身体能力が凄いというチートだけで能力バトル世界に転生させられた   作:三幹七枝

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もう戦闘なんてこりごりだ〜

 

私がラトとアマネの二人に襲撃について話してから4日後、スラムの南西で大きい爆発音が響いた。その時、私もアマネもラトも家に居たため、二人に地下室に逃げるよう言って、愛用の武器を掴んで走り出す。

 

走りながら考える。敵は雑兵がいっぱいと幹部であるクレエダカマド。私は転生チートで途轍もない身体能力があるので雑魚はどうにでもなる。ストーリーが序盤の頃は基本雑魚は無能力者ばかりだった。後半になるにつれ雑魚も能力者当たり前、みたいな感じだったが。

 

クレエダ・カマドの戦闘能力に関しては、幹部の中でも少し強い方と言ったところだ。能力者である彼を、強いだけの私で対抗できるかどうか不安なところだ…。

 

「…っと、酷いですね…」

 

目の前から人が大量に走ってくる。敵ではない。恐らく逃げている一般人だ。混雑して動きにくいため、裏道を通って行くことにする。

 

…着いた。

 

今の時間は夜。夜闇に紛れるつもりだったのだろう。みんな黒い外套のようなものを羽織っている。雑魚といえど、一般人とは違う。家のようなガラクタや倉庫のような板の集合体を、叩き壊しひっぺがしている。

 

落ち着け。冷静にならないと不味い。まず、クレエダはどこだ。雑兵といちいちやり合っていられない。アイツを即殺しなければ。

物陰に隠れながら敵を血走った目で観察していると、奥にいる奴がスピーカーを持ち大声を出した。

 

「みなさーーん!!みなさんの仕事はゴミ掃除ではなくゴミ拾いですよ!なにやってるんですかさっさとそこらへんのガキ捕まえなさい!」

 

…アイツだ。しかもちょうど良い。アイツの命令を聞いて、雑魚が散開し始めた。…今しかない!

 

背中にかけていた長方形の物体の持ち手を掴み、引き抜くと同時に三層に折りたたまれていた金属がバネにより押し上げられ歪な長刀になる。

これは私の愛用している武器で、原理はわからぬが持ち運びは便利だし微細に振動しているから切れやすい。いつから持っていたかも忘れたから、もしかしたらこれも転生チート武器かもしれない。

 

地面がひび割れるほど大きく踏み込み、チンタラと動いてる雑魚の上を跳び、後ろを向いているクレエダの首だけを目掛けて大きく私の腕を身体ごと振りかぶる。そして叫ぶ。

 

「死ねッ!」

 

ようやくクレエダが気づいたが遅い。もうアイツの身体に斬撃は入っている。ああ、何やら動きがスローモーションに見える。アイツの首に剣が当たり、クレエダが身を捩り、そのせいで私の腕がズレる。

 

首を叩っ切るつもりだったが、クレエダが途中で身体を捻ったため、私も切り方を変え、袈裟斬りにした。

 

クレエダはナナメに真っ二つになった。

 

「…なんだキサマは」

 

だが死んでいない。真っ二つになっているのに動き、二つに分かれた身体を密着させるとなんとくっついた。体からは黒煙が噴き出ている

 

それもそのはず、クレエダの能力は"再生"。そして突破方法はゴリ押し、ようするに死ぬまで切る。それしかない。厄介な相手だ。ちなみに、能力者が能力を使うと体から黒煙が噴き出る。

 

「スラムの住民です」

「なんらかの能力者ですね?良い斬撃ですよ。腕も良い。相手は悪いですが」

 

一般人であったクレエダが幹部にまで上り詰められたのは、本人の気質と能力の"再生"がピッタリだったからである。厳しい特訓にも戦闘にも再生で何度でも泥臭くしがみついてようやく幹部になったのだ。

 

敵じゃなければ良い話だが、コイツは敵、そして元々はゲームのボスである。スラム襲撃はイベントなのでまだコイツとは戦わないのだが、後々戦う時は半端ない回復量のリジェネによるクソボスとして名を馳せていた。

 

「クレエダ・カマドさん、ですね。スラムから退いてくれませんか?」

「何故?」

「言ったでしょう。私はスラムの住民です。ここを壊されたくない。返答をください」

「NOですが?」

「なら殺すしかありません」

 

少しばかりの会話を終え、再び長刀を振りかぶる。クレエダは今度はモロに受けず、右腕で防御してきた。

 

この世界には、魔力やオーラのようなものがある。名前はついていないが、それを強く纏えば体も硬くなる。さっきは不意打ちだったから真っ二つにできたが、幹部が全力でオーラを纏えば腕だろうと鉄壁になる。

 

「──なにッ!?」

 

だが、私のチートの一つは超パワーである。鉄壁であろうがなんだろうが力で引き裂けるからチートなのだ。クレエダが防御した右腕を意に返さず横一文字に切り裂く。クレエダが驚きの声を上げている。

だが、また身体がすぐにくっついてしまった。むぅ、厄介だ。殺しているのに死なない。体からは黒煙が噴き出ている。

 

「…おお、おお。なるほどこれは。身の程を弁えていない愚者かと思えば、それなりにはやるようで」

 

「お褒めいただき光栄です。つきましてはあと何回殺せば良いか教えてもらっても?」

 

「そんなの俺も忘れてしまったさッ!」

 

クレエダが左腕をこちらに掲げる。…わかっていたが、その腕には筒状の蒸気機関が連結されている。

アレは、クレエダの専用の武器だ。中にあるものを、圧縮し、射出する。

そして今あの兵器の中にあるものは…クレエダの腕だ。

 

「爆ぜなさいッ!」

 

クレエダの腕が黒煙を吐きながら、蒸気機関が大きい音を立てて真っ赤に染まった何かをこちらに勢いよく発射する。私は嫌な顔をしながら、それを長刀を盾にして受ける。

 

…文字通り肉が潰れるような音とともに、大きい衝撃が身体を襲う。だが、少し踏ん張れば耐え切れた。それよりも、あたりに広がった気色悪い赤いモノの方がよっぽどダメージがくる。精神に。

 

「…それがあなたの武器、ですね」

 

「ええ、リッパーギアと言います。中のものを粉砕し発射する。この場合…()()()ですね。俺が使えばこれは、弾が無限の砲台となる」

 

話している間に腕が再生したのだろう。再びコチラにリッパーギアとやらを構えてくる。

弾が何発分かわからない以上、一々受けるのは得策ではない。避ける方が良いだろう。大きく円を描くように走る。発射された肉塊は見当違いのところへ着弾した。

 

「チッ──おい!お前ら!戻れ!コイツを取り押さえろ!」

「!!」

 

クレエダが後ろに退きながら、部下を呼び寄せる。こうなると面倒だ。だが、止める手立てもない。なんとなく地面に落ちていたバールを思いっきりぶん投げる。クレエダの頭に当たって血が流れる。が、すぐグネグネと再生した。

 

「痛ッ、それにしても恐ろしい破壊力ですねあなたは。幹部のガードを易々と貫くとは。俺が相手じゃなければ最初の不意打ちで決まっていましたね。やはり俺は無敵ですねぇ」

 

「私はあなたの突破方法を知っていますよ?死ぬまで殺せばいいんです」

 

「ほざけ…やっと部下が揃ってきましたね、テメェら!その女ァ取り押さえろ!」

 

怒声を出しながら部下に命令する。黒い外套を身に纏った集団が行手を塞ぐ。だが、長刀を一薙すれば驚くほどスパスパ切れていく。

 

「クレエダ様っ、今ですッ!」

「しまっ─!」

「よくやりました!」

 

部下が無理やり抱きついてきた!クソっ、視界が!撃ってきたのはわかるが、場所が…!

 

「うっ!」

 

クレエダの肉塊が、左脚に直撃する。左脚の腿が吹き飛び、爆発の衝撃で吹き飛んで転んでしまった。

 

「うっ、ぅあっ!」

 

痛い!熱い…!肉が焼ける音がする。ダメだ、恐らくもう左脚は動かないだろう。クレエダの肉片か私の脚かわからないくらいには悲惨になっている。千切れてはいないが、完治にはそうとうかかる。筋肉がなくなった。骨が露出している。吹き飛んだおかげで雑魚の包囲からは逃れられたので這いつくばり適当なガラクタを支えに右足で立ち上がる。

 

「アッハハッ!やはり気分が良い!俺は回復し!敵は傷つく!最高の能力だねこりゃ!」

 

脂汗が止まらない。飛びそうになる意識を必死に抑えながら思考を続ける。クレエダはもう勝ちが確定したと言わんばかりに高笑いをしている。実際、ずっとあの肉塊を受けていたらジリ貧で負ける。再び近づいてくる兵を切り捨てながら考える。なにか、なにかないのか…!?

 

「…もういいでしょう。予想以上に手こずりました。お前ら!もういい!任務をまた始めろ!ガキと能力者を攫え!」

 

クレエダの部下が散開していく。…これに関しては重畳。だが…どうしてクレエダの再生を突破したものか。くそっ、焼けるような足の痛みが思考を邪魔する。

 

支えにしてるガラクタから適当に鉄片を拾って、クレエダに投げつける。クレエダのリッパーギアに直撃し粉砕したが、あの武器も"再生"の能力範囲内である。綺麗さっぱり治ってしまった。

 

「ふん、何しても無駄ですよ」

 

こういうタイプにありがちなコアとか、再生が遅くなる部位とかはクレエダにはない。純粋な強能力だ。千切った腕をぶん投げたりしても恐らく新しい腕が生えるだけだろう。

 

…"再生"は、どの程度から始まるんだ?

 

「あなたは中々強かったですよ…俺には及びませんでしたけどねぇッ!」

 

心なしか今までのより一際大きい肉塊を発射してくる。深呼吸。吐く息に合わせて肉塊を一息で切り捨てる。

 

「無駄な足掻きを──」

 

クレエダに向かって()()。さっき左脚はボロボロにされたが、がむしゃらに走るくらいならできるまでは回復()()()。私のチートは超パワーと自然再生だ。それこそクレエダほどではないが、骨折も数時間であれば治るくらいの治癒力が私にはある。

だが、それでは足りない。無理やりに意識を脚に向け、やったことのない自然治癒の勢いの向上をする。何か使ってはいけないエネルギーを使っている感覚がする。しかし、そのおかげでなんとか今この一瞬クレエダに向かって走ることだけはできる。

 

踏み込むたびに全身が悲鳴を上げるのを無視してクレエダに向かって走る。クレエダが驚いているのがわかる。そりゃそうだこの脚で走ってるんだからな。

 

クレエダの目の前まで来た。クレエダはなんとも言えない顔をしている。まあ私が何をしても殺し切れないと思っているのだろう。確かに一瞬で殺しきることはできないよ。でもな、

 

「あなた、痛覚はありますよね?さっき頭にバール当てたら痛がりましたもん。でも、それだったら死ぬほどの痛みで発狂しているはず…。つまり、限度を超えた痛みはシャットダウンされる?恐らく、欠損や死亡するほどのダメージは感じないんでしょう」

 

感情が昂って昂って、キャパオーバーでまるで世界が遅いように感じる。その中で、私は自分の考察を口に出す。

 

「じゃあ、死に至るような一撃じゃなければ良いんですよね。ありますよね。めっっちゃ痛くて、死にはしないけど、行動不能にはなりそうなところが、」

 

蹴りの一撃でクレエダを真っ二つにしないよう、ギリギリまで力を抑える。恐らく今からする蹴りは一般人の鉄パイプのフルスイングくらいの威力だろう。

 

狙いに気づいたのか、クレエダの顔が青ざめる。いや、青ざめるなんてものじゃない。冷や汗ダラダラで、口を震わせている。…そこまで痛いのか、申し訳なくなってきたかもしれない。まあ弱めないけど。

 

私だってクソ痛ぇんだよ…お前も泣き喚け…!

 

()()()()()()()()()()()()───!!」

 

クレエダの股間に、無慈悲な蹴りが突き刺さった。

 

 

 




◇死ぬこともあるけどね───!!


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