ハイスクール 鬼と竜   作:謎の旅人

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第34話

「私の魔法の中には影を使った転移魔法があります。これで逃げるんです。この魔法の欠点は影がないとダメというところですね。でも、影はどこにでもあるので欠点なんてないに等しいです。どうです? 簡単でしょう?」

 

 

確かに簡単だった。そして、俺は彼女の能力の高さに驚かされる。もう、なんだよ。チートなのか? チートだよね!! そう思いっきりつっこみたいくらいだ。それにしても、はあ……情けないな。俺は男だ。そして綾乃の兄だ。ああ、もちろん恋人でもある。

 

そんな俺が彼女よりも弱いというのはなんとも情けない話なのである。だから俺は強くなるために努力をしているのだ。そして、綾乃を守るために。

 

 

「兄さん? なにぼーっとしているんですか? まさか分からなかったとかですか?」

 

 

ぼんやりとしていた俺に綾乃が問いかける。俺はすぐに顔の前で手を振って否定した。

 

 

「違う。ちょっとした悩みってやつだよ」

 

 

そう言った。俺が綾乃を守るために何かをしているなんて言える訳がない。こういうのは誰にでも知られずにやるものだ。それに別に俺一人で我流の特訓方法をやっているわけではない。

 

俺がやっているのはちゃんとした特訓だ。ちゃんとその特訓には理由があるものばかり。なので変に鍛えられることはない。…………たぶん。綾乃はなぜか俺の言葉を聞いて恥ずかしげに頬を染めて俯く。

 

 

「そ、そうですか。な、悩みですか。や、やっぱり兄さんも年頃の男の子ですもんね! そ、そういう悩みなのも、り、理解できます。私だって年頃の女のです。兄さんと同じように私もちょっと悩むんですよ」

「へえ、そうなのか」

「はい。兄さんと同じ悩みです」

 

 

同じ悩み、か。綾乃も何か特訓で何かあるのだろう。そうなるとあの強さは日頃の鍛錬の成果なのか。でも、いつやっているのだろう。俺は夜中で帰るのは不定期だ。部屋に帰ってきたときにはいつも綾乃はいた。もしかして例の精神世界とやらだろうか。

 

綾乃は真祖の吸血鬼だから恐らく体を鍛える必要はないのだろう。だとしたら後は体術などの動きを特訓すればいい。精神だけでもそれは鍛えられるはずだから。

 

 

「でも……ちょうどいいですよね」

「なにがだ?」

「私たちが同じ悩みだということです」

「どこがちょうどいいんだ?」

「だって同じ悩みですよ。だとしたら、一緒に解決できるじゃないですか」

 

 

確かにそうだな。同じ悩みを持つ者同士なら互いに相談し合って解決することができる。だがな、俺はなんというか一人でやりたいというか、やらざるえないのだ。もう色々な事情があって。

 

そう思っていると綾乃が俺の背中に手を回し正面から抱きついてきた。

 

 

「うおっ!?」

 

 

いきなり抱きついてきたのでびっくりした。抱きつくとともに綾乃の匂いが俺の鼻の中に入ってきた。そして、抱きつくということは密着するということなので、綾乃の成長中のおっぱいのやわらかな感触もした。

 

いつも思うが抱きついてくるほうはこういうことを分かってやっているのだろうか? そういえば前にわざとやっているとか聞いたような気がする。そして、素でやってしまうと恥ずかしいらしい。

 

俺にはどう違うのかは分からなかった。これも乙女心というやつなのだろうか。う~ん、分からないな。ともかく、今は逃げなければならないのだ。こんなところでいちゃつくわけにはいかない。

 

 

「ほら、離れろ」

「む~、何でですか? 今、悩みを解決しようとしているんですよ。離れる必要があります?」

「いや、何を言っているんだ? なんで抱きつくことが悩みの解消になるんだ?」

「え?」

「え?」

 

 

おかしいな。なぜだろう。どうやら互いに何かすれ違っているようだ。

 

 

「聞くが俺の悩みってなんだと思っているんだ?」

「え? それはもちろん年頃の悩みですから性の悩みですよね。悩んでいたのはそ、その、わ、私とエッチしたいから、ですよね」

「………………」

 

 

言葉がなにもでない。なんでこの子はそんなそっち方面を求めるのだろうか。強盗犯と戦う前もそうだ。俺の膝に対面になるように跨り座りたいと言い出したのだ。いつからエッチな子になったんだ? そして言われた俺は建前ではダメだと言って断っているが本音を言ってしまえばかなりうれしかった。

 

男でうれしくないやつはいないだろう。だって女の子が(膝の上に)跨りたいって言っているんだ。うれしくないはずがない。しかし、今はダメだ。ここは銀行の中で人質だった人たちがいる。俺に誰かに見られて興奮するような性癖は持っていない。

 

とりあえず俺は綾乃の頭に手刀を落とした。

 

 

「きゃうっ」

 

綾乃が可愛らしい悲鳴を上げる。

 

 

「な、なんで殴ったんですか!!」

「お前がバカなことを言うからだ」

「それって女の子の性欲を否定するってことですか? 世界中の女性のために言いますけど、私たちにだって性欲はあるんですからね!」

「誰もそんなことは言っていないだろう。お前はもうちょっと言動に慎みを覚えたらどうだ?」

「む、それって私に慎みがないということですか?」

 

 

ちょっと怒り気味に言う。だが、どうしてだろうか。綾乃が本気で怒っていないということもあるが、全く怖くもない。むしろ可愛いと思ってしまう。恐らく男の千人中九百九十九人がそう思うだろう。思わなかったやつ、つまりその一人は同性愛者だな。

 

俺はそんな綾乃の頭を思わず撫でてしまった。撫でられた綾乃は怒った顔から喜んで緩んだ顔に一変した。

 

 

「ふにゃ~」

 

 

お前は猫か。

 

 

「って違います!! 頭を撫でないでください!!」

 

 

だが、俺の手を払おうとはしない。どうやら自分からは俺の手を払わないらしい。ならもうちょっとこのままでいいか。

 

 

「それで私に慎みがないということですか?」

「あんなことを言うからだ。しかもこんな場所で」

 

 

ここはまだ銀行の中なのだ。すぐ近くにはまだ怯える人質と血を流す強盗犯たちがいる。そんな中で俺たちはプライベートな話をしていたのだ。綾乃は頭を撫でられたままだ。こっちはこの感触を楽しめるのでうれしい。

 

 

「あう……」

「分かったらもうちょっと慎みを覚えろよ」

「で、でも兄さんはちょっとは私の体に欲情はしますよね?」

「するがなんで今その話になるんだ? 全く関係ないだろう」

「うう~」

 

 

綾乃は涙目になった。本当にこの程度の話で涙目になる綾乃が、銃弾の雨の中で六人相手にしたとは考えられてないな。人は見かけによらずは今の綾乃にふさわしい言葉だな。それよりも強盗されかけてどのくらいの時間が経ったのだろうか?

 

 

「それでそろそろ出ないか? もうすぐで突入してくるかもしれんぞ」

「うにゃ? ん~そうですね。そろそろ逃げましょうか」

 

 

綾乃は普通に言う。本当、魔法って便利だよな。床に転がっている強盗犯だってきっと時間をかけて計画を立てていたのに、俺たちはわずかな時間なのだから。それだけの時間で十分だったから。

 

それに金だってかからない。かかるのは自分の魔力だけだ。それさえあれば簡単に逃げることができる。

 

 

「でもですね、それには条件があるんです」

 

 

綾乃が真剣な顔で言ってきた。

 

 

「言ってみろ」

「見返りをください」

「なんだって? もう一度言ってくれ」

 

 

おかしいな。俺の聞き間違いだろうか。見返りと言ったか? ありえない。今は逃げることが優先のはず。だからこんなときにそんなことを言うやつなんていないはずだ。

 

 

「見返りです。ご褒美です。それをください」

「……なんでだ?」

 

 

そう俺が言った瞬間、一瞬だがとてつもない殺気が俺を襲ったように感じた。き、気のせいか? いや違う! 現に俺の手と背中には汗をかいている。気のせいだったらこうはならない。

 

気のせいだと思うほどの一瞬で、それだけの殺気を出したのだろう。俺は思わず綾乃から離れるように後ずさった。殺気を出した綾乃はにこりと笑っている。その笑顔が怖い。いつもの笑顔が天使なら今は悪魔だ。笑顔なのに悪魔! どうしたらそんな笑顔ができるのだろうか。

 

 

「もう一度言ってください。なんて言いましたか?」

「………………」

「ほら? どうしたんですか?」

 

 

絶対に同じことを言ったらどうかされる。こんなに彼女を怖くなったことなんてあっただろうか?

 

 

「な、『なんでだ?』と言いました」

 

 

敬語で答えてしまった。しかもしっかりと真っ正直に。

 

 

「ちょっと兄さんの記憶を復元するために頭を吹き飛ばしていいですか?」

「ちょっと待て!! それだと記憶を復元するどころか、記憶を全部失うぞ!?」

 

 

いや、記憶を全部失うどころか、なんで死んでしまうと思わなかったのだろうか? ちょっと混乱しているようだ。ちょっと落ち着こうか、俺。

 

 

「大丈夫です。痛いのは最初だけです」

「この部分だけを聞けばまるで今からいやらしいことをするときみたいだが、それをやると痛いどころか死んでしまうからな!! あとその台詞はどう考えても男である俺が言う言葉だ!!」

「さてと、どの魔法でいきましょうか? さっきは吹き飛ばすと言いましたけど、穴が開く魔法でいいですか?」

「よくない!! というか、そもそも頭を吹き飛ばすことにも俺は了承していないからな!?」

「はあ……兄さんはわがままですね」

 

 

おかしいな。本当におかしい。今、俺は自分の命の危機なのだ。しかも、俺を殺そうとするのは綾乃。綾乃が俺を殺すわけはない……と思う。一応、吸血鬼だけどどこまでの攻撃なら死なないで済むのだろうか?

 

そしてなぜ自分の命を守ることがわがままになってしまうのだろうか? これはいたって普通のことだ。当然のことだ。

 

 

「心配しなくても大丈夫ですから。ちゃんと記憶が戻るまで何度もやりますので」

「俺が心配しているのは記憶じゃねえ!! 俺の命のことを心配しているんだ!!」

「兄さんは面白いことを言いますね」

 

 

綾乃はくすりと笑う。

 

 

「命よりも記憶のほうが大事じゃないですか」

 

 

 

どうやら彼女の中では俺の命よりも俺の記憶が大事らしい。だが、綾乃。よく考えてくれ。俺が死んだらその記憶だって消えるんだぞ。分かっているのか? 分かっていないならよく考え直してほしい。そして、気づいてくれ。もっとも大切なのは記憶よりも命だということに。

 

 

「さあ、兄さんも覚悟を決めてください。こっちの覚悟はできています」

「なんで兄でもある俺を殺す覚悟がもうすでにできているんだ? もうちょっと時間はかからなかったのか?」

「いえ、私としては結構かかりましたよ。普通なら何も考えませんから」

 

 

これは自分が彼女にとって特別なんだと分かったからと喜んでいいのだろうか。

 

 

「ほら早く覚悟を決めてください。本当は私だってつらいんです。大好きな兄さんの頭を吹き飛ばすんですから」

「ま、待て。ほ、他に道はないのか? 頭を吹き飛ばす以外に道が。だって記憶だろう? 別の方法があるはずだ」

「う~ん」

 

 

綾乃は腕を組んで考える。そして、しばらくした後、

 

 

「ありませんね。そういうわけでふっ飛ばしましょう!」

「なんでだよ!! あるだろう!? というか、今思いついたんだが、俺が忘れたならば覚えているお前が教えてくれればいいんじゃないのか? それなら俺の頭をふっ飛ばさずに済むだろう」

「ちょっと待ってください。考えますので」

 

 

どこに考える必要があった!! 普通即断だろ!! そんなに俺の頭を吹き飛ばしたいのか!!

 

 

「ふむ……まあそれでいいでしょう。本当は頭をふっ飛ばすなんて忘れた罰で冗談で言ってみただけですから」

「冗談にしては本当にやりそうな雰囲気だったぞ」

「あら、兄さんは本気で私がやると思ったんですね。私に自分の大切な人を傷つけるなんてできませんよ。するのは全く関係ない人間だけです。兄さんを傷つけるなんて絶対にないですからね」

 

 

それが本当だといいのだけど。

 

 

「それで見返りの話ですが、兄さんは私が犯人たと遊んでいるときに犯人を倒したら何か見返りをくれると言ったんです。覚えていませんか? というか思い出してください。こっちはそれが楽しみで犯人たちを倒したんですから」

 

 

なんだろう。犯人が倒されたのは俺のご褒美のためだったからという事実は。犯人側にとっては聞きたくない事実だな。でも綾乃が犯人で遊んだ理由はどうあれ、俺たちは犯罪を阻止することができたのだ。もし俺たちがいなかったらきっと今頃はもっとひどいことになったはずだ。

 

きっと色々と大きな事件になっていたに違いない。アサルトライフルなんてものも持っていたし、もしかしたら死人までもがでていたかもしれん。そう推測すると俺たちがここに偶然入ってよかった。

 

そして、俺が綾乃の忠告を聞かずにここに入ってよかった。ここには子どもだっていたからな。まだ未来のある子どもには生きてもらいたい。

 

 

「そうだったな。確かにそう言った覚えがあるな」

「ちょっとは思い出したようですね。でも、決めていないでしょう?」

「うっ……そうだな。さっきまで忘れていて全く決めていない」

「ですよね。ですから私が決めます」

 

 

その時の綾乃の顔はなんだか嫌な笑みを浮かべていた。何か俺にとってやばいことをしそうな顔だった。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ」

「なんですか? まさかとは思いますけど、約束を忘れておいて自分に決めさせてくれ、なんて言うつもりじゃないですよね?」

 

 

先読みされた!?

 

 

「あははは、そ、そんなわけないじゃないか。そ、そのだな。そろそろ逃げなくていいのか、と思ってな。約束は逃げ終わってからな」

 

 

俺はなんとか誤魔化すことに成功した。違和感はなかったはず。うまく繋げたし、今の状態に言っても当たり前のことを言っただけだからな。綾乃を見ても『それもそうですね』と言って魔法の準備をしていた。

 

さて、誤魔化したはいいが、俺は何をやらされるのだろうか? 今はそれだけが気になる。やっぱり罰か? 強盗犯との戦いで相手を撃ってうれしそうだったから俺をいじめて楽しむなんてありえる。そう想像すると強盗犯よりもこっちのほうが怖いな。

 

どうか神様!! 悪いことにはなりませんように!! 人間ではなくなりほとんど悪魔側である俺が神頼みをした。悪魔側? 堕天使側? 天使側? そんなもの関係ねえ!! 俺の命が保障されればどこでもいい!!

 

 

「では兄さん。逃げますよ」

「ああ。だが、人質たちに見られるがどうするんだ?」

「もちろん、見られないようにしますよ。こうやってね」

 

 

綾乃が右の手のひらを人質に向ける。そして、左の手のひらも犯人たちに向ける。

 

 

 

「『リク・ラク ラ・ラック ライラック 大気よ 水よ 白霧となれ 彼の者等に一時の安息を! 眠りの霧!!』」

 

 

呪文らしい言葉を高らかに言った。言い終わると二つの場所から霧が発生した。人質たちがいる場所と犯人たちの場所からだ。なんだと思っていると霧を吸い込んだ人質たちと犯人は眠った。

 

なるほど。これが魔法なのか。初めて彼女が魔法を唱えるところを見た。漫画などでもそういうシーンはあるが、実際見るとやっぱり心になにか来るな。

 

 

「ほらこれでいいでしょう。ほら手を繋いでください」

 

 

 

差し出された手を俺は繋ぐ。その手は柔らかな感触だった。何度も手を繋いで思うが本当に柔らかい。俺は少しだけ力を込めると、綾乃の手が一瞬びくっとなって綾乃も握り返してきた。

 

綾乃の立ち位置は俺の斜め前なのでその顔は見えなかった。綾乃は俺を引っ張るように移動した。移動した場所は影のかかっている場所だった。

 

 

「ここでいいのか?」

「ええ、影が十分ですから」

「そうか……。その魔法ってどうなんだ?」

「どう、とは?」

「いや、なんだ。その、な? 情けないとは思うが怖くないのかな~なんて思ってな」

 

 

その言葉に綾乃はきょとんとした顔になっていた。そして、笑うのではなく安心させてくれるような笑みを浮かべて、

 

 

「大丈夫ですよ。怖くなんてありません。水の中に入るような感じですから」

「水、か」

「ええ、どうですか? 安心しました?」

「ああ、ありがとう。安心したよ」

 

 

水に入るような感じなら安心できる。水に入るなんてプールや風呂でよくあることだからだ。俺は水泳は得意なので水の中に入ることは別に抵抗は感じない。それに手を繋いでいるのだ。

 

俺の手から伝わるそのぬくもりが俺を安心させてくれていたのだ。

 

 

「これで準備はいいですね? そろそろ行かないと本当に警察が入ってきちゃいます」

「ああ、大丈夫だ。もういいぞ」

 

 

俺の返事を合図に俺たちの体は影に沈んでいった。うわっ、確かに水に入るような感触だ。しかし影は冷たいか温かいかなんだか微妙なものだった。このはっきりとしないものはあまり好きではない。

 

どうせなら冷たいか温かいかはっきりとしたものがよかった。はっきりしないから感触だけが水のようだ。他は何か違う別のものだ。これって慣れるかな? いや、慣れるほどこの魔法を体験したくはない。

 

その間にも俺たちの体はどんどん沈んでいった。そして、ついには全てが影の中へと入った。中は影の中だが影の色という表現はふさわしくない。影の中ではあるがその中は闇、そう光を飲み込む闇だ。

 

それがふさわしいだろう。だが光を飲み込む闇であるが、隣で俺と手を繋ぐ綾乃の姿だけははっきりと見えていた。それは本来ならありえない。なぜなら物が見えるということは光があってでの現象なのだから。

 

つまり光がなくてはものは見えないのだ。まあ、俺が分かるのはここまでだ。詳しいことは分からない。俺は専門家じゃないからな。しばらくこのままでいると俺たちは影から出た。

 

 

「ここは?」

「……ここは兄さんが死んで兄さんが生まれた場所です」

 

 

綾乃は少し間を空けてそう言った。なんだ? どういう意味だ? 俺には分からなかった。だって俺が死んで俺が生まれた、だぜ? 分かるやつがいるだろうか? 困惑している俺に綾乃が俺の心を察したのか、泣きそうな顔で俺を見てきた。今にも泣きそうな顔だ。

 

 

「兄さんはここで人間ではなくなって吸血鬼になったということですよ。ここで死にかけて私が眷属にするための吸血を行い、兄さんは私の眷属となったのです」

「ここで?」

「ええ、そうです。この公園で」

 

 

俺は改めて辺りを見回した。ここは公園だった。前に一度来たことのある公園だった。ああ、そうだった。その一度の時、俺は確かにここで死んだんだ。やっぱりあれは夢ではなくて、俺はあの女の人に光の槍で刺されたんだ。

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