身体能力が凄いというチートだけで能力バトル世界に転生させられた   作:三幹七枝

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来客

 

「オラっ!この、このっ!」

「…カッ…!…!!…!!!」

 

顔面を蒼白させ内股になりながらうつ伏せに倒れたクレエダの後ろに回ってさらに股間を蹴る。踏む。蹴り飛ばす。踏み潰す。

もうなんか泡とか吹いて失神したところで一度蹴るのをやめる。さてどうしたものか。

 

コイツは殺しておきたい。が、あとどれだけ再生できるかわからないから殺し切るには日が暮れそうだし、原作ではもっとあとで死ぬからここで殺してしまったら折角のゲーム知識が使い物にならなくなってしまう。

いや襲撃防いだ時点で展開は大きく変わるのか…?

 

とりあえず一回殺そうかと思ったが、そうすると金的の痛みもリセットされてしまうかもしれないなぁ……ん?待てよ?その方が都合が良いか?

 

案を思いついたみたので試してみる。

 

愛武器の長刀を軽く振りクレエダの首を落とす。すると切られた場所から黒煙を出しながら再生する。

 

「──ウッ…オエェッ…カハッ…ハッ……お前…こんなことして許されると思うなよ…どうせお前では俺を殺しきれ」

 

「だまれ」

 

ゲロ吐いて恨み言垂れながらこちらを睨んでくる。予想通り金的の痛みも消え失せたようである。なのでもう一度蹴った。

 

「…!!…!!!」

 

もんどりうってうずくまり、再び声にならない声をあげてのたうち回っている。もう一度蹴った。

 

「…!」

 

転げ回る。もう一度蹴った。

 

「…!」

 

転げ回る。もう一度蹴った。

 

「…!」

 

転げ回る。もう一度蹴っ────

 

「ま、待て!わ、わかった!今回はもう手を引く!撤退する!わかった!」

 

ポロポロと大粒の涙を流しながら必死の形相で訴えてくるクレエダ。正直なところ始末しておきたいが…今の私では無理そうなのが痛いところだ。

クレエダの腕を無理やり引っ張り立たせる。そして話す。

 

「二度と此処に手ぇ出すなよ」

 

「…もうこんなことこりごりですよ。…あなたの名前は?」

 

「カザギリ」

 

「その名前、覚えておきます。…テメェら!今回は撤退だ!ガキも能力者も一旦捨ておけ!退散するぞ!」

 

クレエダが身を翻し歩き去っていくと、どこからともなく大量の黒い外套の人間が来てクレエダに着いて行く。なんかカッコいい退散してて癪なので石を拾いぶん投げる。クレエダの頭が爆散し部下が驚く。

 

「クレエダ様!?…あの女か!?ぶっ殺─」

 

「いい!帰るぞ!」

 

遠目からでも青筋浮かべてるのがわかるような声色で叫び帰って行く。部下も渋々それに従い、こちらを睨みながらクレエダに付き添って行く。…おわった。

 

「な…んとかなったぁ…」

 

私の今回の怪我といえば、左脚の負傷だが、自然治癒でなんとかならない範囲ではない。一ヶ月…いや二ヶ月あれば完治するだろう。えぐれた肉すら回復するのはやはりチートだ。持っててよかった。

 

「いや、まだわからん…少しの間だが、部下がスラムを破壊していた…もしかしたら二人も危ないかもしれん…」

 

左脚を引きずり這う這うの体で家まで戻る。見た感じこのあたりまで灰被りの煤塵(スカベンジャー)は攻めていなかったようだ。守ることのできたスラムのいつもの薄汚れた景色を眺めながら考える。

 

原作のストーリーが始まる前からもう物語を改変してしまった…これからどうなるのだろうか。

普通に考えれば戦力増強があまり出来なくなったから灰被りの煤塵(スカベンジャー)がゲームより弱体化…。これはまあ良い影響かあ。

 

なんか見過ごしがありそうで怖いんだよなぁ。襲撃防いだ結果敵になるキャラとか味方になるキャラとかいたかなあ。

 

今後について憂鬱になりながら家に入り、ドアがわりの鉄板をどかして地下にはいる。

 

「お姉ちゃん!」

「っ…!脚、大丈夫…!?」

 

 中に入ると、アマネが顔をパッと明るくしながら抱きついてきたのでそっと優しく抱き返す。ラトが左脚の怪我について気づいてしまったので笑いながらなんでもないように教える。

 

「大丈夫大丈夫、お姉ちゃんはつよいから。二人は怪我ない?」

 

「ちょっと揺れたけど…なんもない」

「むきず」

 

「そっか…ならよかった」

 

二人に怪我とかがないことを確認する。ぷはあ、ようやく一息つけた気がする。緊張の糸が切れてしまって脚の痛みが酷い。あと眠気。地下から二人と一緒に出て、二人を抱きしめる。

 

「二人が無事で、よかったぁ…」 

 

 

 

 

 

 

「誰ですか」

「「対黒煙煤掃機関(スウィーパーズ)です」」

 

我が家に来客が二名来た。

 

「お茶は出せませんよ。…上がってください」

 

ゲーム知識で知っている。対黒煙煤掃機関(スウィーパーズ)とは、灰被りの煤塵(スカベンジャー)に対抗、というか能力者の犯罪者専門の対策機関だ。

 

能力者は能力を使うと黒煙が出る為このような名前なのだろう。…私の超パワーとか自然治癒は黒煙でないからやっぱ転生チートで能力じゃないのかなあ。

 

そして、今訪れている二名についても知っている。二人は双子で、どっちも能力者だ。というか、対黒煙煤掃機関(スウィーパーズ)はほとんど能力者だ。

 

「そこに座ってください。…お名前は?」

「ミカガミ・ミラルです。こっちは妹のレゾナ」

「カザギリさん、でよろしいですか?」

 

この二人はミカガミミラル、レゾナ。

 

ミラルは金髪で蒼い目をしていて、歯車の意匠が施された茶色いジャケットを着ている。木に金属の装飾のあるアンティークな耳当て、ダークカラーのパンツに茶色い小さいポーチが付いている。少しブカブカな皮のブーツが似合っている。

 

レゾナは金髪で黄色い目、フリルたっぷりの白いブラウスに、コルセット風のベストを重ねてその上に茶色のジャケット、フリルふりふりで歯車の装飾付きの黒いミニスカートに、胸元にはエメラルドグリーンのブローチを付けていて、頭には革のゴーグルが乗っけてある。

 

…対して私は、スラム住みだから仕方ないとはいえ、ボロボロの黒のレザージャケットに黒のスリムパンツ…少し破れてるけど。そこらへんに落ちてたボロの革が編み込まれたロングブーツ。私の今の見た目はそこそこに良いのだが、格好が悪いので示しがつかない。ちなみに私は白髪のロングで黄色い目だ。髪は手入れなんてできてないからボサボサだぞ。それに、左脚もまだ治りかけだ。痛みは引いたがあまり動かないから杖をつかっている。

 

話を戻すとして、ミカガミの双子は対黒煙煤掃機関(スウィーパーズ)の中でもちゃんとしてる二人だ。

 

他のメンツは性格が捻くれていたり、一般スタッフには灰被りの煤塵(スカベンジャー)のスパイがちょくちょくいるため、この二人は良心枠と言えるだろう。

まあ、ストーリー始まる前だからスパイもいるかわかんないけど。

 

さて、私が何かしただろうか。クレエダを追っ払ったことでも伝わったのだろうか。

 

「そうだね、私がカザギリで合っているよ」

 

「単刀直入にスラムに訊ねますが、ここに訪れたという灰被りの煤塵(スカベンジャー)の幹部の襲撃を防いだのは貴女でしょうか?」

 

「まあそうだね」

 

「いくつか伺いたいことが」

 

「良いけど場所を変えたいな。可愛い子供たちに不安を覚えさせたくない」

 

話の邪魔にはならないように、それでも心配でこちらを見ているラトとアマネの二人に笑顔を向けながら場所の移動を提案する。

 

「わかりました。どこならよろしいですか?我々としては本部が良いのですが」

 

「ちなみにこれって、どういう『訊ねる』なのかな。尋問?事情聴取?話を聴きに来ただけ?」

 

レゾナがミニスカートを整えながら言う。

 

「事情聴取寄りの話を聴きに来た…といったところですかねぇ」

 

頑張って真面目に話してくれているが、まだミカガミの双子もそこまで大人ではない。10数歳といったところだ。こんな幼いのに任務とか任せられてるのはすごいなあ。

 

真面目な話なのに、こう…年下を見るとお姉さん目線になってしまうというか、いまいち切り替えられないな…。まあ私は前世経験があるだけでまだまだ17の若造だけど。

 

「ふぅん…本部に行くのは連行とかではない?」

 

「えっ…いやいやそんな事は!そっか…そうなっちゃうか…」

 

気になってたことを訊ねてみたら失礼なことをしたと思ったのかオロオロしだしちゃった。二人で「どうしよっか…」みたいに顔を見合わせている。仲良いね。

 

「いやまあ私は連行でもなんでも良かったんだけど。まあいいや、本部に連れてってくれるかな?できれば目を離したくないから子供二人も」

 

「あ、はい!わかりました!」

 

「ありがとう。ラト、アマネ、出掛けるよ。お姉さんとお兄さんに挨拶しなさい?」

 

私が呼びかけると、おっかなびっくり怖がりながら、物陰からラトとアマネがでてくる。ちなみに、ラトは紺色の美しい髪で、アマネは見てて可愛らしい薄い金髪だ。

 

「カザギリ・アマネ、です!」

「カザギリ・ラトです…」

 

ラトとアマネは双子で、詳しい年齢は覚えてないらしいが9歳ほど。ミカガミの双子は14とかだ。ミカガミはゲームでもスラム差別もしないはずだから、仲良くしてくれると嬉しいな。

 

二人を連れて二人に従い、本部に向かい始める。…もしかして私スラムの外に出るの初めてか。

 




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