身体能力が凄いというチートだけで能力バトル世界に転生させられた 作:三幹七枝
「ここが、
にこやかな可愛い笑顔で振り返りながら、レゾナが到着を伝える。
…ここが本部かあ。あんまりゲームでは外観とか見れないから新鮮だなあ。
石や赤レンガがベースとなっている壁面には所々パイプが張り巡らされていて、重厚な壁を軽くノックしてみると骨組みが鉄なのか中から低く重い音が響いた。
「中へどうぞ〜」
ミラルの案内で中に入る。中は一面ガラス張りで、その下には歯車やパイプが張り巡らされているのがわかる。吹き抜けのロビーとなっていて、今はミカガミが入り口のスタッフ?のお姉さんに何か話している。
真ん中の通路のみ赤い絨毯が敷かれていて、スタッフのいる受付やらはどうやら黒大理石のようなものでできている。受付の奥には色々なレバーやらスイッチ、赤いハンドルがあり、見てるだけでクラクラとしてくる。
こちらのことを嫌悪を感じる目で見てくる人が多少いる。まあ仕方ない。単純に私たちが汚いのだ。どこかで綺麗になれたらよかったがそんなタイミングもなく。私は大丈夫だが、あまりラトとアマネにこういう感情は気づいてほしくないので頭をそっと撫でる。不思議そうにこちらを見つめてきた。気づいていないようでなによりだ。
「お待たせしました!七階まで案内しますね!」
トコトコと可愛らしい笑顔で戻ってきたミカガミが、私たちを奥に案内する。ちなみに、ラトとアマネは初めて見るスラムの外の景色に脳がオーバーヒートしてしまいさっきからキョロキョロと辺りを見回して目をキラキラさせるだけで何も言葉を発せていない。
ガラス張りの円形の狭い部屋に案内された。自動ドアで、原理はわからないけど蒸気の音を立ててゆっくりと左右に開いた。中に入ると、よくわからぬ操作盤があり、ミラルがそれを操作している。
「カザギリさん、ここ座っていてください。ラトくんとアマネちゃんも!」
「座って大丈夫?私汚いけど」
「そんなの気にせず!」
気にしなくて良いらしいので、レゾナに言われた通り、遠慮せずダークウッドで出来た四人は座れそうな黒い椅子の赤いクッションに座る。…フカフカだ。今まで鉄パイプとかを椅子っぽくしてその上にボロい毛布を引いたのが椅子代わりだったから、感動もひとしおだ。
特にラトとアマネなんてクッション初体験のようなものだから、驚いて目をパチパチとさせている。さっきから未知の体験ばかりで何もわかっていなさそうだ。後でゆっくり寝させよう。
「ラトくんとアマネちゃん、カザギリさんってどんな人ー?」
「お姉ちゃん!」
「かっこ良くて、優しい…」
「えへー、そうなんだー」
レゾナがラトとアマネと会話している。二人は私のことを執拗に褒めていて、なんだか気恥ずかしい。
「動くよー」
「あ、はーい」
ミラルの操作が終わったようで、こちらを振り向いて報告する。レゾナはそれを聞いて一旦話を中断する。
ラトとアマネは何が動くのかわからなくてきょとんとしているが、私は知っている。この部屋はリフトなのだ。ミラルがこちらに来て椅子に座った辺りで、ギギと歯車が回るような音がしたと思うと、どんどんと部屋ごと上に上がっていく。
「わ…わわ…!」
「わぁ…!」
ガラス張りのため、上に上がっているのがわかってラトとアマネがビックリして声を上げている。さもありなん。私だって内心すっごいワクワクしている。この世界で初めてこういう技術的なのつかったかもしれない。ラトとアマネの頭を撫でると、気持ちよさそうに目を細めた。
「着きましたー」
部屋の下に付いている鋼鉄で出来た爪のようなものが、部屋を空中に固定して上昇の動きがガクッと止まる。ガラスのドアが開いたので、部屋から出る。いやー良い体験だった。知ってても感動するもんだねこういうのは。
「こっちでーす」
ミラルの案内に従い、絨毯の上を歩いていく。様々な部屋があるが、それらを素通りしていき、やがて一つの部屋の前に止まった。
それは大きなドアであり、全面鈍い色をした金属でできていて、歯車やガラスが嵌め込まれている。だが、ドアなのにドアノブがついていない。一体どうやって入るのだろうか。
「局長、ミカガミです。カザギリさん連れてきました」
ドアに付いていたラッパのような口…伝声管を引っ張り話しかける。なるほど、中から局長が開けるのか。…局長はどうやって最初入るのだろう。
『そうか』
伝声管から一言それだけ発せられ、大きいドアの歯車が回転を始める。ゆっくりとドアが開いた。中には大きい円形のテーブルと椅子があり、奥の椅子に人が座っている。あれが局長だろう。
「こんにちは。俺が
いかにも、といった威厳のあるおじさんだ。ゲーム通りの風貌で安心する。確かいろんなキャラの過去の回想でもずっとおじさんで、年齢が明かされてないんだよな。
「こんにちは、カザギリと申します。何を話せば?」
「いやなに、中々尻尾の掴めない
「はあ…」
「まあ話も長くなる。座ってくれたまえ。子供二人は…」
「わたしたちが面倒見てましょうか?」
「嗚呼、なら頼むよミカガミくんたち」
「承りましたー。ラトくんアマネちゃーん、あっち行こうねー」
ミカガミの双子がラトとアマネを連れて部屋を出る。ラトとアマネもだいぶミラルとレゾナには心を開いているようなので、人見知りはしないだろう。
「…さて、では、君が相対した幹部について聞いて良いだろうか」
「私の答えられる範囲なら」
「あまり硬くならなくても良い。俺も生まれはスラムだからな。気も合うかもしれん」
…本来なら意外な情報だが、私はゲームをやっていた以上知っているし、そもそも本人もこの事は隠していない。ただの客人の私に話すのがその良い例だ。元々ケントとしてスラムで生き抜き、恩人の名前を借りクサミヤケントと名乗っていると…確かこんな感じだった。そう考えると、ラトやアマネみたいなものだな。
「…こちらは、幹部と戦ったぐらいしか情報がない。その戦った幹部について聞きたい」
「クレエダカマドと名乗る再生能力の使い手でしたよ」
「…クレエダ、クレエダ・カマドか…確か…新参の幹部だったな。幹部に入ったのは一年経ってないぐらいだったか。情報提供感謝する。他にも戦闘の具合について聞きたいんだが」
頭を指でトントン叩きながら思い出す素振りを見せる局長。…別に良いけど、攻略法も話すってことは金的も言うのか…まあいいか。
「下っ端に命令してたのでリーダーだと思い、こちらから不意打ちを仕掛け袈裟斬りにこう…真っ二つに」
手で右肩から斜めに真っ二つにする動作をして示す。
「で、再生して体がくっついたので…何回か切り裂きましたが再生されました」
「ん?断ち切れたのか?幹部のガードを」
「あーはい、私力が強いので」
「ホウ…すまん、続きを」
気になったのだろう。純粋に聞きたいといったそぶりで確認してくる。私も素直に説明するが、力自慢みたいで変な感じだ。
「それで、クレエダが武器を出してきまして…こう、腕に砲台付けた感じの…本人はリッパーギアと言っていました。それで自分の腕を弾にして撃ってきました。かなりの威力で、一発目は弾いたんですけど、弾いても肉が弾け視界は悪くなり、左脚に当たった時は肉がえぐれて…」
「左脚は大丈夫なのか?」
「まあ、完治はしてませんがある程度歩けるくらいには?私治りが早いので」
「フム…」
また話を止めてきたが、普通に心配による中断なので文句を言うのはお門違いだろう。
「部下を呼ばれ脚を撃たれて絶体絶命だったのですが、クレエダが部下を引かせたのでどうにかなりました。部下がいたら普通に私が殺されてましたね」
「どうにか、とは?」
「今から説明します。…部下が呼ばれる前でしたかね、鉄パイプを投げたら痛がったのですよ。殺しても平然としてるのに。恐らく一定以上の身体の損傷が再生のトリガーかつ痛覚がシャットダウンされるのだろうと想定しました」
「成程」
「で…クレエダは男だったので、こう…金的を。そしたら思いの外効果がありまして…殺してリセット、金的を繰り返して退散させました」
「………そうか。情報提供感謝する」
やっぱ変な空気になってしまった。決まり手が金的だもんな。金的だもんな…
「…そういうことであれば、関節技などはどうなのだろうか?」
「え?あー…試してないけど普通にいけると思います。肉体の欠損とか死亡レベルじゃないと再生はじまらなかったので…」
「一考の余地あり、か…ウム、ありがとう。さて…ここからは要望ではなく提案になるのだが」
「はい?何でしょう」
「
…願ってもない展開だ。実際局長の言う通り。
「お願いします。…ただ一つお願いが」
「何かね?」
「ラトとアマネ、あの二人も能力者です。私では甘やかしてしまう…この先のため、厳しく訓練してやってください」
「…棚から鴨がネギとぼた餅片手にやってきたな」
評価、感想お願いします!