身体能力が凄いというチートだけで能力バトル世界に転生させられた   作:三幹七枝

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八年後
ミラルとレゾナ


本部七階。リフトの蒸気が吐き出される音も、絶え間なく回る歯車の律動も、今や私の日常の一部になった。

 

私が対黒煙煤掃機関(スウィーパーズ)に入って、もう八年の月日が流れた。

 

鏡に映る私は26歳になり、ラトとアマネは以前の私と同じ17歳に。けれど、私の隣を歩く二人の足取りは、かつての私よりもずっと力強く、迷いがない。

 

「二人、今日は?」

 

「わたしはロックウッドさんと灰被りの煤塵(スカベンジャー)らしき人物を見かけたって通報があったところを偵察。D地区の三番地だったかな。信憑性は薄いらしいけどねー」

 

「そっか、気をつけてね。ラトは?」

 

「僕は今日任務はないからミカガミさんたちと特訓かな。姉貴は?」

 

「私も今日はなにもないよ。折角だし特訓に付き合おうか?」

 

「うげっ、姉貴さいきん厳しいんだよ……」

 

「それだけラトが強くなったんだよ」

 

不満げに言いながらも、ラトは笑っている。八年前ここにきてから特訓とか戦闘とかスラムの外の常識とか、やらなければいけないことが多すぎたのか二人に反抗期が来ることはなかった。

 

ミカガミの双子は今年で21になる。先輩としてラトとアマネを甲斐甲斐しく指導してくれたのはこの二人だ。人柄が良く職場にも馴染んでいて、そのおかげでラトとアマネも受け入れられるのが早かった。

 

アマネが最近交友を深めていて今日も一緒に任務を受けるらしいロックウッドは二年前に加入した人物だが、かなりの実力がありメキメキと頭角を表していて幹部候補にもなっている。ちなみにラトとアマネはもう幹部だ。英才教育の賜物だ。

 

原作にロックウッドというキャラがいた覚えはないが、まあスラム上がりという話を聞いたので私がスラムを守った結果の新キャラなのだろう。もしかしたら原作では名もない敵兵士Aとかだったのかもしれない。

 

さて…この八年、特に何もなかった。

 

チマチマとした灰被りの煤塵(スカベンジャー)による襲撃こそあるものの、八年前のクレエダのような幹部クラスの襲撃はない。

 

だが、そろそろストーリーが始まるはず。なぜなら、クレエダのスラム襲撃から九年後、原作での主人公が対黒煙煤掃機関(スウィーパーズ)に加入するところから物語が始まるから。

クレエダ襲撃から八年…原作が本格的に動くまで一年。こちらも気合を引き締め直さないといけないころだ。

 

「おっ、ラトサンにカザギリの(あね)さんじゃないスか。今日の任務は聞いてます?」

 

「さっき聞いたよ。期待してる。ケガしないようにね」

 

曲がり角でバッタリとロックウッドに出会った。革のジャンバーを羽織っている。

 

「姉さんに期待されちゃ応えなきゃマズイっスね。眉唾な情報らしいけどしっかり調べてきますよ……っと」

 

「先にD地区行っててくれる?わたしちょっと銃を整備出してて受け取らなきゃ」

 

「応、じゃ、二番地のカフェに寄ってるから準備したら来てくれ」

 

歯車の刺繍がされたハンチング帽を深く被って、出口に向かって歩いていくロックウッド。

 

この街はA〜F地区まであってそれぞれ五番地まである。今回二人はD地区の三番地に行くようだ。ちなみにもちろんスラムにそんな区分はない。

 

「じゃあ、そういうことだから。またあとでねー姉さん」

 

「うん、気をつけてね……よし、じゃあラト、特訓しようか」

 

「はーい。僕ミラルとレゾナ呼んでくるから姉貴特訓部屋の使用申請頼むね〜」

 

「了解」

 

ラトとアマネの二人とそれぞれ別れて、2階の総務部のところに向かう。階段を降りて、受付にいるスタッフににこやかに話しかける。

 

「カザギリです。模擬戦場今空いてます?」

 

「空いてますよ。何時間使います?」

 

「2…いや3かな」

 

「はい、人数は?」

 

「4。ミカガミミラル、レゾナとカザギリ・ラトと私」

 

「承りました。では、こちら鍵となります」

 

書類にインクのペンでサラサラと何か書いて、棚にジャラジャラと多くある鍵の中から白色の鍵を取り出して私に預ける。

感謝を伝えてその場を離れ、3階に上がる。3階は丸々特訓用に造られた階層で、トレーニングルームや模擬戦のできる大きな部屋などが多くある。

 

「あっ、カザギリさん!今日もよろしくお願いします!」

「姉貴ー、連れてきたよー」

 

ちょうど演習場に着いた時、後ろからミカガミミラル、レゾナとラトが私に声をかけた。しっかり戦闘用の武器も持ってきている。

4人いるのを確認した私は、白色の鍵を目の前の大きな扉に差し込む。頑丈さで言えば局長室の扉と良い勝負だ。特訓の余波が漏れてはいけないからね。

 

「広いのにいつみても殺風景だねー」

 

瓦礫やガラクタしかない演習場を見て、レゾナが言葉を漏らす。

 

「まあ模擬戦する場所だからね。時間は3時間だし、手早く始めよう。アップはいるかい?」

「僕はいいよ。ミラルとレゾナは?」

 

「んー、要らない」

「オレも」

 

「そっか、じゃあ始めよう。先手は譲るよ」

 

ラトが腕を回し懐からグルグルに巻かれた鉄線を取り出す。あれがラトの使う武器。ラトはワイヤー使いだ。それと生まれ持った能力の液状化を組み合わせてくる。

ミラルとレゾナがあ、あーと発声をする。二人の能力は声とか音が重要になってくる為。

3人とも、思い切り能力を使ってくるみたいだね。そうじゃないと特訓にならない。

 

あっ、ちなみに今日の特訓は、3人VS私という形だね。

 

「──シッ!」

 

ラトの手についているガントレットが大きく排熱し、その推進力で太めのワイヤーを発射しこちらを薙ぎ払う。

 

しゃがむことでそれを避け、近くにあった大きな岩が砕けつつ近くに転がってきた破片が溶けているのをみて、ワイヤーが高熱を纏っているのを確認する。

 

「───!」

 

()()で背後まで近づいてきていたレゾナが、短剣を縦に振り下ろす。

気配でそれを察知した私は、後ろを見ずに振り下ろされた短剣を人差し指と中指で挟み込んで抑え、勢いよく前方へぶん投げる。

短剣を持っていたレゾナごと勢いよく放り出され、ミラルがそれを受け止めた。

 

私が踏み込んで一息にミラルとレゾナの眼前まで行き、愛用している長刀を振りかぶったところで、私のチート込みの視力でようやく捉えられるくらいの細いワイヤーが張られていることに気づく。恐らくラトだろうが、関係ない。

そのまま長刀を振り落とすが、予想以上に紐は硬く私の長刀と一瞬拮抗したのち引き裂かれた。だが、その一瞬で既にミラル、レゾナは斬撃が届かない後方まで退いている。

 

「良いね。良い連携だよ。次はどうする?」

 

「それ特注の重層鋼線なんだけどなぁ!」

 

恨み言を垂れながら、ラトが腕を引く。ワイヤーの先に大きい岩のようなものがくくりつけられている。あれは腕を少し液状化しているな。

 

瞬間、弛緩していた腕の形をしている流体が途轍もない瞬発力で振りかぶられる。ワイヤーはものすごい強さで引っ張られ、デカい岩をも軽々と吹き飛ばす。そしてそのデカい岩が私に向かってきている。

 

少し力を入れて拳を迫ってくる岩に打ちつけると、岩は()()()()崩れ去った。

 

岩が向かってきたのと反対方向から、今度はミラルが格闘を仕掛けてきた。ジャブを全て躱し、体の捻りを加えた右蹴りを左手で受け止めて、地面に叩きつける。

 

「うっ…!」

 

苦悶の声をあげるが、すぐに立ち上がり今度はハイキックで私の顎を狙っている。すぐさま右手で止めようとしたが、動かない……ワイヤーか、力を入れ引きちぎったが、もう遅くミラルのハイキックが私の顎に突き刺さる。

 

だが、この程度なんてこともない。

 

「うわあっ!?」

 

引きちぎったワイヤーを逆に引き寄せ、ラトをこっちに引き寄せ、ミラルとぶつけようとしたが、普通に躱されたのでラトが瓦礫の山に頭から突っ込む。ガラガラと岩が崩れていくが、()()()()

 

「ここだッ!」

 

いつのまにか背後に回り込んでいたレゾナが私に足払いをしかける。気づいていなかったので普通に喰らってしまって体勢を崩されてしまった。右膝を着いた状態すぐに立ち上がると、目の前にはミラルが立っていて、私の胸に手を当てる。

 

 

「喰らえっ、今の戦いで──()()()()()()ッ!」

 

 

 




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