできるだろう」
「兄さんは兄さんで、すごいことを言うんですね。そうはしたいですけど、床にひざ立ちの状態では体勢がきつくて、やりたくてもできませんよ」
「そうか?」
「そうです! 私はこうなんていうか、兄さんの膝の上に座って、正面から抱き合う形がやりたかったんです!」
「それは……エッチだな」
「エッチじゃありません! 兄さんにとってはエッチでも私にはスキンシップなんです」
なわけあるか! と大声でツッコミそうになった。こんな変なことでまわりの人の命を危険にさらしたくない。それにもしそんなスキンシップをしたら、こっちの理性が持たない。いや、その前に人の目があるこんな場所でそんなことをするわけもないし、しようとも思わない。
恥ずかしすぎるだろう。でも、人目のない家ではやるということなのだ。家なら存分にやってもいい。俺は別にそのスキンシップをしたくないとは言わない。むしろしたい。俺も年頃だからな。
「はあ……もう私たちだけ逃げます? 今日は私のためのデートですよね? これで終わりたくはありませんよ」
「でも、どうやってだ?」
「おや。逃げたいんですか?」
「そういうわけじゃないが、そんな方法があるなら知っておこうかと思って」
「くすっ、いい心がけですね。方法は簡単です。私の魔法ではい、脱出終わりです」
「……まったく分からん。もうちょっと詳しく」
「え? 分からないんですか?」
なんで分からないのという顔をされる。いや、あんな説明、いやいや説明にすらなっていない。ただ分かったことは魔法を使うってだけじゃないか。きっとこれを言っても誰も分からないと思うぞ。
逆に分かったらお前は心が読めるのかって言うぞ。しかし、その脱出方法の内容次第では、ここにいる人たちを助けることができるかもしれない。綾乃はやれやれとした顔で言う。
「ふう、しょうがないですね。私の魔法に影を利用した転移魔法があるんです。それで逃げるんですよ」
「そんなものを使えるのかよ。本当にお前には驚かされる」
「褒めてもなにもでませんよ」
こうやって話しているうちに綾乃の興奮も収まって、俺の服を掴む力も弱まっていった。このままなにもなければきっと、綾乃のほうも何もないだろう。よし! このままなにもないでくれよ。
こいつが暴走したら本当に俺じゃ止められないんだから、アレを使わない限り。しかし、アレを使うわけにはいかない。そんな場面でもないしな。俺は何も起きるなよ! と思っていた。だが、現実はそううまくはいかない。
「おい! そこ! 何をしゃべってやがる!! こっちへ来い!!」
人質に向けて強盗犯の一人が叫んだ。そう、俺たちだ。俺たちに向けて言ったのだ。ああ、なんでこうなる。いや、まあ、話をしていた俺たちが悪いんだけどね。でもよ、俺の体を張った行動に免じて見逃してくれよ。ほら、こっちはお前たちの命を守っているんだから。
お前たちだって命のほうが大事だろう。大事なら今からでも遅くない。無視しろ。まだ間に合うぞ。だが、俺の願いとは裏腹に強盗犯はいつまで経っても来ない俺たちへと向かってきた。銃は向けられている。
「はあ……殺しましょうよ」
「ダメだ。絶対に何もするなよ。何があってもだ。分かったな」
「…………」
返事がない。顔を見れば殺したいという顔だ。
「何かしたらデートは終了だ」
「はい、分かりました。ちゃんと我慢します」
綾乃は素直に従った。そんなにデートにこだわっているのかよ。そこに犯人が来る。
「てめえら、こんなときになにしてんだ!! 立場が分かっているのか!!」
「…………」
俺は答えない。何を言ったってどうせ怒るだけだ。
「聞いてんのかよ!! この野郎!!」
「ぐあっ」
強盗犯が俺を蹴飛ばした。俺と綾乃が離れる。俺は床に横たわった。強盗犯はさらに俺の横腹を蹴った。俺の体に衝撃と痛みが伝わる。だが、
強盗犯は何度も蹴った。おそらく肋骨が折れた。そして、最後に頭を思いっきり踏みつけた。そのとき頭がバキッと音を立てた。これはやばいな。きっと頭が一番重症だろう。なんだか意識がぼんやりとした。だが、すぐにはっきりとなる。
はは、やっぱり吸血鬼ってすごいな。俺の体の怪我がすぐに治っていく。全くの無傷となった。だが、そのことを気づかされないように、そのまま痛がる演技をする。チラッと綾乃のほうを見るが、俺を見て心配そうな顔をしていた。
てっきりもっと別の反応があるとおもったのに。けっこう優しいとこ、あるんだな。そこへもう一人が俺を蹴っていた一人の肩に手を置く。
「おい、そこまでにしとけ。殺したらどうするんだ。面倒なことになるぞ」
「ちっ、分かった。だが、まだかよ。もうすぐで警察が来るんだ。予定よりも遅れている。このままじゃ俺たち……」
「分かっている。もうすぐだ」
小声だったが吸血鬼であり、近くにいたので内容がよく聞き取れた。ありがとうよ。やっぱり計画されたものだったんだな。と、これでなにかしようとするような風だが、俺はただの高校生なのでこんな情報は意味がない。
「ん? おい、やばい!! サイレンだ!! サツが来た!!」
「マジかよ!? マジでやばいじゃん!! どうすんだよ!! 撃ち合うのか!?」
確かに聞こえる。サイレンの音だな。
「落ち着け。それは最後だ。もしものときだ。今は金を持って逃げるだけを考えろ」
「そ、そうだな。俺たちは金を奪って逃げればいいんだ。そうだ。ああ、そうだ」
リーダーの男がほかの強盗犯たちを落ち着かせる。さすがというべきか。リーダーは冷静のようだ。助かった。もしもこのリーダーがいなかったら、興奮した強盗犯たちが人質たちに危害を加えていたかもしれない。
人質たちには安心した表情が見える。警察が来たことで多少安堵したようだ。だが、まだ分からない。これはあくまでリーダーが冷静だったからだ。
「おい、見ろよ! こいつ、結構可愛いじゃないか」
見れば綾乃の前に一人の強盗犯が。
「確か俺がボコしたやつの彼女だったな。くくく、こいつをもらうか?」
「ちょっと待て! 邪魔になるだろう! それに警察が来ているんだぞ!」
「人質にもなる。どうよ。それにこんな上玉は滅多にないぜ」
強盗犯たちの一部は綾乃の体を下品な目でじろじろと舐めまわすように見た。綾乃は胸の前で腕を交差させる。顔を見ると嫌いな虫を見たときの顔だった。やっぱり嫌だよな。なんだかあいつらには腹が立つな。
妹でもあり恋人である綾乃の体をそんな目で見るなんてなあ。俺でも殺したくなる。綾乃は俺のものだ!! 全部俺のものだ!! 誰にも渡さねえよ。
「……そ、そうだな。連れて行くか」
「くくく、お前もやっぱり男だな」
「当たり前だろう。こんなに可愛いんだからな。男ならそう答えるさ。だが、こいつの彼氏はどうする?」
「置いて行くに決まっているだろう。当たり前のことを聞くな。男なんて連れて行ってもうれしくないだろう」
「いや、ほら。恋人同士ってことだろう。俺ってなんかそういう相手がいる女の相手はちょっと抵抗があるんだよ」
「なんだ。つまりは殺したいってことだろう? そう言えよ」
なんだか俺の未来が勝手に進んでいるんだが。しかも死って未来に。せめてボロボロにするという未来はないのか? そっちでいいじゃないか。こっちは喜んでサウンドバッグになってやるよ。そっちのほうがまだましだからな。
いくら再生するとはいえ、痛みがある。体にダメージがなくても精神にはダメージがくるのだ。なので死ぬときの痛みなんて食らったらどうなるか分からない。だったら殴られたときの痛みがいい。
「よし! 用意ができた!! 行くぞ!! 準備はいいか!!」
「待て。こいつを殺す」
「……そいつ以外は殺すなよ」
「ありがとうよ」
リーダーに許可をもらった強盗犯の一人は俺に拳銃を向ける。
「頭は止めといてやる。お前の彼女をもらう礼さ」
「は、はは、ありがとうございます」
強盗犯の拳銃から数発、発射された。それは主に左胸へ。俺は確実に心臓を仕留められた。
「あっ!!」
俺が撃たれる場面を見た綾乃は声を上げる。本当に今日は驚かされるな。そんな顔を見れるなんてな。俺が綾乃の眷属だって知っているだろう。こんなのじゃ死なないって。
「終わったな。行くぞ」
強盗犯は綾乃の腕を引く。だが、綾乃は動かない。強盗犯たちからは綾乃の伏せた顔は見えなかった。だが、死んだ振りをしている俺にはわかった。あれは怒っているんだと。やばいな。
暴走しないか? したら俺が止めないと。いや、するから俺が止めないと。俺の周りには自分の血溜りがあるが、やはりもうすでに傷は完全にふさがっていた。
「来い!!」
「……………………な」
「あん?」
「……触るなって言っているの!!」
「なっうがあっ」
怒った綾乃は手を掴んでいた男を投げた。投げられた男は床に背中から叩きつけられた。おそらくは何かの武術だ。俺の目では掴まれた手を利用して投げていたように見えたからだ。
投げられた男は咳をしながらふらりと立つ。仲間も気づき銃を綾乃に向けた。だが、向けた瞬間、綾乃を見た瞬間、強盗犯たちは驚いた。何があった? 綾乃の手に拳銃があったのだ。
もちろんだが、それは綾乃のものではない。綾乃が男を投げた際に奪った拳銃だった。綾乃はその拳銃を片手に持ち、すでに強盗犯たちに向けていた。おいおい、どこの映画の主人公だよ。
よくそんな器用な真似ができたな。俺には無理な芸当だった。しかし、心配なのは綾乃の銃の腕だ。素人だと思うので当たるのだろうか。だが、当たる当たらないの前にやることがある、俺が。
俺は上半身だけを起き上がらせる。
「綾音!! 殺すなよ!!」
ただそれだけ。つまり俺はこう言ったのだ。撃って相手を制圧していいが、絶対に殺すなと。省略したものだったが、綾乃はそれをちゃんと理解していた。よかった。暴走はしていないな。
「なっ!? 生きている!? バカな!!」
「ちゃんと撃たなかったぐはっ」
俺が生きているということで驚き、さらに隙が強盗犯たちにできた。綾乃はそれを見逃さない。一人がしゃべっている途中で綾乃が発砲。見事に男の銃を持っていた腕に当たった。
まじかよ。当たったよ。お前のその技術はどこで手に入れた。本当に怖いな。銃を撃ったことで人質たちと外の警官たちが騒がしくなった。俺はとりあえず、人質たちの前に立ち、もしものときの壁になる。
「う、撃て!!」
リーダーだろうか誰だろうか。それは分からない。だが、その一声で強盗犯たちは改めて銃を構え、引き金を引いた。強盗犯たちは皆、アサルトライフルだ。拳銃とは違い、多くの弾幕となって人質も含め俺たちへと向かってきた。
おい、マジかよ! 冗談じゃない!! 一人の女の子に向けてここまでするのか? オーバーキルってやつじゃないのか、これ。俺はすぐさま人質たちを守るために障壁を張った。障壁は俺と人質を囲むように発動。
全ての銃弾が障壁に当たった。弾は障壁を貫通せずに床に高い音を出しながら落ちた。その光景に人質は驚く。だが、強盗犯たちは綾乃の相手をしているので気づかなかった。
綾乃は全ての銃弾を避けていた。最小限の動きでわざとギリギリのところで避けている。もう本当にどこのキャラクターだよ。
「なんで当たらないんだよ!! 化け物か!?」
「やべえよ、やべえよ!! 近づいてくるぜ!? どうなってんだよ!!」
「とにかく撃て!!」
それでも当たらない。綾乃は避けながら銃をゆっくりと構えた。自然とした動作。そこには罪悪感という気持ちも篭っていない。ただの作業のような感じだ。彼女には人を撃つということに悪いとも思っていない。
だって彼女は殺すという行為にすら、なんとも思っていないのだから。俺はその姿に笑うしかない。恐怖を通り越した。
「ばあん」
綾乃の小さな声と子どもっぽい言葉を放つ。それとともに綾乃の持つ拳銃から弾が飛び出る。そして、また強盗犯の銃を持つ腕の肩に当たった。当たるとともに綾乃の口は小さく弧を描いた。
人を傷つけて綾乃は笑った。楽しくて笑った。この行動は作業であり彼女にとっての趣味でもあるのか。そう感じた。
「あぐっ、腕が動かねえ」
「二人だ! 二人、やられた!! どうする!? もう逃げよう!! 警察が入ってくるかもしれねえよ!!」
「慌てるな!! ゆっくりと後退だ。警察は大丈夫だ。外にいるのはおそらくただの警官。俺たちが使っているのがアサルトライフルを使っていると分かった今、突入してくることはねえ。今は後退と目の前の女の始末だ!!」
リーダーがマガジンを変えながら言う。こっちは障壁を張るので精一杯。綾乃に任せるしかできない。だが、俺に余裕があってもこの弾幕を避けることができないだろう。ハチの巣になるだろうな。
あれは綾乃でしかできないだろう。こうしてみると綾乃にはまだ余裕があるようだ。つまりは本気ではない。まあ、この弾幕の中で笑っているくらいだからな。これが本気であるはずがない。
でも、本気でも彼女はきっと笑っていたんだろうな。結局はどちらにしても笑っている、か。
「あはっ、楽しい♪ ちょっと物足りないけど、こんな低レベルでもたまにはやらないとね」
兄としてはどうしたらいいのだろうか。もう俺の手には負えないぞ。これは別の人にやってもらったほうがいい。
「それにここで満足しちゃったら、兄さんとの刺激的なデートで満足できなくなっちゃうもん」
いや、刺激的なデートなんて俺はするなんて言ってはないぞ。絶対にしないからな。綾乃が弾幕の雨を避けながら、おそらくその刺激的なデートを想像し、うれしそうな顔をしていた。いい笑顔だった。こうやってこの笑顔でいるときは可愛い女の子だ。
だけど、その中身に少々難があるんだよな。そう、この人を撃って楽しそうにするという少々残酷な中身が。しかし、彼女にもちゃんと優しさがあるということは分かっている。
「もう無理だ! あいつ、笑っています!! 俺たちを撃って笑ってます!!」
「悪魔だ!! あんなかわいい顔して中身は悪魔だ!!」
……うん、ちゃんと優しさがあるから。本当だ。嘘じゃないからな。しかし、そろそろ終わらせてもらいたいな。障壁を張るのがつらくなってきた。魔力はまだある。これは俺の未熟なせいだ。
「綾乃、そろそろ終わらせてくれ。こっちがもたない」
「分かりました。でも何か見返りをくださいな」
「おい、今はそういう状況じゃないだろう」
「そういう状況ではなくても、です。こっちはまだ大丈夫なんです。何か見返りがないとこのまま遊んじゃいますよ」
やっぱり遊んでいるのか。人質たちがまだ危険な状況だというのに。やっぱり他人には興味がないのか。
「脅すのか?」
「いえ、別に。ただ交渉をしているんです。こんなときにこうする私を嫌いになりましたか?」
「いや、嫌いにはならない。そんなことで嫌いになるわけがないだろう。俺は綾乃のことが好きだからな」
「う、うれしいことを言ってくれるんですね……」
弾を避けながら綾乃は恥ずかしそうに頬を赤く染める。
「あ、あいつ、いかれてやがる!! こんな状況なのに彼氏といちゃいちゃしてやがる!!」
「そもそもなんで当たらないんだよ!! 弾も残り少ないぞ!!」
「もうすぐで扉だ。合図をしたら走れ。二人はもう逃げろ。そんな怪我じゃ銃もまともに握れないだろう」
リーダーが言ったあと、綾乃に撃たれた強盗犯二人は裏口へ向かって走った。だが、彼らは裏口へと行くことができなかった。二人は走る。撃たれた肩をもう片方の手で押さえながら。
あとわずかだった。しかし、そこにほかの仲間が撃っているのとは違う、銃声が二つした。拳銃の音だった。もちろん綾乃の持っていた拳銃の。放たれた二つの弾丸は二人の男たちの太股を打ち抜いた。
「「ぎゃっ」」
撃たれた瞬間、二人は悲鳴を上げる。そして、床へとすべるように転んだ。逃げられなかったのは、綾乃が撃ったからだ。
「もうダメだよ、逃げちゃ。逃げたら刺激的なデートができなくなっちゃうんだから」
だから、しないって。というか、なんで逃がしたらできなくなるんだ? 俺はなにか言ったか?
「それで見返りはなんですか?」
「逆に聞く。何がいいんだ?」
「う~ん、そうですね……なにがいいでしょうか? そう聞かれると私も分かりません。しょうがないですね。私たちの仲ということでサービスです。後で私の納得のいく見返りをください」
「やってくれるのか?」
「ええ、そうです」
「分かった。考えるよ」
次の瞬間、綾乃の姿が消える。いや、ただ早くそう見えるほどに早く動いたのだ。強盗犯たちはそのまま何もないところを撃った。綾乃がいないと分かって止まる。綾乃は強盗犯たちの一人の前に移動した。距離はわずか。
綾乃は手に持つ拳銃を強盗犯の銃を持つほうの腕に押し付け、ゼロ距離から拳銃を撃った。血が吹き出て綾乃に付着しそうになるが、見えない何かに阻まれて綾乃には付着しなかった。
なんだ? 障壁か? だが、何も見えなかったな。障壁というのは大抵、今俺が展開しているように見えるものだ。しかし、それが障壁とは限らない。綾乃が魔法ではじき返したのかもしれない。
答えは直接本人に聞くしかない。撃たれた強盗犯は痛みのせいか、床にうずくまった。綾乃は次の行動に移行する。仲間がやられたことに気づいた一人が綾乃に銃を向けて、発砲する。距離はもうほとんどない。避けられる距離ではなかった。
しかし、綾乃は自分の持つ拳銃で強盗犯のアサルトライフルを横にずらすことで、弾を回避した。そして、相手の懐に入り込み、肘で相手のみぞおちを打った。
「げほっ」
アサルトライフルを取り落とす。相手は空いた両手で腹を押さえた。綾乃は止めをさすかのように銃を相手の肩に押し付け発砲した。残りはあと二人。